zoku勇者 マザー2編・43

マジカント編・2

「私の勇気、……とにかく落ち着いて、話を聞いて下さい……」
 
「何だよっ!お前馬鹿にしてんのかっ、いい加減でそのくせー呼び方
やめろってんだよっ!」
 
「ジャミル……」
 
ジャミルは……、自分でも一体何をこんなにキレているのか訳が
分からなくなっていた。ただ、フライングマンが回復を拒絶した
事になんだか焦りを感じ始めていた。このまま、また彼も遠くへ
行ってしまいそうな予感がし始めていた。自分を置いて。
 
「そうですね、ジャミル、ではこうしましょう……」
 
「あんだよ、鳥のおっさん……」
 
「もう少しだけ無茶をさせて下さい、あなたをちゃんとエデンの
海まで送り届けたら……、そうしたら傷の手当てをお世話になる
事にします、ですので、そんなに膨れないで下さい」
 
ジャミルは何故これ程までフライングマンが回復を拒むのか
理由が分からなかったが。しかし、フライングマンは、ちゃんと
エデンの海まで辿り着いたら回復を受けると言っている。
けれど、やはり……、今すぐにでもライフアップを掛けて
やりたいのであるが。
 
「分ったよ、……けど、本当に大丈夫なんだろうな?身体持つのかよ……」
 
「大丈夫です、こう見えて案外ダメージを受けても平気なんですよ、
身体は丈夫ですから」
 
……嘘つけとジャミルは思う。絶対にフライングマンは
無理をしている。しかし、それが彼の意志なら……とも思った。
 
「約束しろよ、エデンの海まで辿り着いたらすぐ回復させろよ、
けど、もしもおっさんがまた無茶する様なら嫌でも回復するかんな、
いいか?」
 
「はい、ジャミル、PPを大事にして下さいね、エデンの海まで
もうすぐですから」
 
「……漸く、普通に名前で呼んでくれる様になったな、
いや、別にそれがどうって事ねえけどさ……」
 
ジャミルは向こう側を向いてボソボソ喋る。……顔は赤い。
 
「あのさ、此処を出る時は、フライングマンも来いよ……」
 
「わ、私がですか?それは……無……」
 
その後に言葉を続けようとしたが、フライングマンは押し黙った。
ジャミルの気持ちを無駄にしたくなかったのである。
 
「俺のダチ、フライングマンにも紹介したいんだよ、どうしようも
ねえ変なダチだけどさ、すげー皆おもしれえ奴らさ!アンタもきっと
仲良くなれるよ!」
 
「そうですね、ジャミルのご友人に私も是非お会いしてお友達に
なりたい物ですね……」
 
「だろ、だろっ!へへ、あいつらもきっとアンタと仲良くなれるさ!
だから早く此処出ようぜ!」
 
「……ジャミル、有難う……」
 
再び笑顔を取り戻したジャミルを見て、フライングマンは心からの
礼を言う。しかし、ジャミルがエデンの海に辿り着いたら自分は……。
いや、もしかしたら其処まで持たないかもしれない。フライングマンは
このジャミルの笑顔がまた、自分の所為で消えてしまうかも知れないと
思うと胸を痛めた。
 
 
……私の勇気……、あなたの優しさに私は心から感謝します、
ジャミル、あなたの勇気になれて本当によかった……
 
 
「さあ、お次の相手が現れた様です、しっかり気を抜かない
様にしましょう!」
 
「分かってるさ!」
 
エデンの海はもうすぐ近くなのであった。しかしフライングマンは
覚悟していた。……もうすぐ、もうすぐ……、自分も消滅してしまう
事を。
 
「ジャミル、もしも……、私がいなくなっても……、あなたなら
大丈夫です……」
 
「何だよ、聞こえねえよ!」
 
「いえ、何でもありませんっ!」
 
「あっ……!」
 
今度の集団は、電撃ビューン、ぶきみボール、そして又も
安心ボム。フライングマンは相変わらずの無茶ぶりを発揮し、
敵の群れに突っ込んで行った。その姿が……、ジャミルにとって、
自殺行為にしか見えないのである。まるで自分の使命を果たそうと
しているかのように。ジャミルは慌てて何とかフライングマンに
自分も加勢しようとするのだが……。
 
(此処で何とか私が少しでも敵を倒せれば……、
ジャミルがこの先進みやすくなる、何としてでもっ!)
 
