zoku勇者 マザー2編・39
地底大陸編・4
遂にアルベルトとも仲違したジャミル。4人の雰囲気は
ますます険悪になってゆく……。
4人はただ只管黙って歩く。もはや会話など無くなっていた。
アイシャはあのまま眠り姫状態で眠ったままである。
「……お?またか……」
ジャミルが辺りを見た。この地底大陸では恐竜が出なくても頻繁に
地震が起こる。それでも、立ち止まってはいられなかったが、所々に
体力、状態異常を回復出来る不思議な温泉の場が有り、其処を利用
しながら更に先に進む。無論、4人の間に交わされる言葉はない。
(はあ、いい加減で黙ってんのもきついなあ~……)
ジャミルは目線でチラチラ後ろのダウドの方を見た。もうジャミルが
真面に会話出来る相手は親友のダウドしかいなかった。
(いいさ、元々俺は一人だったんだ、……一人……)
「……」
そう思いながら、ジャミルは……、レイニーサークルから頭に
流れ込んで来た映像を思い出していた。雨の中で蹲り孤独に
佇む少年の……。
(あれは、やっぱり……、そうか……)
※あぶない時は此処に避難しよう! ボス
万が一の場合の強敵からの避難場所も用意されていた。囲いの中に
オウムが一匹。黒電話の代わりにちゃっかり用意されている。本来
いつもなら、此処でジャミルが悪戯をしマッハ宅配ピザやらエスカルゴ
運送に電話を掛けて困らせる処だが……、今はそんな事をするユーモア
さえも彼は失い掛けていた。
……4人はそのまま無言の旅を続け、やっとこの地底大陸で
集落の様な場所を見つけた。何だか原住民が済んでいそうな
村である。見えている家などは全て藁で出来ている。
「お前ら止まれ!」
「……グミ族……?こんな所にもか……」
「くんくん、お前ら結構いいニオイするな……」
「あ、……その……」
ジャミルが慌てる。丁度タイミングよくジャミルがブッと屁を
したからである。後ろにいるアルベルトは別にいつもの様に
騒ぐ事も無し。少し眉間に皺を寄せていたが。ダウドだけが
臭い臭いと大騒ぎであった。
「あの、わざとじゃ……、ねえんだけど……」
「グミドリアンだよ、グミドリアン!匂いで分るんだって!
持ってんだろ!?」
「ああ、……持ってるけど……」
屁の事じゃなくて安心したとジャミルは思いながら、リュックから
ビニールでぐるぐる巻きに慎重に包んだグミドリアンを取り出し、
グミ族の番人に見せた。
「おお!幻の果実、グミドリアンだっ!すげえーー!」
「やっぱり……、これでも相当臭ってたのか……、っつー事は、
俺達、相当臭かったわけだ……、欲しいならやるよ、ほら……」
「お前らそんな処で何してるんだ!そこは恐竜の檻の中だぞ、
早くこっちへ来い!」今村の門を開けてやるから!グ、グミドリアン、
グミドリアン、ハアハア……」
門番の後ろから別のグミ族が慌てて走って来た。
「この方は村のボスだ!偉大でどエライお方だっ!」
「ボス、それに檻……?」
よく分からないと思いつつ、4人は村の中に入らせて貰う。
それにしても、上の世界のグミ族と違い、此処のグミ族は
随分と軽い喋り方をする。
「おい、変な赤い帽子のお前以外、全然喋らないな……、無口なのか?
