書き尽くした後に

詩は書き尽くした感じがある
別に詩を書いているという意識はなかった
適当に改行して短文をならべているだけだった
詩の精神にはほど遠かった
私は詩を何もわかっていなかった
詩を語れる立場にはなかった
ランボーや中也を若い頃に読んで感動したことはあった
それでも詩より散文の方が好きだった
詩的精神を持った散文が好きだったのだろう
詩とはなんなのかよくわからない
自分には詩などよくわからない




衝撃と認識

新たな認識を得たいという欲望がある
それだけのために読んでいるのか
それだけのために書いているのか
初めに衝撃があって読みたいという意欲が生じたのだ
欲望が出てきたのはその後だ
認識への意欲は虚像にすぎない
衝撃から始まったはずだ




下手な道化

詩を書く意欲がなくなった
もう意味をたどっているのにすぎない
微妙な言葉を拾うセンサーがなくなった
本当に抜け殻になってしまった
感受性が著しく衰退した
言葉を拾い続けるには
もっと苦しまなければいけない
自分をえぐらなければいけない
でももうそんなことはやりたくない
自ら苦しもうとするのは下手な道化に思える
苦しまざるをえない立場にないのなら
もう詩など書く必要もないだろう




自己

自己はどうしようもなく不安定だ
自己を支える根幹などどこにもない
自己の死を嘆くというのは強欲なことなのか
感覚は誤謬に基づいているのだろうか
真の世界などというものが存在するだろうか
認識に取りつかれた人間が無理に切り開こうとする
私に憑いているものをすっかり除いてしまったら
きっともう生きていくこともできないのだろう
誤謬に感謝しないといけないのだろう




天から降りてきたもの

言葉は天から降りてきたのかもしれない
言葉は人間にたまたま宿ったのかもしれない
自分が天と同化したような言い方はしたくない
言葉だけは疑うことはできない
我思うゆえに我の言葉ありだとしたら
言葉は神に近いところにあるのか
自ら神と名乗るような愚を犯したくはない
地上から天への道を探るしかないだろう
いきなり天から始めるような僭越なまねはできない
私はそこまで自己肯定感が強くない




無理をして書く

まだ書くのか
書きたいことなんて初めからなかった
無理にしぼりだしてるだけだった
根が怠惰だから何も書きたくなかった
思春期からずっとつらい
二つに分かれてしまった人生
何もしたくないが何かをしないといけない
誰もが自分よりもうまく生きているように思える
書かされているという意識なんてない
無理をして書いているだけなのだ




絵画

絵画などまったくわからない
わからないのに絵画の方に魅かれていく
科学と文学の狭間を探ると絵画の方に行くらしい
絵画と向き合わないといけないらしい
なぜだかわからないがその方向に行ってしまう
作者と身体を重ね合わせたい
描く技術などまったく知らない
見るという行為だけなら少しは重ねられる
自然の方から触れてくるときがあった
原初の世界は誰にもわからない




原初の世界に線はなかった
線は人間が生み出した虚構だった
線からはじまる文明の物語
手先を使って思考してきた物語
すべてが誤謬であることに気づいたとき
人間は滅びるのか飛躍するのか
そんなことを考えてもしたがないね
むやみに疑うのは人生に余裕があるからだろう
豊かな国で愚かな貧しい思考に浸っている




科学

誰にでもわかる形式までもっていく
科学に近づくとそうなっていく
わかる人にだけわかればいいではいけない
誰にでもわかるとはどういうことなのか
式と数で表せばいいというものでもないだろう
科学的になるほど作者の精神は消えていく
情念など見る影もない
しかし科学に理性は在るのだろうか





大阪市内

熱が充満している
高層ビルの合間で行き場もなく
ひたすら渦巻いて漂っている
俺にまとわりついてくる
どこまでも絡みついてくる
視界をにじませて歪ませてくる
アスファルトの上で踊っている
熱い熱い呪詛でただれそうになる
湿気と混濁した熱気がずっとついてくる
言葉で表現するのがもういやになった
喫茶店のドアを開ける
現世の楽園を満喫する