「……うわああああーーーっ!!」
 
「フ、フライングマンっ!!……やめろおおーーっ!!」
 
フライングマンが電撃ビューンの電撃攻撃に飲み込まれ……、
遂に倒れた。ジャミルは絶叫するが……、倒れたフライング
マンを残りの敵たちが集中攻撃し、彼を追いつめて行った……。
ぶきみボールは息も絶え絶えのフライングマンを見て、悪魔の
微笑みを向けた。
 
「待ってろっ!今助けるっ!!」
 
「ジャミル、……お願いです、私の事はもういいですから……、
だから……、どうかこのまま進んでください……エデンの海は
もうすぐ……」
 
「いい加減にしろーーっ!どいつもこいつも……俺を怒らせん
なああーーっ!!」
 
「……ジャミル……」
 
ジャミルは無我夢中で只管PKキアイΩを連発する。絶対に、
何としてでもフライングマンを助けたかった。……気が付いた
時には……、周りの敵は跡形もなく全て消滅していた……。
 
「ハア……、ふう~……」
 
「ジャミル、あなたという人は……、全く本当に何て無茶を……」
 
「お互い様なんだっつーの!……回復分のPPは何とか残してる、
さあ、今度こそ嫌でも回復するかんな!覚悟しろ!」
 
ジャミルは倒れているフライングマンに近寄って行く。……そして……。
 
「……何で……、何でなんだよっ!何でライフアップが効かねえんだっ!!」
 
「……」
 
「畜生っ!……ライフアップγっ!ライフアップγっ!……ライフアップ……」
 
「ジャミル、もう本当に止めて下さい……、これ以上はPPが
無駄になってしまいます……、わ、私の身体は……、一旦傷つけば
もう二度と元に戻らないのです……」
 
「!!」
 
「この事を告げればきっと優しいあなたは苦しんでしまう……、
どうしても打ち明ける事が出来なかった、だから……、何とか
頑張って分からない様にあなたをエデンの海まで送ろうとしました、
けれど私はやはり弱かった……、黙っていてすみません……」
 
「バ、バカ野郎……」
 
ジャミルは疲れた様にフライングマンの側にそっと
しゃがみ込んだ。
 
「おっさん、俺は諦めが悪いんだよ、一度言った事は絶対
実行するんだ、だからアンタを何としてでも俺達の世界に
連れて行く、絶対に助ける……」
 
尚も諦めずライフアップを掛けようとしたジャミルの手に
フライングマンが優しく触れ、そして止めるのであった。
 
「有難う、……私の勇気……」
 
「ま、また言ったな、この野郎……」
 
「このマジカントはあなたの心の世界、……あなたが目覚めれば
この世界は消滅し、私も消えてしまう、例え身体が傷ついて
いなくとも……、私が自分の意志を持ち、姿を保ち存在出来るのは
このマジカントだけです、どのみち、あなたの現世の世界に
行く事は私には出来ないのです、ジャミル……」
 
「そんなの……、やってみなきゃ分かんねえだろ!だから、
回復させてくれよ……、お願いだからさ、アンタが消えちまったら……、
俺、また独りになっちまうじゃねえか……」
 
フライングマンは……ジャミルの顔を見ると、弱弱しくなった
手つきでジャミルの頭に触れ、ポンポンと軽く叩いた。
 
「私はあなたの心の片隅から生まれた勇気です、この世界で
あなたを守る為、意志を持ち実体化したのです、私は知っています、
本当は泣き虫で、そして、強がりで……、いじっぱりのあなたも……、
全て知っています……、大丈夫です、……あなたが勇気を失わない限り、
私はいつもあなたと共にいる……、さあ、行って下さい、あなたを待つ
大切な人達の場所へ……」
 