地上の噂では無口を治すという本があるそうだが……、読んだか?」
「あの、……この子を休ませて貰える場所はあるかな……、
色々あって疲れ切っちゃってるんだ……」
質問は無視し、アルベルトが眠ったままのアイシャをグミ族の
門番に見せた。
「やっと口聞いたな、よし、こっちだ、宿屋があるぞ」
「ありがとう……」
アルベルトはそのまま無言でアイシャをおぶって宿屋まで歩いて行った。
「……」
「あの、ジャミルは宿屋行かないの?」
「俺はいいや、どうせアルも俺の顔なんかみたくねえだろうし、
アイシャも目が覚めたら又気分が悪くなるだろうしよ、
ふん、どうせ俺が邪魔なんだろ……」
「……あのさ、誰もそんな事言わないよ、アルもアイシャだって……、
大体こうなったのもジャミルが全部悪いんじゃないかあ、
かっこつけて一人で全部抱え込んでさ、本当は淋しい癖に……」
「お、俺が?……淋しいだと……?」
「そ、素直になりなよね……」
……何だか今日はジャミルがまるでダウドの様であった。
ジャミルは暫く考えていたが、やっとダウドと向き合い
ぼそっと喋り出した。
「なあ、ダウドは……、俺らの……、元の世界にいた頃の……、
記憶って覚えてるのか……?」
「ジャミル……?」
等々、この質問をダウドにも聞く時が来てしまった。ダウドは
きょとんとして暫くジャミルの顔を見つめていた。
「……それは、内緒だよお……、です!」
「……おい、ちゃんとはっきりさせろよ……、俺は……、はっきりした
記憶がねえんだよ、元の世界にいた頃のさ……」
「ま、しいて言えば、オイラは今、幸せかな……、皆といられて、
……ジャミルと一緒にいられて、こうしてずっと旅が出来てさ……、
へへ、オイラヘタレだから、やっぱり逃げ出したくなる事の方が
多いんだけどさ、この一瞬一瞬、瞬間を大切にしたいんだ……」
「ダウド……」
「じゃあ、オイラもアイシャの様子見てくるね!
いつまでも本当に意地張ってちゃ駄目だよお!」
ダウドは宿屋まで走って行き、ジャミルは独りその場に取り残された……。
「……よく分かんねえな、仕方ねえ、俺一人で村ん中歩いてみるか……、
アル達と顔合わせんの気まずいしな……」
「……たく、いじっぱり……」
ジャミルがその場から去った後、宿屋へ行ったかと思われたダウドが
ひょっこり顔を出した。
「そっか、忘れてるんだ、……でも、思い出さない方が
いいのかも……、もしかしたら、ジャミルは段々と記憶を
取り戻していく事に戸惑っていたのかな、だけど、きっと
思い出すね、もうすぐパワースポットの全場所を回り終えるんだし、
もしも思い出したら、ジャミルはきっと又苦しむのかな……」
ダウドはジャミルが歩いて行った方向をじっと見つめていた。
元の世界では自分がジャミルに殺される事、待ち受けている運命を
ダウドは全て覚えていた。でも、別世界ではこうしてずっと
一緒に隣にいられる。馬鹿をしながらでも。ただそれだけで幸せだった。
「神秘の石、拝んで行けよ!この村にあるぞ、よく喋る岩だぜ!」
「喋る石?」
「有難いお告げをしてくれる石だ、けど、俺らには何の事なのか
聞いてもさっぱり理解出来ないけどな!」
「……神秘の石か、もしかしたら地底の喋る岩の事かな、
そいつには確かちゃんと話は聞いとけって言われたな……」
重要な話をしてくれるらしいので、それにはちゃんと他の仲間も
連れて来ないと駄目である。
「……やめた、後でいいわ……」
まだアイシャ達に謝る覚悟が出来ていない為、それは置いといて、
ジャミルはもう少し一人で村を散策してみる事に。……やがて
地底にも夜が訪れる。ジャミルは夢遊病の様にまだ村の中を
ふらふら歩いていた。
「結局、レイニーサークルからの映像は、全部俺の過去……、
元の世界での俺の本当の記憶だ……、だとしたら、一番最初の
赤ん坊の映像は……」
考えて立ち止まる……。再び激しい頭痛がジャミルを襲う。
「ま、また……、頭が……、ううう……」
本当にいいのか?後悔しないな?最後のお前の場所はもうすぐだぞ……
「うるせ……、遂にこんな所まで声が聞こえる様になっちまった
のかよ……、しかもカタカナから普通に喋る様になりやがって……、
俺はもう決めたんだ、何があっても絶対に突き進むんだって……、
例え独りになってもな!」
そのお前の独り善がりの傲慢さが……、仲間を傷つけて……
苦しめたんだぞ……
「うっ……、うるさいうるさい!……うるさああああーーいっ!!
