霊能探偵・芥川九郎のZファイル(2)【首を探す騎馬武者編】

第1章 場外馬券売り場・馬インズ

 酒井は自称一流のギャンブラーである。今日も中川区の場外馬券売り場・馬インズで、朝から酒を飲みながら勝負をしていた。
酒井「チクショー!今日はダメだなぁ・・・」
酒井がワンカップを一口飲んでからそうつぶやくと、顔なじみのギャンブラー・芥川九郎が声をかけてきた。彼は霊能探偵である。
芥川「酒井さん。調子はどうですか?」
酒井「調子はよくないねぇ。ギャンブルも、体の調子も・・・」
芥川「ギャンブルはともかく、お酒はほどほどにしておかないと。昔は百薬の長なんて言われてましたけど、実際は百害あって一利なしだそうですよ。」
酒井「芥川さん。飲まなきゃ、やってらんないんだよ。」
酒井はそう言って、ワンカップの残りの酒を飲み干した。
芥川「いつものワンカップですか。」
酒井「水みたいなもんだよ。夏はちゃんと水分補給しないと、熱中症になってしまうからね。」
芥川「でも、ワンカップは逆によくないでしょう。私は缶酎ハイを飲んでいます。」
酒井「缶酎ハイねぇ。」

第2章 小さなお地蔵様

 結局、酒井は軍資金を使い果たして帰路に就いた。
酒井「チクショー!本当にどうかしてるぜ、最近の世の中は。とにかく、政治が悪いんだよ。」
傍から見れば、ただの酔っ払いである。酒井はとりとめもないことをつぶやきながら、人通りの少ない道路をフラフラ歩いていた。
酒井「何をニヤニヤ笑っていやがるんだ!このクソ野郎!!」
酒井はそう叫ぶと、道の片隅にあった小さなお地蔵様に蹴りを入れた。
 ドカッ!!バキッ!ゴンッ!ゴロゴロゴロ・・・
 古い地蔵の首が取れて道に転がった。もしかすると、最初から首の付け根が割れていて、胴体に乗せてあっただけだったのかもしれない。
酒井「本当にどうかしてるぜ、最近の政治家は・・・」
酒井は落ちた地蔵の首には目もくれず、そのまま歩いていった。
 その日の夜から酒井は毎晩、恐ろしい悪夢にうなされるようになった。
酒井「・・・・・・」
酒井は今日も、馬インズで酒を飲みながら勝負をしていた。しかし、悪夢による寝不足のせいで元気がない。芥川は酒井の死んだ魚のような目を見て驚き、心配して彼に声をかけた。
芥川「酒井さん、大丈夫ですか?本当に顔色が悪いですよ。お酒もほどほどにしておかないと・・・」
酒井「・・・・・・」

第3章 悪夢の内容

 そこへ、芥川の助手・牧田マリアがやって来た。
マリア「芥川先生こそ、ギャンブルもほどほどにしてください。もう帰りましょう。」
芥川「いや、次で今日の負けを取り戻せるかもしれないんだ。今日はどうも、調子がよくなかったからね。でも、これから調子が尻上がりで・・・」
マリア「調子が悪いも何も、いつものことでしょう。いい加減にしてください!負けを取り戻すなんて、めったにないじゃないですか。」
酒井「・・・・・・」
マリア「酒井さん。大丈夫ですか?お体の調子でも悪いんじゃ・・・」
芥川「うん。なんか悪霊に憑かれているみたいだね。酒井さん。何かあったんですか?」
 酒井は毎晩の悪夢を芥川とマリアに説明した。
酒井「毎晩、騎馬武者に襲われて、首をはねられる夢を見るんだ。」
芥川「騎馬武者に首をはねられる・・・」
マリア「どんな騎馬武者なんですか?」
酒井「馬に乗っている武者には首がない。それで、首を探しているんだと思う。」
芥川「ちなみに、馬の方はどんな馬ですか?牝馬ですか?『夏は牝馬』と言いますからね。あとは体重とか・・・」
酒井「・・・・・・」
マリア「芥川先生!酒井さんの悪夢から競馬のヒントを探そうとするのはやめてください。」

第4章 酒井のその後

 芥川とマリアは酒井と共に、お地蔵様のある道路へ向かった。
マリア「酒井さんがお地蔵様を蹴り飛ばしたのは、この辺りですか?」
酒井「酔っ払っていたから、実はよく覚えていないんだよ。そんな夢を見たと思い込んでいたと言うか・・・芥川さんに指摘されるまで、すっかり忘れていた。」
芥川「この辺りにあるはずです。不思議な霊気を感じます。」
 三人はしばらく周囲の道路を探索した。やがて、首のない小さなお地蔵様を見つけた。
マリア「これですね!本当に首がありません。」
芥川「首は・・・あそこに転がってる、ちょっと大きな石ころみたいなやつかな?」
芥川は地蔵の首を拾い上げ、酒井に手渡した。
芥川「とりあえず首を戻して、手を合わせて拝んでおきましょう。」
酒井「分かりました。ありがとうございます。」
酒井は地蔵の首を戻し、三人は首の戻ったお地蔵様に手を合わせて拝んだ。
 その後、芥川は酒井を馬インズで見かけることはなかった。
マリア「酒井さん、大丈夫でしょうか?最近、馬インズで見かけませんね。」
芥川「悪夢は見なくなったそうだけど、脳梗塞で死にかけたらしいよ。」
マリア「えっ!まさかあのお地蔵様の呪いで・・・」
芥川「脳梗塞とあのお地蔵様は関係ないよ。脳梗塞で倒れたのに死ななかったんだから、逆に運が良かったんだよ。」
マリア「酒井さんは入院しているんですか?」
芥川「もう退院したけど、リハビリを続けないといけないんだろうね。」
マリア「それで馬インズに来れないんですね。」
芥川「そのうちまた来るんじゃないかな?酒井さんは酒とギャンブルをこのままやめられるのか、それともまた復活するのか・・・賭けてみるかい?」
マリア「・・・・・・」
芥川は競馬新聞に目を落としながら、物思い(?)にふけっていた。

霊能探偵・芥川九郎のZファイル(2)【首を探す騎馬武者編】

霊能探偵・芥川九郎のZファイル(2)【首を探す騎馬武者編】

「芥川先生!酒井さんの悪夢から競馬のヒントを探そうとするのはやめてください。」 自称一流ギャンブラー・酒井は、場外馬券売り場・馬インズからの帰り道、酔った勢いで道端のお地蔵様を蹴り飛ばし、その首を落としてしまう。 その夜から始まったのは、首のない騎馬武者に襲われる恐ろしい悪夢。 元気のない酒井の前に現れたのは、これまた自称ギャンブラーの霊能探偵・芥川とその助手・マリア。 呪い、脳梗塞、そしてギャンブルへの執念・・・ 哀愁漂うオヤジたちが織りなす、クスッと笑えて少し切ない(?)オカルトコメディ第2弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-23

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  1. 第1章 場外馬券売り場・馬インズ
  2. 第2章 小さなお地蔵様
  3. 第3章 悪夢の内容
  4. 第4章 酒井のその後