SCARLET FANTASMA
Prologue
……夏。
それは、一年で最も暑く、最も盛んで、そして、人間にとって、最も大切な季節。
冬という枯れ果てた白銀を終え、世界が色を取り戻す季節。
しかし、私の心は、くだんに晴れ晴れとはしていなかった。
私の今の心は、虚無である。色をつけれないのではなく、そもそも色をつける絵の具が、心という小さな空間にすら、ないのである。まさに、心は冬のまま、といった表しかたが、言い得て妙であろうか?
……周りは、そんな私の心など一つも知らず、がやがやと、ずいぶんに賑やかだ。一人だけ、世間に取り残された感覚というのは、これほどまでに寂しいものなのか。
しかし、ここで立ち止まって悶々としていても何も始まらない。私は、拒絶する心を無視して、無理やり右足を踏み出した。
SCARLET FANTASMA