zoku勇者 マザー2編・38

地底大陸編・3

それはジャミルが折角手間を掛け手に入れた最高のバットの
攻撃力に激怒する少し前の事。グミ族の村から地底大陸に続く
穴を降りたすぐ先に喋る変な顔の岩がいた。
 
「こんばんは、喋る岩です、こんな顔ですが喋るんです」
 
「おお、喋る岩か、……ふ~ん……、で?」
 
別に大して珍しくもなさそうにジャミルが岩に話し掛ける。
岩は物調顔のモアイの様な顔をしている。
 
「……何だかもう異様な生き物には慣れているという感じですね、
まあ、いいです、でもこの近所の喋る岩はお喋りが長続きしません
一番よく喋るのはこの先の迷路の奥の奥の下……、地底大陸にいる
喋る岩です、彼とは必ず話をして下さいね」
 
「そうか、分ったよ、じゃあな……」
 
「ジャミル?」
 
のっそりとジャミルが先に歩き出した。アイシャが心配して
様子を覗うと何だか珍しく疲れている様な表情をしていた。
 
「あまり元気ないね、疲れちゃったのかな……、お腹でも
減ったのかい?」
 
「じゃ、じゃあ、一旦グミ族の村に……」
 
「……戻らねえよ、アホダウド!ちょっと……、な……」
 
「でも、顔色が何だか良くないわ、ジャミル……」
 
再びアイシャがジャミルの表情を覗き込むと、ジャミルは少しだけ
口を開いた。
 
「……ちょっと頭痛がな、俺にしては珍しいだろ?大して何も
考えてる訳じゃねえんだけど、此処に降りてから急によ……」
 
「うわ!ジャミルが頭痛とか!……何かの前兆かも!?」
 
「失礼な奴だな……、このヘタレめ……、くそ、も、もう大丈夫だ、
先行くぞ!」
 
ジャミルは無理して再び先に歩き出す。様子が気になり
不安になったアイシャはアルベルトと目線を合わせた。
ジャミルは早足でどんどん歩いて行ってしまい、他のメンバーは
取り残される……。
 
「大丈夫だよ、……ジャミルの事だから……」
 
「そうね、私もそう思いたいんだけど……」
 
「……あう、ま、また……」
 
皆から離れて少し先に進んだジャミルが頭を抑えて
しゃがみ込んだ……。ピンククラウドでも頭の中に
流れ込んできた声が再び頭に響き渡っている。
 
 
……ススムナ、コノサキニ……ススンダラダメダ、ススメバ
オマエハ……
 
 
「うるせえな、誰なんだよ、大きなお世話だよ……、畜生……、
俺と同じ声で……やっぱり調子がおかしいのは……、俺の記憶の
場所が近いから……、なのか?」
 
「あははーっ!オイラだけの専用防具、みーつけちゃったあ!
あは?……ジャミルっ、ど、どうしたのさ!」
 
「ダウド……」
 
自分専用防具の王者のバンダナを見つけたダウド、しかし、蹲くまって
頭を抑えているジャミルを見つけるなりすぐに心配してすっ飛んできた。
 
「どうしたのさあーっ!や、やっぱり調子が悪いのかな?あわわわ……」
 
「いや、本当に大丈夫だ、それよりさ、丁度いいや、お前にも
この際聞いておきたい事があるんだ……」
 
「はうう~!?」
 
……ジャミルはダウドの目をじっと見つめて口を開いた。
 
「あうーっ!まさか……、こ、この話は一応ノーマルだからあーーっ!!
変な感情起こしちゃ駄目だってばあーーっ!!」
 
「……何言ってんだ、バカだなお前、もういいや、話す気が失せた……、
やめた」
 
「えええーーっ!?」
 
「ジャミルーっ!……もう、一人で先に行ったら駄目じゃない!
……ダウドもよっ!」
 
「大丈夫かい?」
 
「アイシャ、アル……」
 
アイシャとアルベルトも先に一人で行ってしまったジャミルに
漸く追いついた。
 
「大丈夫さ、わりィな、こいつの所為で頭痛がふっ飛んだ!
あんまりアホな事言うからさ、もう大丈夫だ!」
 
「……オイラの所為!?それともオイラのお陰!?どっち!?」
 
「そう、君が大丈夫ならいいんだけど……」
 
「本当に本当なの?嘘言ったら怒るわよ!」
 
「うっ……」
 
腰に手を当ててアイシャがジャミルに近づき、顔をじっと見つめた。
ジャミルは顔を赤くして戸惑う。
 
「本当だって!元気元気だよ、さー先進もうぜ!4人でな!」
 
ジャミルは拳でダウドの頭をげしげし突きながらアイシャに
笑顔を見せた。
 
「……いたた、何すんのさあーっ!もうーーっ!!」
 
「じゃあ、信じる……、先、進みましょ!」
 
「おう!」
 
……結局、ジャミルがダウドにさっきの話を訪ねる事は無かった。
ダウドは元の世界での記憶を覚えているのかと言う事……。
4人はそのまま地下洞窟の通路を進んだ。
 
……そして。
 
 
……よく来たな、此処は7番目のお前の場所だ……、しかし今は
私の場所だ、奪い返してみるがいい……、奪い返せる物なら……
 
 
等々、音の石の場所、記憶の場所、7番目のルミネホールまで
辿り着いた。そして現在の状況に至る。
 
「もう此処まで来ちまったんだ、引き返せねえ、突っ込むだけだ!」
 
「ジャミル……」
 
アイシャが再び不安な気持ちになった。ジャミルの表情が又
曇ってきたからである。
 
「何が起きても俺は微動だにしねえっ!絶対にっ……!!」
 
「ジャミルっ、無茶したら……!」
 
「駄目だっ、ジャミルっ!」
 
アイシャとアルベルトがジャミルを注意しようとするが、
ムキになったジャミルは7番目の音の石の番人である、
電撃バチバチに最高のバットを抱えて突っ込んで行った。
打撃+PKキアイでジャミルは無謀にも敵を一人で押して
押して押しまくる。自身にダメージを負っているのも
分からないまま我武者羅に。
 
