ぶレイド×ブれいど
1
「いや、この格好が好きだから」
堂々と。
「どうでもいい」
言われる。
「ハダカだって」
「わーお」
わざとらしく。
「だいたーん」
「大胆さ」
構えを。
「『二つの魔剣』の持ち主に挑もうとしている」
「へー」
こちらも。わずかに。
「真面目だね」
真顔で。
「真面目さ」
返す。
「真面目でなくてこんな馬鹿なことかできるものか」
それに。
「だね」
うなずいて。
「いいよ」
構える。
「やろうか」
言葉はなく。
「フッ!」
小さな気合と共に。
前に。
「あー」
まったく。のんきな。
「間違えた」
「!?」
さすがに。
「僕ってね」
踏みこむ。
「……っっ!?」
あまりにも。無防備な。
「愛されてるんだ」
「な……」
何を。
「だから」
通り過ぎる。
「ね」
ぽん。肩を。
「う……あ……」
理解が。追いつかない。
「に……」
ようやく。
「逃げるのーー」
か。
言えなかった。
「あーあ」
頭をかく。
「だから」
言ったのに。
「まあ」
理解はできなかっただろう。それもわかっていた。
「けど」
仕方ないじゃん。
口に出されないまま。
「ふぅ」
ため息。一つ。
歩き出されていた。
2
剣がそれを許さない。
3
「きまった」
口に。
「フフッ」
スカした。
「あーあ」
そばで。
「何が?」
あきれるも。
「そのまんま」
ゆるぎない。
「決めたわけじゃないぜ」
「は?」
「決定じゃないってことだな」
「………………」
意味が。
「ふぅ」
何度目かの。
(それでも)
いまは。他には。
(あり得ない)
そう。
(この状況が)
そもそも。
(ふぅ)
ずっしり。重く。
(……『斬ラズの剣』)
意味が。
(それでも)
あらためて。
(行くしか)
ないのだ。
4
剣とは何か。
剣とは私だ。
求道的な意味でない。
ばっさばっさ。
人が死ぬ。
それが剣で。
殺す。
それで。
無力で。
ああ。
5
「陛下」
大げさな身振りで。
膝を。
「信じられん」
そっけなく。
「どこが」
「全体」
冷めた目で。
「下がってよし」
「いやいやいや」
あり得ない。肩を。
「僕ですよ」
「知らん」
態度変わらず。
「知らんかー」
がっくり。
「不審者というだけだな」
「その不審者が」
顔を。上げ。
「こうやってて堂々と」
目線を。
「王様の前に立てる」
「そうだよ」
あっさり。
「その程度だ」
卑下するでなく。かといって無気力でもない。
「ふーん」
広間を見渡す。
「やっぱり、違うよ」
累々。そこに。
「ぜんぜん」
「そりゃそうだろう」
肩を。
「王様」
立ち上がり。
「だから――」
振るわれる。力みなく。
「な」
止まる。寸前で。
「最後に」
余裕の。
「女装ッコ。おまえの名ま」
すぽーん。
「そういうところが」
肩を。
「王様だっての」
6
「ふぅ」
また間に合わなかった。
「壊滅」
言うまでもの。
「おー」
こちらは。
「やりますなあ」
「あのねえ」
さすがに。
「やる気ある?」
「ありますよ」
目を輝かせ。
「これを見ちゃったらねえ」
「………………」
無駄に。
けど、この性格で助かっているのかもしれない。
「こうなるのよ」
それでも。
「俺も?」
言うまでもの。
「ヤだなー」
まったく。危機感のない。
決して軽く見ているのではない。
それは。
「武士道とは」
はっと。
「えーと」
目を。
「なんだっけ」
がくっ。
(まあ)
期待は。
「ブシって?」
そこからか。
「大昔の殺人集団よ」
「おー」
パチパチパチ。
「ないって」
拍手されるほどの。
「子どもだって」
知っている。
強き者にとことんへつらい、弱き者をどこまでも踏みにじる。
自らそれを正当化し『リチギモノ』などと呼ばせる。
そんな、狂気の集団。
「いなくなってよかった連中よね」
「ふーん」
早くも。興味は。
「結局さあ」
手のひらを。
「つかめるかってだけだよな」
「えっ」
つかむ?
「だろ」
見られても。
「何を」
つかむとーー
「夢」
思いがけない。
「夢?」
「そっ」
「あなたの」
夢って。
「………………」
聞かない。
それでは踏みこみすぎてしまう。
自分たちは。
「行きましょう」
努めて。
気持ちを殺しながら。
7
「信じる者は救われる」
厳かに。
「信じられるかが問題でしょ」
そっけなく。
「そこは工夫してもらいたいよね」
「工夫か」
にやり。
「『工夫』はそもそも宗教語だ」
「えっ、そうなの」
知らなかった。
「『自由』も」
得意げに。
「ふーん」
納得の。
「確かにどっちもあやしいけど」
「だな」
同意するのか。
「鰯の頭も信心」
「うん」
聞いたことは。
「鰯の頭だって」
目が。
「信じれば」
据わる。
「神だ」
カチン。
「へー」
思いのほか。小さな。
「神か」
結び。
断ったほうは。
「それほどじゃないって」
8
「何人になる?」
誰にともなく。
「さあ」
正直な。
「剣持ちでないやつも入れると」
思案。
「殺人鬼」
正確な答えとは。
それでも。
「よね」
同意。
「あ」
気がついたと。
「殺人人」
「………………」
「正確にはさ」
だから?
「殺人剣」
より。正確にの。
「まあ」
確かに。
「殺しているのは」
剣。
より“深い”意味で。
「けど」
意味が。
「違ってる」
「あー」
そう。
「技みたいだなー」
うなずく。
「必殺剣」
同じだ。
「つか、どっちも殺すのにさー。ニュアンス違うよな」
知らない。
「クッキング」
は?
「料理するって言うじゃん」
あー。
「料理って、まあ、死体を切り刻んでるようなもんだし」
大きく。違ってるとは。
「生きてるでしょ」
「活け作り」
ある。
「そもそも、死体にするには殺さなくちゃだし」
その通り。
「結局さ」
やれやれと。
「何なの?」
こちらが聞きたい。
9
「人斬り包丁」
得物を。
「言われるよね」
「包丁が先か、人斬りが先か」
こちらも。
「そりゃ、包丁が先でしょ」
すぐさま。
「メイド服だし」
「メイドは包丁を持たない」
はずで。
「ああ、じゃあ」
さらり。
「人斬りになっちゃうのか」
「なってくれ」
包丁は。
「こちらが」
本職だ。
「活け作り」
不意の。
「あれって生きてるの死んでるの」
「生かしている」
しばらくは。
「じゃあ」
残念そうに。
「遅かった」
すでに。
その言葉は。
「死に作りだ」
10
「死に顔を」
一句。
「つるべ取られてもらい水」
それは『朝顔』だ。
「はあ」
これで。本当に。
「死に水」
「えっ」
「略して」
「………………」
考えてしまう。
「死に水を」
また。
「取られてもらい水」
字足らずすぎる。
意味も。
「死ぬよな」
ぽつり。
「死ぬな」
「?」
「一字違い」
「………………」
どう。取れば。
「やめる?」
思わず。
「人間を?」
まさか。
「そこに剣があって」
こちらを。
「ここに俺がいる」
自分を。
「人間だ」
あきらめの。
けど、悲壮ではない。
「……馬鹿」
言うしか。
「馬にも鹿にも」
真顔で。
「剣は手に取れない」
「馬鹿ね」
そもそも。
「手が」
ない。
11
いつからか。
それは“二つの剣”と呼ばれた。
持ち主と。
共有する。
命であり、魂であり。
そのようにささやかなものではない。
言葉では。
命ならいくらでも。
魂ならいくらでも。
12
「結局」
指を。
「剣はただ剣なんだよ」
それもまた。
「言葉だ」
「言葉だな」
言いながら。
「何してるの」
「メモだ」
当然と。
「気づきは常に失われる」
「気づきだけじゃないでしょ」
しばし。思案。
「失われない」
「ん?」
「剣は」
ペンを。
「剣という形は失われようと」
剣に。
「おー」
感心の。
「詩人だ」
「いまは」
笑みなく。
「違う」
「だね」
同意の。
「だって」
次瞬。
「口もない」
何も。
「死人だから」
13
「たまにはさ」
ゆったり。
「バカンスだよなー」
「………………」
そんな気分には。
「長いぜ」
それは。
「だったら」
言いたいことは。
「わかってる」
ふてくされて。
「なんだよー」
つんつん。
「ちょっと」
いいかげんに。
「お姉ちゃん」
「っ」
その呼ばれ方は。
「……やめて」
「嫌か」
「………………」
どう。言えば。
「抜けよ」
「えっ」
「そういうの全部」
そんなこと。
「剣だって」
にやり。
「抜かなきゃだろ」
「あ……」
それは。
「脱がなきゃだろ」
「は!?」
「セクシーだと思うぜえ」
何を。
「脱がなきゃ剣じゃない」
いやいやいや。
「ハダカに剣ってセクシーだよな-」
知るか!
14
「メイドに剣ってセクシーだよなー」
「だからか」
「だからだ」
当たった。
「メイドと言えば」
今度は。
「あるの?」
「何?」
「あれさ」
指を。
「下?」
「じゃないの?」
共に。首を。
「メイド」
「?」
「じゃなくて」
ニュアンスを。
「冥土」
「おお」
それなら、確かに。
「こちらの専門だ」
「発音同じだけど」
「そうだな」
からからと。
「まあ」
あっさり。
「専門ではないが」
「そうなの」
残念そうでもなく。
「迷信だ」
「冥信だね」
「だな」
からかう。
「ワシが信じるのは」
抜く。
「これだよ」
「へー」
肩を。
「信じる者は救われる?」
「信じ切れるか」
泰然と。
「そこが肝要だ」
「ふーん」
感心した風もなく。
「前にもそんなこと言ってた人いた」
「坊主か?」
「忘れた」
「そう」
過ぎゆくものは。
「どうでもいい」
それが。
「道」
振るわれる。
「ふーん」
無感動。
「信じるなら」
触れる。こともなく。
「メイドを信じればいいのに」
15
「地獄に落ちるぞ」
ぎょっと。
「って言われたらどうする?」
「………………」
息を。鎮め。
「やめてよ」
「そう言うかー」
「えっ」
そうではなく。
「確かに、いろんな意味で『やめてよ』だよなー」
「ちょっと」
なに、ふくらませて。
「やめてくれるかどうかは別だけど」
まあ。
「それでも」
肩を。
「言っちゃうんだよなー」
「………………」
どうだろう。
(言わない)
とは、言い切れない。
わからない。
そのときが来たら。
(覚悟は)
している。つもり。
(……だって)
弟を。
自分は。
「ま」
肩に。
「いいじゃん」
何が。もはや。
「………………」
それでも。
「いいの?」
思わず。
「結婚する?」
「!」
どういう。
「他人じゃない」
「馬鹿!」
力いっぱい。
16
「ふー」
そろそろ。
「マンネリ」
に。
なるのだ。
人を斬ることも。
戦争のほとんどの時間は退屈との戦いだとも言う。
「退屈」
口にして。
「んー」
わからなくなってきた。
本当の『退屈』とは何か。
剣を。
交わしている最中に。
「だって」
ごちる。
同じ。
なのだから。
どちらが先に刃を当てるか。
それしかない。
「ねえ」
余裕のない。
まったく。
何を。
思いながら。
「そんなに」
それでも。
「負けてあげようか」
つい。
「っ……」
乱れる。
(ああ)
もう。
「せっかく」
傲慢だ。
いや、違う
(気まぐれ)
近い。まだ。
「退屈」
結局は。
「なんだよなぁ」
17
「追いつかない」
それは。
「あーあ」
うんざり。
「やる気あんのかよー」
そんなの。
(……あるわけ)
ない。
「………………」
言えない。
「やめよっかなー」
「えっ!」
まさか。
「あ、や、ちょっと」
コントロール。
できない。
「ふざけないで!」
ふざけているのは。
(う……)
そう。
「何よ」
それでも。
「何か言いなさいよ」
言うべきなのは。
「ねえ」
止まらない。
「何か」
言って。
「わかったよ」
「え」
歩き出す。
「行くぞ」
「ち、ちょっ」
どういう。
「何が」
わかって。
「待っ……」
追いかけて。
18
いた。
「見つけた」
思わず。
「やー」
衝撃の。
というには気の抜けた。
「見つけちゃったなー」
どうしようかと。
「逆だし」
これでは。
「んー」
考える。
「斬っちゃうか」
なかったことに。
「いやいや」
できない。
「僕はさ」
自分は。
「違うんだ」
違う。
血が通う。
同じ。
らしい。
そんなわけない。
せいぜい『近い』で。
それだって、何と何が近いのか。
「嘘」
一言。
「どうでも」
いい。
言って。
「あー」
そこから。
「どうしよっかなー」
決められない。
「やーめた」
考えるのは。
「僕は」
ただ。
「えい」
斬った。
後ろから。
音もなく忍び寄ろうとしていた。
それ。
「来るんだもん」
だから。
「こんなときでも」
人は。斬れる。
「何が」
違うのか。
19
「いたのよ!」
声が。
「いた……たっ……たたたたたた」
「落ちつけ」
言われても。
「だって!」
まったく。
「いたんだから!」
「らしいな」
憎らしいくらい。
落ちついて。
「よかったじゃん」
「は!?」
それは。
「………………」
とっさに。
「か、関係ないでしょ」
ないわけが。
なのに。
(よかった)
はずが。
(だめだ)
いざとなると。
こんな。
「よかったよ」
また。
「ギリギリ間に合わなくて」
「っ……」
それは。
「だろ」
何と。
答えて。
20
「なんでだろ」
逃げないと。
「なんで」
逃げてるんだ。
「んー」
意味が。
いまさらながら。
「馬鹿みたい」
誰が。
もちろん。
「馬鹿」
断言。
「だって」
そうだから。
「はーあ」
ため息。
「やんなる」
心から。
「何がしたいの」
それは。
「………………」
わかって。
「ま」
とりあえず。
「逃げるか」
斬り捨て。
21
「なんでよ!」
「俺に言うなよ」
まったくだ。
「逃げられた!」
事実。
「あなたの」
せい。では。
「気が済んだか」
「っ」
屈辱。
「悪ぃ」
「えっ」
あやまられた。
「……え、えーと」
間抜けな。
「こちらこそ」
さらにの。
「どういたしまして」
お互い。
「どうする」
「そ……」
それは。
「……決まってる」
言って。
22
「あー、ヒト斬りてー」
感想は。
「物騒だな」
「そう?」
さらり。
「そっちだって」
「そう?」
逆に。
「だな」
あっさり。
「気持ちがいい」
「だよねー」
否定できない。
でなければ、剣など持ちはしない。
「カッコいい」
「だよねー」
「キレがある」
「だ……」
よね?
「引っかかった」
「え」
「こんな」
振りかぶる。
「簡単にな」
「簡単に」
ため息。
「っ」
止まる。
「思われてたのかー」
「………………」
沈黙。
そして。
「ごめんなさい」
頭を。
「あのさー」
真面目に。
「ふざけるのって嫌いなんだよね」
「………………」
顔を。上げ。
「真面目だよ」
口に。
「答えてよ」
こちらも。
「人を斬ったやつは斬っても構わない?」
「と」
指を。
「世間では言われてる」
「世間かー」
ため息。
「会ったことないけど」
「こちらもない」
「ないもん」
実際。
「嘘」
肩を。
「だよね」
「でもないだろう」
頭を。
「世間話」
「あるねー」
うなずく。
「誰が話してるんだろう」
「誰かさ」
「僕たちみたいに」
「そう」
「けど」
斬ッ。
「世間話ではないよね」
もう。
「話せないけど」
23
「私が」
言いかけて。
「………………」
止まる。
「私が?」
「っ」
言えない。
「ど、どうでもいいでしょ」
「そう?」
「………………」
よくない。
「まあ」
あっさり。
「いんじゃね?」
「い……」
いいわけ。
「………………」
わかって。いて。
「俺がさ」
「っ……」
緊張。
「………………」
「……え」
終わり?
「ち、ちょっと」
なんで。
「仕返し」
舌を。
「ふざけないで!」
たまらず。
「真面目だぜ」
真顔で。
「そっちもだろ」
「そんなの」
言う。
「……真面目よ」
そうだ。
「だったら」
あっさり。
「いいじゃん」
そういう問題で。
「………………」
ある。のか。
(逃げている)
それは。
こちらだ。
24
「活人剣」
きょとん。
「おいしい?」
「いやいや」
頭を。
「あきれるね」
「そう?」
きょとん。まま。
「かつ人権?」
「意味が」
「同じだよ」
当然と。
「わからないもん」
「そっちはな」
「じゃあ」
目を。
「わかるの?」
「………………」
沈黙。
そして。
「有名だろう」
「知らない」
「人を活かす剣だ!」
「へーえ」
興味の。
「殺さないの」
「それは」
詰まる。
「そんなことは問題ではない!」
「問題だけど」
「活人剣は!」
強引に。
「己を磨き上げるもの! それをもって人を導く!」
「へー」
さらり。
「どこへ?」
「ど……」
絶句。
「よ、より高いところへだ!」
「ほー」
それで?