「……くせー台詞連発すんなよ、貧血起こして倒れるぞ……、
俺、真面目は嫌いなんだからな……、あーくせーくせー……、
くせえ……」
 
そう言うジャミルの声は……、何となく震えていた。
 
「大丈夫です、……なたは……、けっして……、独りではありません、
今も、これからも、……っと先も……、うか……、信じて、私の勇気……、
それから……、らかったら……、涙も必要……です……」
 
……フライングマンの身体が消滅し始める。そして、発する声も
徐々に小さくなっていった。
 
「さようなら、……私の勇気、ジャミル……」
 
「ありがとな、フライングマン……、俺、やっぱりいじっぱりで
強がりのカッコつけマンの俺のまんまでいるよ、だから辛くても
意地を張るよ、……さよなら……」
 
消滅の直前、フライングマンがジャミルに優しい笑顔を見せる。
そして、フライングマンは完全に消えてしまい、辺りにはまた
ジャミル一人、取り残された。けれど、もうジャミルにはもう
迷いは無かった。自分の中の勇気を信じて。エデンの海に向かい、
……一歩一歩、歩き出す……。

エデンの海。此処を渡り切ればマジカントを出られるのか……。
そう思っていると、……海の中から敵が出現する。サマーズの海に
出現したクラーケンであった。ジャミルは急いでバットを構えるが……。
先程のバトルでフライングマンを助けようと無茶をした為、PPも
半分近くまで減ってしまっていた。
 
「お前まで俺の邪魔すんのか、けど戦わねえと……、此処を
抜けらんねえ!」
 
クラーケンが身体を張って体当たりしてくる。けれどフライングマンの
件で気持ちが荒んでいたジャミルは碌に戦えず、そのまま海に沈められた。
けれど不思議と苦しくはない。海の中でも。もうこのままいっその事、
深く沈んで消えてしまおうかとも思った。しかしそう思うと、逆に体が
今度はどんどん勝手に地上へ浮かび上がってくるのであった。
 
「なろお……、何で思ってる事と正反対になるんだっ!捻くれもんめっ!
誰がこんな世界……創りやがったっ!」
 
お前だ。お前。
 
「っ!ぷはあっ!……畜生……」
 
海から顔を出したジャミルは目の前のクラーケンを睨んだ。
クラーケンが全身から雷を放出しようとしている。産まれたままの
スッポンポンの姿のジャミルは、何とか取り戻した武器の高級バット
以外何も身に着けていない。
 
「自分を信じるよ、……俺の勇気、力を貸してくれよ……」
 
ジャミルは自分の胸に手を当てる。……フライングマンはいつも
側にいてくれた。自分と共に一緒にいた。そう思うと不思議に
力が湧いてきた。
 
「?戻ってる、PPが全部……」
 
……行きましょう、私の勇気!……さあ真っ直ぐに進んで下さい!
 
「だから、恥ずかしいっての、……行くぞっ!」
 
微かにフライングマンの声が自分の中から聞こえた様な気がした。
ジャミルはテレポートαを使い、水しぶきを上げてクラーケンの
近くまで突撃する。渾身の力を込め、PKキアイγをお見舞いする。
HPも以前、戦った時と同じ様で、大した事は無く、クラーケンは
あっという間に海へと沈んで行った。
 
「……」
 
クラーケンを倒すと……、途端に周りの海が消え……、荒れ果て、
寂れた町が広がっている景色になった。……其処は自分が一番良く
知っている世界……。
 
「俺の……本当の故郷……」
 
「よお、俺、……案外早かったな、ご苦労さん……」
 
「……」
 
ふと声がした。ジャミルの前に立つ青い帽子、青い衣服の青年。
間違いなく、元の世界のジャミル本人その物である。
 
「なあ、お前、一体何なんだよ、……俺に一体何をみせたいんだ……?
それに、今まで此処に近寄るなって散々念を押してたんだろう?
なのに此処まで来たら急に来いとか言い出して……、マジでなんなん?」
 
