妖怪シェアハウス
登場人物
清水 明子(しみず めいこ)
人間・学生。
臆病で流されやすいが、根は強い。
個性の強すぎる住人たちに囲まれ、必然的にツッコミ役へ。
鍔木 乙女(つばき おとめ)
二口女。芸人の卵。
おしゃべりモンスター。ムードメーカー。食べるのが大好き。
人見の悪戯の被害者No.1。
花咲 小春(はなさき こはる)
口裂け女。化粧品メーカー勤務。
美容と綺麗でいることを大切にする。
面倒見のいいお姉さんタイプ。モデルをすることも。
内田 人見(うちだ ひとみ)
ぬっぺふほふ。料理研究家。
おっとりした性格で包容力があり、料理上手。
人の面倒を見るのが好き。
ただし、料理に自分の肉を紛れ込ませる悪戯が大好き。
目黒 天(めぐろ そら)
烏天狗。学生。
寡黙で天然ポンコツ。本人に自覚はない。
趣味は人間観察。よく人を見ていて、意外と気が利く。
ただし、気遣いの方向が少しズレている。
味覚音痴で、なんでも美味しく食べる。
「今日から妖怪と暮らします」
――新しい家
0:薄暗い道。
0:明子が一軒の古びた家の前に立っている。
明子:
「今日からここに住むんだ……」
明子:
「ここで間違いないよね?」
明子:
「なんか……凄くおどろおどろしいんだけど……」
0:明子は手元の地図を確認する。
0:住所を確認する。
明子:
「……うん。合ってる」
0:新しい土地に来た緊張のせいだ。
0:そう自分に言い聞かせ、明子は玄関のドアノブに手をかける。
――その瞬間。
SE:カァー……カァー……
明子:
「うわっ!?」
0:明子が驚いて振り返る。
0:鳴き声のした方を見る。
0:そこには、一羽のカラスがいる。
0:カラスは、まるで明子を値踏みするようにじっと見つめている。
明子:
「あれ……?」
明子:
「ホントに大丈夫だよね?」
明子:
「なんか、あのカラス……」
明子:
「ずっと私のことだけ見てきてる気がするんだけど……」
0:明子の額に冷や汗が浮かぶ。
0:身体が強張る。
――その時。
SE:ドタドタドタ……
0:家の中から、慌ただしい足音が聞こえてくる。
ガチャッ!
乙女:
「いらっしゃーい!!」
乙女:
「君が例の入居者かい!?」
乙女:
「そうだろう!? そうに決まってる!」
乙女:
「長旅ご苦労様だったね!」
乙女:
「お茶でも入れるから、上がりなよ!」
0:怒涛の勢いで喋り続ける乙女。
0:明子は完全に圧倒されている。
明子:
「お、お邪魔します……」
乙女:
「こらこら!」
乙女:
「お邪魔しますなんて、寂しいこと言うなよー!」
乙女:
「今日からここは、君の家でもあるんだよ?」
乙女:
「なら、言うべきことは一つじゃないかな?」
乙女:
「ん~?」
明子:
「た、ただいま……?」
乙女:
「おかえり!」
乙女:
「お風呂にする? ご飯にする?」
乙女:
「そーれーとーもー?」
乙女:
「私♡♡♡?」
乙女:
「なんてね!」
乙女:
「さぁさぁ、早く上がって!」
0:明子、苦笑い。
明子:(心の声)
「初対面で凄く喋る人だなぁ……」
明子:(心の声)
「最近見たホラー映画で、獲物を取り込む悪者みたい……」
明子:(心の声)
「いやいや、そんなまさか(笑)」
明子:(心の声)
「きっと緊張を解すために、フレンドリーにしてくれてるんだよね!」
⸻
――カラス
明子:
「そういえば……」
明子:
「よく私がドアの前にいるって分かりましたね」
明子:
「どこからか見てたんですか?」
乙女:
「ん?」
乙女:
「あぁー……」
乙女:
「天ちゃんが教え……」
乙女:
「……じゃなくて!」
乙女:
「なんとなく来てる気がするって、勘で向かっただけだよ!」
明子:
「へぇー……」
乙女:
「まぁまぁ、そんなことはいいじゃない!」