「く……」
苦しげに。
「以上だ」
「簡単じゃん」
閃ッ。
「ほら」
つまらないと。
「高いところに行った」
たぶん。
25
「何人目だ」
それは。
「数えてない」
正直に。
「ま」
軽く。
「たくさんってことだよな」
その通り。
「動くぜ」
「っ」
そのことは。
「……わかってる」
だから。
「手遅れ」
「っ!」
何てことを。
「それでも」
たんたんと。
「止めるのか」
「………………」
答えは。
「止める」
決まってる。
「そっか」
うなずき。
「じゃ、行こーぜ」
「え……」
簡単に。
「あなたは」
戸惑い。
「………………」
その後が。
「困るだろ」
言われる。
「俺がいないと」
「……それは」
その通り。
「いいの?」
それでも。
まったくの無駄。そうなる可能性は。
いや、それ以上のことにも。
「あなたは」
いいのか。
「俺の問題じゃない」
「えっ」
問題だろう。
「あんたが」
指を。
「やめるか、続けるか」
「………………」
答えは。
「続ける」
「決まった」
決まったのか。
「なんだか」
力が。
「いいかげん」
「まあな」
認めた。
26
「卒業しようとおもうんだよねー」
軽く。
「こういう生き方から」
「ほー」
真に受けず。
「こういう殺し方から」
「それで?」
「殺されちゃおっか」
「おいおい」
あきれて。
「それは困る」
「そう?」
「そうだろう」
当然と。
「理由がなくなる」
「理由?」
「そうさ」
あきれたように。
「人殺し」
「おー」
不敵に。
「面と向かって」
「事実だろう」
「うん」
「それが」
言う。
「殺されちゃ意味がない」
沈黙。
「……んー」
やがて。
「どういうこと?」
「義務だろう」
「義務?」
「そう」
剣呑な。
「殺し屋のさ」
「殺し屋じゃないんだけど」
そこは。
「商売じゃないし」
「だったら」
楽しいからか。
「どうでもいいじゃん」
よくは。
人の生き死にに。
「いい」
言い切る。
「だって」
その程度の。
「思い出」
「は?」
「だもん」
あぜん。
「……まいったな」
「いやいや」
「ほめてない」
真顔で。
「考え直すしかない」
「ううん」
頭を。
「必要なし」
「何?」
では。
「興味なし」
切り捨て。
「ほら」
すっきり。
27
あたたかい。
「あー」
季節に先んじた。陽気。
「暑い」
身もふたも。
「もー、やだ」
「おいおい」
あきれて。
「ギブアップかー」
「………………」
むくれる。
しか。
「っ」
不意に。
「あ……」
こぼれた。
「や……違っ」
できない。コントロール。
「だ……だって……」
意味なく。
「いいじゃない」
よくは。
「人間……なんだし」
何の理由にも。
「だよな」
同意。
「人間だから剣も持てる」
「っ……」
それは。
「手放せるのも人間だ」
「えっ」
すぐ。
「できないわよ」
だから。
自分たちは。
「行くしか」
ない。
「だな」
同意。
「あー、もう!」
うじゃけた。そんなの。
「行くぞ、野郎ども!」
「『ども』って」
苦笑。
「『ども』でしょ」
一人では。
「野郎かよ」
また。
「悪い?」
「悪くない」
言って。
28
「なーんか」
ご機嫌ななめ。
「ヤなんだよなー」
「何が?」
やわらかく。
「聞いたんだよ」
「何を」
「誰か」
への字口。
「一緒に旅してるって」
「へぇー」
おもしろげに。
「それって」
「男だよ」
先に。
「あっ」
思い出したと。
「いた」
そういえば。
「見たの?」
「見た」
爪噛み。
「たまたま立ち話でもしてるのかと思ったけど、あれが」
「気づかなかったの」
「気づくもんか!」
声が。
「あり得ないし」
「あり得ないんだ」
「あり得ないよ」
「あり得てるけど」
「あー、もーっ!」
かきむしる。
「シスコン」
「そうですけど!」
力いっぱい。
「あっ!」
「今度は何?」
「ひょっとして」
わなわな。
「そいつといい関係だったりして」
「いい関係」
完全に。
「シスコン」
「そうだよ!」
認める。
「だから何!?」
開き直る。
「いや、まあ」
引いて。
「だったら」
「だったら?」
ケンカ腰。完全に。
「えーと」
困り果て。
「一人ってのがよくないんじゃない?」
「えっ」
意表を。
「それって」
「そっ」
うなずく。
「あなたが」
「……あー」
興味を。
「一人だとさびしいでしょ」
「えっ」
それは。
「そうなの?」
「聞かれても」
苦笑。
「だって、わかんないし!」
むくれる。
「あーもー!」
ズバンッ!
「あ」
勢いよく。
「あー」
しまったと。
「やっちゃった」
言うも。
「ま、いっか」
すぐ。
「って」
見て。
「誰だったんだっけ」
29
「隙がないねえ」
感心の。
「小細工は無駄か」
それは。
(どうだろう)
か。
「何も考えてないのよ」
「ん?」
そういう子で。
「だから、無駄」
結局は。
「無心の境地」
「いやいや」
そんなものでは。
「考えてないの」
くり返す。
「ふーん」
納得が。
「考えるだろ」
「ないの」
三度。
「そうか……」
考えこむ。
(こっちが)
考えてどうする。
(似合わないし)
やがて。
「ああ」
納得。
「わからん」
(でしょうね)
考えるほどの。
「わからないこと考えても」
その通り。
「無心」
「は?」
「こういうことだろ」
違って。
30
「ばっちり」
「だろー」
得意げに。
「で」
さっそく。
「いくら出す」
「え?」
意外と。
「金?」
「そっ」
「出す?」
「おう」
「誰が」
「おい」
さすがに。
「タダってこたぁねーだろー」
「ねーかー」
「ねぇよ」
冗談は。
「どうしてくれんだい」
「どうしようか」
楽しむよう。
「チッ」
相手が。
「わーったよ」
「そう?」
笑顔で。
「代わりに」
そうは。
「他のもんで払ってもらおうじゃねーか」
「他のモン?」
「おう」
抜く。
「タマよ」
「タマ!?」
「そっちじゃねえ!」
お約束。
「つか、あんのかよ!」
「あるよ!」
「イバって言うなよ、その格好で!」
ごもっとも。
「見る?」
「見ねーよ!」
息を。
「作戦か」
「作戦?」
「そうだろ。こっちをイラつかせようっていう」
「イラついてる?」
「てるわ!」
ますます。
「てゆーかー」
にやにや。
「これってわかりやすいよねー」
「は?」
何が。
「スジ者に襲われる美少女」
「誰がだ!」
どっちも。
「なめたらあかんぜよ」
「こっちが言いてーよ!」
真っ向。
「なめてた」
やれやれ。
「言ったのに」
31
「あー」
のんきに。
「パパラッチされてたらしい」
「ええっ!?」
衝撃の。
誰が。より言葉自体に。
「でさー」
「おい!」
何事も。
「『でさー』じゃないでしょ!」
「そうか」
「そうよ!」
まったく。
「なんか、人相の悪かった男らしいぜ」
「え……」
それって。
「そっ」
あの。斬られた。
「なんで?」
「許せなかったんじゃね」
「それは」
斬ったほうの。
「………………」
許せない。
「私が」
そんなことをされて。
「や、されてたの俺らしいけど」
「おい!」
どういうことだ。
「あんたのそばにいたからだろ」
「え……」
「ジェラシー」
さらり。
「なんじゃねえの」
「………………」
つまり。
「やらせてたの?」
「じゃね」
で。
斬った。
「何なのよ」
意味が。
「何なんだろうねえ」
「っ……」
すこしは。
「あんたなんて」
「?」
「ずっとパパラッチされてればいいのよ!」
「えー」
さすがに。
「自信ないなー」
自信の問題か。
「もうちょっとナイスバディだったら」
気持ち悪い!
32
「合理」
突然。
「なのかなあ」
「おー」
感心の。
「難しい」
「だよねー」
こちらも。
「ごーり?」
「ゴリ?」
つながらない。
「聞かれても」
すると。
「尋問」
「おぉう」
おどけて。
「こいつは参った」
「参ってないよね」
「まぁな」
つかめない。
「斬れる」
まさに。
斬りこむよう。
「僕は」
「だな」
ひるまない。
「だったら」
「だったら?」
「斬るのが正解じゃん」
言って。
「待った」
「お?」
止まる。
「果たしてそうかな」
「おー」
興味を。
「果たしてそうじゃないんだ」
「果たしてそうだな」
意味が。
「斬っとくのが合理じゃない?」
「斬らないのが合理とも言える」
「おー」
感心の。
「なぜに」
「いつでも斬れる」
そう。
「だから」
「おー」
感心の。
「お?」
疑問。
「いつでも?」
「だろう」
当然。
「剣があるんだから」
「んー」
それは。
「いつでも斬ってるわけじゃ」
「いつでも斬れる」
微妙に。
「間違えるな」
「ごめんなさい」
素直に。
「斬るという自由」
「お」
再び。
「おもしろい」
「そうか」
こちらも。
「だから」
前に。
「斬らないでいられるよな」
「無理」
ざんっ。
「自由だし」
33
「死ぬ自由なんてない」
唐突。
「……え?」
聞き逃した。
「何て」
「………………」
妙に。
「何でもない」
「ふーん」
気になる。
「あなたってさ」
つい。
「普通」
「お?」
目を。
「ノーマル?」
「ノーマル」
「いやいやいや」
あり得ない。
「どこがだよ」
「どこがって」
考えて。
「顔」
「顔ぉ!?」
大幅に。
「フェイス?」
「フェイス」
「フェイスがノーマル」
絶句。
「それって」
やっと。
「ほめられてんのかけなされてんのか」
「どっちでも」
ない。
だから『普通』で。
「異常なのは」
ぽつり。
「ぜんぜんこっちだし」
「ふーん」
すると。
「普通」
「えっ」
思いがけない。
「誰が」
「そっち」
「ちょっと」
そうでないと。
「普通」
またも。
「そうやってへこむところ」
「え……」
目を。
「へ、へこんでないし」
裏返る。
「無理」
「無理じゃないし!」
こうなると。
「あり得ないから!」
「ふーん」
「『ふーん』じゃなくて!」
「ほーお」
「『ほーお』じゃなくて!」
じゃあ。
34
「普通の結婚」
きょとん。
「あり? なし?」
じー。
「……むぅ」
困ったように。
「拙者、無骨者で」
「ブコツでもいいよー」
ひらひら。
「モテるでしょ」
「おお!?」
ますます。
「ワシが」
「いいねー、ワシ」
「いいのか!?」
「モテるでしょ」
「モテたことなど」
あわあわ。
「無骨者ゆえ」
「またまたー」
ぽんぽん。
「話せるじゃん」
「話せるのか?」
「話せる、話せるー」
笑顔で。
「やってみよう」
「えっ」
「だからー」
にっこり。
「普通の結婚」
フリーズ。
「………………」
しばらくして。
「そうか」
「おいおーい!」
ツッコミ。
「おめでとう」
「人ごとか!」
連発。
「む……」
困惑の。
「人ごとでは」
「ないよ」
きっぱり。
「むぅ」
ますます。
「ワ……」
やっと。
「ワシが」
「無理」
「おおっ!?」
「一人じゃさ」
それは。
「では」
おそるおそる。
「もち」
指さす。
「二人しかいないんだし」
「おおお!?」
ぶんぶんっ!
「これから斬り合う相手と!」
「燃えるじゃん」
「燃えるのか!?」
「萌えるじゃん」
セクシー。
「おおおお!?」
完全に。
「どどどど」
「どどどど?」
「どこが」
「燃える? 萌える?」
「どこも」
かしこも。
「燃えるし萌える」
あっさり。
「……そうか」
納得。
「なら」
落ち着きを。
「抜かぬわけには」
「行かない?」
言うより。
「遅い」
だって。
「意味ないもん」
言葉の。
「遊びでしょ」
35
「雑だな」
「えっ」
不意の。
「雑?」
「だろ」
「………………」
とっさには。
「えーと」
それでも。
「あなたが?」
「なんでだよ」
ツッコまれる。
「やり方だよ」
だから。
「あなたが」
「おい」
にらまれる。
「どういうことだよ、俺のやり方が雑って」
「いや」
なんとなく。
「イメージ」
「そんなイメージか!」
再ツッコミ。
「丁寧だろ」
「えっ」
それは。
「こんなに」
「……ああ」
拾って。
「ボケを」
ていうか。
「ボケてないし」
「マジかよ!」
三度目。
「マジ」
「だったら」
肩を。
「どう説明するんだよ」
「どうって」
わかってる。
「そうよ」
わざとだ。
「雑ってのは飽き始めてるってことだろ」
理解している体で。
「やめるぞ」
「えっ」
それは。
「そんなこと」
可能で。
「知らねえけどさ」
「知らないなら」
無責任な。
「………………」
責任は。
「どうするんだ」
「っ」
不意を。
「そんなの」
正直。
「わからない」
言うしか。
「現状維持」
こちらを。
「いいんだよな」
いいも。
「他に」
どうすれば。
「わかった」
何を。どこまで。
「現状イージー」
イージー?
36
「だから、斬るんだよ」
はっきり。
「ほーお」
ひるまない。
「そのようなことで」
「あ、ひどいなあ」
実際。
「大事なことなんだ」
「そうか」
「って、軽いよ!」
かんしゃくを。
「二人だけなんだよ!」
これでもかと。
「知っている」
さらり。
「二つの魔剣」
「そう」
前に。
「その一つがこれさ」
「それが」
「もう一つは」
にやり。
「知ってるよね」
「知っている」
すぐさま。
「二つの魔剣は」
「だからだよ」
さえぎり。
「斬らないと」
目が。
「終わらない」
「………………」
沈黙。
「そうか」
おもむろに。
「なら」
得物を。
「終わらせよう」
構える。
「我が剣で」
「えー」
落胆の。
「違うんだよなー」
「何?」
「違うんだ」
断。
「ほら」
得物。諸共。
「口だけだもん」
肩を。
「みんな」
37
「やっぱり」
聞き止めて。
「何が」
「んー」
困ったように。
「難しい」
「は?」
「いや」
手を。
「気にするな」
する。なる。
「言えないの」
詰問調。
「………………」
(ちょっと)
本当に。
「いいか?」
「え」
思わず。
「い、いいわよ」
言って。
「来い!」
「は?」
「あ……」
我ながら。
「いいから!」
「何が」
まったくで。
「行くぜ」
「えっ」
本当に。
「来いって」
言った。
「いや、ちょっと」
心の準備とか。
(って)
準備するような。
「行くぜーっ!」
気合の。
「っ……」
来る。
「どーん!」
「ぐふっ!」
タックル。まさかの。
「うぐ!?」
そのまま。
「ぐふっ? うぐふっ!?」
笑ってる。わけじゃなく。
息が。
(や……)
やられっ放しで。
(いられるかぁっ!)
持ち上げる。
「おお!?」
高々。
「ぐふぉらぁっ!」
落とす。
「うごっ!」
悲鳴。
「ぐはふっ」
倒れこむ。
「はぁっ……はぁっ……」
荒い。
「すっきりしたか」
「ふー」
一言。
「した」
「そりゃ、よかった」
よかった。
(のか?)
38
「なーんか」
不機嫌。
「足りないんだよねー」
「手がか」
「えっ」
思いがけない。
「手?」
自分の。
「いやいやいや」
ベタな。
「人手さ」
「ヒトデ?」
「人手」
真顔で。
「いるだろ」
「ふーん」
冷めた。
「イミフ」
「おいおいおい」
手を広げ。
「こっちは力になろうって言ってんだぜ」
「へー」
冷め切った。
「いるだろう」
疑いのない。
「いくら力があってもさ」
「力?」
心底。
「おいおいおいおい」
さすがに。
「あるだろ」
「あるの?」
「おい」
いら立ちが。
「警戒するなよ」
「んー」
腑に落ちない。
「味方だぜ」
「えー」
それも。
「最初から聞くね」
指を。
「力?」
「二つの魔剣」
言うまでも。
「力だろ」
「んー」
「何人斬った」
「さあ」
実際。
「力があるからできることだろ」
「違うよ」
それは。
「斬れるから」
当然の。
「誰もが斬れるとは限らないだろう」
「斬れるよ」
ゆずらない。
「そうできてるんだもん」
「……ふーん」
それ以上は。
「二つ目」
続けて。
「警戒?」
「………………」
「そっちだし」
「……ああ」
認める。
「三つ目」
もはやの。
「味方?」
「……その通り」
笑みを。
「いるだろう」
「いらない」
ザガッ!
「あー」
頭を。
「斬れ味悪いなー」
悪くもなる。
斬れるからこそ。
39
「飢えてる」
さすがに。
「あのね」
言わずには。
「そういうのが多いんですけど」
「そういうの?」
とぼけて。
「そういうとこ」
複雑な。
「似てるし」
「えっ」
「………………」
しまった。
「何でも」
「そういうの多いんですけど」
返すか。
「………………」
何も。
言えなく。
「………………」
「………………」
お互い。
(また)
距離が。
(だめだって)
わかってる。
「言っておくけど」
どの口が。
「違うから」
「ほう」
「『ほう』とかじゃなくて」
強引に。
「何が『飢えてる』なのよ」
そちらに。
「弟だろ」
「っ」
あっさり。
「……どういう意味」
それでも。
「さあな」
「ちょっと!」
ごまかしは。
「感じた」
「え……」
そんな。
「て、適当なこと」
「そう思うか」
「お……」
思わない。
「じゃあ」
結局。
「どういうことに」
「どうにも」
投げっぱなしか。
「だろ」
同意を。
「飢えて……」
口に。
「何に」
「何にだろうな」
まただ。
(似てる……)
思って。
40
「長い」
それは。
「強い」
「だね」
同意。
「認めるか」
「認めるよ」
「参ったか」
「それはねー」
「かははっ」
ウケている。
「いいぞいいぞ、遠慮しなくとも」
「遠慮って」
苦笑。
「長さは強さだ」
ためらいない。
「だったらさー」
言う。
「鉄砲には」
勝てない。
「ミサイルにだって」
ぜんぜん。
「まったく違う」
言われる。
「何が」
聞き返す。
「違うだろう」
当然と。
「弾だ」
「んー……ん?」
釈然と。
「別物ではないか」
「………………」
それには。
「弓矢と剣、どちらが強い」
「弓矢」
すぐさま。
「斬りかかる前に全滅だよね」
「違う」
すぐさま。
「当たらない」
「ん?」
「当たらなければどうなる」
「それは」
言葉につまるも。
「剣だって」
「まったく違う」
またも。
「以前の問題だ」
「んんー?」
首を。
「わかんない」
「残念だ」
「残念がられた」
残念そうでもなく。
「剣は斬れる」
「ん?」
「突ける! 払える! 脇で叩くことも!」
力が。
「知ってる」
「ならば!」
ますます。
「違うだろう」
「あー」
ようやく。
「違うね」
「違う」
よりいっそう。
「弓も銃も同じ」
そう。
「放てばそれまで。二の太刀、三の太刀はない。そこに」
「長い」
突。
「短くていいじゃん」
41
「長いような」
つぶやく。
「短いような」
「え……」
何を。
「なぞなぞ?」
「あー」
頭を。
「答えは?」
「えっ」
聞かれた。
「ち、ちょっと待ってよ」
あせる。
「答えがあるの?」
「あー」
またも。
「どう思う?」
聞くな!