くそっ……」
その頃、宿屋では……、一向に宿屋へ姿を見せようとしない
ジャミルをダウドが心配していた。……勿論、黙ってはいるが
アルベルトも。アイシャはまだ眠っている。
「ジャミル、まさか最後のパワースポットの場所を聞いて……、
一人で行っちゃったんじゃ……」
「……」
ダウドの言葉に流石にアルベルトも心配になったのか椅子から
立ち上がった。
「全く、本当にバカなんだから……、嫌、バカは分かってるけどさ……」
「……ア、アルっ!ジャミルを迎えに行ってくれるの!?」
「ダウド、一応迎えに行くだけだよ、ジャミルが口を聞かない限り
僕も聞かないから……」
……そう言ったアルベルトは顔を赤くしていた。
「うんっ、早く行こうっ!」
「待って、……でも、アイシャを一人でこのままにしておけないよ……」
「あっ、そ、そうか……」
二人は只管眠り続けるアイシャを複雑な眼差しで見つめた。
「お、おい、お前らっ!」
突如部屋に村のグミ族が雪崩込んできた。
「……あの、何かあったんですか?」
「お前らの連れの帽子被った変なヤツ!急に呻き出して倒れたぞ!
早く行ってやれよ!何か頭抱えて様子がおかしいぞ!」
「えええええっ!?」
「……ア、アル!」
「すみません、少しの間この子を見て貰っていて
頂けないでしょうか、すぐに戻って来ますので!」
「よし、任せろ!すぐ行ってやれ!」
「お願いします、ダウド急ごう!」
「う、うん!」
二人はアイシャの見守りを少しの間グミ族にお願いすると
慌てて宿屋を飛び出して行った……。
……気が付くと、ジャミルは又ベッドの上であった。これで何回目だよ、
勘弁してくれと思いながらうっすら目を開けると……。
「まだ起きちゃ駄目よ、具合悪いんでしょ……」
「アイシャ……」
自分の顔を心配そうに覗き込むアイシャの姿が目に映った。
「お前、もう大丈夫なのか?」
「あ、後でちゃんと話があるからっ!私もアルもダウドからも!
だ、だからそれまでちゃんと身体休めなきゃ駄目なんだからね!
……べ、別にジャミルなんか心配してるわけじゃないもん!ふーんだ!」
アイシャは後ろを向いたまま、慌てて部屋の外に飛び出していった。
「あいつ、あれでもツンデレのつもりか……、全然……」
そう言いながらジャミルはベッドの中から目で周りを追った。
アルベルトとダウドも外に行っているのだろうか、この部屋には
二人とも姿が見えない。窓からは日差しが差し込み、もう朝の様だった。
確かに此処が宿屋なのだろうが、宿屋と呼ぶにはあまりにも場所が狭い。
ベッドは二つ。ジャミルはその内の一つに寝かされていた。
「……一人でも……平気だったのにな、何で……」
「おい、お前もう起きて平気なのか?だったら早く外に行け、
お前らの仲間が待ってるぞ、早く行けよ!」
ジャミルが一人で呟いた処に、何故かリーゼントヘアの
グミ族が部屋にせかせかしく入ってくる。このグミ族が
外で倒れたジャミルの様子をダウドとアルベルトに慌てて
知らせに来てくれたのであった。
「ありがとな、直ぐ行くよ、……けどその頭……、ウィッグか何かか?」
「これは今、地上で流行しているらしい、此処でも上のグミ族から
情報を取り入れ俺達も流行りものを真似している、つっぱりへアだ、
似合うだろ?」俺達グミ族も最近、文明の発達でインターネットと
いう物を使っているだから色々な情報が分るんだ」
「ああ、似合ってる……、と思う……」
……は、流行ってんのかなあ……、と思いつつ、相手を傷つけると
悪いのでジャミルにしては珍しく気を遣って喋った。
「ふう、いい加減で俺から謝るか……、このまんまだとやっぱり
何だかなあ、だし……」
意地っ張りジャミ公も漸く考えを和らげた様子。そしてそのまま
宿屋の外に出て言われた通り広場に向かうと……、ダウド、アルベルト、
アイシャの3人が揃ってジャミルをお待ちしておりました状態で
揃ってジャミルの方を向いた。
「……あの……、さ……、俺……」
「寝すぎだよお!ジャミル!」
「やっと起きたね……」
「……」
「あ……」
仲間達の顔を見て、直ぐに謝ろうと思っていたジャミルは困って
言おうとしていた謝罪の言葉を忘れてしまう……。どうするか
考えていた処に、先にアイシャがフォローなのか口を挟んだ。
「まずは私から……、ごめんなさい、ジャミル……」
「え!あ……、な、何でお前が謝るんだよ!悪いのは俺だろ!」
「いいの!……黙って聞いて……、怒って叩いたりして
ごめんなさい、でも、本当に心配だったのよ、ジャミルの
事が……、だって……、私も皆も……ジャミルだって不安だったの
よね……、ジャミルの気持ちも考えなくてムキになったりして
本当にごめんね……」
「あう!あう!……あううーー!」
ジャミルが慌て始める。本当に悪いのは意地を張った
自分なのに。それでもアイシャはこんなに謝罪している。
ジャミルは混乱し、ますます自分の言葉が出なくなってしまった。
先程、全然心配なんかしていないとアイシャは言ったにも
係らず自分の中の本当の素直な気持ちをジャミルにぶつけた。
「だからね、私……、もうジャミルに余計な事言わないって
いったけど、それもやめる……、だから、……これからもばしばし
怒るわよっ!ジャミルのバカっ!本当にもうっ、心配ばっか掛けて!
