我ら工場ファクトリーズ 第二話

おはようございます。第二話のお届けです。作業の合間、休憩室でのひとこま。お楽しみに!

第二話


 「我ら工場ファクトリーズ」
         (第二話)

          堀川士朗


耳のない鉄のパンダ頭部にハンダ着けで黒い耳を着けていく作業。
コードの配線を上手く通らせるのが難しいが、ベテランの域に達した八騎たちにとっては目をつぶったままでも出来る作業。
しかし、手を抜くわけにはいかない。
それは規格部外品を生み出す原因にもなる。
大胆かつ繊細な手つきで事にあたる。

黙々と。
ただ粛々と。
手は休めない。

背後では、監督官の嫌な上司、一条毛谷州(いちじょうげ・たにす)が目を光らせている。
作業効率第一に考えている彼はサボりを決して許さない。
蛇のような眼をしている。


昼休憩。
支給された幕の内弁当を三人は食べ終わって、まったりしている。
車座になって座っている。

「あ」
「ん?」
「ムニッて無になってた」
「何をかわいい事を」
「かわいいか?」
「擬音がかわいい」
「無になる事ない?八騎」
「ない」
「そっかそっか」
「あ~何か」
「うん」
「あ~何か穴という穴がかゆい」
「汚いな梅坪」

ヤバ痰がエデュッと出た。梅坪は躊躇する事なく、それを味わいながら飲み込んで話を続けた。

「痰、美味しい」
「やめろ馬鹿」
「何か、何か昼日中に休憩室に三人集まっていると、ゲシュタルト崩壊してくるなあ」
「嵐感汁郎」
「ん?」
「あらしかんんじゅうーろう」
「お」
「アラシカンンンジュウロウ」
「うん」
「アラシカンンンウウウジュウゥローゥ」
「そうだね」
「自分の名前何回も鼻濁音で言ってるとゲシュタルト崩壊してくるなあ」
「言わなくてもお前はいつも常日頃からゲシュタルト崩壊してるからな」
「ば、してねえよ……」
「そうか?」
「自信なくなってきた」
「な」
「嵐感、それでも俺はお前を見捨てないよ」
「おう。頼むサク」
「今日は北枕で寝てみようかな」
「何をバカな事を」
「北枕馬鹿か?」
「誰それ」
「作家。ファンタジー系の」
「知らね」
「お前本読まないもんな」
「うん」
「たまには読めよ」
「無駄」

梅坪はおならをした。

「屁、見事っ」
「汚いなー」
「おい、そろそろ仕事に戻ろうぜ」

八騎はそう言って立ち上がった。
午後はパンダ頭部に黒目を嵌め込んで固定する作業が待っている。
嵐感は別レーンでパンダスーツの縫製にあたる。
モッフモフだが、防弾仕様だ。

黙々と。
ただ粛々と。
手は休めない。


            続く

我ら工場ファクトリーズ 第二話

ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。

我ら工場ファクトリーズ 第二話

作業の合間、休憩室でのひとこま。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • SF
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2026-08-08

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