zoku勇者 マザー2編・46
決戦前の事……編・2
「……ジャミル君、起きなさい、もういいぞ、……目を開けてくれても……」
「……」
アンドーナッツ博士に言われ、ジャミルが目を覚ました。
……気づくと、自分はベッドの上にいた。博士が用意してくれた
架設小屋の中にあるベッドの上であった。
「起き上がれるかね?」
「博士、……俺、改造手術、終わったんだな?……取りあえず
ちゃんと喋れるのか……、会話だけは心配ないんだな、よかった、
……と、他の皆は?」
ふと周りを見る。……もう一つ用意された隣のベッドによく
見慣れた誰かが横たわっていた。
「俺だ、……何かこうしてみるとおかしいな、自分で自分の
身体見てるってのはさ、よく聞く臨死体験てこんなモン
なのかな、中々出来ない体験だな……」
言いながらベッドから起き上がろうとする。しかし、やはり
まだ機械の身体に慣れていないせいか、動きが鈍くなって
いるのを感じていた。
「……博士、俺、すげー足が短くなってんじゃね?……せめて
もう少し、……足だけは長くしてくれよ……、アイドル歌手
みたいにさあ~……」
「こ、こら……、文句を言うな、全く、……口だけは相変わらず
達者なんで安心したわい……」
「ちぇっ!」
博士は自らジャミル達に改造手術を施し、己の行為に心を
痛めていたものの……いつもと変わらないジャミルの明るさに
少し心が救われた気がした……。
「さてと、頑張らねえと、短足は不便だけどな……」
「うむ、もう皆外に出ておるよ……、さあ、これを被りなさい、
君の帽子だよ……」
「え?マジ?手術、俺が一番最後だったの?」
ジャミルは博士から自分の帽子を受け取り被ると慌て外に
飛び出す。……外に出ると……。
「ジャミル、起きたの?」
「もういつでも出発出来るよ……」
「とほほのほ~、……あーあ、オイラ、余計足が短く
なっちゃったかも……」
ジャミル同じく改造手術を終えた他の3人とアップルキッドが
待っていた。ロボットの身体になっても誰が誰だかすぐに確認
出来る様に、アイシャは頭部に赤いリボン、アルベルトはメガネを
装着している。ダウドは……、これといって特に何もつけていない。
「……な、なーんか変だな、こうやってお前ら改めてみるとさ、プ……」
「何よっ!ジャミルだって変よっ!」
「……本当だよ、可笑しくもないのに何故か笑いが漏れる、……うふ、
うふ、うふふ~……」
「これと言って特に特徴のないオイラ、……ブツブツ……」
「大丈夫さ、余計短足になったからな、すぐダウドだって分るさ……」
「何だよお!ジャミルだって足短いじゃん!短足!!
胴長ダックスフント!!」
「うるせーうるせー!この野郎!!」
「……ちょっと、やめなさいったらっ!」
……短足同士取っ組み合いの喧嘩を始める……。見兼ねたアイシャは
二人を止めようとするが……。
「あーーーっ!!」
二人とも、掴み合ったままそのまま転倒する……。両者、
足が短い上に、まだロボット体に慣れていない為、
自力で起き上がれず……。
「お、起こしてくれええ~……」
「足が短いから……、起き上がれないよお~……」
「うるさいから暫くそうしてなよ、……たくっ!」
「白状者!この腹黒短足メガネっ!!キーー!!」
ジャミル、ロボットになっても毒舌も相変わらず健在……。
「ぷう、みんな、たんそく。わしらのなかま。」
「うれしいです。ぽえーん。」
「……勘弁してくれやああ~……」
「うふふ、どせいさんと一緒なら足が短くてもいいわよね!」
「ぽえーん。」
「……う、うわああーーー!!」
「な、何だっ、どうした!?」
泣き声のした方向を見ると……、それまで黙っていた
アップルキッドが急に号泣しだした……。
「どうしたの、アップル落ち着いて、泣かないで……、ね?」
「うう、ひっく……」
アイシャが慰めるが……、アップルキッドは嗚咽止まらずひくひく
泣きながら喋り出した……。
「……何で皆さん……、こんな状況になっても……、能天気な
アホでいられるんですか……?も、もう二度と元の身体に
戻れないかも知れないのに……、ううう~……」
「アホって……、あのなあ~……」
「アップル、僕らの事を心配してくれてるんだね、有難う……」
「アルベルトさんは……、つ、辛くないんですか……?」
「う~ん、辛いって言うより……」
アルベルトが皆の顔を見る。ジャミルは頷くと泣いている
アップルに向って声を掛けた。
「こんな状況になった以上、悲観するよりも前向きに
なった方がいいだろ?それにロボットになるなんざ二度と
出来ない貴重な経験だからな、とことん楽しんどかないと!