バカバカバカっ!!」
「お、おーいっ!結局は怒るんじゃねえかよ!なんなんだあーっ!?
うわ!!」
「……私も意地張らなければ良かった……、口がきけなくて
淋しかったの……」
「アイシャ……、俺……」
アイシャの久々のバカ連発の後に、アイシャがジャミルに抱き着き
彼女の甘い香りがふわりと漂った。
「あの、ごめん……、僕の方の話もそろそろいいかな……」
「あ、ごめんなさい、アル……」
「わ、わりィ!」
慌ててジャミルとアイシャが身体を離す。アルベルトの顔を見ると
考え事をし過ぎていたのか、……メガネがズボンの処までずり落ちて
下に下がっていた。
「アル、メガネ……、直した方がいいよお……」
「あれ……、うん、ダウド有難う、よいしょ……、さて、ジャミル……」
アルベルトがメガネを直してジャミルの方を見た。
「僕の方も……、殴ったりして申し訳なかったと思ってる……、
ごめん、ジャミル……」
「い、いや!だからっ、わりィのは全部俺なんだよっ!頼むから
お前らもう謝らないでくれや!この通り勘弁!ほんとっ、ごめんな!
ごめん!」
「ジャミル……、そんな……」
本当に心から悪いと思っているらしく、ジャミルがプライドを
捨てて土下座し始めた。内心はジャミルも仲間割れしている時は
本心は辛かったのであろう。
「もういいよ、顔をあげなよ、……ふう、やっぱりアイシャは
君に任せる、……じゃないと僕も落ち着かないしね……」
「え?」
「護衛をだよ、君の役目だろ?いや、僕らだってサポートさせて
貰うけどさ、やっぱり破壊怪獣は……、君じゃないと……、務まら…、
…ボソ」
「なあに?今何か言ったでしょ、アルっ!それに私、護衛は
大丈夫よっ!いつまでも子供じゃないんだからっ!護衛が
必要なのはジャミルの方じゃないっ!無茶ばっかするんだからっ!」
「んだとお~?冗談言うなっ!この間夜中に独りで便所
行けなくてオタオタしてた奴がっ!生意気言うんじゃ
ありませんよっ!!」
「……それはっ!眠る前にジャミルが変な怪談話したから
だもんっ!ジャミルのバカバカバカっ!!」
「うるせージャジャ馬っ!デコピンするぞっ!!」
「何よーっ!バカバカバカバカっ!!」
「あの、これって……」
「うん、完全にいつもの痴話喧嘩、元に戻ったみたいだ……」
ダウドとアルベルトは……、この状況を見て唖然とするが、
心なしか顔が綻ぶ。
「はあ、結局こうなっちゃうよね、でも、よかったよお!あはは!」
「そうだね、とにかく良かった……、でも、ダウド……、君からの話は?
ジャミルに何か言う事があるんじゃないのかい?」
「ん?」
ダウドは自分の方を見ているアルベルトの方を向くと、笑って
首を横に振った。
「特に何も……、オイラ、ジャミルやアイシャ、アルが元気で
いてくれるなら……、それだけでいいよ……、何もいらないよお」
「ダウド……」
「と、かっこいい事は言えません!……お腹空いた!