ジャミルがそう言うと、もう一人のジャミルはうざったらしそうに
鼻を鳴らすと腕組みをし、ジャミルの方を見て口を開き始めた。
 
「だってお前が来ちまったんだ、そんなに来たいんだったら、
お客さんは案内するほかねえだろう、……それよりこれを見な……」
 
「これは……」
 
もう一人のジャミルがある物を見せた。それはマニマニの像であった……。
カーペインター、モノトリーの精神を洗脳し、……トンチキの人生を
狂わせた……、あの忌まわしいマニマニの悪魔の像だった。
 
「この像はお前自身なんだよ……、お前の中のあらゆる邪悪な
感情が詰まっている、だから俺自身でもある、嫉妬、妬み…、負、
ありとあらゆるお前の悪の心から生まれたマニマニだよ……」
 
「俺が……?俺がこのマジカントでのマニマニを生み出した
ってのか!?んな事ある訳がっ!!」
 
もう一人のジャミルは否定しようとするジャミルを黙らせようと、
顔を近づけると顎を掴んでくいっと自分の方に向けさせ、まるで
子供の様な悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 
「否定したいんだろ?……けどな、お前は俺自身なんだ、何もかも
一番分かってんだ、逃げんなよ……、俺は知ってるんだぜ?本当は
どれだけお前が、自分を捨てた本当の親を憎んでいたかって事もさ……、
姿、顔も分からない、……親の思い出が一切無い自分が惨めで仕方
なかったって事もさ……、なあ……」
 
「……やめろおおっ!」
 
ジャミルは自分の顎を掴んでいたもう一人の自分自身の手を
跳ね除けた……。途端にどうしようもない、やり場のない感情が
一気に押し寄せてきた……。
 
「お前が最初に見たアホな赤ん坊の記憶……、あれは偽装だ、
この世界で創り上げられた記憶さ、お前がこの世界に召喚
された時に創り上げられたふざけた記憶だ、マザー……、
大いなる優しい母の愛なんてモンはこの世に一切存在
しねえんだよっ!」
 
今までやや、おとなし目であったもう一人の自分の口調が
突然強めになった。さっきまでとはうって変わった鋭い
目つきで自分を睨んでいる……。確かに、もう一人の自分が
言っている事に間違いはなかった。かつては家族の記憶を
微かに思い出を残しているアルベルトに嫉妬し密かに恨んだ
事もあった。……自分には思い出せる親の面影すらないのだと。
 
「でも、……俺は……っ!」
 
「取り込まれちまえよ、お前もマニマニに……、楽になれるぜ……、
そして此処に残れ……、永遠にさあ、そうすればお前はきっと……、
罪を償える……、俺ももう苦しまなくて……」
 
もう一人のジャミルが再びジャミルに顔を近づける。そしてニヤリと
笑い姿を消す……。代りに自分の前に現れたのはダウド殺害時の
血まみれの息絶え絶えのダウドの姿であった。
 
「……痛いよ、ジャミル……、オイラ死にたくないよ……、助けて……」
 
ダウドは悲痛な顔をジャミルに向ける。だがダウドもすぐに
姿を消した……。
 
「ううう……ああああっ!……ダ、ダウ……」
 
ジャミルの頭の中にダウド殺害時の記憶が再びフラッシュ
バックした……。
 
罪を償う……あの時ダウドを無理矢理にでも引き留めておけば……
 
 
「……一緒に……行きたくないんだ……」
 
 
自分の手でダウドをこの手に……
 
「何で……、捨てるぐらいなら……、邪魔なら何で俺のお袋は
俺なんか産んだんだよ、何の為に俺は産まれたんだよ……、
何で俺は……俺と出会った事で……ダウドは……」
 
ゆっくりとジャミルの側にマニマニが近づいて来た。ゆっくりと……。
ジャミルはうっすらと顔をあげる。再び心が孤独の闇に飲み込まれて
しまいそうだった。
 
 
ワタシハオマエノココロノナカノジャアク……
 
ケッシテタオスコトハデキナイ……


ジャミルははっと我に返る。しかし、既にマニマニ……、ジャミルの
悪魔はジャミルに向けPKキアイΩを放つ。大ダメージを喰らい
ジャミルはその場に倒れるがライフアップを使う気力さえも
なくなっていた。
 
