zoku勇者 マザー2編・44
懐かしい場所とあの人編
「……あの、二人とも……、そろそろいいかな……」
「……」
「あ……」
「きゃ!」
ジャミルとアイシャは自分を見つめるアルベルトとダウドの視線に
気づくと慌てて身体を離した。
「全く、戻って来るなりこうなんだからさあ~……」
「何だよっ!バカダウドっ!」
「そうよっ、ジャミルのバカっ!いつもいつも本当に心配
ばっかり掛けてっ!面倒見きれないわよっ!バカバカバカっ!!」
「……俺かよ!ってか、結局いつものかよ!」
ジャミルは結局いつも通り、アイシャにしっかりバカ連発
されたのであった……。
「あ、君に言った通り後で、心配掛けた罰として、スリッパで
お仕置きさせてもらうからね……」
「……ひょえええーーっ!!」
アルベルトが眼鏡を光らせてジャミルの方を見る……。ジャミルは
大絶叫するのであった。
「……えっとだな、色々と……、その、心配掛けて……、ごめんな……」
「ジャミルが心配掛けるのはいつもの事だもん!ね?」
アイシャの言葉にアルベルトとダウドもうんうんと頷いた。
「……あのな、オメーに言われたくねえっての!ジャジャ馬!」
「何よっ!少しはドジ直しなさいよねっ、バカバカバカっ!」
「……また言ったな!ジャジャ馬っ!」
「ジャミル、スリッパ叩きの量、2倍にサービスするけど……」
……途端にジャミルの方がピタッと止まり、喧嘩は大人しくなった。
「よし……」
「畜生、アルの奴め……、取りあえず、此処を出てサターンバレーに
向かおう、俺が意識が無かった時の話も其処で全部話すから……」
「わあ!またどせいさん達に会えるのねっ!ハグしちゃおっ!」
「やれやれだよお、やっと此処出られるよお、暑くてしょうが
ないんだもん……」
アイシャは喜び、ダウドもほっと安心する。自分の心の世界から
戻って来たジャミルはもう一つダウドに聞いておきたい事があった。
けれど今はまだ言わず黙っている事にした。
(……やっぱり、仲間がいるっていいよな……)
賑やかでやかましい事がどれだけ幸せな事か……、ジャミルは
孤独の世界から帰還し、改めてそう思うのだった。こんな事
考えるのは自分のガラではないと思っていたけれど。
「さあ行くぞ!目指すはサターンバレーだっ!」
「おーっ!」
マジカントで習得したジャミルのテレポートβで4人はサターン
バレーへと飛んだ。……墜落先は……。
……
「……ねえ、どうしていつも温泉に落ちるの?」
「ジャミルの思考回路だからさあ、変な事連想してつい温泉を
思い浮かべちゃうんだよねえ、温泉……、混浴……ハダカ……」
「うるせーな!バカダウドっ!」
「メガネ……、湯気で曇っちゃったじゃないか……」
「ぷう~?……!!!」
現場を見ていたどせいさんの一人がまたまた急に落ちてきた
ジャミル達を見つけると、慌てて他の仲間に声を掛けに行った。
「よう!まーた急に騒がせちまってわりィな!」
「♪ぷう!ぷう!ぷう!」
原因はお前だとアルベルトは心で思う。
「きゃーもうーっ、これやらないと……気が済まないのよーっ!
むぎゅうううーーっ!!」
「むぎゅぎゅ、いつもよりちからはいってますです。」
「ぽえーん。」
相変わらずのアイシャのどせいさん愛溢れる凄まじいハグ攻撃。
「あるべるとさん、はかせとあっぷるくん、きてます。」
「えっ?父さんがもう……、という事は……」
アルベルトがジャミルの方を見る。ジャミルも静かに頷いた。
「スペーストンネルの方に動きがあったって事だな、急ごう!」
「うわあああーっ……、つまりもう……、いよいよギーグとの決戦も
間近って事かなあ~、いやだよお、とほほ~……」
「はかせたち、ひろばにあつまってます。」
「よしっ!」
「あ、私も行くわ!みんな、ハグさせてくれて有難うね!