朝ごはん食べたい!」
「……あはは、あはは、あはは、……あは、はあ~……、
たくもう~!」
「何だ何だ!喧嘩だ喧嘩だ!」
「凄いらしいぞ、赤毛のおなごの方が強いらしい!」
「よし、俺は赤い帽子の変な奴の方に掛けようじゃねえか!」
「無理すんなよ!」
いつの間にか、ジャミルとアイシャのケンカを見にグミ族の野次馬が
集まって来ていた。
「二人とも止めなってば!……皆見てるよっ!」
「……ジャミルの……、ばかあああーーーっ!!」
「おおおおっ!?」
「あちゃあ~……」
アルベルトが頭を抱えた。アイシャはジャミルとの大ゲンカで
数日我慢していた為か、ストレスが倍増になったのかいつもの
倍の力でジャミルをパンチでふっ飛ばし、……ジャミルは村の
外まで飛んで行ってしまった。
「本当、すげえな……、あの嬢ちゃん……」
「何だ、やっぱり俺の負けか、それにしてもだらしねえな、
あの帽子のガキはよ、もっとしっかりしねえかっ!!ケツに
潰されてんじゃねえぞ!」
喧嘩を見に来ていたグミ族がジャミルにヤジを飛ばした。
「あはは!このケンカなら見てて安心するよね、アルっ!」
「そう……、だね……」
結局、アルベルトの中のアイシャへの秘めたる思いは彼女に
伝える事はなかったが、アルベルトは呆れつつもダウドが
言った通り、これでいつも通りに戻ったんだと安心したので
あった。
そしてダウドも。この先ジャミルが失っていた元の世界での記憶を
全て取り戻したとしても。きっと乗り越えてくれると。そう心から
思えた。
色々あってやっと仲直りした4人。此処の村でも後する事は
僅かであった。
「えーと、確かこの村にいるらしい神秘の石、喋る石か……、に
話を聞くんだったな、行こう」
グミ族に話を聞いて、神秘の石がいるという場所に案内して貰う。
「やっと話し掛けてくれたな、ジャミル、いいか、長くなるが
良く聞くのだ、今すぐにでもメモを取って欲しいくらい大切な
事を教える!」
「そ、そんなに長いのか……」
「そうだ、心して聞け!大事な事だぞ!」
「そりゃ分かってるけどさあ~……、メモ取れとかって職場の
新人研修みてえ……」
「ジャミル、大丈夫だよ、僕がちゃんと話は覚えてるから、
安心して……」
「お、おう……」
記憶力のいいアルベルトに電脳メモは任せ、ただでさえ
長そうな話を4人は聞く事になった。すでにジャミルは
寝そうだが。
「……ジャミル、大丈夫だよ、もしも寝ちゃってもこれがあるから……」
「わわわわっ!寝てねえよ、ちゃんと目は開けてますっ!」
スリッパを取り出したアルベルトにジャミルが反応し、きっちり
目を覚ました……。
「いいか、お前は選ばれし者だ、お前の運命はお前一人の物でなく、
宇宙全体のシステムとして作られている、お前の全てが宇宙全体の
全てと重なる日が来るのだ、今は分らなくともよい」
「(´・ω・`)」
「ジャミル、また顔がおかしいよお~……」
「しっかり話聞かないと駄目よ!」
「ううう~……」
「……オネットにあったジャイアントステップを覚えているか?
あれはお前の場所のひとつだ、お前にパワーを与え、お前だけの
全てを引き出すスポットなのだ、しかし、其処にはそのパワーの
影響を受けたモンスターがおり、場所を守っている、お前はそれらを
倒してきたはずだ……お前がこの世界に8つある全てのパワースポットの
頂点に立った時、音の石が全てのパワースポットの音を記憶した時……、
お前だけの世界が見えてくる筈だ、この世界の全てのパワースポットを
教えよう」
神秘の石はこれまでジャミルが訪れた事のある全ての
パワースポットの名称と場所をもう一度4人に改めて伝えた。
そして。
「もうすぐ8つ目、……最後の扉が開かれようとしている、
此処より西南のファイアスプリングだ……」
「最後の……、扉……、其処が俺にとって最後の……、記憶の場所……」
「この8つの場所のすべての音を聞かぬ内はギーグの思惑を
覆す事は不可能だ、分ったな、ジャミル、お前の運命が宇宙
全体の運命と重なり合う日が来るのがもうすぐ判るであろう」
神秘の石はそれだけ伝えると黙ってしまった。
「嫌だなあ、俺の運命って……、宇宙と地球全体の運命も一緒に
握ってるって事かい、すんげー重荷なんだけど……」
「でも、此処まで来た以上前に進むしかないわよ、私達もついてる、
……ね?」
アイシャがそっとジャミルの手を握る。ジャミルはアルベルトと
ダウドの方を振り返る。二人とも黙って首を縦に振り頷いた。
「……そうだな、何も心配するこたあねえか、よっしゃ!