乙女:
「早くリビングに行こうよ!」
乙女:
「ひとみんが今日に備えて焼いてくれた、美味しいクッキーがあるからさ!」
乙女:
「それでも食べながら、お喋りしよう!」
明子:
「手作りクッキーですか?」
明子:
「それは楽しみです」
乙女:
「毒味は任せて!!」
明子:
「毒味?」
明子:
「料理、苦手なんですか?」
乙女:
「いや?」
乙女:
「家の料理番になってても、おかしくないくらい美味しいよ!」
明子:
「え?」
明子:
「それなのになぜ?」
乙女:
「たまに、変な物を入れたがるイタズラ好きの人なんだよ」
乙女:
「それさえなければねー」
明子:
「あはは……」
明子:
「そういう人、いますよね~」
⸻
――小春
乙女:
「サキちゃーん!」
乙女:
「新入りさん来たよー!」
小春:
「あら、随分早かったわね」
乙女:
「サキちゃん、控えおろう!」
乙女:
「こちらが新しい入居者の~……」
乙女:
「……あれ?」
乙女:
「名前なんだっけ?」
明子:
「そういえば、まだ名乗ってなかったですね」
明子:
「今日から一緒に住まわせてもらいます」
明子:
「清水明子です」
明子:
「明るい子と書いて、めいこ」
明子:
「よろしくお願いします!」
小春:
「乙女……」
小春:
「貴方、その名前を聞く前からマシンガントークする癖、治しなさいよ」
乙女:
「えへへ~♪」
乙女:
「二人ともゴメンね~」
0:乙女が照れ臭そうに頭を掻く。
小春:
「全く……」
小春:
「それじゃあ改めて」
小春:
「私は花咲小春」
小春:
「歓迎するわ」
明子:
「よろしくお願いします!」
0:二人が握手をする。
乙女:
「はいはーい!」
乙女:
「次は私!」
乙女:
「絶世の美少女こと、鍔木乙女!」
乙女:
「好きなことはお喋りすること!」
乙女:
「嫌いなことは沈黙と面白くないこと!」
乙女:
「血液型はO型!」
乙女:
「星座は乙女座!」
乙女:
「つむじの向きは右回り!」
乙女:
「視力は――」
小春:
「ストップ」
小春:
「戸惑ってるわ」
乙女:
「え?」
乙女:
「まだ話したいことの半分も言えてないんだけど?」
0:乙女がキョトンとする。
明子:
「鍔木さん!」
明子:
「その先はこれから知っていきますから」
明子:
「今日は、このくらいで……」
0:明子が困り笑い。
乙女:
「そう?」
乙女:
「そう言うなら、今日はこのくらいにしよう」
乙女:
「そういえば、このくらいと言えばなんだけどさ~」
小春:
「ほら」
小春:
「貴方はクッキーでも食べてなさい」
小春:
「今日のは大丈夫だったわ」
乙女:
「むぐむぐ……」
乙女:
「おいしー♪」
明子:
「毒味って本当だったんだ……」
乙女:
「そうそう!」
乙女:
「クッキーと言えば、この前のことなんだけどね~?」
小春:
「ほら、もっと食べていいわよ」
乙女:
「わーい!」
乙女:
「優しいサキちゃん大好きー!」
小春:
「この子は、こうやって何か食べさせて黙らせればいいから」
0:小春がニコリと笑う。
明子:
「分かりました」
明子:
「随分慣れてるんですね」
小春:
「あの子とは長いから」
明子:
「どのくらいの付き合いなんです?」
小春:
「70年くらい、かしらね」
0:小春が微笑む。
明子:
「あはは……」
明子:
「小春さんも冗談好きなんですね(笑)」
小春:
「ふふっ」
小春:
「そうね」
明子:
「……?」
⸻
――人見、帰宅
SE:ガチャッ。
人見:
「ただいま~」
小春:
「あら、帰ってきたみたいね」
0:乙女が玄関へ駆けていく。
SE:ドタドタドタ……
乙女:
「ひとみん、おかえりー!!」
乙女:
「クッキーありがとうね!!」
人見:
「どういたしまして~」
人見:
「クッキー、どうだった?」
乙女:
「ん?」
乙女:
「美味しかったよ?」
人見:
「それだけ?」
人見:
「他には何もない?」
乙女:
「……」
0:乙女の顔から血の気が引く。
乙女:
「なんか入れた?」
人見:
「さぁ、どうだろうね~?」
0:人見が朗らかに微笑む。
乙女:
「じょ、冗談……だよね?」
乙女:
「今回は、なんにも入れてないんだよね?」
乙女:
「ね? ね?」
人見:
「……」
0:人見が無言で乙女を見る。
人見:
「さーて」
人見:
「早く買ってきた食材を冷凍庫に入れないとね~」
乙女:
「ひとみん!?」
乙女:
「ねぇ、なんで答えてくれないの!?」
0:人見は乙女を置いてリビングへ。
人見:
「小春さん、ただいま~」
人見:
「おや?」
人見:
「君が今日から入るっていう新人さん?」
乙女:
「ねぇ!! ひとみんってば!!」
乙女:
「なんで答えてくれないの~!?」
0:乙女、号泣。
明子:
「は、はい!」
明子:
「清水明子って言います!」
明子:
「よろしくお願いします!」
明子:
「で、あの~……」
明子:
「乙女さんが足元で泣いてますよ?」
人見:
「うん、知ってる」
人見:
「面白いよね~」
0:人見がニッコリ。
小春:
「面白いよね~……」
小春:
「じゃないっての!」
SE:パシッ!
人見:
「あいた~」
小春:
「乙女、こっちおいで」
乙女:
「は~る~ちゃ~ん……」
乙女:
「ひとみんが、いじめる~……」
人見:
「いじめてなんかないよ?」
人見:
「こんなに可愛くて大切なルームメイトの乙女ちゃんを、虐めるわけないじゃないか~」
乙女:
「……はぁ」
乙女:
「またやってる」
明子:
「そうだよね……」
明子:
「実は、いい人なんだよね……?」
人見:
「可愛くて仕方ないからさ~」
人見:
「……からかって遊んでるの」
0:人見、屈託のない笑顔。
乙女:
「うわぁぁぁん!!」
人見:
「あっはは!」
小春:
「あんた、もう黙ってなさい」
人見:
「はーい」
⸻
――そして
SE:カツッ……カツッ……
0:窓の方から、小さな物音。
明子:
「……?」
0:明子が振り返る。
0:そこには――
0:先ほどのカラスが止まっている。
明子:
「あ……」
明子:
「また、あのカラス」
乙女:
「あれ?」
乙女:
「もう帰ってきたんだ」
明子:
「……帰ってきた?」
0:乙女がカラスに近づく。
乙女:
「おかえりー」
0:カラスが乙女の肩へ飛び乗る。
明子:
「……」
明子:
「あの……」
明子:
「乙女さん、カラスに普通に話しかけてますけど……」
乙女:
「うん」
明子:
「……ペットですか?」
乙女:
「違うよ?」
明子:
「じゃあ……」
0:カラスが乙女の肩からピョンと飛び降りる。
SE:トンッ。
0:明子が目を向ける。
明子:
「……?」
0:そこには、一人の少女が立っていた。
天:
「……」
0:少女は何事もなかったかのように服の裾を軽く整える。
天:
「……ただいま」
乙女:
「おかえりー、天ちゃん!」
天:
「……こっちの方が早い」
0:天が少しだけ胸を張る。
小春:
「だから何よ」
天:
「……合理的」
明子:
「…………」
明子:
「え?」
乙女:
「ん?」
明子:
「……あれ?」
0:明子が目を擦る。
明子:
「……」
0:もう一度、少女を見る。
明子:
「……カラスは?」
乙女:
「ん?」
明子:
「さっきまで、そこにカラスが……」
天:
「……私」
明子:
「…………」
明子:
「え?」
天:
「……私」
明子:
「いや、そういうことじゃなくて!!」
明子:
「カラスが……人間になったんですか!?」
天:
「……うん」
天:
「でも……人がカラスになってた可能性もある」
明子:
「…………」
明子:
「いや、問題はそこじゃないです」
乙女:
「あはははは!」
小春:
「天、今はそういう話じゃないわよ」
天:
「……そう?」
明子:
「そうですよ!!」
天:
「……じゃあ、どっち?」
明子:
「どっちでもいいです!!」
天:
「……そう」
0:天は納得したように頷く。
明子:
「納得するところでもないですからね!?」
明子:
「いったい、何なんですか!?」
小春:
「妖怪よ」
明子:
「……」
明子:
「妖怪?」
小春:
「ええ」
0:明子が四人を見る。
明子:
「じゃあ……」
明子:
「乙女さんも?」
乙女:
「もちろん!」
0:乙女が後頭部の髪をかき上げる。
0:そこにある二つの目と口を見せる。
明子:
「小春さんも?」
小春:
「ええ」
小春:
「私は口裂け女」
小春:
「化粧を崩したくないから、見せないけどね」
明子:
「人見さんも?」
人見:
「そうだよ~」
人見:
「私は、ぬっぺふほふ」
人見:
「マイナーだから、知らないかもね~」
明子:
「……」
0:最後に天を見る。
明子:
「……あなたも?」
天:
「……うん」
天:
「烏天狗」
明子:
「…………」
明子:
「ここ……」
0:明子の顔から血の気が引いていく。
明子:
「妖怪の家なんですか!?」
乙女:
「正解!」
明子:
「なんでそんな嬉しそうなんですか!?」
乙女:
「だって、もう隠さなくていいと思ったら気が楽で(笑)」
明子:
「いやいやいや!」
明子:
「私、人間ですよ!?」
乙女:
「知ってるよ?」
明子:
「知ってるんですか!?」
小春:
「だから、この家に入ってもらったのよ」
明子:
「……どういうことですか?」
天:
「……人間」
明子:
「はい?」
天:
「珍しい」
明子:
「……」
天:
「観察したい」
明子:
「観察!?」
天:
「……うん」
0:天は真顔。
0:悪意はまったくない。
明子:(心の声)
「この子……」
明子:(心の声)
「無表情で怖いこと言うなぁ……」
⸻
――帰ります!
0:明子はしばらく黙り込む。
0:そして、ゆっくり玄関へ向かう。
明子:
「……私、家に帰ります」
乙女:
「ええっ!?」
乙女:
「ちょっと待ってよ!」
小春:
「待ちなさい」
明子:
「いや、無理です!」
明子:
「妖怪と一緒に暮らすなんて聞いてません!」
小春:
「でも、もう契約は済んでいるわよ?」
明子:
「……」
明子:
「そういえば……」
0:明子が鞄から契約書を取り出す。
明子:
「……」
明子:
「何か変なところ、ありませんよね?」
小春:
「ないわ」
明子:
「……本当に?」
小春:
「ええ」
明子:
「妖怪と暮らすこととか……」
小春:
「書いてないわね」
明子:
「ですよね!」
明子:
「じゃあ帰ります!」
0:明子がドアノブに手をかける。
乙女:
「行かないでー!」
乙女:
「捨てないでー!」
乙女:
「ダメな所があったら治すから!」
0:乙女が後ろから明子に抱きつく。
明子:
「ちょっ! 離っ……!」
明子:
「あと捨ててない!」
明子:
「振られたダメ男みたいなこと言わないでください!」
乙女:
「せっかく新しい家族が増えたのにー!」
明子:
「家族!?」
乙女:
「そう!」
明子:
「私まだ何も了承してませんよ!?」
乙女:
「大丈夫大丈夫!」
乙女:
「そのうち慣れるから!」
明子:
「慣れたくないです!」
小春:
「まぁまぁ」
小春:
「乙女も悪気があるわけじゃないの」
人見:
「うん」
人見:
「私も歓迎してるよ~」
天:
「……私も」
明子:
「…………」
0:明子は四人を見る。
0:誰も明子を脅してはいない。
0:ただ、嬉しそうにしている。
0:人見はニコニコ。
0:乙女は明子に抱きついたまま。