ま、二度と元に戻れないとか、考えねえのさ!まだ決まった
訳じゃねえんだからよ!」
「……ジャミル君……、や、やっぱりアホだああーーっ!
……うわああーー!でも……」
「そうだよ、アップル君……」
「博士……」
博士ものっそりと小屋から顔を出した。そして皆の側に来る。
「こんな儂でも……、流石に今回の事は戸惑ったさ、
……正直、今も君達に対して罪悪感でいっぱいだ……」
「博士、……変な父さんでも罪の意識に追われる事はあるんですね……、
安心しました……」
「アルベルト、……お前腹黒いな……、とにかくだ、例え機械の
身体になっても彼らは決して失っていない物があった、心だよ……、
どんな時でも前向きな……、希望を捨てない強い心……、だから儂も
安心したんであるよ……、ジャミル君、君達ならきっとギーグを
倒して無事に戻って来られる、そう信じておるよ……」
「博士、……ああ、俺達、絶対戻って来るさ、何が何でも……、
例え短足になってひっくり返っても……」
「……」
やたらと短足に拘るジャミル。ロボットになって余計背が
低くなったのを若干気にしている様子でもあった。
「……ぐす、分りました……、ぼくも皆を信じます、……絶対戻って来て
下さいね、約束ですよ……」
アップルが漸く泣くのを止めた。そして皆の顔を一人一人、じっと
見つめるのであった。
「ああ、約束する、絶対にな!」
「ジャミル君……、ぼく、泣いたらお腹が空きました、なので
あんドーナツを頂く事にします、……もぐもぐ、あー美味しいなあ!
……幾つでも食べられます!」
アップルは泣くのを止めた途端、安心したのかいつもの調子で
あんドーナツを食い始めた。
「ちょ……、たく、調子がいいな……、なあ博士、俺らも普通に
飯食っても平気なん?」
アップルを見ていた途端、ジャミルも腹が減ったのか博士に訪ねた……。
「うーん、食事は心配ない様になっておるよ、何せロボットだからな、
万が一のオイルだけはスペーストンネル内に常備しておいてあるよ、
アップル君が言っておった様に帰ったらお祝いのパーティをしよう、
だからそれまで我慢しなさい、……ご馳走を沢山作って待っておるよ……」
「よし、約束したぞ!さっさとギーグ倒してこようや!博士、
打ち上げは特上肉山盛りで頼むぜ!行くぞお前ら!」
ジャミルはさっさとスペーストンネル3に乗り込む。見ていた
他のメンバーは呆れる……。
「……ジャミルったら、……もう!それじゃあ、博士、行って来ます!」
「うむ、アイシャ君も……、君の様な年頃の女の子に……、
不自由な思いをさせてしまって……、本当に申し訳ない……」
「いいえ、ジャミルが言っていた様に、こういうのも楽しまなくちゃ!