元気出ちゃった!ほら、ダウドも何首曲げてるのっ、
行くわよっ!」
「うー……えーええええ……」
4人は急いで広場に向かう。広場には確かに博士とアップルキッドが
既に到着し皆を待っていた。そして、周りには多数のどせいさん達も。
広場にはどせいさん型の変な乗り物もお目見え。どうやらこれが
スペーストンネルらしい。
「博士!アップルっ!」
「おお、ジャミル君と愉快なお友達か、お前達も此処にまた
来たという事は、もうお前達の用事も済んだんだな?処で
アルベルト、寝小便病は治ったか?冗談だよ、ん?何だね、
そのバズーカは?」
「アルっ、落ち着けってのっ!」
「……分かってるよっ!全くっ!ぶりぶりぶりっ!」
「ジャミル君達!来てくれましたね、ぼくとアンドーナッツ博士と
どせいさん達とで漸くスペーストンネルを完成させたんです、これは
時空間・瞬間の移動装置なんです、でもまだ空間転移が出来るだけの
状態ですが、敵のいる場所をサーチしてくれるんですよ、それがどうやら、
伝説の地底大陸を示しているんです!」
「ヒエログリフの写しに記してあった、地のそこのむこう……、
伝説の地底大陸、……つまりギーグがいる場所なんだなっ!」
「ええ、恐らくは……」
「いやあ、彼ら、どせいさん達は大したもんだ!凄い技術を
持っておる、アップル君も若いのに大したもんだ!」
「いやあ~、こんな普段から食べ物の事しか考えていなかった]
このぼくが……、博士に褒められる日が来たんですねえ~……、
うれしいなあ~……」
アップルは照れながら頭を掻いている。しかし、手には博士の
差し入れなのだろうか、しっかりとあんドーナツを持っている。
両手に。
「しかしなあ、まだ喜んでばかりはおられんのだよ、実はな、
これ以前に創った初期型のスペーストンネルが盗まれてしまってな、
服を着たブタの様な物がどせいさんを脅かしてそのまま乗って
行ってしまったらしい、場所は恐らく、その地底大陸だと思うが……」
「どせいさん、また誘拐されたか……、やっぱ気が合うモン同志、
似てるのかなあ……、あてててっ!」
「何よ、ジャミルっ!人の方なんで見るのっ!」
ジャミルの耳を勢いよく引っ張るアイシャ。
「……とにかくっ、まずは僕らもどせいさんを助けに行かなくちゃ!
博士、このスペーストンネルお借りしますよ!」
「あ、ああ……」
「急ごうぜっ!乗り込むぞっ!」
「絶対許さないんだからっ、どせいさん、待っててね!」
「う~、……なーんか、不安な気が……」
4人はスペーストンネルへと乗り込む。しかし、博士は何故か
スペーストンネルを神妙そうな顔つきで見つめている。
……何か隠している事がありそうであった。
……数分後。
4人が搭乗したスペーストンネルは大爆発を起こし、広場に
墜落した……。……壊れたスペーストンネルの中から……、
前回よりも頭超アフロで大爆発状態の凄まじい姿の4人が
出てきた……。
「げーほっ!……も、もう、おめえの親父さん……、
絶対に信用しねえ……、げ、げーほげほおっ!」
「同感……、……博士っ!アンタ何か隠してましたねっ!?
……げっ、げーほげほおおおっ!!」
「……もういやあああ~、これで何回目なのよううっ!」
「オイラの頭……どうにかしてよおおおっ!!びえええーーっ!」
ダウドに至っては、爆発アフロ頭の頭部に、普段縛っている
後ろ髪が真上にびょーんと伸びあがり、馬鹿殿状態になっていた。
なーんか、不安な気が……の、彼の言葉が的中してしまったのであった……。
「う~む、やはり駄目だったか、……材料が足りなかった様だ……」
「……や、やっぱりっ!アンタはっ!」
「やめろっての、アルっ!」
また博士に向けてスーパーバズーカを発射しようとしたアルベルトを
ジャミルが止めた。この親子のやり取りの時は何故かジャミルの方が
中和役になる。
「とにかく、……何が足んねえっての、博士……」
「……苛々苛々!」
「うむ、もう信用しないと言いつつも、やはり私をアテにして
くれるのだな、ジャミル君……」
「いや、今度ぶっ壊れたら流石に限界かもだけどな……」
アイシャは爆発した髪をどせいさん達にお手伝いして貰って、
いそいそとヘアを整えている。
「オイラの髪も元に戻して欲しいよお~……」
「しかし、それは地球上の物質ではないんだ、あれは私が若い頃、
落ちて来た隕石から摂取した物なんだよ、……君達、最近何処かで
隕石を見なかったかね……」
「隕石……、確か一番最初にオネットで……、そうだ、ブンブーンと
出会った場所、山頂だっ!」
「それだ!その隕石のかけらでもあれば、物質XYZを
合成できるぞ!……しかし、君達がオネットに隕石のかけらを
取り行くことをギーグが簡単に許すとも思えん……、すでに
オネットは敵の手に落ちているかも知れん、ジャミル君、
アルベルト……、危険を承知で君達に頼みたいのだが……」
博士がジャミルの方を見る。ジャミルは分ったと言う様に頷いた。
「ちょっくらオネットまで飛んでその隕石のかけらを持ってくるよ、
オネットにはファラ達もいる、様子が心配だしな!」
「頼む、それから、どせいさんが新装備を開発したそうだ!