0:小春は優しく微笑んでいる。
0:そして天は――
0:じっと明子を見ている。
明子:
「……なんなんですか」
乙女:
「ん?」
明子:
「妖怪なのに……」
明子:
「なんでそんな普通なんですか?」
小春:
「普通?」
明子:
「だって……」
明子:
「もっと怖いものだと思ってました」
小春:
「妖怪だって、笑うし」
小春:
「泣くし」
小春:
「怒る時もある」
人見:
「それに、料理もするよ~」
乙女:
「お喋りもする!」
天:
「……食べる」
明子:
「……」
明子:
「最後は、ちょっと違いません?」
天:
「……そう?」
明子:
「……いえ」
⸻
――一晩だけ
明子:
「……じゃあ」
明子:
「もう遅いですし、とりあえず一晩だけ」
乙女:
「やったー!!」
明子:
「まだ一晩だけって言っただけですよ!?」
乙女:
「大丈夫大丈夫!」
乙女:
「なんか押せば行けそうだし!!」
明子:
「人をチョロいみたいに言わないでください!!」
人見:
「まぁまぁ」
人見:
「とりあえず、コレ食べる?」
明子:
「……」
明子:
「何も入ってないんですよね?」
人見:
「さぁ?」
明子:
「…………」
明子:
「私、やっぱり帰ります」
人見:
「ゴメンゴメン!」
人見:
「大丈夫、何もないから!」
乙女:
「あはははは!」
小春:
「ふふっ」
天:
「……ふふっ」
0:天が微笑む。
天:
「……私が、食べようか?」
0:天はクッキーを一枚取る。
SE:ポリッ。
天:
「……美味しい」
明子:
「……」
0:明子は恐る恐るクッキーを一枚手に取る。
明子:
「……いただきます」
0:一口。
明子:
「……」
明子:
「……凄く美味しい」
0:明子の目が輝く。
人見:
「でしょ~?」
乙女:
「よかったー!」
小春:
「人見の料理は、ちゃんと作れば美味しいから」
天:
「……?」
天:
「全部、美味しい……よ?」
明子:
「……」
0:明子は四人を見る。
0:そして、小さく笑う。
明子:(心の声)
「妖怪って……」
明子:(心の声)
「怖いと思ってたけど……」
⸻
――新しい生活
0:乙女が明子の隣へ座る。
乙女:
「ねぇねぇ、明子ちゃん!」
明子:
「はい?」
乙女:
「明子ちゃんってさ!」
明子:
「はい」
乙女:
「好きな食べ物は?」
明子:
「え?」
乙女:
「好きな映画は?」
明子:
「え、えっと……」
乙女:
「好きな色は?」
明子:
「ちょっと待ってください!」
乙女:
「好きな男性のタイプは?」
明子:
「なんでそこまで!?」
乙女:
「あとね――」
明子:
「…………」
明子:(心の声)
「やっぱり……」
明子:(心の声)
「この人の止まらないお喋りが、一番怖いかもしれない……」
乙女:
「ねぇねぇ!」
明子:
「はいはい……」
0:乙女のマシンガントークが始まる。
0:小春は呆れたように笑っている。
0:人見は台所で、次の料理を作っている。
0:天は黙々とクッキーを食べながら、明子を観察している。
明子:
「……天さん」
天:
「……なに?」
明子:
「見すぎです」
天:
「……ごめん」
0:天は明子から目を逸らす。
0:数秒後。
0:また見る。
明子:
「……見てますよね?」
天:
「……うん」
明子:
「うん、って!」
乙女:
「あはははは!」
小春:
「ふふっ」
人見:
「仲良くなったね~」
明子:
「まだ、なってません!!」
⸻
0:人間と妖怪。
0:本来なら、交わるはずのなかった者たち。
0:だけど――
0:この家では、そんなことは大した問題ではない。
0:笑って。
0:喋って。
0:食べて。
0:たまに、ちょっとした悪戯をして。
0:少し不思議な共同生活が、今日から始まる。
⸻
――終わり。
妖怪シェアハウス