善意舗装有限会社

通るはずの道ではなかった
硝子とか煉瓦とか まばゆい色
で染められ 細筆で
塗りたくるひとたちがいて
薄い笑みを浮かべながら
心の底からしあわせそう
な色溺れ 鸚哥時間
なんだか歩いてみたくなり

蟻の目玉をつきつめた石とか
月光を煮詰めたレジンとか
道はいろとりどりな鳥の羽音
だからこのまま山の向こうへ
行ける気がしていた 湿潤鉱
異なる道が枝分かれしそうな
鯨腹のふくらむ 予感の星系

色を彫る人は数をかぞえている
名を奪われ雲で満たされた胃
目の前におかれた五つのマス目に
レ点を刻む 椅子に縛りつけられ
「笑いなさい しあわせそうに」
笑みのむこうの蝦は告げる
ちがうほうの楕円
  わたしがわたしでなくなる音

色を塗る人は視界からこぼれ
振り返れば考え続ける門影
そういうことだったのね
       と鰐の脱輪

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静岡新聞2026年7月28日読者文芸欄野村喜和夫選

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-28

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