出発前に購入して、是非バトルに役立ててくれ!」
「俺はこの海のペンダントが有るから大丈夫として……、
心配なのはお前らの装備品だけだな、よし、どせいさんの
店に行ってみるか!」
4人はどせいさんの店に行くと、ダウドを除く、アルベルトと
アイシャの装備品、ほのお、しずく、闇、3種類のペンダントを
それぞれ購入。
「オイラは王者シリーズで充分だもんね、安上がりでいいねえ~、
あっ、これなんだい?」
「ぷうー!しんせいひんおます。ぶたようかんです。おいしですよ。」
「じゃあ、これもらいまーっす!うんふふ~!」
装備品に用のないダウドは腹癒せにおやつ代わりに大量の
ぶたようかんを購入。
「ダウド、食う時はこれつけて食えよ!」
「……要らないよっ!ブタの鼻なんかっ!!」
買い物も済ませ、広場に戻ると懐かしい顔ぶれが応援に
駆けつけてくれていた。
「ようー、ジャミ公!相変わらずアホやってんのかー?」
「ジャミルさん、みなさ~ん!ども、お久ッスうー!」
「ショージのおっさん、……チュージのおっさんもっ!」
ジャミル達の現在の近況を知り、わざわざ遠方からモッチー兄弟が
来てくれたのであった。
「おれ達も此処でどせいさん達を手伝う事にしたよ、埋蔵金
掘ってる場合じゃねえってな、何だか大変な事になってる
みてえだしな、男は義理と人情を大切にするもんだあね」
「ショージさん、チュージさん、本当に有難うっ!」
「……有難うございます!僕達の為に……」
「よせやい、嬢ちゃん相変わらず可愛いな、メガネは相変わらず
固いなあ、おうおう、此処は俺達に任せて、安心して出掛けてきな!
んと、そこの困った様な顔の坊主は新入りかい?困った顔
してんじゃねえよ、ははは!」
「……この顔は昔からこうなんだよお~、無茶苦茶言うし……、
でも、有難う……」
ダウドもモッチー兄弟にペコリと頭を下げるのであった。
「頑張って下さいッス、ご武運をお祈りしてますぜ!」
「大丈夫です、ぼくらは負けませんよ!スペーストンネルは
きっと完成します!」
言っている事はかっこいいが、あんドーナツを食いながら
喋っている為、今一恰好が付かないアップルであった。
「やるときゃやる。」
「ぷうう~!」
「ふう。」
どせいさん達も短い足でぴょんぴょん飛び跳ね、心配ないよと
4人にエール。
「頼むぞ子供達……、それからアルベルト……」
「父さん……」
アンドーナッツ博士とアルベルトが互いに顔を見つめ合った。
「寝小便には気をつけろ……」
「シャキーン……」
「わー!もういいっつんだよっ!ほら、行くぞっ、アルっ!