「どっちだっていいでしょ!」
軽ギレ。
「長くたって、短くたって!」
「違う」
「えっ」
「『ような』だ」
「………………」
何が。
「基準」
指を。
「それがなけりゃ、長いも短いも決められない」
それは。
「そうだけど」
「だろ」
「うん……」
だから。
「何が」
それを。
「長い『ような』で短い『ような』なのよ」
「関係」
「は?」
「俺とあんたの」
「っ」
不意を。
「そ、そんなの」
あせって。
「どうでもいいし」
「だよな」
「は?」
それは。
「よくないでしょ」
「え」
「ど、どうなのよ」
声が。
「そっちは」
「……あー」
間の抜けた。
「どっちでも」
「おい!」
そんな。
「比較さ」
「えっ」
「長いか短いかは」
それは。
(そう……)
なのか。
「どうでも」
「いい?」
また。
「聞いておいて」
そっちから。
(なんだか)
ずるい。
42
「四つ目」
指を。
「はぁ?」
見て。
「何の」
当然。
「まあ、見てなさい」
見ては。
「椰子の実だ」
もぎとり。
「鐘」
「?」
ますます。
「なぞなぞ?」
「まあまあ」
見ていろと。
「フンッ」
空に放ったそれを。
「ハッ!」
二太刀。
「おー」
パチパチ。
「曲芸だ」
すると。
「見なさい」
地に落ちたそれを。
「割れてるね」
縦。
でなく真横に。
「鐘」
「あー」
見えないことも。
「それで?」
トン。
「おー」
さらに。
「四つ目」
「どれだと思う?」
「えー」
楽しそうに。
「これ」
指を。
「どう?」
「正解」
「やったー」
「としておこう」
「えー」
ずるいと。
「どうだい」
「悪くない」
お互い。
「意味のない」
構え。
「言葉も、剣も」
交わる。
「なくすところに」
返す。
「意味がある」
再び。
「っ……」
最後の。
「なくしたよ」
もう。
「意味」
無。
「おもしろいなあ」
それだけでも。
43
「静かに」
はっと。
「な、何?」
「………………」
答えない。
(う……)
自然と。
「………………」
「………………」
沈黙。
「どうだ」
「えっ」
不意の。
「……どう?」
何が。
「静かだろ」
当然。
「どうだ」
何を。
「たまには」
ゆったり。
「こういうのも」
「………………」
つまり。
「ふざけてるの?」
「まさか」
心外だと。
「本気さ」
そう。
返されてしまうと。
「何が」
どう。
「しっ」
「!」
唇に。
「静かに」
指を。
「っ……っっ……」
何が。
「はい」
離れる。
「おしまい」
「……な……」
何だったんだ。
いまのは。
44
「トポロジー」
「?」
首を。
「知らない?」
「……いや」
「知ってるの!?」
「ではなく」
「えー」
がっかり。
「知ってそうだと思ったのにー」
「なぜ……」
一方的すぎる。
「それが」
どうしたと。
「よくない?」
「は?」
「トポロジー」
「………………」
わからない。
「まあ」
仕方なく。
「賢そうな響きだと」
「そう!」
目を。
「だから!」
「……ああ」
つながらない。
「言っておくが」
それでも。
「わたしはあまり賢くない」
「うそー」
どう。
「当然だろう」
それは。
「剣士だ」
手を。
「剣のみに生きてきた」
「なんで?」
聞かれるか。
「なぜ……」
自分でも。
「なぜだろうな」
「変なの」
確かに。
「言っただろう」
自嘲の。
「あまり賢くないと」
「だね」
うなずかれるのも。
「ほしい?」
突然。
「いらないかー」
「えっ、待っ」
あわてて。
「考えさせ……」
「賢くないのに?」
痛いところを。
「……そうだな」
無駄。考えるだけ。
「もらおう」
「ヤだ」
斬。
「ほしいか聞いただけだし」
あっさり。
「トポロジい」
それっぽく。
45
「まったく」
肩を。
「つかめない」
「つかめば」
「ははっ」
笑って。
「だな」
「………………」
こちらは。
「何よ」
「ん?」
「どうして」
理不尽だと。
「笑ってるのよ」
「悪いか?」
逆に。
「馬鹿じゃない」
「かもな」
「だから!」
どうして。
「ぜんぜんわかんない!」
「はいはい」
子ども相手か。
「やめてよ」
言うも。
「すねるだろ」
さらり。
「やめたら」
「っ……」
返せない。
「馬鹿」
に。
されても。
「嫌」
なのは。
「やめる」
「?」
けげんな。
「私」
顔を。
「これ以上は」
もう。
46
「~♪」
「ご機嫌なのですね」
「わかる~?」
弾む。
「なーんでだ」
「さあ」
「えー」
唇を。
「考えてよー」
「考える……」
思案。
「さあ」
「同じか!」
それでも。
「別れたんだって!」
「……はあ」
「えー」
不満げ。
「別れたんだよ!」
「それは聞きましたが」
「だったら!」
勢いづき。
「うれしいでしょ!」
「………………」
ようやく。
「まあ」
「やっぱりー?」
はしゃいで。
「だよねー。うれしいよねー」
「ええ」
あきらめたと。
「表現して」
「………………」
何を。
「表現?」
「うれしかったら」
無茶ぶりが。
「……もっと」
しかし。
「うれしくなれますよ」
逆に。
「えー、なになにー?」
興味津々。
「当然」
剣を。
「あなたが斬られることです」
抜く。
「わたしに」
「おもしろくない」
ズドタンッ!
「はーあ」
すっかり。
「なーんでだ」
47
(おかしい)
おかしい、おかしい、おかしい。
(どうしろっていうの)
自分に。
(こんな)
斬れない。扱えない。
(魔剣……)
まさに。
人智を超越している。
呪われている。
「馬鹿みたい」
口に。
「重いし」
自分も。
全部。
「どうでも」
言えない。
「………………」
だって。
(言えるわけ)
ない。
(私だけ)
なのだ。
「馬鹿……」
それは。
「呼んだか」
「!」
まさか。
「あ……」
あり得ない。
あなたがどうして。
「………………」
どちらも。
「おーい」
耳元で。
「呼んでないなら行くぜー」
「!」
あわてて。
「『馬鹿』って言ったの!」
そう。
「聞こえた」
言って。
48
「違う、違う、ちがーう」
駄々っ子。
「なんでだよー、もー」
じたばた。
「………………」
斬れるのでは。
「斬る!」
びくっ。
「着る!」
意味が。
「着たほうが」
いいと。
「見えているぞ」
「見せパンだし!」
そうなのか。
「見たい!?」
「……いや」
「見てる!?」
それは。
「エッチ」
「く……」
言われたく。
「立て」
「えー」
ふてくされ。
「いいじゃん」
よくは。
「勝負する気が」
「ないよ」
あっさり。
「あるわけないじゃん」
「な……」
絶句。
「こっちがしてって頼んだわけじゃないし」
「それは」
そうなのだが。
「魔剣の持ち手として」
「カンケーないし」
またも。
「こっちが持ちたいって頼んだわけじゃない」
かもしれないが。
「持ちたい?」
「……!」
不意を。
「なーんて」
ズンバラ!
「この体勢から」
49
「よーしよし」
赤ん坊か。
「なに、ふくれてんだよー」
「……別に」
こいつは。
「なんでよ」
「んー?」
「あんた」
別れた。はずで。
「なんだよー」
つんつん。
「なに、にらんでんだよー」
「………………」
「何か言えよー」
何を。
言えると。
「ほら」
手を。
「わっ」
おどかすように。
「………………」
ゲコゲコ。
「は?」
なぜ。
「あれ?」
意外と。
「そういうリアクション?」
どういう。
「馬鹿らしい」
全部。
「ねぇ」
ゲコゲコ。
50
「僕は人を殺さない」
遠い目。
「………………」
沈黙。
「……ねぇ」
待ちきれず。
「カッコいい?」
聞かれ。
「さあ」
正直に。
「口だけでは」
「口だけじゃないってー」
唇を。
「殺さないもん」
子どもか。
「これまで」
「そんなの」
あっさり。
「関係ないし」
「………………」
何と。
「では」
柄に。
「殺されそうになっても」
「『そう』ってねー」
明らかな。
「ないし」
「ほう」
挑発か。
「ないない」
くり返し。
「だから」
言う。
「殺さない」
あらためて。
「では」
抜き放つ。
「殺せない」
それでも。
「だって」
当然と。
「斬るためのものだもん」
「……何?」
一瞬。
「剣って」
「む……」
「そうでしょ」
「それは」
とっさに。
「突くことも」
意味のない。
「うん、できる」
屈託なく。
「斬る。突く。そんなとこ?」
確認を。
「殺すって機能はないよね」
「それは」
馬鹿な。
「殺すために」
「違う」
きっぱり。
「剣は」
口に。
「殺さない」
「………………」
その言葉が。
「な、なら」
言わずには。
「次々と死んでいった者たちは」
「死んだだけだよ」
さらり。
「飛んで火に入る夏の虫」
「な……」
「それって」
首を。
「火が殺したのかな」
「くっ!」
侮辱と。
「無視」
ズンバッ!
「ふぅ」
トン。
「落ちた」
51
「んー」
見つめる。
「これってさー」
陽光に。照り輝く。
「何が『魔』なんだ」
「何がって」
そんなことは。
「おかしいでしょ」
「どこが」
「やめてよ!」
取りあげようと。
「っ……」
だめだ。
「おい」
心配そうな。
「『使う』わけじゃないんだろう」
「………………」
それは。
「何よ」
何を。
「変じゃない」
「変ではあるな」
認める。
「『変剣』ってどうだ」
「変」
「そりゃ『変剣』だし」
なんだ、それ。
「おい、変剣」
語りかける。
(そっちのほうが)
よっぽど。
「聞いてんのか、変剣」
聞いてないって。
「ふてくされてんのか」
だから。
「変剣って呼ばれて」
もう。
「やめてよ」
いいかげん。
「何をだ」
真顔で。
「わけわからん」
頭を。
「変だろうが」
「それは」
そう。
「だったら」
真剣な。
「聞いてみたって」
「………………」
意味がない。
言い切れない。
52
「まー」
やる気なく。
「勝手にしてってカンジだよねー」
そんな姿に。
「……聞いている」
油断なく。
「そういう作戦だと」
「んー?」
「こちらの気をそごうと」
「気ぃー?」
だる気に。
「どーでもよし」
「………………」
ゆるまない。
「行くぞ」
得物を。
「魔剣の持ち主よ」
と。
「ダサい!」
「!?」
「やめてよ!」
感情的な。
「な、何を」
さすがに。
「何さ」
「は?」
「『魔』って」
「………………」
何?
「ダサい」
くり返し。
「そーゆーことだから」
「お、おいっ」
そんなことで。
「なんでさ!」
「……っ」
「ほっとけばいいじゃん」
それは。
「こんな格好までさせられて」
「それは」
こちらの責任では。
「めんどい!」
ザザンッ!
「めんどいよ……」
こぼれる。
「めんどい」
くり返し。
53
「直だな」
「えっ」
それは。
「いいかげん」
ため息。
「続かないだろ」
「………………」
それは。
「次くらいじゃねえか」
「えっ」
次。
「終わるのがさ」
あっさり。
「終わる……の?」
「えっ」
意外と。
「そうしたくねえのかよ」
「………………」
そんなの。
「したい」
決まって。
「そうよね?」
「聞くなよ」
不機嫌そうに。
「や、悪ぃ」
すぐ。
「………………」
悪いのは。
(誰)
なのだろう。
54
「殺しって悪いことだよね」
「まあ」
そういうことに。
「盗むなかれ、殺すなかれ」
言われて。
「でも」
さらり。
「死ぬんだよ」
「………………」
そう。
「盗むし、殺す」
「ん?」
「そういうことを」
言いたかったのでは。
「盗まなくても、殺さなくても」
おだやかに。
「死ぬんだよ」
「………………」
その通り。
「生まれた時点ではめられてるみたいなもんじゃん」
そこまでは。
「生きればいい」
「んー?」
「それまで」
「精いっぱい?」
「………………」
「ぜんぜん違う!」
突然。
「生きてどうなるの」
「どうなる……」
そんなこと。
「答えは」
先んじて。
「どうにもならない」
「そんな」
ことは。
「だったら」
はっと。
(死……)
それは。
「ほら」
すみやかに。
「何にも」
ならない。
「そうじゃないなら」
もう。
語れない相手に。
「教えてくれる?」
55
「深刻すぎた」
深々。
「悪ぃ」
「………………」
十分。
「深刻よ」
のはずで。
「そうか?」
「は?」
「『また』って思ってんだろ」
思ってる。
「じゃないんだなー」
つんつん。
「しわ」
「!?」
ド直球。
「やめてよ!」
あわてて。
「ほら」
「く……」
否定できない、
「何よ」
悔しい。
「関係ないでしょ」
「あるだろ」
「何が!」
「深刻」
「っ……」
そういう。
「深く刻まれて」
「そこまでか!」
さすがに。
「い、いいのよ」
無理やり。
「気にしてなんて」
「俺は気にする」
おい。
「それこそ」
関係が。
「悪ぃ」
「だ、だから」
「一生消えることのない」
「そこまでか!」
「責任とる」
「っ」
それって。
「気にしない」
「………………」
ん?
(そ、それは)
責任と。
「あー、空がキレイだなー」
「おい!」
「あ、しわ」
「!?」
気にして。
「って、こっちがするんじゃ、ボケぇーーーーっ!!!」
56
「むーん」
ん?
(なんだ……)
理解が。
「難しい顔」
「………………」
愛らしい。
「やさぐれメイド」
意味が。
「ぐだメイド」
同上。
「ぐだメ」
略されても。
「どれがいい?」
聞かれても。
「新しいキャラ」
キャラ?
「ふるーい」
うんざり。
「言われるんだよねー」
ため息。
「いや」
それなら。
「やめれば」
「やめる?」
「………………」
簡単に。
「そうは」
お互い。
「いかぬか」
「いかぬよー」
ひらひら。
「僕じゃなくなっちゃうもん」
そういう。
「いくぞ」
「くるかー」
やれやれ。
「頼んだわけじゃないけど」
ズゴンッ!
「僕じゃなくなっちゃうから」
57
「さて」
足が。
「ちょっと」
こんなところで。
「確認をさ」
「は?」
いまさら。
「俺と」
指を。
「おまえ」
「『おまえ』じゃないし」
そこは。
「そうだな」
うなずき。
「おい、おまえ」
「っ」
それは。
(同じ……)
じゃなく。
「それっぽく言わないでよ」
「それっぽく?」
言わせる気か。
「とにかく」
念を。
「やめてください」
「えー」
なんでだ。
「やめてよ!」
つい。
(あ……)
キツすぎたか。
「だ、だめ」
「お」
うれしそうに。
「そこそこー」
「えっ」
「お・ま・え」
「だめっ」
「おー」
ますます。
(な、なぜ)
こう。
58
「把握」
むん。
「いまのじょーきょー」
(何を)
いまさら。
「わからないのか」
噂では。
(相当な)
一目瞭然だが。
「なめられてる」
はっと。
「この程度かって」
にやり。
「見た目だけで」
「……フン」
当然と言うべきか。
(二つの魔剣)
その。
「不思議」
こちらを。
「だよね」
「………………」
まさか。
「臆したか」
なら。
「あー」
またかと。
「めんどくさくない?」
「む」
「そういうの」
面倒。
「馬鹿な」
「そう?」
心底。
「不思議だよ」
頭を。
「なんで、そんなに」
ズバシュッ。
「斬られたいのかなって」
嘆息。
「痛いのに」
59
ところ変わって。
『ねぇ、あなた』
呼ばれる。
『なんだい、おまえ』
呼び返す。
二人は若い。
「みたいなさ」
「………………」
応えるのも。
「そういうことじゃ」
ない。
ぜんぜん。
「言ったじゃん」
言った。
「変えたいって」
言った。
「だから」
それかと。
「却下」
当然。
「やめてよ」
と。
(あ……)
これも。
「ツンデレ?」
「違う」
本気で。
「そうかー」
悩む。
「わかった」
どうせ。
「ユー」
ぶっ!
「なんでよ!」
昔の芸能事務所か。
「ミー」
「呼ぶか!」
そもそも相手を『ミー』と呼ばない。
「変えないで!」
むしろ。
「………………」
「ちょっと」
何とか。
「……あー」
またも。
「わかった」
本当に。
「変えなければいいんだな」
そう。
「変わらない」
真剣な。
「俺とおまえは」
「ちょっ……」
そういう。
(知るか!)
言えは。
60
「つーかさー」
くだけきって。
「あり得ねーわけよ」
「そうか、そうか」
やんわり。
「聞いてよ-、おじいちゃーん」
近所の主婦な。
「近頃の若い子ってどう思うー」
「そうじゃなあ」
「平気でイチャついてさー、自分たちの世界に入ってさー」
「ふむふむ」
「そーゆーのってあり得なくなーい。ぜんぜん周りのこと考えてないよねー」
「おまえさんは」
問う。
「考えていると」
「ないよ」
さらり。
「若いもん」
「そうじゃなあ」
微笑ましく。
「若いことはええのう」
「そう?」
「そうじゃよ」
「だったらさあ」
言う。
「年寄りぶるのやめたら」
沈黙。
「まあ」
あっさり。
「実際『わし』だの『じゃよ』だの言う年寄りはいないわな」
「いないって」
「じゃあ、手っ取り早く」
眼光。
「死んでくれや」
「年齢的にはそっちが先でしょ」
「そこまで年寄りぶるつもりは」
ドスッ。
「知らない」
冷たく。
「往生せーや」
言い捨て。
「ふぅ」
一転。
「それっぽかった?」
61
「狙われてる」
「えっ」
どきり。
「あのさぁ」
こちらに。
「自覚あんの?」
「っ」
とっさに。
「そ、そんなの」
「ないだろ」
「っ」
思わず。
「ありますけど!」
「だったら」
真面目に。
「気をつけろよ」
「な……」
何に。
(えーと)
考える。
「き、気をつけてるけど」
とりあえず。
「ない」
断言。
「ちょっと、こっちいいですかー」
「えっ」
パシャッ。
「きゃっ」
「ほら」
何が。
「対策」
「は?」
「こういう」
どういう。
「狙われてる」
それって。
「被写体として?」
そんな。
「な、ないし」
「はい、こっちー」
パシャッ。
「だから!」
「笑って、笑ってー」
パシャッ。
「いいよー。かわいいよー」
かわいくなんて。
「そんなの……」
パシャッ。
「う……」
「そうそう、笑ってー」
「こ、こう?」
思わず。
「………………」
「何なのよ、そのノーリアクション!」
62
「お帰りなさーい、ご主人様❤」
こぼれんばかりの。
「い、いや」
戸惑い。
「ここはワガハイの家では」
「知ってるよ」
笑顔終了。
「てゆーか、野外だし」
「そうであるな」
戸惑い抜けず。
「いやさー」
ふてぶてしく。
「メイド設定忘れそうだったから」
「設定?」
「いや、らしいこと何もしてないんだけど。格好だけで」
「はぁ」
「なんでかっていうと特に理由はないんだよねー」
ますます。
「別にキャラ被りとか気にしてないしー。つか、ありがちなキャラだしー」
ありがち。
「魔剣の主は」
表情を。
「二人だけと」
「主ねー」
ゆるみっぱなし。
「おかしくない?」
「何が」
「メイドなのに主って」
「………………」
答えようが。
「やめればいい」
「メイドを?」
「いや」
そこはどうでも。
「ちょっとー。そこ重要でしょー」
一向に。
「やる気は」
「ないよ」
ズシュッ!