どせいさん達の事、どうか宜しくお願いします……」
「……ぷうー。」
「ぷうう~……。」
アイシャは最後にもう一度どせいさん達にハグをする。そして
スペーストンネル3内に入る。
「アルベルト……、くれぐれも……」
「博士……、父さん、……言いたい事は分かっています、もう
聞き飽きましたので……、僕は絶対におねしょはやりませんから……!?」
「アルベルト、我が息子……、儂は本当にお前の事を誇りに思う、
……無事に戻って来たら……儂の研究を手伝ってくれるかの……?」
博士がアルベルトを抱き締めた。……アルベルトの身体に……涙が一滴。
「はい、……父さん、父さんもドーナツの食べ過ぎは駄目ですよ、
僕らが戻って来る前に既に糖尿病で他界してたなんて困ります
からね……」
「お前……、本当に腹黒いな……、も、もういいぞ、早く行きなさい!」
「はい、では……、皆で必ず戻って来ます……」
博士は慌てて目頭を拭った。……残りはダウドだけとなった……。
「あのう、博士、オイラが乗っちゃう前にこう言って貰えると
ありがたいんですけど……、ダウド君、やはり君には危険すぎる、
無理はしない方がいいぞって……、まだ間に合いますので……」
「……ダーウードおおおお!!」
ジャミルが再びスペーストンネル内からにゅっと顔を出した……。
「ちぇっ、分ったよおお~、ジャミルのアホう~……、
博士、行って来まあ~す……、とほほ~……」
「うむ、ダウド君も……、くれぐれも無理はしない様に、
気を付けてな……」
「だから、それ乗る前に言ってよおお~……」
ダウドもしぶしぶスペーストンネル内に。折角だからとジャミルは
最後にもう一度博士とアップル達に挨拶をしておこうと思った。
「じゃな、博士、アップル、どせいさん!これで本当に俺ら行くよ……、
元気でな、また会おうな!」
「待ってますよ、……みんなが戻って来るのを絶対に……」
「ぷうー!」
「ぷううー!!」
「あ、ジャミル君……」
「ん?」
博士ももう一度、スペーストンネル内へ去ろうとしたジャミルに
声を掛けた。
「スペーストンネルのスイッチは……、どうか君が押しておくれ……、
頼む……」
「分った……、それじゃあな!」
「……」
そして……、間も無くスペーストンネル3はその場から姿を消す……。
ジャミルが等々スペーストンネル3の作動スイッチを押したので
あった。
……君達の真の勇気を知っている人間は一握りだが……
君達がその勇気で救う人々の数は計り知れない…
こんな場面に居合わせる事の出来た私は……本当に幸せ者だ……
「……来たよ、等々……、此処を離れてしまったら恐らくもう
回復ポイントには頼れなくなってしまうけれども……、この先
何もないだろうしね……」
「ああ、もう逃げ場はねえ、前に進むだけさ……」
「行きましょう……!」
「……ひいい~いっ!!」
4人はスペーストンネル3から降りる。最後の戦いの地、遂に
ギーグの待つ過去の最低国への地を踏んだのであった。誰も
いない遥か昔の地。そして歩き出す。……ギーグの元へと。
一歩一歩。短い足と脚で。短足カルテットは機械の身体で
ガシャガシャ音を立て進みだした。
「おーいー……、何が短足カルテットだ!、また変な名称付けんな!」
「……いいから、早く歩こう、……ただでさえ僕ら今、歩くスピードが
遅いんだからさ……」
「また転がったら大変だよね、あっ、あっ、あっ……」
「ダウドっ!」
言ってるそばからバランスを崩しダウドがこけた。アイシャは慌てて
ダウドを助け起こそうとするが。全員手も大分短くなっているので
助け起こそうとするのも一苦労であった。ジャミル達も慌てて動き、
ひっくり返ったダウドを何とか助け起こした。
「大丈夫……?」
「あまり手間掛けさせんなよ、気を付けろ……」
「うー、もうー……、短足嫌いっ!」
ジャミルは先が思いやられると思いつつも。自分もそそっかしいので……
うっかりこけたら恥だなあと思うのだった。
「……来るよ、敵だっ!皆、構えて!」
アルベルトの言葉にジャミルとアイシャがすぐに反応する。
ジャミルはバットを構え、アイシャはいつでも即攻撃出来る様
PSIを試みた。
「えええ~!早いよおおお……」
「キたカ、ギーグサマにハムカウオロカモノガ、キサマラは
コレイジョウサキニはススメン、ナゼナラココデシぬカラダ……」
前方に現れ、行く手を阻むのは……、オネットから撤退した
スターマン集団。普通のから初めてお目に掛るのまで粒ぞろいで
4人の妨害をしようと立ちはだかる。奴等はオネットから離れた後、
この過去の最低国に飛び、ジャミル達を待ち構えていたのであった。