ダ、ダウド!今回のテレポはわわわ!お前に任せるっ!」
「う、うん、じゃあ行くよお……」
アルベルトを取り押さえながら、慌ててテレポートする
ジャミル達。その様子を覗っていた博士はくくっと笑いを
漏らすのであった。
「うーん、やっぱり構うと面白いな、あいつは……」
「博士、アンタも随分悪やねえ~」
「ふむ?そうかな?自分ではあまり感じた事はないが」
「いや、アニキも凄いっスよ、何せですね……」
「興味があるのう~……」
スペーストンネルそっちのけで、何故か中年親父達の集いが
始まってしまったらしい。
「……もぐもぐ、あー、あんドーナツはおいしいなあ!」
「ぷうぷう。じゃみるくんたちのぶじをいのって、みんなで
がんばれだんすをおどるます。」
「♪ぷうう~」
……本当に大丈夫か、こいつら……。
そして、テレポートでオネットに飛んだ4人は……。
「……うわ!何だこりゃ!」
「町が……、空が真っ暗だよお!」
「まるで夜みたいね……」
「町の人達も姿が見えないね、みんな家の中に避難しているのかな……」
「……来るぞ!お前ら構えろっ!」
間髪入れず、スターマン軍団が4人に襲い掛かってきた。皆は
緊張モードになりつつも全力でスターマン軍団の駆除に取り掛かる。
「俺達の目的は山頂の隕石採取だ!落ち着いて慌てず行こうぜ!」
「分かってるわっ!行くわよっ、PKファイアーΩっ!!」
「わわわ!仕方ないなあ~、オイラもやるよっ!PKスターストームαっ!!」
「うふふ~!……喰らえっ!スーパーバズーカ連発連発うううー!
うふふのふうーーっ!!」
ジャミルが此処を旅立った時とはまるで変ってしまったオネットの町。
フランク、……ストロング署長……。死闘を繰り返し、友情を育みながら
ジャミルはこの町で成長し最初の冒険を切り抜けた。皆の安否も心配だが、
今は一刻も早く山頂へ急がねばならなかった。
「よしっ、奴ら一旦姿が途切れたぞっ、この隙にっ、つっ走れっ!」
「ひいい~っ!」
4人はダッシュで山頂目指して駈けるが後ろのダウドはかなりきつそう。
「ジャミルっ、あれっ!」
「……ファラっ、トレーシーっ!」
山頂へ向かう途中の道でファラとトレーシーがスターマンに襲われて
いるのに出くわす。
「来るんじゃないよっ!あたいを舐めんなっ!」
「ファラ~……」
トレーシーはファラにしっかりしがみ付き震えていた。
「お前、犬のままであそこにいたら確実に小便洩らしてたな……」
「うっ!そんな事ありませんよおお~!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょっ!」
「そ、そうだったっ!」
アイシャに怒られ、とっさにジャミルが我に返る。二人は
スターマンにじりじり追い詰められ雅に絶対絶命の状態だった。
「この野郎!喰らえ!PKキアイγっ!!」
「……!?ジャミルっ!来てくれたんだねっ!」
「お兄ちゃんっ!!」
「ど、どうにか……、間に合った、取りあえず一番雑魚の
スターマンで良かった……」
ファラとトレーシー、二人の目の前でジャミルが放ったPKキアイγが
スターマンの身体を貫いたのであった。
「ファラ!お久しぶり!この世界で顔を会わせるのは今回が初めてね!」
「怪我はないかい!?」
「アイシャ、アルベルトもっ!ありがとう~!ちょっと買い物
行ってた最中にさ、急にオネットがこんな状態になっちゃって、
変な宇宙人には襲われるし、どうしたらいいかあたい達も途方に
暮れてたんだよ、来てくれて良かった……」
ファラとトレーシーは安心したのか、その場にヘナヘナ……
座ってしまった。
「とにかく家まで戻ろう、送ってくよ!……ほら、ダウドもっ、
お前さっきから後ろでオロオロ何してんだよっ!」
「え、えーとお……」
「ダウ……?……ちょっ!アンタ何で人間モードになってんのさあ!?」
「えへへ、ファラ……、話すと長くなるんだけど……」
「だから後でいいってのっ!ほらお前らも急げっ!」
ジャミルはアイシャとアルベルトにも声を掛け、ファラと
トレーシーの二人を送り届ける為、我が家へと急いで一旦
避難するのであった。
「そうだったんだ、……ふ~ん、アンタ、そう言う設定に
なってたんだ……」
「えへへ~……」
ファラは自分の目の前で照れたように頭を掻いているダウドを
