霊能探偵・芥川九郎のZファイル(9)【松山旅行編】

第1章 河童の庄内川太郎

 霊能探偵・芥川九郎は、事務所で相棒の牧田マリアと話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「庄内君が畑で取れたトマトやキュウリを持ってきてくれたよ。マリアさんにも半分あげるから、持っていきなよ。」
マリア「おいしそうなトマトやキュウリですね。ありがとうございます!」
庄内川太郎は、芥川とマリアが庄内川付近の畑で捕獲・保護した河童である。
マリア「庄内さんは、JA(農協)の短期アルバイトをしてるんですよね。」
芥川「うん。まだ続いているみたいだよ。そこで知り合った人に誘われて、小さな畑を借りてキュウリやスイカを作っているんだってさ。」
二人がそんな話をしていると、能年(鎧)がコーヒーを運んできた。
芥川「能年君、ありがとう。」
マリア「ありがとう、能年さん。いつもすいません。」
能年は鎧の妖怪である。芥川の助手として、彼の事務所に住み込みで働いている。
 芥川は熱いコーヒーを一口すすってから、おもむろに口を開いた。
芥川「唐突だけど、僕は松山へ旅行に行く。マリアさんとサッちゃんも一緒に行こうよ。」
幸子「うん、私も旅行に行く!・・・松山って、どこにあるの?」
福家幸子は、芥川が栄で見つけて事務所に連れてきた座敷童子である。
マリア「本当に唐突ですね。松山で怪奇事件でも起きたんですか?」
芥川「いや。古い知人に会いに行くだけさ。」

第2章 松山旅行

 こうして芥川、マリアと幸子は松山へ旅行に行くことになった。三人は名古屋駅から東海道・山陽新幹線に乗り、岡山駅でJR特急しおかぜに乗り換えた。松山駅に到着したのは午後2時過ぎだったので、どこへも寄らずに旅館にチェックインした。
幸子「やっと旅館に着いたぁ!」
芥川「懐かしい。本当に久しぶりだなぁ。」
マリア「ここが芥川先生の友人が働いている旅館ですか?」
芥川「うん。それが今回の旅の目的さ。僕は彼らに会いに来たんだよ。」
 三人は旅館にチェックインした後、案内された部屋でくつろいでいた。そこへ猫田と狸原がやって来た。
猫田「おじゃまします!本当に芥川さんだ。お久しぶりです!」
狸原「芥川先生!本当にお久しぶりでございます。」
芥川「やぁ!二人とも元気そうで何よりだ。」
猫田虎吉は化け猫で、狸原砥和子は化け狸である。両者とも芥川が松山時代に更生させた妖怪で、同じ旅館で一緒にアルバイトをしている。
猫田「お連れの方は、芥川さんの奥様とお子さんですか?」
芥川「ハハハッ。違うよ。彼女は相棒の牧田マリアさん。この子は座敷童子のサッちゃん。」
幸子「こんにちは。幸子です。」
マリア「はじめまして。よろしくお願いします。」
狸原「こちらこそよろしくお願いします。」

第3章 旧友たちとの積もる話

 芥川はマリアと幸子に向かって言った。
芥川「僕は猫田君、狸原さんと話しているから、マリアさんとサッちゃんは松山観光をしてくるといいよ。」
マリア「そうですか。では、お言葉に甘えて・・・」
マリアは幸子を連れて松山観光に出かけた。
 芥川、猫田と狸原は改めて会話を続けた。
狸原「芥川先生は名古屋でまだ、霊能探偵を続けていらっしゃるんですね。」
猫田「しかし、芥川さんは本当に若く見えますね。全く年を取っていないみたいだ。」
芥川「うん。いろいろ事情があってね。夏目君もたまには、ここへ来るんだろう?」
夏目半兵衛は、芥川の松山時代における相棒である。今は滋賀で法術師をしている。
狸原「夏目先生は数年に一度、ここへお見えになりますよ。」
猫田「芥川先生の話は、夏目先生から伺っておりました。」
芥川「夏目君は真面目な男だからね。彼は非常にクールに見えるけど案外、律儀な人間なんだよね。」
狸原「芥川先生がドライ過ぎるんですよ。名古屋に行ってしまってから、ずっと音沙汰なしだったんですから。」

第4章 旅の目的

 猫田は話題を変えて言った。
猫田「夏目先生から、芥川さんが琵琶湖で大変な目に遭ったとお聞きしました。」
狸原「芥川先生が魔界に落とされたこと、夏目先生はとても悲しんでいましたよ。」
芥川は狂気の霊能探偵・夢野長政との死闘の末に、夢野の送還魔法によって魔界へ落とされ、5年間魔界をさまようこととなった。彼は魔界から帰還することができたのだが、驚くべきことに人間界では30年もの月日が流れていたのだ。
芥川「その話ももちろんするけど、君たちの話も聞かせおくれよ。二人とも今日は休日なんだろう?」
三人はマリアと幸子が戻ってくるまで話し続けた。
 芥川はマリア、幸子と一緒に晩ご飯を食べた後に、一人で夜の街を散策した。マリアと幸子は夕食後、温泉に入ってから部屋に戻った。二人は旅の疲れからか、すぐに眠くなって寝てしまった。
芥川「光陰矢の如し・・・」
芥川は珍しく、感傷にふけっていた。
 三人は数日間、松山旅行を満喫してから名古屋に帰ってきた。旅から戻った芥川は何かを、静かに決心していた。

霊能探偵・芥川九郎のZファイル(9)【松山旅行編】

霊能探偵・芥川九郎のZファイル(9)【松山旅行編】

「唐突だけど、僕は松山へ旅行に行く。マリアさんとサッちゃんも一緒に行こうよ。」 霊能探偵・芥川は相棒・マリアと座敷童子・幸子を連れて、名古屋から松山へ向かった。 マリアと幸子が観光している間、芥川は旧友である化け猫・猫田、化け狸・狸原と再会し、積もる話に花を咲かせる・・・ 30年という年月の重みがちょっぴり切ない、トラベル妖怪ファンタジー第9弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-08-01

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  1. 第1章 河童の庄内川太郎
  2. 第2章 松山旅行
  3. 第3章 旧友たちとの積もる話
  4. 第4章 旅の目的