「俺……、本当に駄目だ……、今まで逃げて来た事……、目を背けて
来た事が……全部俺に覆い被さってきやがる……」
 
ジャミルの悪魔は憐れんでいるのか不気味な光を放ちながら
倒れているジャミルをじっと見ている。もしかしたら……此処で
朽ち果てる事が元の世界で彼が行った非道、ダウドを殺した事への
罪を償えるかも知れない。そう思いジャミルは死を覚悟した様に
静かに目を瞑った。けれど目を瞑ると自分の為に命を落とした
フライングマンの姿が目に焼き付くのであった。
 
 
……ジャミル、……聞こえる……?
 
 
「この声……、アイシャ……、何で……?」
 
ファイアスプリングでは倒れたまま目を覚まさないジャミルへ
アイシャが必死でテレパシーを使いずっと心に呼びかけて祈っていた。
 
「アイシャ、もう止めるんだ!それ以上力を使ったら……、
君の身体が持たないよ……!」
 
「いいえ、私はジャミルが目を覚ますまでずっとこうしているわ、
諦めない……、ジャミル……、あなたの心に届くまで……、絶対に……」
 
「全くもう、どうしようもないねえ、んとに、……どれだけ心配
掛ければ気が済むんだか、アイシャ、呆れたからオイラも手伝うよ、
オイラのPPも使って!一緒に言う事聞かないジャミルを連れ戻そう!」
 
「ダウド……、うん!」
 
「……僕にはPPは無いけれど……、でも、僕にも出来る事が有る筈だ……、
ダウドの言う通りだよ、ジャミルの無茶はもう一生治らないよね……」
 
「アル……」
 
苦笑いしながらアルベルトも静かに祈りを込める。自分の声もどうか
ジャミルに届くように。
 
……ジャミル、聞こえてる……?私達ずっと待ってるから……、
ずっとずっと……
 
あっほーの馬鹿ジャミル、聞いてる?……早く戻ってきなよお、
ジャミル戻って来ないとつまんないじゃん、だから早く……、
戻って来てよお……
 
……君が帰ったらスリッパの刑、以上!……ジャミル、
だからどうか早く……、皆で待ってるよ……
 
「アイシャ、アル、……ダウド、聞こえるよ、お前らの声……」
 
「……ジャミルっ!アル、ダウド、ジャミルが……私が送った
テレパシーの声に反応してくれたわ!」
 
アイシャが涙ながらに叫んだ。ファイアスプリングでのジャミルの
本体は未だ眠り続けたままだが、アイシャが必死にテレパシーを
送り続けた事により、マジカントにいるジャミルに漸く声が届き、
話が出来たのである。
 
「ジャミル……、な、何してんのさあ~、今何処にいるんだよおおーー!」
 
「バカっ!本当に君はっ!……本当にっ!!」
 
「俺……、今、自分自身で創っちまった遠い世界にいるんだ、
詳しい事は話すと長くなるから……、だから今はまだ何も
話せねえけど、絶対に戻るから……、お前らの所にさ……」
 