……呆れた様な困った様な表情で見つめていた。
「あの、お兄ちゃんのお友達ですよね?妹のトレーシーです、
……兄がいつもお世話になっております……」
「え!あ、あのさ……」
「いいんだよっ!今は黙っときな!……ただでさえこんな大変な
状況の時に、余計混乱するからっ!」
「えええ~、分ったよお、もう~……」
ファラに肘で突かれるダウド。仕方なしにトレーシーには人間体の事は
もう少し黙っている事にした。
「まあ、そう言う事なんだ、さて、俺らももう行かなきゃなんねえ、
……なあ、お前らさえ良かったら一緒にサターンバレーに連れて
行くけど……」
「そうよ!その方が安全だわ!一緒に行こ!!」
「……気持ちは有難いけど……、あたい達は此処に残るよ……」
「私もよ、お兄ちゃん……」
「ファラ……、トレーシー……」
ジャミルとアイシャの言葉にファラが首を振りトレーシーも頷いた。
「あたい達だけ安全な場所に避難する訳にいかないよ、戦ってるのは
アンタらだけじゃない、オネットの町の皆もだよ……、恐怖で皆怖い
思いをしてるんだ、だからあたい達は此処でジャミル達の勝利を願って
待ってるからさ……、大丈夫だよ、とりあえずどういう訳か、奴ら
建物の中には入って来ないみたいだし……、食料も買い溜めして
あるから暫くは大丈夫だし……」
「だけどよ……」
「さあ、早く行って!もう時間がないよ!あたい達の事は本当に
大丈夫だから!」
尚もファラ達を心配するジャミルにファラが喝を入れた。
……戸惑っているジャミルの肩にアルベルトがそっと手を
触れるのであった。
「ジャミル、ファラ達の気持ちを無駄にしちゃ駄目だ、僕らに
出来る事はギーグの陰謀を阻止する事だ、何がなんでも……、
さあ、行こう!後少しなんだ……」
ファラ達もジャミルの顔を見てもう一度強く頷く。それを見た
ジャミルは漸く了解するのであった。
「分った、出来るだけ早く戻るから……、お前らも無理すんなよ、
もう絶対に事が終わるまで外に出んなよ、暫く窮屈だろうけど
頼むぜ……」
「分ってるよ、……いつもいつでもあたいは待つ女……、あー健気!
アイシャも皆も……、くれぐれもこのアホの事頼むね、毎度の事
なんだけどさ、まあ、殺しても死なないから大丈夫……だとは
思うんだけどね~……、それに無理すんなとか無茶ジャミルに
言われたくないね!」
「またそれ言うかあ!?あーもういいよっ!早く終わらせちまおうぜ!
行くぞお前ら!」
「……あ、待ってよお~、ジャミルってばあ!じゃあね、ファラ!」
顔を赤くしてジャミルが家の玄関から外に飛び出す。ファラ達の
方を振り返らずに。そしてその後を慌てて追うダウド。
「行って来ます!また会おうね、ファラ、トレーシー!」
「色々有難う、僕達、必ずまた戻って来るから!」
「信じてるよ、アイシャもアルベルトも……、心配だけどダウドもね……」
「お兄ちゃん、みんな!行ってらっしゃい!」
ファラ達の思いを背に受け、4人は再び山頂への山道を
走るのであった。
「……ギーグ様ノ邪魔スル物、マッサツ、排除スル……」
「……うおっと!な、何だっ!また敵かっ!?出やがったな!」
再び敵が現れ4人の行く手を阻む。……容姿はスターマンの
様であったが……。
「ジャミル、こいつらは格が違う!今までと強さが桁外れだ!
アイシャもダウドも気を付けるんだ!」
チェックで相手をチェックしいしい、アルベルトが皆に声を掛けた。
4人の前に立ち塞がったのはスターマン・センゾ、スターマン
一族の中でもかなり非常に厄介な部類に入る強敵である。
「ひいいーっ!でも、やらなきゃねえ~、……オイラも頑張るよ!」
「ダウド偉いわっ、良く言ったわ!一緒に頑張りましょ!」
「ひ、ひいい~、うん、アイシャ……」
ダウドはそう言うが、やはり膝と脚が震えてガクガクしている。
本音と内心はやはりヘタレている。
「よっしゃ!このまま一気にブチのめしたらあ!」
ジャミルが気合いを入れ腕まくりをするが、やはりアルベルトが
首を振ってそれを止めた。
「ジャミル、此処は僕らに任せて!君は急いでこのまま山頂まで
行くんだ、……隕石のかけらの採取は君に任せる!」
「何言ってんだよ!……確かに此処から山頂までは、んな遠かねえ
けどさ、お前らだけじゃ……」
「アルの言う通りだわ、二手に別れて行動した方が早いわよ!