「……フフフ、ふふ、フフフ……」
スターマン集団は4人を見て不気味な笑みを浮かべる。皆、
腰に手を当て、揃ってずらっと横に並んでいる……。
「……負けて堪るか、薄ら笑いなら僕の方が上だ、……うふふ、うふふ、
うふ、うふふふ……」
「おい、アル何やってんだよ、オメー……」
「はっ!……や、やだなあ、僕ってば、真面目にやろう……、
さあ来いっ!」
「……」
アルベルトは慌ててスーパーバズーカを準備するが。
「けど、打撃を跳ね返してくる奴もいるんだろ?数が多すぎて……、
どいつがどいつだか判別すんのもきついなあ……」
「その逆のもいる筈だわ、……アル、どうしよう?PSIを
跳ね返されたら……」
「うーん、これだけ数が多いと……、僕もチェック仕切れないかも……」
3人に次第に焦りが出始める。ダウドはいつも通りオロオロ
オロオロ……。
「おろろろろーーっ!」
「シネ……、ガキメ、アソビはモウオワリ……、だ」
突如、一人のスターマンの身体が光だし……、4人に大ダメージを
与える。4人にPKスターストームαを放ったのはオネットで隕石
採集を妨害しようとした強敵、……スターマン・センゾだった……。
「うっ、何だこいつ……、強ぇぇ……」
「ジャミルは初めてよね、……オネットで私達、ジャミルを待つ間、
このスターマンに散々苦しめられたのよ、気を付けて……」
「フフフ、フフフ……」
アイシャの言葉にジャミルが正面を向く。サターンバレーで治療を
受けた時、ジャミル以外の3人は傷つき身体がボロボロだった……。
うっすらとその時の事がジャミルの脳裏に浮かぶ。それだけの
強敵を今、目の前にしているのだと理解する。
「……まだ、それ程スペーストンネルの場所から離れた訳じゃねえ、
とにかく今は全力でこいつらを狩るしかねえ、お前ら、何が何でも
此処は死ぬ気で行くしかねえぞ!」
ジャミルがPPを惜しみなくライフアップΩを全員に掛けた。
皆HPが全快する。
「僕も同感だよ、もう傷付くのを恐れていたら先には進めない……!」
「私も頑張るっ!ギーグの所まであともう少しなんだもの!立ち止まって
なんかいられないわ!」
「……分る様に顔に名札張っておいて欲しいなあ~、せめてさあ……、
私はPSIを跳ね返します、私は打撃を跳ね返します……、
ああーーっ!もうーー!!オイラもクソヤケーーっ!!」
アホな事を言っていたダウドが遂に切れて錯乱する。まぼろし老人に
伝授してもらい立てのPKスターストームΩをスターマン集団に
当てぶつけ捲る。その威力の凄さはジャミルのPKキアイΩと
肩を並べる程。スターマンの何体かは次々と消滅していった……。
恐らく、一番雑魚系のスターマンだったのだろう。
「はあ~、ふにゅう~……、オイラもう、PPがすっからかーん……」
「よしっ、良くやったぞダウド!後は俺らに任せて、すぐに
スペーストンネルに戻れ!んでPPと体力を全回復して来い!」
「はあ~い、……足が短いから……、も、戻るのも大変!よいしょ、
よいしょ!」
「ダウド、焦らなくていいよ!ゆっくりでいいからね!」
「はーい!」
ジャミルとアルベルトに言われ、ダウドはガシャガシャ音を
立てながら、スペーストンネルへとよっこらよっこらと
引き返していった。
「……残りはよ……」
「クソ、ナマイキナ……クソガ……、コウナッタラ、クソハマトメて
スイセンベンジョにナガシテヤロウ……」
ジャミル達は残りのスターマン集団と改めて向き合う。恐らく
残った奴らが最強部類の力を持つスターマンなのだろう。何が
なんでも此処を突破する。絶対に負けられない。そう考えると
ジャミルの心に闘志が涌いた。
「冗談じゃねえ、流されんのはお前らだあーーっ!!
喰らいやがれええーーっ!!」
ジャミル、打撃攻撃でスマッシュを繰り出し、最強のスターマン、
……さいごのスターマンを追い詰めた。ジャミルに続けとばかりに
アイシャとアルベルトも打撃中心攻撃に切り替える。
「舐めないでよねっ!……えええーーいっ!!回転フライパン攻撃っ!!」
「……ペンシルロケット5、発射連打っ!!」
トリオはPSIを敵に使う隙を与えず、さいごのスターマンを
追い詰める。PSI攻撃さえ使われなければ実際、それ程怖くは
ない相手であった。
「ひい、……オイラ、これじゃ痩せちゃうよお~、ひいい、ひいい、
ひいいーーっ!?」
再び、ダウドが皆の所に戻って走って来るが……、残っていた
スターマン・センゾが立ち塞がる。
「ダウドっ!そいつはオメーに任せるっ、好きな様にやっちまえ!!」
少し離れた場所からジャミルの声が聞こえた……。
「また無茶を言う、やっとPP回復したばっかなのに……、あああ!