「あり得ねー」
63
「黙祷」
今度は。
「まあ、すこしくらいはな」
「え……」
それは。
「すこしどころじゃねえし」
目を。
「魔剣」
手もとに。
「こりゃあ」
つぶやく。
「いけない」
「っ……」
そんなの。
「わかって」
「だな」
うなずく。
「それでも」
表情は。
「…………………」
言わなくても。
「……いい」
だったら。
「いいから」
「えっ」
逆に。
「う……」
目を。
「な、何よ」
あせって。
「私は」
「いい」
優しく。
「無理すんな」
「っっ……」
かえって。
「馬鹿にしないでよ!」
止まらなく。
「何だと思ってるの」
何もかも。
「何でも」
いい。
「やめたって」
言って。
「っ……」
すぐさま。
「やめないで!」
そう。
「いてよ」
こぼれる。
(……何を)
自分は。
「………………」
沈黙。
「いいから」
耐えられない。
「もう」
弱々しく。
「………………」
また。
「ねぇ」
何か。
「ねえよ」
「……!」
それって。
「んくっ」
鼻を。
「行くぜ」
「ひ、ひふって」
つまり。
「バーカ」
「……!」
何なんだ、それは!
(そっちが)
そっちの。
「バキャーーーーーーッ!!!」
大声で。
「キャ?」
「!」
64
「天才って」
指を。
「僕のことじゃないよね」
「そんなことは」
驚いて。
「魔剣の持ち主であるあなたが」
「関係ないし」
そんなの。
「天才だからとかじゃないでしょ」
「いえいえ」
引かない。
「天才的な使い手と」
「何と比べて」
「他の数多の剣士たちとです」
当然と。
「事実」
重々しく。
「すべて敗れている」
「敗れたかどうかは知らないよー」
肩を。
「死んじゃっただけだもん」
「いやはや」
頭を。
「その余裕が」
「余裕とかじゃないけど」
「ただものではない」
ゆずらない。
「通じねー」
大あぐら。
「はっはっは」
それでこそ。
「勝負する」
価値。
「ないよ」
ズゾォッ!
「あーあ」
やれやれと。
「呼んでみようかなー」
立ち上がり。
「天才さーん」
65
「いらっしゃーい」
「!?」
突然の。
「………………」
警戒。
「お、リアクションねーな」
無視。
「おーい」
つんつん。
「もしもーし」
無反応。
「しまった」
何が。
「まいった」
嘘つけ。
「本当に」
だから。
「腹が」
「えっ」
何。
「立った」
「………………」
「とか」
それは。
「で」
ごろん。
「無視すんのかよー」
ふてくされ。
「う……」
ようやく。
「信じらんない」
あきれて。
「何がしたいわけ」
「何が」
口に。
「したい?」
逆に。
「とりあえず」
ぎゅむっ!
「!?」
息が。
「こう」
ぐりぃっ!
「してやった」
66
「剣ってさ」
眺めつ。
「誰が作ったんだろうね」
「ほう」
感心の。
「深遠だな」
「そういうのはよくてー」
「二つの魔剣は」
重々しく。
「人でなきものがこしらえたと」
「嘘だよー」
ひらひら。
「誰が見たの?」
「誰も」
肩を。
「じゃあ」
あっさり。
「神が作ったんだ」
「ほう」
興味深く。
「何故」
「いらないもの」
さらり。
「剣なんて」
「……ほう」
若干の。
「本心ですかな」
「関係ない」
おだやかに。
「事実だもん」
「そうですか」
以上は。
「ふぅ」
目が。
「いらないですかな」
「いらない」
「でしたら」
「あげない」
即。
「それとこれとは」
「別ですか?」
「同じ」
にっこり。
「でも、あげない」
「残念ですな」
さほど。
「魔剣は」
構える。
「すべての剣士の憧憬の対象」
「ふーん」
興味なく。
「それを」
かすかな。
「あまり、粗末に」
ズオシャッ!
「どう使ったって」
血振り。
「剣は剣だよ」
見つめ。
「いらないよねー」
67
「この剣ってさ」
「ちょっ!」
抜き身で。
「危ないでしょ!」
「そりゃ、危ないよ」
魔剣だ。
「斬れるの」
「は?」
何を。
「決まって」
「ない」
断言。
「どうすんだよ」
そのときに。
「………………」
不安な。ままでは。
「わかった」
覚悟を。
「斬りなさいよ」
「えっ」
驚きの。
「やるのかよ」
「やる?」
「試し斬り的な」
「そうよ」
「いやいやいや」
あわて出す。
「何よ、怖いの」
「怖いって」
真面目に。
「いいのかよ」
「いい」
言ってる。
「スパッと」
「お、おう」
「やっちゃって」
「おう……」
「介錯」
「おう?」
「するし」
「………………」
きょとん。
「それって」
「斬るんでしょ」
事もなげに。
「自分を」
「なんでだ!」
絶叫。
「どこに試し斬りで割腹するやつがいるんだよ!」
「ここに」
「ねえよ!」
再絶叫。
「あー」
わかったと。
「胸?」
「は?」
「じゃあ、腰?」
「いや、斬る箇所変えればいいってことじゃ」
「斬るんでしょ」
冷たく。
「どこかを」
試すなら。
「……ごめん」
八つ当たりだ。
「いや」
向こうも。
「斬るよ」
「えっ」
まさか。
「斬るの?」
「なに、ちょっとわくわくしてんだよ」
「オラ」
「いいし」
止められる。
「斬る」
気合を。
「ふんっ!」
一息に。
「………………」
斬った。
「……カット」
間。
「自傷?」
「ある意味」
ヘアカット。
68
「よろしい」
言われる。
「事情は理解しました」
「ありがとー」
満更でなく。
「しかし」
嘆息。
「ずいぶんとこちらの知らない事情があるのですね」
「そーなんだよー」
ぐんなり。
「はふー」
「おやおや」
苦笑。
「疲れていらっしゃる」
「わかるー?」
ひらひら。
「ちょっと聞いてよ、奥さーん」
「奥さんではありませんが」
「いいからー」
お構いなし。
「というわけで、お姉ちゃんがいるの、僕に」
「ええ」
眼光が。
「『二つの魔剣』のもう一方の」
「持ち手」
直後。
「って言っていいのかなー」
「………………」
「持てないし」
「ほう」
「そうなんだよー」
頭を。
「なんで、お姉ちゃんでもない相手に殺されないとなわけー」
「……なるほど」
思案。
「では」
当然。
「そちらを狙ったほうが」
「だめ」
ズォムンッ!
「もー」
ますます。
「こんなのばっかりだしー」
うんざり。
「何人さー」
69
「獣とも」
また。
「戦える」
「………………」
慣れてきた。
「剣が?」
「違う」
違うのか。
「それはともかく」
気になる。
「戦えるのか」
聞きたいのは。
(……あ)
違う。
「だって」
弱々しい。
「他にいないのよ」
「いるだろ」
「いないのよ!」
声を。
「誰も! だって」
それが。
「魔剣なんだもの」
「ふーん」
そっけない。
「知らね」
「なっ」
そんな。
「知ってよ!」
意味が。
「もう何度も」
「聞いたのと」
重く。
「理解できるかは別の話だ」
横を。
「納得いかねえんだよ」
「そんなの」
こっちだって。
「でも」
やるしか。
「だって」
「違う」
にらまれる。
「『でも』とか『だって』じゃねえ」
「え……」
「どうしたいんだ」
それは。
「まあ」
やわらぐ。
「はっきりさせといてくれよ」
「……うん」
素直に。
「どういう結論が出ても」
ビッ!
「最後までつきあうぜ」
あぜん。
「馬鹿みたい」
言っていた。
70
「獣のような」
かしげ。
「って、ほめ言葉?」
「そうだな」
おもしろそうに。
「聞きようによっては」
「それってずるーい」
笑いながら。
「『ケダモノ』なら完全に悪口だけど」
「だな」
同意。
「早く人間になりたーい」
「?」
「わからないならいいし」
それでも。
「人間と獣の差って何?」
「知恵」
「ううん」
否定。
「あるかないか」
「何?」
「ここに」
胸を。
「ほほう」
感心。
「ロマンチストだな」
「そんなんじゃないって」
肩を。
「もっと」
そこから。
「んー」
言葉が。
「ほら」
もどかしそうに。
「面倒じゃん」
「面倒……」
「人間って」
それが。
「そういうこと」
結論。
「まあ」
戸惑いつつ。
「言わんとすることは」
ズゴドッ!
「わかってないよ」
遠く。
「わかるようなものじゃないんだ」
71
「わからない」
無意識に。
「ん?」
「っ」
あわてて。
「な、何でも」
無理が。
「……あるし」
負け惜しみにも。
「んー」
思案。
「そっか」
(おい……)
何を。
「あるよな」
だから。
「言えよ」
(く……)
その無駄な人生の先輩ぶり。
「じゃあ、聞くけど」
思わず。
「聞けよ」
「聞くから!」
いちいち。
「あなたって!」
言って。
「……えーと」
「えーと?」
「!」
そんなところばかり。
「何を言われたいのよ!」
「いやいや」
(う……)
主導権は。
(何か……何か……)
言わなくては。
「い、言っておくけど」
中身を。
「えーと」
だから。
「聞いてくれ」
「っ」
逆に。
「実は俺」
な、何だ。
「特にいま言っとくことはないんだ」
「………………」
ん?
「おい」
それだけか。
「ないなら」
それは。
(う……)
自分も。
「だったら、言うなーーーーっ!!!」
72
「実はさ」
告白。
「男の子なんだ」
「………………」
無反応。
「少年なんだ」
同上。
「ボーイなんだ」
「くどい」
言われる。
「てへっ」
ぺろっ。
「くどいって言われちゃったー」
「言葉など」
冷たく。
「不要」
切り捨てる。
「切られちゃったー」
あははー。
「なんでさ」
「不要と」
「だから」
引かない。
「なんで不要なの」
「………………」
沈思。
「語るまでも」
「だよねー」
笑う。
「不要なんだから」
その通り。
「キミは有要?」
「む」
ゆらぎ。
「馬鹿な」
一言。
「あれー?」
してやったり。
「何か言ったー?」
「………………」
柄に。
「不要」
ズビバッ!
「言うまでもない」
こちらが。
「もーう、全部がさ」
やれやれ。
「……それでも」
ぽつり。
73
「ハイケン」
はっと。
「じゃあ、しまりがねえからな」
「………………」
「ヨウケン」
こちらに。
「ってのもどうだー?」
「……な」
たまらず。
「何が言いたいのよ」
「別に」
またか。
「私が決めたわけじゃないし」
「まあな」
だったら。
「二つの魔剣」
「………………」
「こっちのが」
真顔で。
「それっぽくはある」
(そんな)
簡単に。
「違うんだろ」
「えっ」
そうだ。
「……魔剣なのよ」
これは。
「魔剣で」
名前とか。
「意味は」
真面目に。
「あるんだろ」
「っ……」
もちろん。
「………………」
けど。
「わからない」
情けない。
「何も」
だったら。
(……もう)
何でも。
74
「悔い改める必要はない」
上から。
「……へー」
さすがに。
「ありがとう」
一応。
「言っといたほうがいいのかな」
「否」
厳かに。
「無駄だ」
「無駄なんだ」
「無意味だ」
「ごめんなさい」
素直に。
「否」
頭を。
「意味を求めるな」
「へー」
「あわれなる者よ」
「あわれなんだ」
だんだん。
「解放しよう」
「へぇ」
「呪いから」
手を。
「呪われてたんだー」
「あわれなる者よ」
「あわれなんだ」
戻った。
「いまこそ」
ゆるがない。
「解放を」
「待った」
止める。
「何から?」
「呪いから」
「何の?」
「決まっている」
するどく。
「魔剣だ」
「へー」
冷たく。
「誰が」
「誰が?」
「呪われてるの」
あぜんと。
「自覚もないとは」
「ないなー」
平然と。
「魔剣に支配されしものよ」
「んー」
微笑。
「いまこそ解放の」
「ないよ」
ズモンッ!
「ないない」
くり返し。
「たかが剣じゃん」
それを。
「剣のほうだってさー」
心から。
「僕を支配して何の得があるの?」
くり返す。
「剣じゃん」
75
「剣なんだよなー」
しみじみ。
「たかが」
「な……!」
また。
「ふざけないでって」
「ふざけてるのは」
静かに。
「どっちなんだろうな」
「っ」
どっち?
「たかが剣なんだぜ」
「それは」
だから。
「魔剣なんだって」
何度も。
「そんなもんのために人が何人も死ぬ」
それこそが。
「剣だ」
くり返す。
「これは人が使うもんであってそれ以上じゃない」
「そ……」
そんなことは。
「魔」
「……!」
「それが人を殺すのか」
そんなの。
「いいかげん」
ため息。
「目を覚ませばいいんだよ」
「………………」
目を。
(じゃあ)
自分たちは。
どんな悪夢を見ているのだと。
76
「ふぁーあ」
大きな。
「眠い」
「ハハッ!」
信じられないと。
「オレなど、こんなに目が冴えてるというのに」
「ヘー」
「そうではないか!」
昂ぶり。
「魔剣を前に眠ってなどいられるか!」
「そースか」
そっけない。
「退屈っス」
「なんと!」
信じられないと。
「これほど心躍ることがあろうか!」
「はいはい」
「そうであろう!」
「いやいや」
同意を。
「つれないではないか」
「………………」
もはや。
「もっと悪ぶれ! そして、オレをののしれ!」
「この格好で?」
「ハハハハハハハハッ!」
「趣味?」
「かもな!」
ズォモヴン!
「あーあ」
うんざり。
「寝よっと」
スカートのまま。
77
「殺し合いをしてもらう」
今度は。
「おい」
「えっ」
マジ?
「あのなぁ」
あきれて。
「聞けよ」
「う、うん」
「誰が決めた」
「えっ」
怒ってる?
「誰がって」
あたふた。
「私じゃないし」
「………………」
「本当よ!」
まさか。
「疑ってるの」
「………………」
「馬鹿じゃない! 誰がそんな」
自分たちを。
(……ううん)
だけじゃない。
「巻きこんでるわよ」
認める。
「ああ」
うなずかれる。
「巻きこまれてる」
「っ……」
ストレートに。
「そうよ」
引けない。
「文句ある?」
これでは。
「ある」
(あ……)
しまった。
「その『文句』を言ってるつもりだけどな」
「う……」
そうで。
「ごめん」
「あやまるなよ」
きまり悪く。
「おまえに言ってるわけじゃねえんだ」
じゃあ。
「おい」
顔を。
「聞いてるのかよ」
その目は。
(マジ)
だった。
78
「釣り」
不意の。
「なのかなって」
「あー」
わかったと。
「この格好?」
「そうそう」
「えー」
満更でも。
「珍しくなくなーい?」
「そうだねえ」
にこにこ。
「ヨーヨーのほうがよかった?」
「それは服が違う」
言いつつ。
「ちょっと斬新かもしれないけど」
「けど、ないよねー」
笑い合う。
「あー、すっきりした」
「すっきり?」
「だって」
手を。
「やらなくちゃだし」
「んー」
疑問の。
「あれ?」
残念そうな。
「違うの?」
「違わないけど」
歯切れが。
「こっちはなー」
正直。
「えー」
もどかしそうに。
「やろうよー」
「えー」
こちらも。
「そんなにやりたいのー?」
「やりたいよー」
じれったい。
「いいってことにならない?」
「え」
「やらなくても」
「ならない」
にっこり。
「なんでさ」
心底。
「楽しいし」
「楽しいかなぁ」
「楽しいよ」
澄んだ。
「圧倒的なものに挑むのは楽しい」
「はぁー」
うんざり。
「挑まれるほうの身になってよ」
「ごめん」
「あやまられても」
「そこに山があるから」
悪びれず。
「って言うよね」
「そこにそれがあるから」
「?」
「らしいよ」
変わらないが。
「山は挑んでほしいなんて思ってないって」
「だよねー」
笑って。
「わかってるから」
一転。
「こっちの勝手」
刃を。
「好きにしちゃって」
抜く。
「っ」
ためらいの。
「だからぁ!」
やぶれかぶれ。
「ヤなんだって!」
ズァンッ!
「なんでなんだよぉ!」
もう。
「なんでさ! なんでなのさぁ!」
誰に向かって。
79
「いらない」
突然。
「……何が」
おそるおそる。
「何もさ」
こちらに。
「なあ」
「え……」
同意?
「私は」
言いかけ。
「………………」
何も。
「いらないんだよ」
押す。
「だろ」
だから。
「これ」
「!」
まさか。
「いいじゃん」
あっさり。
「くれてやっちゃって」
「だめ!」
すかさず。
「………………」
にらみ合い。
「……だめでしょ」
それは。
「惜しいから?」
まさか。
「持ってるのよ」
「持ってるな」
肯定。
「向こうも」
「………………」
できれば。
「そんなこと」
無理。
「………………」
言い切れるのか。
「できる」
口をつく。
「と思う?」
問いかけに。
「んー」
思案。
「ま」
ぽんぽん。
「あきらめんな」
「……っ」
子ども扱いか。
「軽いのよ」
言わずには。
「あなた、どこまで本気で」
「本気だよ」
目を。
「俺は」
「………………」
言い返せなかった。
80
「鳩」
ぽつり。
「あれって平和の象徴だよね」
空を。
「いいなー」
パタパタ。
「………………」
無反応。
「ねえ」
構わず。
「なんでかな」
答えない。
「鳩と平和。どう結びつくんだろう」
考える。
「うーん」
「鳩は」
口を。
「野蛮だ」
「おー」
感心の。
「斬新な意見」
「決まっている」
吐き捨て。
「上辺は無害を装う」
「えー」
「そう」
指を。
「貴様のように」
「あー」
納得と。
「なるほどねー。そういう見方もあるよねー」
「………………」
「けどさ」
いじわるそうに。
「本当に無害なんじゃない?」
「そんなことは」
柄を。
「試してみればわかる」
覇気。
「試すかー」
平然と。
「で、無害だったら?」
「知らん」
切り捨てる。
「たかがだ」
「たかがかー」
にこっ。
「たかが」
口に。
「って」
ひるがえる。
「何ほざいてくれちゃってるの」
斬る。
「あ」
跳ね返す。
「たかがだ!」
勢いこみ。
「あーあ」
ズオラシュゥッ!!!