「本当ねっ!……絶対に……、絶対に戻って来るのよっ!ジャミルっ!」
 
アイシャが叫ぶ。アイシャの声は涙声で震えていた。
 
「約束する、もう少しだからな、アイシャ……、わりィなあ~、
毎回毎回……」
 
「うん……、本当……よ……、しょうがないんだ……か……ら……」
 
そして、ジャミルとの会話が途切れた……。
 
「……ああっ!アイシャっ!」
 
「無茶して力を使い過ぎたんだよおーー!」
 
直後にアイシャもぱたりと倒れそうになる……。
 
ジャミルは……、今すぐに離れ離れの仲間と会いたかった。
そんな気持ちになっていた。自分でもよく分からなかった
感情が込み上げてきた。独りは淋しいという事。でも、それは
絶対に彼はこの先もそれを人前で前面に出す事はない。なぜなら
ジャミルは意地っ張りで頑固なアホだから。でも今は皆に会いたい。
それだけがジャミルに再び戦う勇気を募らせる。元の世界でダウドを
殺してしまった罪は一生消える事はない。でもダウドは今、いつも
一緒に側に居る。……何かあるとすぐに逃げるが。これからもずっと。
新しい冒険の世界で。
 
「帰るんだっ!……俺は皆のいる場所に……!」
 
倒れていたジャミルはぱっと立ち上がり、マニマニの像を思い切り蹴る。
蹴られた処で面食らったのか、ジャミルの悪魔が再び喋り出した。
 
……ホウ、イママデナキッツラダッタノガドウシタ?キデモクルッタカ?
 
「うるせー!俺は泣いてなんかねえっ!唯、やっと分ったんだよ!」
 
ソンナモノ、ワカリタクモナイ!モウキエテシマエ!ソシテラクニナレ!
……エイエンニ!
 
再びジャミルの悪魔がPKキアイΩを放とうとした。しかし同時に
ジャミルも同じくPKキアイΩを放つ。二つのPKキアイΩが同時に
激しくぶつかり合い、押し合う。
 
ニセモノメ!オトナシクキエロ!!
 
「うーるーせええええ!!俺は絶対に消えねえ!俺は殺しても
しなねえぞーーっ!!」
 
……ナ、ナニ!?
 
「うああああああーーーーっ!!」
 
最初はやや押され気味であったジャミルの方のPKキアイΩは……、
徐々に力を増していき、等々、ジャミルの悪魔の方のPKキアイΩを
押し流し、そして消滅させた。
 
……バカナ、コンナ……、コトガ……、アッテタマルカ……、
ワタシハキエヌ……、ゼッタイニ……、ワタシハオマエノジャアク
ソノモノダ……、ジャミル、オマエトイウニンゲンガソンザイ
スルカギリ……
 
PKキアイΩを喰らったマニマニ……、ジャミルの悪魔は苦しそうに
呻いた。……マニマニの像に徐々に亀裂が入る……。
 
「分ってるよ、お前は俺なんだ、受け入れるよ、俺の中の邪悪をさ、
だけど……、それだって俺の一部で、無きゃ困る大事な物なんだよ、
いい子ちゃんだけじゃ生きて行けねえの、さ、戻れよ……」
 
ジャミルはマニマニの像の前に立って改めて崩れて行く像を
見つめていた。像はジャミルの目の前で完全に壊れ、そして
消滅した。
 
「……戻ったな、俺の中に……、よし、あまり出て来ちゃ駄目だぜ……、
アイシャに怒られるかんな……」
 
「フライングマンは俺の勇気、マニマニは俺の中の悪魔、後は……」
 
「……」
 
ジャミルはもう一人、残った自分……、元の世界での自分と
対峙する……。
 
「後はお前だけだな、いや、俺自身なんだけど……」
 
「で、どうするんだ?……これで仲間んとこ戻ってハッピーエンド
ってか?全くおめでたいよ、俺は、昔からさ……、さっきまで
メソメソしてたんがもうこれだしな……」
 
もう一人のジャミルは両手を頭の後ろに組んで呆れた様に
ジャミルを見た。けれど、表情はもう穏やかな表情をしていた。
さっきまでの険しさはない……。ジャミルはそんな自分自身……、
もう一人のジャミルの横に並んだ。
 