もううーーっ!!」
ダウドの怒りのPKスターストームΩが猛威を振るい、
スターマン・センゾは完全に消滅した……。再びPPを
全消失したダウドはまたまたスペーストンネルへと
走るのであった。……そして。ダウドが走っている間にも、
トリオはスターマン集団をどうにか全員撃退する。……漸く、
ギーグの元への道を完全に確保したのであった。
最終決戦まであと……、もう少し。
……くくく、お前ら来るなら来いよお~、……たーっぷり、あそんで
やるからさあ~、
楽しみだなあ~、……めった殺してやるよお~、いっぱいあそぼうなあ~、
……く、くくくく……
最低国の最終地点は小さな洞穴の前であった。等々此処まで来た。
長かったこの度も漸く終りが近づいてきている。
「……」
「アイシャ、どうした?……おい……」
「怖い、怖いの……、どうしよう……、嫌っ!!……怖いっ!!」
「……アイシャっ!」
それまで落ち着いていたアイシャが急に脅えてしゃがみ込む。
今までも沢山危険に巻き込まれ怖かった事もあっただろうが、
彼女は例え怖くても決して感情をおおっぴらにさらけ出す事は
なかった。男衆トリオは慌ててアイシャに駆け寄り心配するが……。
「ごめんなさい、取り乱したりして、……少し落ち着いたわ……」
「大丈夫か……?」
「はあ~、やっぱりアイシャも怖いんだねえ~、うん、怖い時はやっぱり
素直になった方がいいんだよおー!」
「……オメーと一緒にすんじゃねえよ、ヘタレとは違うんだよ……」
「ぶっすうーーっ!」
「何だか身体が震えて……、もうこの先に進んではいけない、
……そんな声が頭に響いてくるの……、今ならまだ間に合う……、
ご、ごめんなさい、変な事言っちゃって、もう大丈夫……」
「アイシャ……」
ジャミルがもう一度アイシャの様子を確認すると……、少し震えて
脂汗を掻いている様でもある。
「不思議、こんな機械の身体でも……、怖いと汗が出るのね、ふふ……」
「アイシャ、大丈夫だよ、僕らも付いてる、皆いるよ……」
アルベルトの言葉にジャミルも頷き、アイシャの方を見た。
「ありがとう、アル、ジャミル、ダウド……、今度こそ本当に大丈夫よ、
行きましょう……」
「ああ、行こうな、皆で……、俺ら4人でさ……、何処までも……」
ジャミルのその言葉にもう絶対に逃げる事も出来ず……、
既にちびりそうになっているダウドだが、もう一度自分に
気合いを入れると歯を食いしばり、ジャミル達の後に
着いて行った……。
そして、……洞窟の先で……、彼らを待ち構えていた物……。
アイシャが感じていた恐怖の正体、全ての答えがこの先にあった。
「……何これ……、な、何なのさあ~……、道が何か……、
ま、まるで人の腸みたいだよお~……」
「機械仕掛けの通路だよ、この先にずっと続いているんだ……」
「……う、うう~、生唾ごっくん!」
アルベルトが心配そうにアイシャの方を見る。案の定……。
「……ううっ、くっ!」
アイシャが悲痛な顔をする。慌ててジャミルはダウドを咎めた。
「ダウドっ!何も考えんな!真っ直ぐに突き進め!……アイシャっ!
ほら……」
ジャミルはアイシャの手を繋いだ。彼女を脅えさせない様に。
「……ジャミル……」
「手が短けえから……、マジ不便だけどな、何とか届いた……」
「うん、有難う……」
アイシャもジャミルの手をぎゅっと握り返す。自分達は機械の
身体の筈なのに。アイシャの温もりが……ジャミルの手に伝わって
くるのであった。
……4人は尚も曲がりくねった先の見えない機械の通路を進んで行く。
一体ゴールは何処に見えるのか……。薄暗く……、静かな通路に
響き渡るのは4人のガシャガシャ言う足音だけ。他には何も聞こえず。
「……何かの装置?……いや、あれは……」
アルベルトの声にジャミルが立ち止まる。前方に見えたのは……、
「何これ……目玉だよお!」
最深部に辿り着いた彼らを待ち構えていたのは……、触手状態に絡まる
機械に囲まれた……巨大な目玉である。不気味な目玉はゆっくりと。
ある人物の顔を中央に映し出した。
「これ、俺の顔か……?」
「ジャミルだわ……」
4人が目玉に近づくと、……目玉の中のジャミルの顔に変化が起こった。
「アヘ。」
「……うわあああーーっ!!ふ、ふざけんなこの野郎っ!!」
「アヘアヘアヘ。」
目玉の中のジャミルは更に変なアヘ顔になった。
「えーと、これ、……笑う処なのかしら?」
「プ、プププププ!!ぎゃははははは!!」
「笑うなあーーっ!バカダウドっ!くそ、この野郎!