「遊んじゃった」
自己嫌悪。
「けど、ムカついたし」
自己弁護。
「まったく」
やれやれと。
「死んじゃったらどうするのさ」
81
「これから」
厳かに。
「はっきりさせとく」
「………………」
何を。
「俺とあんたのことだ」
(それって)
どういう。
「俺が剣を使う」
あらためて。
「そこはいまも」
目を。
「変わらないんだろ」
「……ええ」
うなずく。
「嫌になった?」
声が。
(く……)
弱気な。
「いまさらだな」
「っ……」
そんなことは。
「いまなら」
まだ。
「あなたが」
ふるえる。
「望まないなら」
「そういう問題じゃ」
真顔で。
「ないだろ」
「………………」
そうなのか。
「貸せよ」
「あっ」
「いいから」
とっさに。
「だめ!」
抵抗。
「………………」
「………………」
沈黙。
「だって」
言いわけじみて。
「つなげてくれてる」
それは。
「これが」
ぎゅっと。
(だから)
せめて。
そのときまでは。
82
「いいかげん」
鶴のポーズ。
「……何が」
間。
「や、こーゆーのも取り入れようかなって」
「こういうの」
「必殺の? そういう」
理解が。
「技か」
「技?」
「そこから」
言って。
「ううむ」
熟考。
「いやいや、そこまでじゃないから」
パタパタ。
「余興?」
「余興……」
「あ、うーん、ちょっと違うなー」
自分でも。
「儀式?」
「儀式……」
「あー、でもなくてー」
頭を。
「それっぽさっていうかー」
「それっぽさ」
目が。
「それなら」
「わかるの?」
驚きの。
「よかったー」
ほっと。
「そういうことか」
こちらも。
「では」
「うん?」
「共に考えようか」
「えーっ」
大よろこび。
「本当? わー、そんなこと言われるとか」
「困ったときは」
微笑。
「お互い様と」
「言うよねー」
大はしゃぎ。
「じゃあ、じゃあー」
さっそく。
「こういうポーズとってー。ここからのー」
ズビュゥン!!!
「あ」
一太刀。
「……あー」
絶句。
「えっとー」
言い分けを。
「な、なんか、うまくハマっちゃってさー」
誰も。
「だから……」
だから?
「………………」
届かない。
「ごめんなさい」
83
「俺にまかせてくれるんだな」
それは。
「わかった」
最初から。
「いや、どっちよ」
「えっ」
「だから『わかった』って」
肩を。
「くれるの? くれないの?」
「いや……」
だから。
「……まかせる」
それは。
「で、いいんでしょ?」
「違うなー」
「えっ!」
どういう。
「『で』? 『いいんでしょう』?」
「う……」
そんなところに。
「大事な話だしさ」
それは。
「わかってる」
「何が」
「……う」
また。
「あ、あなたが」
口を。
「あなたが……」
ぽつり。
「嫌がってるってこと」
ぽかん。
「はぁぁあ?」
あり得ないと。
「誰が言ったよ、そんなこと!」
「きゃっ」
思わず。
「……あ」
こんな。
「悪ぃ」
「ううん」
(悪いのは)
それは。
「あっち側」
「?」
「だったかもなぁ」
さらり。
「俺も」
「……!」
まさか。
「やめてよ!」
「やめない」
「っっ……」
そんなの。
「やめて」
思っただけで。
「……あー」
頭を。
「まあ」
あっさり。
「おいおい決めてこうや」
「えっ」
そんな。
「いいかげんで」
「じゃあ」
真面目に。
「きっちり決めとくか」
「っ……」
それは。
「まー、どっちでも」
また。
「いいんだけど」
「な……」
やっぱり。
「いいかげん」
「知ってた」
84
「ファー」
「?」
「いや、外しちゃったかなって」
「………………」
きょとん。
「え、えーと」
気まずさに。
「いい天気だなー」
無理が。
「天気は」
反応が。
「確かに」
「そうそう!」
この流れで。
「では」
何事もなかったように。
「お手合わせ願おう」
「しようしよう!」
ますます。
「何する? じゃんけん?」
「………………」
「あ」
また。
「ごめん! いまのは僕が悪かったです!」
平謝り。
「……つまり」
たんたんと。
「負けを認めると」
「認めちゃう! ぜんぜん認めちゃう!」
軽い。
「そうか」
困惑の。
「認められてもな」
「えー」
こちらも。
「だめ?」
「難しいな」
「難しいかー」
頭を。
「あと出しじゃんけん……」
「?」
「あっ、ううん、聞かなかったことにして」
空気を。
「もー。じゃー、どうするのー」
逆ギレ。
「手合わせを」
「合わせるよ!」
ヤケ気味。
「合わせるのは剣だがな」
「読んでる!」
「さすがに」
ごまかされるのは。
「もう」
ズラシャァァァッ!!!
「結局合わせなかったけどね!」
皮肉。
「あーもー」
ため息。
「本当にこれがよかったの?」
あきれつつ。
「いい顔しちゃって」
85
「……!」
寝ていた。
(う……)
気づかれて。
「おはよう」
いた。
「め、目を」
つぶっていただけ。
「起きてたから」
無理が。
「おはよう」
「っっ……」
やはり。
「何よ!」
止まらない。
「二人だけで」
会話もなく。
「電車に乗ってたら」
誰だって。
「まーな」
にやにや。
(くっ)
完全に。
「わかった」
何を。
「寝ないから」
「おう」
あきらかに。
「がんばれ」
(くぅっ)
ますます。
「寝ないし」
すると。
「ほら」
「えっ」
「肩」
「!」
寄りかかれと。
「いらないし!」
「あれー、さっきは」
「っ!」
不覚。
「気のせい!」
言い切る。
「だから!」
強引に。
「ほーお」
(く、くそっ!)
どうしても。
「わかったわよ!」
逆に。
「いますぐ寝ればいいんでしょ!」
なぜ。
「どうぞ」
(ぐ……)
引けなく。
「ね、寝るから」
目を。
「………………」
寝れない。
「肩」
「いらない!」
86
「納得がいかない」
ぶー。
「まあ」
わけ知り顔で。
「そういうことはいっぱいあるよ」
「あってほしくないんですけど」
ますます。
「大体さあ!」
バンバン!
「なんで、あれじゃないといけないわけ!」
「まあ」
あごをさすり。
「難しいですなあ」
「難しくないの! 簡単なの!」
かんしゃくを。
「一緒にいなければいいんだから!」
「そうですなあ」
「真面目に聞いてる!?」
矛先が。
「そうですなあ」
「どっちよ!?」
完全に。
「聞いてほしいのですか?」
「そうだよ!」
「わたしは」
剣呑な。
「それよりも」
「あーあ!」
嫌になる。
「そればっかり! 他にやることないの!?」
「他にですか」
くっくっく。
「こんな楽しいことを差し置いて」
「ヘンタイ!」
力いっぱい。
「ええ、その変態を」
愉悦の。
「あなたは引きつけずにはおれない」
「本物だ……」
マジ引き。
「そんなつもりないんですけど」
「ないと言われても」
いまさらな。
「わたしだけではない」
「……はぁー」
「でしょう」
「ですよ」
認める。
「みんな、変だ」
剣を。
「こんなもののために」
「何を」
それこそ。
「まず、あなた自身がそうでしょう」
「その通りだ!」
ドォズン!!!
「唐竹割り」
格好を。
「飛んで火に入る夏の虫」
言って。
「そっちから」
がっくり。
「入ってくるんだもんなー」
87
「ほら」
それは。
「何?」
「聴診器」
「えっ」
なぜ。
「あ、間違えた」
間違えるか。
「盗聴器」
「ええっ!?」
間違えすぎだ。
「ちょっ……」
そんなことより。
「よく見ろ」
真面目に。
「これが聴診器に見えるか」
見えんて。
「あなたが間違ったんでしょ」
「聞くのは同じだろ」
大ざっぱすぎる。
「つか、ここで聴診器出すとか、意味わかんないだろ」
確かに。
「何に使うと思ったんだよ」
「えっ」
それは。
「診察……」
以外に。
「誰の? どうやって?」
「………………」
わからない。
「ははーん」
意味ありげに。
「やらしー」
「!」
馬鹿な。
「馬鹿か!」
口に。
「なんでよ!」
「他にないだろ」
「あるでしょ!」
言って。
(あ……)
あるのか?
「何だよ」
ぎくっ。
「他にあるって」
「ほ、他に」
それは。
「聴診器……」
そんなの。
「聴くのを超えて……」
「?」
「超・診器」
とか。
「………………」
沈黙。
「……あー」
ようやく。
「がんばった」
「やめてよ、拍手は!」
88
「もしもーし」
聞いてない。
「いるんですけどー」
相手しない。
「ちょっと忙しいから」
「聞こえてんじゃん」
「いまいいとこだから!」
キレ気味に。
「何の?」
「競馬の!」
強引に。
「競馬中継、聞いてるの!」
「ラジオで?」
「そう、これはラジオなの!」
言うも。
「いまどきラジオって」
「競馬ファンのデフォはスポーツ新聞に赤えんぴつだよ!」
ゆずらない。
「お、来た!」
「来たの?」
「来んなよ!」
「どっち?」
大絶叫。
「かーーーーーーっ!!!」
かきむしる。
「……外した?」
「そーだよ、万馬券だよ!」
意味不明。
「あーもー!」
バキッ!
「あ……」
やっちゃった。
「もー」
恨みがましく。
「話しかけるから」
「え、こっちのせい?」
「そうだよ!」
ドンシャッ!
「あーもー!」
治まらず。
「どうでもいいんだよ! どうせ死ぬんだし!」
機械をいじりながら。
「こっちはどうでもよくないの!」
89
「海って」
うっとり。
「なんで、いいんだ?」
「………………」
「言うだろ」
何を。
「『海っていいよなー』とか」
言う。
「魚がいるからか?」
「川にもいるでしょ」
「川っていいよなー」
聞かない。
「沼っていいよなー」
「は?」
「いるだろ、魚」
たぶん。
「湖っていいよなー」
そっちのほうが。
「水槽っていいよなー」
おい。
「水族館っていいよなー」
普通に楽しい。
「えーと……」
考えて。
「違うな」
ようやく。
「波か」
「は?」
「他のにはないだろ」
そうか?
「電波っていいよなー」
いやいやいや。
「風」
「えっ」
「風が吹いたら」
波は。
「あー」
頭を。
「海の何がいいんだよー」
ギブアップか。
「なあ」
振られる。
「知らないし」
正直。
「いいと思わないわけ?」
「海?」
「海」
それは。
「なんか…いいなって」
見ると。
「よし、決まった」
え?
「行こうぜ」
それって。
「海」
馬鹿か。
「行かない」
「いいぜー、海」
「どこが」
馬鹿馬鹿しい。
「いいって言ったじゃん」
言った。
「どこが?」
逆に。
「……なんとなく」
言うしか。
「オッケー」
何がだ。
「行こうぜ」
だから。
「馬鹿」
言うしか。
90
「電波っていいよなー」
「……なに?」
けげんな。
「ねえ」
見て。
「どう思う」
「………………」
何とも。
「直ったんだよ」
「………………」
「てゆーか、壊れてなかったんだよ」
「……そうか」
「すごいよねー」
「ああ」
「奇跡」
うれしそうでは。
「どういうつもり」
だから。
「わかってるんだよ」
こちらは。
「なのに」
イライライライラ。
「楽しんでるのかなー」
治まらない。
「こっちに聞かせて」
何を。
「電波ってよくないよなー」
テンション低く。
「ムカつくよなー」
吐き捨てる。
「おい」
さすがに。
「いいかげんに」
「するよ」
ズゥゥモンッ!!!
「こっちのことより」
血振り。
「向こうだよね」
91
「心中」
ぎょっと。
「な、何?」
「あっ、興味ある」
ない!
「行こうぜ」
どこへ!
「って」
さらり。
「言われたらどうする」
「断る!」
当然。
「海」
「?」
また。
「といえば」
(……あ)
つながる。
「心中?」
「そっ」
だから。
「川でも」
「沼でも?」
沼は。
「水族館でも」
迷惑だ。
「って」
最初から。
「ない」
念を。
「ふーん」
ん?
「そう思ってたのか」
「は?」
どう。
「俺と」
「!」
「ってのは」
「ない!」
力いっぱい。
「そうか」
肩を。
「って」
あきれる。
「したいの?」
「してる」
「……!?」
「ような」
こちらを。
(あ……)
それって。
「……約束」
「っ」
「海」
そのことが。
「あれって」
一緒に。
「………………」
確かめようと。
「約束」
「えっ」
「もう一個な」
何を。
「死ぬな」
「……!」
「それだけ」
笑って。
「な……」
そんなこと。
(当たり前)
と。言い切れない。
「……わかった」
自分でも驚くほど。
弱々しい。
92
「約束」
不意に。
「したんだ」
遠い目で。
「ほう」
興味を。
「どなたと」
「お姉ちゃん」
あっさり。
「姉上と」
「おー」
かすかに。
「いいねー、それ」
「それ?」
「『姉上』」
にっこり。
「それっぽい」
「それっぽいですかな」
「それっぽいよー」
笑顔で。
「魔剣の主」
「……っ」
「どっちも」
だから。
「……なるほど」
おもむろに。
「弟君(ぎみ)」
「それもいいねー」
「それほど」
不思議そうに。
「姉上が大事なら」
「大事だよ」
ためらいなく。
「なら」
抜く。
「討たれるべきではござらぬか」
「それで」
目が。
「あんたがお姉ちゃんを殺すんだ」
「そのようなことには」
ゾンシュアァッ!!!
「なるんだよ」
いつも以上に。
「ハハッ」
止まらない。
「いいんだ」
口に。
「これでいいんじゃん。これしかないじゃん」
それは。
「だって!」
力が。
「そうなんだから!」
93
「言葉が」
まただ。
「先か」
そんなの。
「意味が先か」
「え……」
それは。
「意味が」
先に。
「まずはじめに言葉ありき」
聞いたことは。
「まず言葉が降ってくる」
「降って?」
思わず。
「そこに意味はない」
そうなのか。
「降る雨に意味はない」
「意味は」
あると。
「それで花とか育つし」
「花を育てようとして雨を降らせてるのか」
それは。
「誰が」
言って。
「………………」
誰も。
「ただ雨が降る」
静かに。
「……詩人」
「事実だろ」
ああ、雨が。
「うん」
そこは。
「あんまりほめるなよー」
どっちだ。
「どっちでも」
いい。
「………………」
では。
「同じだって」
(簡単に)
言うな。
94
「近い」
口に。
「そうか?」
「そうだよ」
うんざり。
「なんだって、また」
「おかしいか?」
「おかしいよ」
「おかしくは」
ずいっ。
「ない」
「だから!」
あせって。
「なぜだ」
「は?」
逆に。
「なぜ」
心から。
「せっかくの美しい顔を」
「う……」
完全に。
「そ、そんなの知ってるし」
動揺は。
「身体など飾りだ」
「は!?」
どういう。
「この格好がおかしいってこと?」
思わず。
「中身も」
「中身も!?」
「同じ」
甘く。
「飾りだよ」
ドキッ。
「顔だ」
くり返す。
「すべては」
指が。
「顔がなければ始まらない」
ふれる。
「………………」
ドキドキドキ。
「……顔」
「そう、顔」
甘やかに。
「僕って」
うるむ目で。
「かわいい?」
「そんなことはどうでもいい」
「えーーっ!?」
あぜん。
「顔だ」
くり返す。
「顔なんだ」
「な……」
何が。
「顔だ!」
「わ、わかったから」
ぜんぜん。
「わかっていない!」
「えっ!?」
そうだが。
「顔なんだ……」
狂おしく。
「そこにはすべてがある」
「すべてが」
もはや。
「顔なくして人は存在し得ない」
まあ。
「顔のない」
それって。
「そうだよ」
顔があっても。
「自分のは」
「ん?」
「自分の顔は」
見えない。
「だから」
そう。
「人じゃないんだ」
ゾヲンシュッ!!!
「ほーら」
こうすれば。
「見えない」
誰の顔も。
95
「いよいよかな」
そのことは。
「ええ」
感じて。
「あ」
ぐぅぅ~……。
「腹減ったなー」
がくっ。
「またか」
「またかって」
苦笑。
「食うだろ」
食う。
「武士は食わねど」
ぐぅぅ~……。
「食うよな」
食う。
「武士じゃ」
そもそも。
「ないし」
「ないな」
同意。
「だからこそ」
食う?
「どうかって思うぜ」
ん?
「素人をさ」
「………………」
言いたいことは。
「それでも」
口に。
「斬ってるのはこっち」
「斬りかかったのは向こうだ」
そうなのだろう。
「はーあ」
重い。
「向こうから」
「っ……」
その『向こう』は。
「ってことにはならないか」
「ならないよ」
はっきり。
「優しいもの」
だから。
「斬って」
斬りまくって。
「何なの」
それって。
「おかしいし」
本当に。
「なんで」
こんな。
「天の災い」
「……?」
「これすなわち天災だ」
そう、これは。
「誰のせいでも」
ない。
96
「月夜に雨の降るごとく」
口に。
「ほぅ」
感心の。
「風流だな」
「んー」
首を。
「おかしい」
「何?」
「おかしいよ」
くり返し。
「月夜に雨って」
「ん……」
思案し。
「ああ」
確かに。
「月夜ということは」
晴れて。
「おかしいな」
「おかしい」
うんうん。
「雪夜に雨の降るごとく」
「それも」
いっそう。
「うーん」
悩み出す。
「闇夜に雨の降るごとく」
「おー」
パチパチパチ。
「そうだ、そうだ。それならおかしくない」
大喜び。
「お兄さん、プロ?」
「まさか」
苦笑。
「まあ」
面はゆげに。
「若いころはそれで身を立てたいとも」
「おー」
感心の。
「で」
冷える。
「なんで?」
「そうだな」
変わらない。
「これはこれで」
「へー」
ますます。
「そんなもんなんだ」
「そんなものだろう」
酷薄さが。
「だから、斬れる」
「かもね」
スゥッ。
「斬れた」
音もなく。
「薄っぺらいから」
だから。
「どこまでも」
そのまま。
「消えるほど」
消えてしまえば。
97
「終わらせたくない」
口に。
「………………」
答えない。
「ねえ」
たまらず。
「何か」
「何か?」
かぶせるよう。
「俺が言ってどうなる」
「っ……」
厳しい。
「当事者じゃない俺が」
「そんな」
何を。
「勝手だよ」
どちらが。
「ここまで来たら」
言われる。
「ここまでって」
食い下がる。
「だからじゃない」
「だから?」
「ここまで来れた」
だから。
「他の」
「ないな」
またも。
「なんで!」
こうなれば。
「決めつけないで!」
「違う」
冷ややかに。
「決まってるんだ」
「誰が!」
決めたと。
「雨だよ」
「っ」
誰が決めたわけでもない。
(けど)
決まっている。
「誰……が……」
途切れる。
「………………」
終わりも。
「そんなの」
決めさせない。
誰に。
関係ない。
「私は」
信じるしか。
98
「終わりにしようよ」
ため息まじり。
「強いと思う」
こんなことは。
「強い」
断言。
「だから」
パチパチパチ。
「おめでとう」
それに。
「うれしいな」
笑顔で。
「魔剣の持ち主に認められるとは」
「認めるっていうかー」
軽く。
「本当のことだし」
「ははっ」
さわやかに。
「本当か」
かすかに。
「何が本当なのだろうな」
「えっ」
「魔剣の」
見る。
「噂ばかりがあふれている」
「……うん」
「聞きたい」
まっすぐ。
「スリーサイズ?」
「それはまた」
いまは。
「本当を」
「……うーん」
困って。
「本当かー」
「ああ」
引かない。
「本当ってねー」
つまむ。
「どう?」
スカートの。
「これって」
端。
「本当?」
「………………」
言葉に。
「わからないな」
「そう」
あっさり。
「わからないんだ」
口に。
「わかるような理由なんて」
そんなもの。
「嘘」
スパァァァァン!!!