「さっき俺が言った、分った事だけどな……」
 
「あん?」
 
「俺、親に捨てられたからこそ、ダウドと会えた、大きな夢も持てた、
大事な仲間にも会えた、波乱万丈なこの複雑で奇妙な人生だからこそ、
出来なかった出会いも……、だから、何て言ったらいいのかな、確かに
親を怨んだ時もあったさ、でも、俺が俺でいられたのは、やっぱり親に
捨てられたからさ……、だから俺は……、自分を産んでくれた親に……、
やっぱ感謝しとくよ……」
 
ジャミルはちょっと困った様な表情でもう一人の自分を見た。
そして微笑んだ。
 
「はあ、そう纏めちゃいますか……、やっぱ俺だ!……何も考えてねえ
単純馬鹿だっ!あー、いやだいやだ、後生楽っ!ま、いいさ……、
どうせ俺なんだし」
 
「……お前もそろそろ戻ってこいよ、いい加減、家出飽きたろ?」
 
もう一人のジャミルもジャミルの方を見た。同じく、静かに
笑顔を向けた。
 
「分ったよ、戻ってやるよ……、但し、また今回みたいにみっともねえ
ツラしていじけてみろ、すぐに又家出してやるからな……、俺は俺の
ままでいろ、いじっぱりで頑固で素直になれないバカのままの俺で
いろよっ!……ずっと、そうやって笑ってろよ、バーカ……」
 
「……お互い様だっつーの、アホっ!」
 
「俺が戻る前に……、良く聞いておけよ、ギーグの狙いはお前の
抹殺だ、銀河系、全ての宇宙がギーグとか言う奴の手に落ちるかも
知んねえ、けど奴らも困ってる、ギーグの持っている予言マシン、
智恵のリンゴがギーグの企みが失敗に終わるって出たかららしいぜ、
その理由が俺でもある、ジャミルという名の邪魔な存在らしい、
……よーく心を落ち着けろ、自分がこれから何をすべきなのか……、
俺とお前はこの先何処へ向かうのか……、そう、サターンバレーだよ、
其処で新しい何かが見つかる筈さ、もうすぐこのマジカントは消滅する、
……急げ!こんな長い台詞を俺に喋らせんな!じゃあな、あばよ、
……バカの俺!」
 
「……最後までうるせーんだよ俺は……ギャーギャーギャーギャー……」
 
もう一人のジャミルは消える。……ジャミルの中に漸く戻ったので
あった。そして、ジャミルの身体を眩い光が包んだ。
 
「これは……、俺の中に……力が漲ってくる……?」
 
今まで訪れた8つの全ての記憶の場所……、パワースポットが
ジャミルに力を貸し、隠された潜在能力を目覚めさせる……。
 
ジャイアントステップ……
リリパットステップ……
ミルキーウェル……
マグネットヒル……
レイニーサークル……
ピンククラウド……
ルミネホール……
 
そして、ファイアスプリング……
 
全てのパワースポットの力を経て、ジャミルのサイキックパワーは
確実に飛躍する。隠された全ての力をジャミルは自分の物にする。
そして、マジカントは消滅した……。
 
 
……行けよ、もう……、目ェ覚ましてもいいんだぜ……
 
 
誰かが自分に呼びかける声がする……。懐かしい声が……。
 
「ジャミル……、ジャミルっ!」
 
「……アイシャ……?」
 
「良かった、やっと……、目を覚ましたよお~……ぐっすっ!
んとにもうっ!……ひうっくしっ!……」
 
「全くもう、本当だよ、……君はもうっ!」
 
「ダウド……、アル……」
 
自分を心配そうに見つめる仲間達の顔。……やっと……、マジカントから
ジャミルは生還したのであった。アイシャが泣きながらジャミルに飛びつく。
優しい香り。温もり。アイシャはいつものジャミルのバカ攻撃を発せず、
代りに彼女の口から出た言葉は……。
 
「お帰り、ジャミル……、えへへ……、また会えたね……」
 
「ただいま、……アイシャ……」

zoku勇者 マザー2編・43

zoku勇者 マザー2編・43

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-08-08

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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