ええ加減にせえよ!!」
「……プ、え、えーと……」
アルベルトもどうしていいか分からず、笑いを漏らす。が、
次の瞬間、……4人はそうもいっていられない状況に陥るのである。
今度は目玉の中のジャミルの顔が徐々に段々溶け始めて行く。
顔の筋肉が落ち始め……、皮膚が完全に溶け顔の骨がむき出しになる……。
「きゃああああーーーーっ!!い、いやあああーーーー!!」
「アイシャっ、落ち着けっ!俺、此処にいるから……、大丈夫だっ!」
「い、嫌ああ……、ぐす、恐い……、ジャミル……、ジャミル……」
絶叫するアイシャをジャミルがぎゅっと抱きしめ落ち着かせる。
それまでケラケラと笑っていたダウドに至っては……、もう漏らして
ひっくり返っていた。
「幾ら何でも悪ふざけがすぎんぞ!誰なんだよっ!いい加減に
出て来いよっ!もう堪忍袋の緒が切れたっ!ヌッ殺してやるっ!!」
「……楽しんでもらえたかな?うふふー!ぼーくもたのしいよう!
ふっふふふんー!」
「……この声、まさか……」
「……気をつけるんだっ!ジャミル、アイシャ!」
アルベルトが叫んだ。……突如響き渡った声。何処かで聞いた事の
ある声……。何度も何度も……、ジャミル達の前に突如現れては卑劣な
行為を行い邪魔をした……、そう。
「ぼくだよ、ポーキーだよーん……、あー、会いたかったなあー!
お前らにさあ~……、……うっわ!なにその醜いからだ!だっせ!
あーあ、こんなになっちまったんかーい!!」
目玉の中のジャミルの顔が元に戻った。と、同時にドーム型の
おかしな機械に搭乗した青い服のブタ、……ポーキーであった。
スペーストンネルを盗み、どせいさんを誘拐し……、この過去の
最低国へと飛んだ張本人、……ポーキーである。ポーキーは……、
邪悪な笑みを浮かべゆっくりと……4人の前に近づいて来た。
アイシャを抱きしめるジャミルの手に更に力が籠る。
「まさか……、ポーキー……、君がギーグだったのか……!?」
しかし、アルベルトの問いにポーキーは馬鹿にした様に
鼻糞をほじる。そしてその鼻糞をペロッと舐めると口に
入れて美味しそうに食べた。
「そんな古風なお約束推測、誰しも思いつく事だろう?やっぱり
お前らは所詮その程度のノウミソしかないって事だ、……くくく、
……この、ば・か・や・ろ・う……!!死ね!!」
「……う、うっ……!」
「……アルーーーっ!!」
ポーキーが機械からビームの様な物を発射し、……アルベルトの
身体を貫いた。身体に穴が空いたアルベルトはそのまま直に倒れた。
「死んじまえよ、なあ、おめーらみたいな智恵の無い
糞みたいなバカはさああーーー!!バーカバーカ!!」
「……く、だ、大丈夫だよ、まだ……、うっ……」
「ダウドっ!急いでライフアップをアルにっ!頼むっ!」
「うっ、うんっ!!」
ダウドが直ぐにライフアップγをアルベルトに。どうにか身体に
空いた穴は塞がったが……。
「ダウド、ごめん……、こんなに最初から君にPPを使わせてしまって……」
「ううん、いいんだよお、気にしないで……」
「……」
ジャミルはアイシャを庇いながら抱えたまま目の前のポーキーを
目を見据え只管じっと睨む。……ただ黙って。
「何だよ、その顔……、気に喰わないなあ、何かご不満でも?……お前、
さっきの顔の方がずーっと男前だぜ?……なあ、同じ様にしてやるよ、
メンタマの中の顔と同じ様によう……」
「……」
「……何とか言えよおおおお!なあ、ジャミルうううう!!
お前、このポーキー様にびびって口もきけないんだなあああ!?
ポンコツ機械の癖に生意気にくせーウンコ洩らしたんだろう!
そうかそうか、よしよし、……知りたいんだろう?このポーキー様と……、
どえらーーいギーグ様との因縁を……」
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