読めない

本を読めなくなっていく
世界を素朴に肯定できるようになってしまった
年をとったのかもしれない
否定の思考が渦巻くこともなくなった
心身はどんどん落ち着いていく
働いてないからだと言われればそれまでなのかもしれない
とはいえ長い目で見れば安寧が育っているのがわかる
なんて穏やかなのだろう




みんなで悟りましょう

苦しい
書くという行為は自己を暴くことなのか
そういう見せびらかしはくだらないのだろうか
もう近代も現代も終わったのだ
普通に素直に生きればいいんだよ
これからは優しい時代だよ
嘘だね
そんな考え方は汚いよ
都市社会が仏もどきを生み出す
誰もが悟れる社会になるらしい
確かにまあ悟らないとやってられない
でもそういうのはいやだね




身体を持ち出す

とりあえず身体と言っておけばいい
でもそういうのも限界かもしれない
身体という言葉でごまかすのも限界かもしれない
数理計算が言語的思考の背後に忍び寄る
すべてが行列計算とでもいうのか
それではあまりにも短絡的で露悪的だ
言葉だけで思考は共有できない
思考を共有するためには何が必要なのか




言葉遊び

死にたくなってきた
どこにも居場所がない
自分は社会のどこにも居場所がない
自分は自分のどこにも居場所がない
いつものくせが出てしまうね
言葉遊びをしてわかったようなことを言う
それでも生きづらさはやっぱりある
何かを書かないとやってられないからね
書いてしまうのはしかたないね
本当に死ぬ気はない臆病者なのだ
それでも死にたいと独り言を言ってしまう
死にたいと叫んでしまうこともある
いつまでそうやってかっこをつけているんですか
病んだふりをしてみっともないですよ
若くて容姿が端麗なら病んでも絵になるけどね
中年のおっさんが病んでも見苦しいだけだよ
さっさと社会の歯車になりなよ
それでも生きづらさはある
生来どこでもやっていけない人間なのか
繊細さなんて自分はもっていない
突然かっとなる短絡的な感情は豊富にある
どこまでも自己中心的で攻撃的だ
加害欲なら豊富にある
自分に嘘をついてはいけない
やはり生きづらさはあるね
いつも過去の方を向いてしまうね
病人ぶってかっこいいと思っているのでしょう
全然おもしろくないからやめた方がいいですよ
自分は常人とは違うなんて思っているのでしょう
腐りきったロマン主義はやめてくれるかな
おまえの難解さなんて皆から見透かされているのだよ
おまえほど普通の人間はいないのだよ
またいつものニヒリズムですか
卑怯な自己陶酔をいつまでもくり返すのですか
でもやっぱりしんどいですね
つらいという感情はある
皆から認められたいという卑しさは無限にある
いくらでも無限に湧いてくる
欲望が去ってまた欲望




やっぱり働きたい

あらゆることから逃げている
だんだん自分に腹が立ってくる
何もしていない自分にいらいらする
逃げまくっているだけだ
でももうがんばれないのだ
身体の方がやめてくれと言ってくる
それでも何かを真剣にがんばりたい
ずっとたるんでるのもいやだ
今のままだと一生このままだ
自分は立ち上がるのはもう無理なのか




欺瞞

欺瞞は大事だ
自分にも他人にも嘘をつくこと
嘘を潤滑にまわさないといけない
嘘を飼いならして嘘と共に生きていかないといけない
そういうことができない奴は野暮なのだ
わかっていない奴は制裁をくらう
欺瞞を身に着けていない奴は破綻する




限界

限界が来ているのだろうか
どうやって生きていけばいいのか
憎まれて蔑まれる
納得がいかない
まあでもしたがないか
内側のどす黒いものが出てきそうだ
誰も信用していなかったな
色んなものを抱えながら常識人としてやってきた
耐えられなくなって常識の世界から降りた
そうしたらもともと降りていた奴らから白い目で見られた
そっちの世界にはそっちの常識があるだけだった
どこも一緒だった
よそ者は排除したがる
穢れはこっちに来るなと言っている
人のせいばかりにしている俺がおかしいのだろう
まったく自分を省みることができていないのだろう
まちがっていたのだすべてが

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-23

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