短編小説

『おやすみ』を舐めて溶かして

今日もママとパパは喧嘩をしている。
最初は掃除ができてないとか
そんなくだらないこと。
だんだん離婚してやるとか
死んでしまえとか、
言葉がトゲにかわっていく。
刺さって返して苦しんで、
その流れ弾が私にも刺さる。
今日も『おやすみ』は言えず、
口の中にとどまっていた。

部屋に戻ってベットに入る。
布団を頭に被り『おやすみ』を飲み込む。
「ゴホッ!ゴホッ!」
『おやすみ』が喉に残ってしまい
飲み込めない。
何度も飲み込もうとして、
結局『おやすみ』を取り出す。
赤と青の暗い色。
ドロドロしていて
お世辞にも綺麗とは言えない。
小さい頃ちさちゃんに見せてもらった
『おやすみ』の色は
いちごのようなピンク色と、
たんぽぽのような黄色のマーブルだった。
窓から投げ捨ててやろうと思った。
でもその『おやすみ』を見ていると
なんだか考えてしまって
目を閉じ『おやすみ』を口に含む。

舐めてみるとしょっぱくて涙のよう。
もっと舐めると、辛くて怒りのよう。
まずくて苦しい吐き出したくなる味。
でもこの味は私を想ってくれる味。
怒ることも泣くこともできなくなっていった
私の最後の感情なんだろう。
舐め終わったらだんだん眠くなってきた。
明日は『おはよう』が言えるといいな。

トースター爆弾

「やった!
 これは、素晴らしい物を作れたぞ!」
博士は不敵な笑みを浮かべていた。
「これでこの世界の一番の殺し屋は
 蚊ではなく、トースターになるのだ。」
「さぁて最終調整だ。」
防護室にトースターを置いて、
10分のメモリに合わせ時間を待った。
10分経つとチンと心地よい音がした後、
ドカーンと隣の防音室から
微かに聞こえる爆発音。
見に行ってみると部屋は灼熱、
ぼろぼろのトースター。
この威力だったらきっと……
博士は早速トースター爆弾を持って、
隣の家へ向かう。

「こんにちは奥さん。」
「あら、何のようですか?」
「この最新型のトースター
 使ってみませんか?」
「ええぜひ!!」
しめしめ、あの奥さんは前から、
隣だから新商品をくれと煩かったのだ。
壁に耳をつけて音を聞く。
ジジっとメモリを動かす音がする。
彼女の命は残り10分だ。
腕時計を見るとあと7分。
ニヤニヤしていると、
チンと音がした。
急いで、ピンポンを押す。
「奥さんトースターを見せてください!」
「ええ、構いませんけれど。」
爆発も燃えてさえもいない、
トースターも彼女も無事だった。
「トースターが爆発していない、
 どうしてだ!
 ちゃんと10分焼きましたか!?」
「爆発?」
「私、焦げさせたくないので、
 3分焼きましたけど?」

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-09-18

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  1. 『おやすみ』を舐めて溶かして
  2. トースター爆弾