「おー」
感心の。
「ナイスショット」
うんうん。
「違うか」
どちらも。
「もつれないねー」
達人の相手は。
「強かったよ」
間違いなく。
99
「さて」
こちらを。
「来たぜ」
「………………」
「向こうも」
わかっている。
「どうする」
いまさら。
「お願い」
以外。
「さーて」
力みのない。
「こうなればな」
笑みを。
「何よ」
つられて。
「はい」
あっさり。
「お願い」
こわばりは。
「行くぜ」
「………………」
覚悟を。
「……ごめん」
正直。
「怖い」
「怖いかー」
ほがらかに。
「俺もだ」
「えっ」
「だろーがよ」
笑って。
「だからさ」
「だから?」
「フリだ」
「フリって」
「怖くない」
フリ。
「馬鹿みたい」
けど。
「いいよ」
それでも。
「よし」
うなずき。
「じゃあ」
切先を。
「………………」
こちらに。
「いいな」
目を。
「よし」
再度。
(わかってる)
だから。
「やって!」
直後。
「馬鹿」
キィィィィィィィィィン!
「!」
交わる。
「ようやく」
そこに。
「こんなことだからさ」
力が。
「二ついるんだ!」
100
二つ。
魔剣。
「だってさ!」
散々。
相手をしてきて。
わかった。
(剣じゃ)
勝てない。
魔剣に打ち勝てるのは魔剣のみ。
悪と戦えるのは悪のみ。
(その後で)
聖剣にでも何にでもなればいい。
「ワルじゃん!」
自分は。
それでも。
(いいのさ)
そうでなければ。
「足りない」
はっと。
「五十人を斬って、なお」
言われる。
「甲斐がない」
(知るか!)
最初から。
(いいヒトじゃ)
足りない。
「殺す」
初めて。
「だったら」
言い返す。
「剣なんて悠長なことやってんなぁ!」
その通り。
矢でも、鉄砲でも。
爆弾でも、ミサイルでも。
何でも。
「使えたら」
使っていた。
「できないから」
だから。
「魔剣の主なんだぁっ!」
それが。
「言わんをやぁっ!」
意味が。
(いらない)
ただ。
「斬る!」
だけ。
「そりゃあ」
余裕。
「斬るだろう」
綽々。
「斬れるんだ」
そう。
「斬れる!」
我も。彼も。
「ザンれる!」
ザンッッッ!!!
「っ……」
空を。
「斬念」
「違うし」
「残念か」
どちらも。
「残らないよ」
斬る。
「わかった」
線を。
「ここから」
引くよう。
「切り口」
「………………」
「あれって、なんで点線なのかな」
切れていない。
「一直線」
ただ。
「振る」
人にできるのは。
(あとは)
知らない。
(そう)
それだけ。
「行くよ」
言うまでも。
「ない」
ス――
「ほら」
できた。
∞
アスクレピオスの傭剣とヘラクレイオスの廃剣。
そう呼ばれる二振りの剣。
その。
挿話が。
始まりであり。
そして。
「じゃあ、二人は姉弟なの?」
「だったらしいな」
熾火のくすぶる。
「なんで?」
暖炉の前で。
「なんで……」
それは。
「二つの魔剣は戦い合うんでしょ」
「ああ」
そういう。
「姉弟なのに」
「そうだな」
薪の具合を見つつ。
「それが誰でも」
おだやかに。
「戦い合うことは良くないなぁ」
「ふーん」
物足りない。
「剣なのに」
「剣だなあ」
「姉弟なのに」
「姉弟だなあ」
「わかんない」
「そうか」
おだやかなまま。
「わからないんだよ」
目は。
「わからないんだ」
遠くを。
殺させないためには。
殺されるしかない。
矛盾。
(けど)
選んだ。
「おーい」
声を。
「元気かー」
「………………」
間抜けな。
「そう」
見えるか。
「そうか」
納得。
(何を)
勝手に。
「ふぅ」
ため息。
「セーンセ」
調子のいい。
「メシ食ったか」
「メシ……」
そう。
「それだ」
「あ?」
「メシだ!」
勢いよく。
「………………」
あぜん。
「……そっか」
微笑み。
「わかったんだな」
「わかった!」
興奮して。
「おめでとう」
「待て」
我に。
「わかってないだろ」
「わかってない」
悪びれず。
「わかったんだ!」
再び。
「腹が減っては戦はできない」
「は?」
「研究だってできないだろう」
手を。
「はい」
渡す。
「BLT……」
不満げに。
「タマゴは?」
「ない」
「ポテサラは?」
「ない」
「なんでだ!」
「食べたからだ!」
「誰が!」
「おれが!」
「おまっ……」
「おれにはメシ抜きで働けってか。戦しろってか」
言ってない。
「わかった」
不承不承。
「あー」
しみる。
「タマゴ……」
「まだ言うかよ」
「T」
「ん?」
「なぜ、タマゴのTじゃないんだ」
「タマゴはEだろ」
「あー」
おかしくなってる。
「おかしくなるさ」
自嘲気味。
「人間だ」
腹が減れば。
好きなものを食べられなければ。
(思うように)
ならなければ。
(おかしく)
なるのだ。
「斬ることを拒否する剣?」
意味が。
「……あー」
つまり。
「斬れないんですか?」
欠けているとか。
「違う」
あっさり。
「じゃあ」
どういう。
「拒否するんだ」
「………………」
わからない。
「剣が」
口をきいたり。
「剣だ」
肩を。
「以外の何ものでもない」
だったら。
「どうやって」
拒む。
「知らん」
おい。
「すこし鈍き刀を使う」
「?」
「言われているな」
「はぁ」
またも。
「先生」
さすがに。
「急くな」
言われても。
「だめなのだ」
「だめ?」
「斬れすぎるようでは」
「それって」
斬れ『すぎ』るから。
「逆に」
「そうとも言う」
どっちなんだ。
「わかりません」
正直に。
「わたしも」
あっさり。
「わからんよ」
「わからんですか」
なんだ。
「さあ」
「はい」
稽古の時間だ。
「じゃあ」
どちらかが。
「滅びたということになりますよね」
「だな」
肯定。
「どっちです?」
「難しいことを言うな」
難しいことか。
「難しい」
腕組み。
「うーん……」
(いやいや)
考えこまれても。
「一本」
指を。
「そうとは限らない」
「はい?」
ますます。
「だから、二つの魔剣なんだ」
「いえ……」
意味が。
「まあ」
わからずとも。
「こっちの人生には何の関係もない」
「果たして」
「そうです」
そんな物騒なもの。
「それより、先輩」
「ん?」
「レポートですよ」
そのことで。
「だから、魔剣の」
「いや」
違うのか。
「よし、なら」
何を。
「姉弟だったとしよう」
「は?」
「わたしとキミが」
「………………」
変わってない。
「気持ち悪いです」
「だな」
うなずく。
「姉弟同士で」
「じゃなくて」
その前提が。
「血のつながったもの同士で」
「まあ」
でも。
「仕方ないんじゃないですか」
「ん?」
「選ばれちゃったんだから」
「そこでだ」
声に。
「姉弟だったとしよう」
また。
「わたしが姉、キミが弟」
はいはい。
「妹がいいか?」
おい。
「どちらにしろ」
言う。
「殺し合う」
「ないです」
言い返す。
「やらないですから」
「やらない?」
「でしょ」
普通。
「姉弟で」
あり得ない。
「ふーん」
気のない。
「当然でしょ」
ムキに。
「当然なんだ」
「当然です」
ゆずらない。
「代理」
「?」
「だったら」
つまり。
「どっちがです」
「どっちでも」
まあ。
「どっちも代理」
それは。
「意味がなくありません?」
「何の」
何のって。
「知りません」
もう。
「ないんだよ」
あっ。
「意味なんて」
そこに。
「終わりだな」
誰に。
「急いでください」
「はいはい」
ひらひら。
「本当に」
わかって。
「あいあい」
まったく。
「我々は」
冷たく。
「負けたんです」
そう。
「あー」
ぽつり。
「何にだろうねえ」
「敵に」
すかさず。
「敵かあ」
「味方とでも」
「いやいや」
手を。
「自分に」
「えっ」
「そういう言い方も」
「そういう思索は」
さえぎり。
「生き延びてからすべきでは」
「死んだらできないもんねえ」
当然の。
「敵か」
また。
「殺し合うから敵か」
「え……」
「敵だから殺し合うのか」
「だから」
そんなことより。
「自分が敵の場合」
だめだ。
「自分を殺す」
息を。
「まさか」
あわてないのは。
「それってさあ」
おもしろむよう。
「勝ちなのかなあ」
「は、はあ」
つまり。
「その程度だよ」
ポン。
「さ、逃げようか」
「えっ」
意表を。
「逃げないの?」
「え、いや」
それは。
「逃げてからいろいろ考えるよ」
あっさり。
「……お願いします」
ひとまず。
「お願いされます」
あくまで。
「あー」
一つだけと。
「自分に負けたらさー」
にやり。
「どこに逃げればいいんだろうね」
「なんで逃げなかったんだろう」
「宿命」
あっさり。
「だったんじゃない」
「かっるー」
軽いか。
「おれたにちもあるのかな」
「えっ」
「宿命」
んー。
「あるよ」
言っておく。
「それはね」
無駄に。
「愛だよ」
なんだ、このキャラ。
「ふーん」
冷めた。
「愛ってさー」
お、食いついた。
「便利だよな」
「ヘ?」
間の抜けた。
「え、えーと」
リアクションを。
「いいんじゃなーい」
なんだ、これ。
「ちょっと」
マジ目で。
「そういうんじゃないんだけど」
どういうんだよ。
「愛まい」
「?」
「愛だからって」
あー。
「いいんじゃない」
もう。
「自堕落」
なんだ、それ。
「あのさ」
言っとこう。
「関係ない」
「ある」
おい。
「そういう関係だし」
えっ。
「こういう」
自分と。こちらと。
「……あー」
そういう。
「って」
それがどう。
「関係」
一言。
「これ」
「………………」
わからん。
「それだけで」
指を。
「意味深だよね」
「………………」
わからん。
「意味深長」
略さず言っても。
「わかる?」
だから。
「深い」
わかったように。
(あー)
なんなんだ、この男は。
(もー)
わかってる。
(なんで)
こんなところが。
「よかった」
「そう」
通じた。
「あー」
あきれた。
(関係)
自分たちだって。
「物語ですよ」
「何です?」
「血だ、家族だ」
あー。
「そういう路線で行くんですか」
「路線って」
苦笑。
「そうなんでしょう」
「そのほうがいいかな」
(どうでも)
さすがに。
「先生」
一応。
「真面目に話しましょう」
担当として。
「真面目にねー」
また。
「怒らないでくださいよ」
怒りもする。
「時間」
一言。
「どう思ってるんです」
「時間かー」
腕組み。
「物語だよね」
おい。
「それも人の作った」
「そういうことでなく!」
バンバン!
「〆切ですよ、〆切!」
「それも」
「作りました!」
当たり前だ。
「先生」
ドスを。
「なんだい、生徒」
誰が。
「担当です」
「短刀」
突きつけたい。
「〆切です」
「〆を?」
切りたい。
「本当に」
ふと。
「斬りたかったのは何だったんでしょう」
「え……」
不意の。
「何って」
何の。
「魔剣」
「っ……」
それは。
「だからですか」
血だ、家族だ。
「……悪くないです」
感じたまま。
「目のつけどころは」
「でしょう」
得意げに。
「では、可能な限り資料を」
そんな時間は、正直。
「いい」
「えっ」
ほめられて。
「いらないです」
「あ……」
そっちの。
「って、じゃあ」
どうやって。
「以前から」
構想が。
「いいえ」
頭を。
「わかりません」
「わ……」
わからない?
「わからないから」
おだやかに。
「いいんです」
「い……」
いやいや。
「わからないということは、どうとでも作れるということ」
いやいやいや!
「それが物語の強さです」
「………………」
もはや
「さーて」
「っ」
やる気に。
「寝ます」
がくぅっ!
「後は自動筆記で」
「真面目にやれーーーっ!」
「牛」
あんまりな。
「平和」
そう。
「平和な牛っていないの」
いるだろうけど。
「……いないのか?」
定義にもよる。
「おい、牛」
また。
「あんたはいつになったら働くんだ」
「いつ?」
きょとん。
「働くの?」
指を。
「働かざるもの食うべからず」
わー、ヤな言葉。
「牛って働くよねー」
働かされてる。
「人間だって」
働かされてる。
「ヤだねー」
しみじみ。
「働いてから言え」
身もふたも。
「働かざるもの言うべからず?」
にらまれる。
「………………」
目を。
「……何それ」
「寝釈迦」
はぁー。
「牛」
「だから、牛は働いてるって」
「牛以下」
どういうレベル?
「不安」
「えっ」
「働いてないことが」
「それは」
「それってさ」
のんびり。
「牛は思わないよねー」
「………………」
「牛以下」
自分を。
「……じゃあ」
意外だと。
「不安には思ってるんだ」
「人間だもん」
当たり前。
「だったら」
「働いたら」
問い返す。
「不安は消えるの?」
「え……」
答えは。
「ない」
そうだ。
「働かないもん」
「おい」
「動かない」
寝転がり。
「これってさ」
絶対の。
「これ以上ない平和のかたちじゃない」
「魔剣ってさ」
つぶやく。
「仕事?」
「………………」
それに。
「難しいことを言う」
そうかな。
「じゃあ、遊び?」
「うーむ」
考えこむ。
「どの範囲を指して?」
「お」
反撃だ。
「どの?」
「その」
指で。
「どこからどこまでを」
「持ち手も含めてってこと?」
「だって」
それはそうで。
「自由」
「は?」
「想像にお任せします」
投げっぱなしすぎ。
「うーん」
それでも。
「セットなわけじゃん」
ハンバーガーか。
「魔剣と」
持ち手。
「もっと」
「え?」
「二つ」
あるわけで。
「魔剣と魔剣と持ち手と持ち手?」
それでセットか。
「さて、仕事でしょーか、遊びでしょーか」
軽い。
「宿命」
重いようで。
「軽い」
ありきたり。
「バラで」
「ん?」
「考えたらよくね」
それなら。
「んー」
逆に。
「仕事?」
「遊び?」
そんなもの。
「大げさ」
「お?」
何を。
「見たことないもん!」
力いっぱい。
「だったら、ここに出して見せてみてよ!」
「オッケー」
「えっ」
差し出す。
「それは『やげん』でしょ!」
飲み屋だし。
「外したわー」
我ながら。
「まーまー」
なぐさめられる。
「やげんでもいいから」
「良くないって」
「食べれるし」
パクッ。
「あ」
食べろとは。
「………………」
残ったのは。
「刺せる」
「おい」
できるし。
「変わらないよ」
魔剣も。
(まあ)
やげんも。
「仕事でも、遊びでも」
真顔で。
「そこに生死が絡むことはある」
物騒だな。
「居酒屋でも」
絡めるな。
「絡み合う」
「ん?」
「だから」
嘆息。
「そういうことになっちゃうのかな」
メランコリー。
「わかってるの?」
「なんとなく」
なんとなくか。
「のんでるとさ」
遠い目で。
「入ってくる」
「えっ」
何が。
「一席ぶちたくなる」
「は?」
「入ってくる」
落語家の霊?
「そういう」
ふっと。
「ことなんじゃないかな」
「………………」
わからん。
「……まあ」
酔っ払いの言うことだし。
「へい、チャーハン一丁」
待った。
「一丁……」
「あれ、違った?」
伝票を。
「数」
「えっ」
再確認。
「合ってる」
「じゃなくて、数え方」
「は?」
「ラーメンは」
「それは」
普通は。
「一杯」
「作ってみて」
「え?」
そんな注文は。
「いいから!」
「……一杯だな」
しぶしぶ。
「はい」
「違う」
「えっ」
いや、確かに。
「さっきみたいに」
「さっき?」
ますます。
「チャーハンみたいに」
「ラーメンを?」
炒めろと。
「数え方!」
だから。
「やり直し!」
なんでだ。
「ほら、早く!」
くっ。
「はいよ!」
「違う!」
違わないだろ!
「ラーメン一丁!」
えっ。
「なんでよ!」
い、いや。
「そう言ってほしかったの?」
「じゃないと、つながらないでしょ」
何が。
「チャーハン一丁」
言った。
「ラーメン一丁」
そっちが言った。
「あのさあ」
真剣な。
「一『丁』って何?」
「………………」
しばし。
「何って」
単位?
「一『杯』じゃないの?」
えーと。
「ラーメン一杯!」
言って。
(うーん……)
しまらない。
「チャーハン一皿!」
もっと。
「な……」
がく然。
「一丁って何だ」
「フッ」
ようやくと。
「わかったようね」
わかった。
「おれ」
ためらいもなく。
「一丁って」
何だったら。
「豆腐」
「あー」
ラーメンと豆腐。
(何の)
関係が。
「あ、パンツ」
食べ物ですら。
「いや」
待て。
「パンツって」
一『枚』って数えないか?
「一丁って」
なんだ?
「ねー、まだー」
「まだ」
いいかげん。
「何時間歩くのさー」
うるさいって。
「三時間」
「マジかー」
「たった十キロだろ」
「『たった』って言った! 『たった』って!」
「車なら十五分だよ」
「じゃあ、車で行こうよ!」
いまさら。
「タクシー!」
通らないって。
「なんでさー!」
だから、いまさら。
「うー」
にらまれる。
「やられた」
「はいはい」
「はめられた」
何に。
「徒歩って」
しつこいなー。
「しまらない」
「えっ」
「でしょ」
何を。
「剣士が」
なんだ?