ジャミルなら足が速いんだもん、行ってすぐに戻って来られるでしょ、
それともなあに?ジャミルは私達の力だけじゃ駄目だって思ってる?
信用出来ないかしら?」
「行ってらっしゃい!……でも、なるべく早く戻って来てねえ……、
お、おしっこ漏れちゃうから……」
「アイシャ、……ダウド、お前まで……」
「そう言う事だよ、さあ行くんだ!僕らに後は任せて!
……信じてるから、ジャミル!」
言いながら早速アルベルトがいつも通りスーパーバズーカを発射した。
アイシャもPKフリーズ攻撃、ひいひい言いながらダウドもがむしゃらに
PKスターストームαを繰り出す。ジャミルは自分を信頼してくれている
そんな仲間達の姿を見て自分も決意を固め山頂目掛け走り出すのであった。
「……待ってろ!絶対すぐ戻るから!」
途中でライヤー・ホーランドがいた山小屋まで辿り着く。以前に
立て掛けてあった看板は今は撤去されていた。もう無人の様で
あったが中にいた彼は今どうしているのかジャミルは気になったが……。
「今は隕石の採取の方が先だ!このボロ小屋が見えたって事は
山頂への目印だ!」
只管山頂への道を駆け上がり、等々最初のあの場所へ……、
ブンブーンと出会った運命への場所へと戻って来たのであった。
「此処だ、此処から全て始まったんだ……、えーと、隕石は……、
あっ、あった!」
未だ燃え残る隕石の残骸から微かに残るかけら。ジャミルは
そのかけらを回収すると今度は急いで山道を下り出そうとするが。
……お帰り、たくましく……、なったのう……
「!?誰だ!……この声……、また……、ブンブーン、ブンブーンか!?」
微かにジャミルを呼ぶ懐かしい声が。……はっきりとジャミルの耳に
聞こえてきてジャミルは思わず足を止めた。
そうじゃよ、儂じゃ……、また声のみじゃがの、アンタが又此処に
戻って来る様な予感がして儂もまた此処に戻って来てしまったよ……、
いいか、もう儂がお前に伝えられる事はこれが本当に本当に本当に……、
ほんっとーーに最後じゃ、……心して聞くんじゃよ……
「分ったよ、何も同じとこんな強調して言わなくても……」
お前達は間も無く最後の決戦、ギーグとの戦いになる、……何が
あっても絶対に自分を見失わない様に……、そして、よく覚えて
おくのじゃ、この最後の戦いは……、己の力を振り回すだけでは
勝てないじゃろう、例えどんな最強の剣を持とうが、伝説の魔法が
使えようが……それだけではギーグには勝てんのじゃ……
「ブンブーン、それって……、俺達の力だけじゃ……、ギーグに
勝てないって事なのかよ!」
突如飛び出たブンブーンの言葉にジャミルは衝撃を受けそうになる。
今の自分達の力だけではギーグに勝てない……、それはもうギーグに
勝つという事は不可能という事なのか……。
本当に困った時が来たら……、今までお前達と出会い、
助けてくれた沢山の仲間達に力を借りなさい、皆はきっと……、
例えどんな遠く離れた場所からでもお前達の声に呼び掛けて
くれるじゃろう……
「……ブンブーン……」
さあお行き、……仲間達が待っとる、……では、儂はこれで
はこれでほんとーのほんとーのほんとーに消えるとしよう……、
儂もお前達の勝利を信じとるよ、だからもう此処に戻って来る
事もないじゃろう、さよならじゃ、ジャミル……、何回も出て
来てすまんのう……
「ううん、……俺、アンタの言ってる事、まだ良く理解出来ねえけど……、
とにかく頑張ってみるよ、さよなら……」
ブンブーンの声は聞こえなくなった。これが本当にブンブーンとの
本当の別れとなったのであった。
zoku勇者 マザー2編・44