まって

風が強い日だった。
向かい風で、整えた髪が無惨に崩れながらも前へ進み続けるのだ。
右手にスマホ、左手にドリンクカップ
右脇に封筒、左脇にゴミを挟んでいる。
本当に風が強かった。
目の前から飛んできた小蝿が目に直撃し、激痛と暗闇が襲う。
そうするとバランスを崩して、800円以上したドリンクがこぼれ、左手と服の裾が汚れる。
そこで左手に意識を向けると、左脇に挟んでいたゴミが華麗に舞い上がり、後方へと逃走。
慌てて拾いに行こうとすると今度は大切な右脇の書類が逃亡。
ゴミと書類
世間的に拾われて欲しいのはゴミで自分として必ず拾いたいのは書類。板挟み。
ごうごう唸る風のせいで口に髪の毛が入りむかつく。
情けなくも、ふと気づく。
なんでこんな目に遭ってまで自分はスマホを握りしめているのだろう。
風に背中を押される。
左手のドリンクはまだわずかに中身が残ってる。それを地面に置いて、スマホはポケットにしまいこむ。
そしてゴミと大切な書類を拾いに身軽になって駆け出した。

まって

まって

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-08-21

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