「徒歩移動って」
いやいやいや。
「犬歯?」
もっとつながらない。
「剣士?」
それにしたって。
「ていうか」
質問を。
「何移動ならいいんだよ」
剣士が。
「徒歩だって」
むしろ。
「魔剣でも?」
同じだって。
「聞いたことはないけど」
何移動って。
「自転車」
しまらない。
「自動車」
うーん。
「セグウェイ」
まさかの。
「イメージして」
そんなの。
(セグウェイに乗って……剣)
ありか?
「けど、普通は」
馬とか。
「電車」
乗車拒否だって。
「タクシー」
来ないって。
「地下鉄」
電車だろ。
「地下鉄はどこから入れたんだろう」
知らないよ。
「やろうよ」
何を。
「地下鉄」
意味が。
「地下を行けば、わざわざ地上を歩かなくても」
いい。
「あー」
それは。
「名案」
「でしょー」
「本物?」
指さして。
「やってみる?」
何を。
「やめとく」
いい予感が。
「やってみるー?」
じりじり。
「やらないって」
言って。
「ヤッテミルー?」
なぜ、エセ日本語風。
「ちょっと、チクッとするだけだから」
マジもんじゃん。
「けど」
本物の。
「魔剣」
ってわけじゃ。
「もちろんだよー」
どっちの。
「だからー」
何が。
「チクッと」
その時点で。
「拒否」
「それで」
済むと。
「………………」
じりじり。
「なんでさ」
緊張の。
「理由いる?」
いるだろ。
「………………」
いるのか?
(魔剣に理由)
超えて。
「理不尽」
「魔剣だもん」
そういうものか。
(因縁とか)
あっても。
(それは)
理由ではない。
それが、理由になっても。
理由そのものでは。
「あー」
混乱してきた。
「一言」
それでも。
「違うよね」
そもそも。
「剣じゃない」
それは。
「鋲」
というか、トゲというか。
ゴツい皮のブーツに付属した。
「チクッと」
「ない」
「ブスッと」
「ない」
「哀しき宿命が」
「ない!」
「長いねー」
長い。
「魔剣ってさ」
ん?
「長い……」
そうなのか。
「短いの?」
「いや」
それっぽくない。
(けど)
どんな。
「ぼーっとすんな!」
「っ……」
「危ないだろ、仕事中に」
そっちが。
「へいへい」
それでも。
「どれくらいかな」
また。
「長さ」
知らないって。
「何尺くらいあるかな」
「いや……」
尺で。
「センチとか」
「おれたちは大工だぞ」
そうだけど。
「一尺二寸の大太刀ってところか」
「え……」
一尺二寸。
「短くない?」
「横幅が」
「横幅!?」
落語か。
「魔剣だしよ」
そうだけど。
「長すぎると一人で持てないだろ」
幅広すぎるのも。
「この材木と同じで」
二人で持ってるが。
「気ぃ抜くなー」
へいへい。
「材木も魔剣も危ないのは同じだからなー」
いやいや。
「頭領」
「なに?」
「いや『なに』って」
おう! とか。
「木材」
「?」
「ってこと」
何が? という。
「だって」
同じって。
「魔剣が」
「はあ?」
何をと。
「剣だろ」
「剣だよ」
「鉄だろ」
鉄かは。
「木刀って」
ある。
「『木』ってついてるだろ」
ついてる。
「つかなきゃならねえってことは、木じゃないってことだよ」
あー。
「『黒い黒板』って言わないだろ」
言わない。
「剣って時点で」
それは。
「まあ、ノコと同じってことだな」
それは……。
「ついてない」
それは。
「何とかしないと」
いや。
「何とか」
できるのか。
「する」
断言。
「そういうのって」
常識的に。
「どうにもならないもんじゃない?」
「終わってる」
そこまでか。
「何とかする」
いやいや。
「できるの」
ていうか。
「してくれるの」
だって。
「占い師が」
答えは。
「占ったから」
そういうものか。
(けど)
興味も。
「どうにかするって」
どう。
「言ってない」
「えっ」
いや。
「何とかする」
ああ。
(って)
どう違うんだよ。
「ふぅぬっ」
こっちに向かって。
「ふぬぬぬぬぬぬぬぬ……」
なんかそれっぽい。
(おっ)
ちょっぴり。
「………………」
ん?
「何とか」
えっ。
「なった」
(い、いや)
実感が。
「……ありがとう」
それでも。
「ついてない」
「だから」
それは。
「よかった」
「………………」
どっちの。
「からあげって」
「ん?」
「からっとあがってるから、からあげ?」
たぶん、違う。
「名は体を表す」
言うけど。
「食べたい」
ない。
「べちゃあげ」
ない。
「ふぁらあげ」
ふぁ?
「ソがない」
わかりにくい。
「食べたい」
いいかげん。
「おとなしく」
つき出す。
「食え」
「食う」
のか。
「あぶらあげ」
そうだよ。
「べちゃあげ」
煮こまれて。
「食べた?」
「ん?」
「魔剣も」
何を。
「魔剣を?」
「魔剣も」
わからない。
「食べただろ」
適当に。
「そうかー」
うんうん。
「グルメ」
なのか。
「魔剣だもん」
そういうものか。
「まあ」
確かに。
「魂」
「?」
「とか」
あるじゃん。
「食べる?」
「魔剣が」
念押し。
「何味?」
「な……」
あるのか。
「試食したい」
軽い。
「お一つどうぞ」
ようじ刺しやすそうなイメージは。
「そうねー、あっさりしておいしいわねー」
一人二役。
(まあ)
こってりのイメージも。
「ごちそうさまでした」
礼儀正しい。
「言うでしょ」
言うか。
「人の常識として」
魔剣だけど。
「寒い」
「だめだ」
ダメ出し?
「だめだろう」
だめなのか。
「こんなに寒くては」
寒くては?
「寒いと言い出す」
堂々巡り。
「寒いし」
「だから、だめなんだ」
それは。
「どっち」
寒いことそのものか。
寒いと言っているこっちか。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」
聞くけど。
「火は火だ」
それはそう。
「涼しいと言っている以前にヤケドする」
その通り。
「……えーと」
なに、このオチも盛り上がりもない話。
「だめだ」
だめだよ。
「原因」
「えっ」
「寒いという」
それは。
「寒いから」
何の説明にも。
「冬だから」
否。
「温度が低いから」
再び。
「えー……」
もう、ないよー。
「あるから」
「え」
「寒い」
指を。
「それがあるから」
「………………」
なんだ、それ。
「『寒い』がなければ」
思わず。
「寒くない」
「だな」
そんな馬鹿な。
「寒い」
「ない」
あるだろう。
「だから」
強引。
「この会話も」
「えっ」
「寒くない」
サムいって。
「暑い」
「暑いっスね」
同意。
「おい」
「うス」
「脱げ」
「え……」
脱がないし。
「暑いっスね」
話を。
「まあ」
苦笑。
「暑いのに脱いだら丸焦げになるよな」
「え」
日焼け?
「服着てても燃えちゃったら同じだしな」
「………………」
えーと。
「ファイアー」
のほうの『熱い』?
「戦いって熱いよな」
とぶなー。
「魔剣って熱いか」
だから。
「魔剣は」
とっさに。
「……ん?」
イメージが。
「熱いっスかね」
「聞くなよ」
そりゃそうだ。
「冷たい」
っていうのも。
「斬れば」
手に。
「やってみるか」
「いやいや」
アブないなー。
「質問っス」
そらすしか。
「斬られると、最初はスッと冷たくなるカンジじゃないスか」
「だな」
じりじり。
(しまった)
そらせてない。
「それがじわじわ熱くなってきて」
「うん」
じりじり。
「熱いとか冷たいとかカンケイないっスよね!」
もはや。
「うん」
(え……)
止まって。
「熱いとか冷たいとか」
振りかぶり。
「一発でイッちゃえば」
(やっぱり……)
ズバンッ。
「おらおらー、球走ってないぞー!」
言われたって。
(こっちは)
ズバンッ!
「ぜんぜんダメだってー!」
(ダメとか)
言うな。
「あーあ」
空を。
「おい!」
こっちに。
「どうした、エース」
言うなって。
「なんだか」
正直。
「わかんなくなってきた」
「何?」
マスクを。
「わからない?」
「だろ」
手の中の。
「球」
心から。
「なんで投げてるんだろって」
「なんで」
首を。
「……あー」
言いよどむも。
「そういうもんだろ」
そういうものかよ。
「おい、エースぅー」
それも。
「エースとか」
そんなの。
「同じだし」
「同じ?」
「誰が投げても」
球は球。
「創造性がないっていうか」
「おー」
感心の。
「さすが、エース」
いいって。
「よっ、エース」
逆に。
「創造性が」
きっぱり。
「ない」
「おー」
わかってるのか。
「投げるだけだし」
「いやいや」
そこはと。
「いろいろあんじゃん」
変化球?
「ないよ」
速いとか曲がるとかそのくらいで。
「魔球とか」
「ま……」
魔球!?
「あるだろ」
「いやいやいや」
マンガか。
「好きだったなー、超人ウルトラベースボール」
何歳だ。
「やろうぜ」
やる?
「魔球」
簡単に。
「ないし」
「ない?」
「ないだろ」
「魔剣はあるのに」
それは。
「そうだけど」
これとは。
「行こうぜ」
行く?
「魔球探し」
見つけに。
「七つ集めると願いが」
そのボールか。
(まあ)
ぽくはある。
「魔球の伝説」
キュウが。
「寒いなー」
急に。
「やめて」
あたしたちの。
「降るなー」
たぶん。
「ホワイトアウト」
「は?」
そこまでは。
「シラけたー」
「………………」
その通り。
「才能ないのかな」
「才能?」
「笑いの才能」
なんだよ。
「あるの?」
「ないから」
「じゃなくて」
存在そのもの。
「神さまみたいなもんじゃん」
「笑いの?」
違って。
「いるんだかいないんだか」
あるんだかないんだか。
「売れてるやつは才能あるの?」
「ある」
断言するなー。
「売れてないあたしらは」
「ない」
断言か。
「じゃあ」
やる意味が。
「さーて」
コキコキ。
「ネタ合わせやるかー」
「えっ」
やるの?
「はい、どうもー」
「……違う」
「違うかー」
腕組み。
「もっとキャッチーな入りを」
「違うって」
ないんじゃ。
「いらないじゃん」
「え……」
「才能」
「………………」
だって。
「いるでしょ」
「なんで」
なんでって。
「売れるから」
「売れるためにお笑いやってんの?」
……おい。
「ウチらは売り物か!」
笑えない。
「売れなくて」
意味って。
「おもしろくないほうもやるからおもしろい」
え。
「百パーセント」
合わせて?
「………………」
なんだか。
「やろっか」
他に。
「よーし、やるぞー」
腕まくり。
「なに、その気合」
「負けないし」
何に。
「魔剣に負けん」
つまらん。
「子どもって」
「えっ」
思わず。
「できた?」
「………………」
しまった。
「罠だよね」
意味深。
「罠だよな」
とりあえず。
「………………」
(おう!?)
めっちゃ見られてる。
「罠……」
どういう。
「どう思う?」
聞かれた!
「こ、子どもと罠だよな」
動揺。
「危ない」
「え」
「子どもが引っかかったら」
「………………」
外した!
「す、好きだよな」
見られてる、見られてる。
「落とし穴」
「………………」
「とか」
どうだ?
「本能」
「えっ」
「かもね」
落とし穴が?
「だよな」
モグラか。
「竪穴式住居」
あれも。
「………………」
はずした!
「え、えーと」
もう。
「罠なんだよ」
何が。
「子どもそのものが」
「えー……」
超えてる。
「そのものが?」
「そのものが」
そうなのか。
「何に対する?」
「わたしたちよ」
見えない。
「……まあ」
知ってる。
「魔剣で戦ったのも」
親子。
「罠だな」
「罠なんだよ」
なんだか。
「菜種油」
いきなり。
「見たことある?」
「えっ」
「菜種」
ない。
「菜種から取ったから菜種油なんだよね」
たぶん。
「サラダ油」
は。
「サラダはわかるよ」
わかるんだ。
「菜種だって」
いまは。
「何の種」
「は?」
だから。
「菜……の」
「何の菜」
だよなあ。
「菜の花」
だったと。
「じゃあ『菜の花油』じゃないの」
うーん。
「ごまはごま油」
うん。
「大豆は大豆油」
そう。
「サラダはサラダ油」
いやいや。
「なんで、菜種油だけ菜『種』?」
それは。
「菜の花そのものじゃなくて、種を使ってるから」
「ひまわり油は」
あー。
「ひまわり『種』油」
正確には。
「さあ、どうする」
なんで。
「日清オイリオの人に聞けよ」
「他人じゃん」
そうだろうけど。
「問題ある」
あるか。
「そもそも、菜の花って何」
「は?」
そこから。
「見たこと」
「あるよ」
当然。
「なんで、あれが『菜の花』」
なんでって。
「ないし」
ない?
「菜」
それは。
「菜……」
って。
「野菜全般のことを言うんじゃ」
「菜の花って野菜?」
微妙。
「あ」
そうだ。
「野菜みたいに食べる花だから」
それで。
「菊って食べるよね」
食べるよなー。
「そもそも野菜って『野』菜じゃないよね」
そっちにも行くかー。
「魔剣も『魔』剣じゃなくて」
何なんだよー。
「『魔』って何だ」
主に聞け。
「ねー、待ってよー」
待たない。
「平気だってー」
平気?
「天気」
天気?
「明日は晴れ」
誰が。
「気象庁」
それなら。
「明日予報はいつも晴れ」
ない。
「おれが変えるさ」
変えるな。
「気象衛星に頼んで」
機械任せか。
「雨ごいより確実」
まあ、神さまに頼むより。
(いや)
変わらんて。
「ゲタ」
「へ?」
次から次に。
「頼もう」
ゲタに。
「あーした天気になーれ」
あー。
「てゆーか、晴れでも雨でも天気は天気だよね」
普通は晴れのことを。
「天気予報はいつも晴れ」
あー。
「ゲタ」
まだ。
「貸して」
「えっ」
「ゲタ」
おれは番長か応援団長か。
「ないって」
「下駄箱は使うのに」
使うけど。
「ゲタはない」
普通。
「しょうがない」
やめるのか。
「自分のを」
履いてるのか。
「あーした天気に」
ぽーん。
「あ」
表。
「あーした天気に」
「えっ」
両方で。
「お」
裏。
「……えーと」
こういう場合。
「つか、二回やることなかったんじゃない」
「二つあったから」
ゲタが。
「魔剣と同じ」
あっちも二つだけど。
「放らないだろ」
「戦わせはする」
するけど。
「どっちが晴れでどっちが雨?」
知らないって。
「どっちが天気?」
ないって。
「お客さん?」
「はあ」
何だと。
「配達の人かと思った」
あー。
「こんな格好だから」
「そんな格好だから」
悪かったな。
「どうぞどうぞー」
入れてはくれるのか。
「あっ、お写真はだめですよ」
そういう。
「店長が美人だからってー」
どういう。
「撮らないです」
どちらにしろ。
「なんで!?」
そんなにか。
「あー」
ベタなのはいいから。
「メニュー」
「ないです」
そういう。
「練乳なら」
頼まない。
「うち、そういう店じゃないんで」
どういう。
「えー」
じゃあ。
「今日のランチ」
的な。
「ないです」
何もないな。
「何が」
あると。
「そば」
そば屋だったのか!
「じゃあ、それ」
「どれ?」
だから。
「わかりました!」
わかったのか。
「ソーセージ天そば一丁!」
ソーセージ天!?
「あいよ!」
一人芝居。
「あ……」
作り始められる。
(何なんだ)
ソーセージ天。
「お待たせしましたー!」
早いな。
「……あー」
魚ソ。
「お客さん、初めて?」
ベタだって。
「セットでこちらも」
もう一杯!?
「双生児」
ひどい。
「サービスです」
何なんだ、この店は。
(まあ)
サービスならいいけど。
「いただきます」
「めしあがれ」
一々からむなー。
「………………」
普通。
「お味はどうですかー」
だから。
「魚ソです」
以上でも以下でも。
「魚ソなんですよー」
よかったのか。
「あー、この味この味」
食べるのか!
「二つあるでしょ」
自分の分か。
「ごちそうさま」
そして、早い!
「じー」
ほしいのか。
「二つあるし」
あるけど。
「……じゃあ」
差し出す。
「よかったでしょ」
「えっ」
「サービス」
どういう。
「二つあればケンカしない」
ああ。
(って)
どっちも食べられてるんだけど。
「ゆきはふる~♪ あなたはこない~♪」
ビシッ!
「雪ふったんだから当然だろ!」
ああ。
「電車止まったんだって!」
なるほど。
「ゆーきやこんこん、あーられやこんこん♪」
ビシッ!
「雪とあられは同時に降らない!」
一人ボケツッコミ。
「『こんこん』なんてオノマトペはない!」
雪がこんこん降るとは。
「キツネか!」
コンコンだし。
「北国か!」
おー。
「あられはあり得る!」
硬いから。
「それとも『来ん来ん』!?」
そっちの。
「だから『あなたは来ない』!?」
おおー。
「さー、肩慣らし終わったところで」
ところで?
「寝るか」
寝るのかよ。
「いーぬはよーろこび、にーわかーけまーわり~♪」
えっ。
「庭はない!」
ない。
「さーて、肩ならし済んだところで」
二度目?
「肩は鳴らない!」
いや、鳴ることも。
「パーカッション!?」
肩ではあまり。
「こいびとはサンタクロース♪」
続くな-。
「トナカイ?」
つきあってたのか。
「愛馬って言うし」
愛人的な意味では。
「愛トナカイ?」
ない。
「愛・地球」
壮大だなー。
「動いてなくちゃな、だめなわけだよ」
うんうん。
「こうやって」
えっ、どこ?
「まばたき」
そこか。
「舌」
しゃべってるからね。
「まあ」
舌は。
「選挙なんだから」
「だろう」
ドヤ顔か。
「それで、先生」
「なんだね、秘書」
なんだ、このやり取り。
「自分スか」
「は?」
「いや」
選挙なんだから。
「一票」
入れるの。
「……あるの?」
きょとん。
「候補者に一票」
「ないんスか」
「知らない」
いいのかよ。
「あるとして」
仮定か。
「おれはおれに入れないね」
「おー」
公平感とかそういう。
「めんどい」
おい。
「選挙とかってさー、なんかたるくね?」
候補者が。
「やるのは楽しいけどさ」
やる?
「立候補」
楽しいか?