もう振り返らねえ、……行こう!」
「その前に、此処にも確かお店があった筈だよ、此処で必要な物を
買っていかないとね」
「はいっ、オイラ、朝ごはーんっ!」
「そうだな、どう考えたってもうこの先、新しい町なんかなさそう
だしな!」
「……無視しないでよおー!」
「そうね、気を引き締めないとね!」
4人は次にこの集落での買い物場所へと足を運んだ。
この店の経営者の名前はエーゴというらしい。
「友達のエーゴに頼まれてお店屋さんごっこをしてるだよ、
何がいい?」
店番はエーゴの友人が担当していた。4人はお品書きを
見せて貰う。ジャミル用のバット、究極バット、アイシャ用の
天使のフライパン、装備品の輝きのコイン、それからダウドが
腹が減ったとやかましいので食料品のマンモスバーガー数個。
「……こっちの方がずっと強そうじゃねえか、何だったんたよ、
あの物々交換してまで手に入れた糞バットはよ……」
「だから僕が言った通りだよ、せっかちすぎるの、君は!
そればっかりじゃなくてこの間の事も含めてだけどさ、
ちゃんと反省しなよ!」
「……むすう~……」
アルベルトの言葉にジャミルがブスくれる中で、ダウドは横で
只管マンモスバーガーをがつがつ頬張っていた。
「この周辺の探索は済んだ?色々とお役に立つものが落ちている
筈だあよ、恐竜だらけでスリル満点かと思うだがね」
「そうだなあ、終盤に向けてLVも上げておきたい処だし、
行ってみるか?」
※実際はこの後のステアップに向けて主役のLVはやたらと上げたら
いかんのですが。
「うん、状況が緊迫してて……あまり余裕もなかったしねえ~……」
アルベルトがジャミルとアイシャの方をちらちら見た。二人はトマトの
様に顔を真っ赤にする。
「な、何だよ……」
「そうよ……、も、もういいのよっ!終わった事だしっ!」
「行ってらっしゃい、オイラハンバーガーが美味しすぎて
動けないので此処にい……なんだよおおおーーっ!!バカ
ジャミルぅーーーっ!」
行きたくないので無茶苦茶な言い訳をするダウドの耳を
ジャミルが引っ張る。見ていたアイシャはくすくす笑い
アルベルトは呆れる。もう完全に4人はいつものお騒がせ
4人組に戻っていた。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるか!」
逃げない様にダウドの胴着の襟首を捕まえたままジャミルが
アイシャとアルベルトに話し掛けた。
「……あ~うううー!ジャミルのあほー!ばかー!おたんこなすー!
うんちー!」
「何とでも言え、たくっ!ん?」
店を出ようとした4人の前に、いやに紳士的でお洒落な
グミ族が姿を現した。他のグミ族とは何だか雰囲気が
違う様である。
「やあやあ、どうもどうも!」
「あ、この人がわしのダチのエーゴだよ、この店の支配人でも
あるだ」
「あ、ども……」
「はい、ボクがエーゴであります!」
エーゴはジャミルにさっと名刺を差し出す。いやに
カッコつけマン野郎だな……、とジャミルは思う。
「ボクのフルネームはエーゴ・ステッキ、あなた方は外国の方ですね、
ボクはある経済大国に留学経験のある話のわかるグミです」
「はあ」
「もしもお金の事でお困りなら力をお貸し致しますよ、ローンの相談、
引き出し時はなんなりとお申し付けください、……但し引き出し金額と
同等の手数料を頂きますが」
「……んげ!」
何処かで聞いた台詞である。そう、魔境で沼の中から現れた
キャッシュディスペンサー男と同じであった。
もしかしたら、あのキャッシュディスペンサー男も……、
経済大国とやらと何らかの係りがあったのかも知れなかった。
「結構れーす!今んとこ、金も降ろさなくても余裕あんので!でわ!」
ジャミル達はとっとと店から逃走した。そんな4人を見ながら
エーゴは不思議そうに首を傾げた。
「何だかあんまり商売取引相手になりそうにないね、彼らは」
「けど、お買い物は沢山していってくれたからええんでないかい」
……そして次回はまたまた恐竜さんと大バトル、腹ペコ集団
vsハラペコザウルスの巻。
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