「スポーツとかもさー、見るよりやるほうが楽しいっていうか」
一緒か。
「あ」
でも。
「どっちが」
「え?」
「選挙」
やってる。そう。
「……えーと」
思案。
「じゃあ」
驚きの。
「おれたち、観客?」
そういうことでも。
「応援するの?」
誰を。
「ふれー、ふれー」
だから、誰を。
(まあ)
こちらは『応援』の立場だけど。
「選挙戦」
凛々しく。
「戦ってるのはおれらだから」
選手ということ。
「でも、何もできないんだよなー」
えっ。
「実際、勝負決めるのは投票者なわけじゃん」
まあ。その権利は。
「選挙権」
そう。
「選挙剣」
何?
「必殺の」
生かすも殺すも。
「それを持ってるのはおれたちじゃないわけで」
確かに。
「殺されるのはどっち?」
無防備で。
「もう食べられない」
「一生?」
一生ではない。
「死んじゃったら」
一生自体が終わってる。
「満腹」
ってこと。
「お腹いっぱい」
そうだよ。
「小腸とか大腸の中も」
そこまでじゃ。
「肝臓や腎臓の中も」
入らない。
「胃!」
決まってて。
「満胃?」
なに『マンイ』って。
「満胃電車にご注意ください」
えー。
「押しこめば」
ラッシュか。
「デザートは別腹」
言うけど。
「女性専用車両?」
主にそうだけど。
「女同士」
ポンポン。
「話し合おう」
示談交渉?
「あるんだってねー、女同士でもチカン」
そうなんだ。
「LGBT的に」
そんなとこで。
「気をつけろってハナシ」
抱き寄せ。
「恋人同士なんだから」
そうだけど。
「間違えたー!」
がくぅぅんっ!
「そこまで」
ショックか。
「ヤじゃん」
ヤだけど。
「なんで、間違えっかなー」
なんでって。
「理由だよ」
知らんよ。
「そんなことより」
いまは。
「なんでだかなー」
引きずってるなー。
「いいから」
「よくないだろ」
かもしれないけど。
「よくない」
きっぱり。
「どうすればいい」
どうって。
「間違えないように」
「何の解決にもなってないだろ」
確かに。
「そうするための方法を」
「正しいをなくす」
「お」
食いつかれた。
「じゃあ、がんばって」
「投げっぱなしか!」
なんとなく。言っただけで。
「正しいがなければ、間違いもないじゃん」
「おー!」
そんなにか。
「がんばって」
「どう?」
どうって。
「正しくなくなれば」
「それ、間違ってんじゃん」
そうなるか。
「なくなれば」
何も。
「あー!」
納得の。
「そう」
いらないんだ。
「はーい、笑ってー」
笑えない。
「笑うってさー」
ごねる。
「写真にうつる絶対条件じゃないよね」
「そう?」
不思議そうに。
「『チーズ』で笑うじゃん」
「なんで」
そもそも。
「チーズに笑う要素ないじゃん」
「トムとジェリー」
あー。
「笑う『要素』だけど」
「笑ってー」
だから。
「笑わなくてもいいってハナシ」
「不吉」
「は?」
「笑わない写真」
不吉?
「想像して」
何を。
「笑わない写真」
そんなの。
「遺影」
ブッ!
「それは」
不吉だけど。
「あっ、でも待って」
気づく。
「遺影って、軽く笑ってるくらいの写真使うじゃん。しかめっ面ってないじゃん」
「チッ」
引っかけか。
「指名手配」
「う……」
それは。
「されたい?」
なんでだ。
「心霊写真」
それも。
「って」
待て待て待て。
「笑ってるかもしれないじゃん」
「見たことある?」
ないけど。
「つか、『心霊』って何さ」
「そこから?」
だって。
(心の霊……)
よくよく考えると。
「心って霊になる?」
「心が霊なんだろ」
じゃあ。
「心写真」
「ない」
「真心こもった」
不吉はどこに。
「甘いな」
甘いか。
「人の心なんて本当はドロドロぐちょぐちょで」
だろうけど。
「おまえの欲望を写真にぶちまけろ!」
なんでだ。
(どちらにしろ)
笑えない。
「またー?」
うんざり。
(ん?)
なんだ。『うんざり』って。
(ざり……)
置き『ざり』とか言うけど。
「おい」
「言い分けは聞かない」
「言い分けはしない」
「よろしい」
「ありがとう」
じゃなくて。
「えー……」
どう聞く?
「うんざりした?」
「は?」
「こんなおれに」
「そこまでじゃないけど」
そこまであれよ。
「わかんないじゃん」
「はぁ?」
「うんざれよ」
「………………」
重い。
「した?」
「した」
よし。
「どんな」
「は?」
「だから」
気持ちとか。
「うんざりしてる」
それはわかったから。
「具体的に」
「具体的?」
めんどくさそうに。
「いま、ますます」
具体的って言ってんだろうが。
「やんなる」
お。
「なんで、結婚したんだろって」
そこまで。
「うんざるなよ」
「あんたがうんざれって言ったんでしょ」
「うんざりすぎだよ」
「うんざりすぎないうんざりってあるの?」
「うんざれるなよ、もう」
これが。
「あー」
共に。
「うんざり」
「クイズです」
唐突だなー。
「いま何問目でしょう」
「一問目」
いま始めたし。
「ブッブー」
なんでだよ。
「罰ゲーム」
だから、なんでだよ。
「クイズって十回言ってください」
どういう罰だ。
「ほら」
いいけど。
「クイズクイズクイズクイズクイズクイズクイズクイズクイズクイズ」
「斜めにしてください」
「は?」
「十を」
十……を?
「×」
なるけど。
「×ゲーム」
「あー」
じゃなくて。
「はー」
なんで、そっちがへこむ。
「罰だから」
「えっ」
「自分への」
自分?
「ゲームって無駄に十回聞かされた」
それが罰か。
「辱めを受けた」
だから、なんでだ。
「間違えた」
ため息。
「問題を」
「問題?」
「『いま何問目か』じゃなくて」
なくて?
「いま何話目でしょう」
「ハンバーグ」
「ヘ?」
なんだって?
「どう?」
こっちが聞きたい。
「子どもっぽい?」
子ども――
「子どもといえばハンバーグ」
そうとは。
「大人だって食べるだろ」
「ハンブルク人?」
そんな人種はない。
たぶん。
「大体」
子どもがハンバーグとかカレーとか。
「いまは」
他にも。
「何?」
「寿司とか」
「えー」
いや、マジで。
「回転寿司とか多いじゃん」
「多いけど」
だから。
「子どもは減ってるじゃん」
関係ない。
「いま、子どもっぽいとかあんまりないんだって」
「そうかなー」
そうだって。
「アニメとかゲームとか」
大人だって。
「魔剣とか?」
それは厨二っぽい。
(まあ)
厨二ももはや。
(大体)
あるし。
「魔剣」
現実に。
「信じられない……」
「何が」
「神様」
無神論者か。
「あ、いや」
逆に。
「信じてる?」
「えっ」
「信じられないって」
信じてたから。
「……えーと」
考える。
「信じてるのかなぁ」
聞かれる。
「オー・マイ・ゴッド」
欧米か。
「オー・マイ・コンブ」
秋元か。
「言うよね」
前のほうは。
「信じてる?」
だろ。
「つか、クセじゃね?」
……まあ。
「ああ、神様仏様」
言うやつも。
「南無三」
それは。
「けど、信じてるから」
戻る。
「無意識に」
「無意識!?」
そんなにか。
「意識してないの?」
無意識だから。
「勝手に?」
まあ。
「宿命!」
そこまでか。
「誰が」
誰が?
「えーと」
どちらの。
「無意識に意識してるのは」
「どっち!?」
うん、まあ。
「意識させてるのは」
させてるのは。
「……えーと」
誰だ。
「神様」
あー。
「伝統」
「どれくらい」
「五秒」
短い。
「伝説」
「いつから」
「いつか」
予定か。
「宇宙の時間に比べれば」
大きい。
「同じ」
そうだけど。
「宇宙規模の伝統」
認識できない。
「ビッグバン」
あれって伝統なの。
「くり返し、くり返し」
そうなの?
「同じことを」
よく知らないけど。
「伝説」
こちらを。
「伝説」
自分を。
「伝説同士」
知らなかった。
「誰が伝えるの」
「伝わる」
伝わる?
「テレパシー」
あるのか。
「宇宙人の」
あるか。
「光より早く」
そうなのか。
「誰に」
思わず。
「ぼくたちに」
そうなんだ。
「これが」
得物をかかげ。
「アンテナさ」
そうか。
「二つの」
伝わらない。
「そう」
一つでは。
「あー、めんどくさい」
面倒は。
「くさい」
「あ?」
「何が」
真顔で。
「くさいんだ?」
「………………」
フリーズ。
「……か……」
がく然。
「考えたことなかった」
うん。
「ある?」
「えっ」
「かいだこと」
におい?
「面倒くささ」
あるのか。
「くさいっていうから」
いやいやいや。
「そっちの」
くさいじゃなくて。
「っぽい」
「?」
「のほうだろ」
停止。またも。
「名作」
のほうでもなく。
「嘘くさい」
とか。
「言うだろ」
「言う」
「嘘っぽい」
同じだ。
「嘘っぽいっていうのは、嘘らしいっていうことで」
くさいも。
「面倒らしい」
「そう」
「面倒なの?」
そう。
「らしいって」
そこが。
「面倒くさい」
うーん。
「面倒っぽい」
そういう。状況は。
「嘘くさいって、どんなにおい?」
混ぜ返すな。
(面倒かもしれないっていう状況……)
それは。
「すごく、めんどくさい」
「だな」
「わかってるってー」
スマホ片手に。
「わかってる、わかってる。じゃーねー」
通話終了。
「ごめんね、待たせて」
「いいけど」
それより。
「何?」
「えっ」
「いや、いまの」
「あ、いまの」
手に。
「スマホ」
わかってるって。
「じゃなくて」
内容? っていうか。
「あー」
うなずく。
「わかった、わかった」
「うん……」
わかってくれたなら。
「それで?」
「えっ」
「だから」
まどろっこしい。
「いまのだよ」
「あー」
手に。
「スマホ」
わかってるから。
「機種変して」
どうでもいい。
「いまのが」
何なのかって。
「どの『いま』?」
「え」
「いやいや」
ひらひら。
「わからないから」
わからないかよ。
「わかってるって」
言ったじゃん。
「わかってる、わかってるー」
それ。
「じゃあ」
何が。
「何が?」
「は?」
逆に。
「『じゃあ』って」
「な……」
もはや。
「わからない」
「わかってる、わかってるー」
「風がストロング」
「えっ」
なんて。
「布団がふっとロング」
重ねた。
「ストロング・スタイル」
そういう。
「よし、来い!」
どうして。
「誰の挑戦でも受ける」
じゃあ。
「花粉も」
こっちの分まで。
「風がストロング」
いや、この場合。
「花粉が」
ストロング?
「よし、来い!」
さっさと。
「どこだ、花粉!」
見えんて。
「ここかー?」
だから。
「うおらぁっ!」
チョップ。
(……き……)
効かないだろう。
「ナイス・バウト」
何が見えて。
「ヘイヘイ、花粉、ビビってるー」
こっちがビビってるよ。
「ヘイ、タッチ」
「ヘ?」
振るな。
「ロープに振ってー」
振れるか!
「マウント!」
できるか!
「ダイキン!」
「!?」
「吸って!」
いや、吸ってるからこんな。
「カッフーーン!」
素敵なくしゃみ。
「お」
目を。
「来た」
来たか。
「涙が」
号泣。
「涙が止まらない!」
花粉症だし。
「感動した!」
好きに。
「この戦いに!」
戦って。
「身体と身体をぶつけあった!」
確かに。
「ありがとう!」
感謝か。
「……あー」
空を。
「止まらない」
涙が。
「いつまで続くんだ」
「そんなの」
終わるまで。
「だめだー」
「そうなんだ」
「だめだ」
ダメ出し?
「だめだって言ってんじゃん」
「うん」
「ぐだぐだだなー」
そうなのか。
「『どうしたの』とかさ」
「どうしたの」
「遅いよー」
どうしろと。
「やり直し」
どこから。
「ほら」
うながされても。
「だめだなー」
そんなにか。
「ダメダメ言うな」
さすがに。
「じゃあ、何て」
「えっ」
何て。
「普通に」
「おい、普通」
それもヤだし。
「大体、普通って何よ」
反抗期か。
「普通は」
普通で。
「えーと……」
他にある?
「だめだなー」
また。
「だめってのは」
指を。
「普通じゃないってことだろ」
「それは」
そうだよ。
「心配しろよー」
「えっ」
「普通じゃないんだから」
「うん、まあ」
それはそれで。
「だめだなー」
(もう……)
どっちなんだよ。
「待たれよ」
「えっ」
時代劇?
「そなた」
時代劇!?
「見覚えはないか」
「へ?」
「我に」
ぜんぜんない!
「よく見よ」
怖い、怖い!
「見よと言うに」
じれったそうに。
「では、想像せよ」
「は!?」
想像って。
「声は聞こえているのだろう」
一応。
「目に見えぬのなら」
ぐっ。
「心の目で見るのだ」
なに、その達人的な注文!
(え、えーと)
思わず。
(つか、やるなって)
無理だし。
(時代劇……)
完璧にそのイメージしか。
(えっ、刀?)
完全にヤバいじゃん。
(ヤイバだけに)
くだらない!
「集中せよ」
「……!」
「雑念をもってはならん」
修行か。
「静かに目を閉じて」
目を閉じて。
「何か見えるか」
馬鹿にしてんのか。
「心の目で」
(だから)
そんな覚醒的な。
「見えぬか」
見えないって。
「それが我だ」
「えっ」
目を。
「あ……」
そこに。
「見えない」
「そうだ」
何も。
(心の目でしか)
むしろ。
「うース」
「ちース」
「お願いしゃース」
「おなしゃしゃしゃース」
待て。
「何て言った」
「えぁ?」
大丈夫か、こいつ。
「何て?」
「そうだよ」
「あー」
ポリポリ。
「なんとなく」
「なんとなくかよ」
「フインキ」
雰囲気。
「ぶっちゃけ」
何だ。
「イミフ」
次々。
「なんスか」
こちらに。
「『うース』って」
「え……」
それは。
「えーと」
何だ?
「馬鹿にしてません?」
言われるか。
「馬鹿には」
してないと。
「そんな言葉あるんスか」
ないよ。
「けど」
ないものを。口には。
「何語っスか」
何語!?
「えーと」
いやいや、真面目に。
「日本語……」
では。
「ここ、日本スか」
「ええっ!?」
まさか。
「そんなの」
当たり前。で。
「………………」
どこだ。
(……誰だ)
おれたちは。
「しーん」
ん?
「あるよね」
ある?
「音」
……え?
「しーん」
「………………」
「言ってるし」
言ってる。
「しーんとしてないし」
あー。
「そもそも」
指を。
「音がないのに、なんで『しーん』なんて言えるわけ」
言える?
「聞いてないでしょ」
ない。
「どこから」
『しーん』が。
「えー……」
昔から。
(でも)
その『昔』はどこから。
「むかしむかし」
「昔話か」
まったくで。
「聞こえたのかも」
「えっ」
「『しーん』って」
昔は?
「それが本当の『しーん』だったのかも」
本当の。
「世界は『しーん』だったんだよ」
すべて。そこから。
「しーん」
「しーん」
『し』と『ん』。
その二つ。
から。
「わーい」
「………………」
え?
「おい」
真剣な。
「うれしいか」
う、うれしいか?
「『わーい』じゃん」
言ったけど。
「言うだろ」
うれしいとき?
「わくわく」
「……お……」
「したか」
しない。
「うーん」
腕組み。
「この『うーん』も」
わかったから。
「何なの」
立て続けの。
「いやさ」
戸惑ったよう。
「なかった?」
何が。
「こういうの」
こういうの?
「いままでにも」
いままでに。
「えーと……」
あった。ような。
「わからない」
だって。
「どうでもいい」
たかが。
「眠い」
「寝れば」
「わかった」
聞き分けのいい。
「寝れない」
「えっ」
「眠いけど」
寝れない。
(って)
そんなことあるか?
「眠いよー」
わかったって。
「病気?」
そんなことは。
(……あっ)
あるのかも。
「熱は」
ある。
(けど)
眠いとき、身体ってよくあったかくなるから。
「死ぬの?」
死にはしないと。
「死んじゃう」
だから。
「間に合わないと」
は?
「間に合わせるぞー」
何を。
「寝ないぞー」
寝『ない』?
「……あ」
ようやく。
「寝れないんだ」
身体の問題でなく。
その外の。
「あっ」
でも。
「『わかった』って」
「………………」
「おい」
「……くー」
「おい!」
「あ……わかった、わかった」
何が。
「夢だったんだ」
夢?
「わかった……」
って、また。
「くー」
「………………」
おやすみなさい。
(って)
釈然と。
(わかんねえよ)
こっちは。
(夢……)
何が。
(全部が)
夢?
「腹はへらない」
何だ?
「でしょ」
同意を。
「いや」
減るだろ。
「へらない」
一生食事しなくても大丈夫な人なら。
「あるし」
ある?
「ふえたり、へったり」
増える?
「腹がふえる」
減るの逆。
「ない」
確かに。
「腹はへってない」
「あー」
ようやく。
「いや、腹そのものが減るって話じゃないだろ」
「何がへる?」
何が。
「食べたもの」
じゃ。
「へらない」
だな。
「移動する」
だけ。
「胃の中身が」
まあ。
「最終的にはへるけど」
いいって。
「腹そのものはへらない」
その通り。
「腹の中が減る」
「へらない」
その通り。
「何が」
減るのか。
「脂肪」
「おっ」
結果的に。
「腹がへる」
結果。
「リバウンド」
ダメじゃん。
「終わらない」
くり返し。
「黒って色じゃないよね」
ん?
「白も」
んー。
「からいと同じ」
んん?
「味じゃない」
「じゃあ」
聞く。
「何?」
「存在」
「存在?」
「ありなし」
んんー。
「黒はあり?」
「なし」
「なし?」
「白があり」
手を。
「光あれ」
あー。
「けど」
空白。
「ないってことだよね」
「ある」
「ある?」
「ないってことが」
んんんー?
「どっち?」
「ないがある」
だったら。
「あるは?」
「ある」
じゃあ、全部。
「あるんだよ」
あっさり。
「白黒はつけられない」
「空白の時」
言うけど。
「まさにいま」
空白なのか。
「ほら」
何が。
「わかる?」
何が。
「わからない」
そう。
「わからないから」
共に。
「始められるんだ」
二つ。
二つ。
『普通(二つ)の物語』
全部。
ロールプレイ。
『役割』の。
「結局さ」
カンケイ。二人の。
平行世界。
終わらない。
殺しても、殺されても。
「いや」
最後だけ違う。
「二つの」
「ゼロは」
∞
終わらないーー
ぶレイド×ブれいど