「本当にもうっ!何回言っても分からないんだからっ!
……全然分かってないわ、ジャミルはっ!」
 
涙目になりながらアイシャがアシストPSIでサイコシールド
Ωを張った。何だかジャミルは早く戦いを終わらせたくて焦って
いる様にも皆には見えた。
 
 
……ソンナニハヤクキオクヲトリモドシタイノカ……?
オマエハ……
 
 
「うるさいっ!んな時にまで話掛けてくんなっ!この野郎っ!
……う、ううっ!」
 
敵にも反撃のサイコシールドが掛かっており、逆にジャミルが
仕掛けたPKキアイがγがジャミルに跳ね返りジャミルは更に
ダメージを負う。それでも尚に敵から目を反らす事を止めようと
しない。
 
「ああっ!ジャミルっ、大丈夫!?い、今オイラがライフ
アップ掛けるから……」
 
しかし、ジャミルはダウドの援護を拒否する様にそれを拒み
首を強く横に振る。
 
「来るなっ!……大丈夫だっ、回復なんかして貰ってる暇は
ねえんだ!一刻も早く……」
 
「始まったね、仕方ない、勿体無いけど、……ペンシル
ロケット20!!」
 
「……あれ?」
 
アルベルトがわずか1個だけ購入した破壊兵器を使った。やはり
その威力は凄まじく、あっという間に電撃バチバチ戦を終了させた。
 
「ふう、勿体無かったけど、仕方ない、……君の為だよ……、
後はアイシャに任せる……」
 
アルベルトは顔を曇らせジャミルから遠ざかる。側でダウドも
オロオロ……。そして、アイシャがずかずかとジャミルに
近寄って行き……。
 
……パチンっ!
 
「アイシャ……」
 
アイシャの平手打ちがジャミルに飛んだのであった。
ジャミルは何が起きたか分からず、頬を抑えてきょとんとする……。
 
「嘘つきっ!ジャミル、やっぱり嘘ついてた!……何が元気なのよっ!
あの無茶な戦い方を見れば分るのよっ、一人で無茶して無謀な
戦い方して……、……悩んでるの何でちゃんと話してくれないのっ!
バカーーっ!!」
 
アイシャは泣き出す……。それを見てジャミルは……、
ああ、まーたやっちまった……と我に返るのであった……。
 
「たく、懲りない、……学習しない人だねえ~、本当に……」
 
「本当だよ、……アイシャ、良かったらバズーカ貸すけど……?」
 
「わわわっ!アルもっ、やめろってのっ!アイシャ、お、俺が
悪かったよ、泣くなよ、ごめんな……」
 
「いやっ!嘘吐きジャミルっ!……嫌いよっ!もう絶対信用
しないんだからっ!」
 
「……アイ……」
 
ジャミルが泣きながら走って行くアイシャを呼び止めようと
した瞬間……、視界が暗くなり、再び頭の中に……、映像が
流れ込んできた……。
 
 
……役に、立たないから……
 
一緒に……、行きたくないんだ……
 
 
何で……だよ、どうし……て……
 
 
ジャミルの目の前で立っていた少年が離れて行った。暗い……、
真っ暗なその先の道を……。それを止める事も出来ず、少年は
只管歩いていき、ジャミルの目の前からぽつりと姿を消した。
 
……モウジカンノモンダイダ、スベテオモイダシテクルシメ、
スベテトリモドセ、コレガオマエノオカスツミトバツ、
シンジツノキオクダ……
 
「俺の……、真実……」
 
映像が途切れ、再び場所が……、ルミネホールに戻る……。
音の石がルミネホールでの音の記録をしみ込ませた。
 
「……う、ま、また、頭が……、われ……、い、痛……」
 
「ジャミルっ!どうしたのっ!」
 
「あああーーっ!ジャミルっ、しっかりしなよおおーー!」
 
「……!?」
 
ぐしぐし泣いてジャミルから遠ざかっていたアイシャも再び
ジャミルの元へと走った。
 
「どうしよおお~、……あれ、こ、これ……何?また電光掲示板?」
 
「これは……」
 
「多分、ジャミルの心の声が文字になって現われてるんだわ……、
戸惑ってる……」
 
 
……俺はジャミルだ、
 
俺は等々此処まで来た…
 
俺はこれからどうなるんだ
 
俺はこれからどうなるんだ……
 
俺は全てを思い出すのか……?
 
俺は……怖い……
 
オレハ……、ドウシタライイ……?
 
オレハ……

他のメンバーはジャミルの様子が落ち着くまで少しジャミルを
休ませる事にした。……アイシャはあれからジャミルと言葉を
交わす様子も無く。
 
「そろそろ行こうぜ、俺、平気だから……、あ……」
 
又うっかりアイシャに注意されるかと思いきや、アイシャは
そんな素振りを見せる様子も無くジャミルの方に近寄って行った。
 
「さっきはごめんね、私、本当にムキになり過ぎたね、
ごめんなさい……」
 
「い、いや……、その……」
 
「大体私が普段から心配し過ぎるんだものね、もう私、ジャミルに
一切余計な事言わないよ、ジャミルは強いんだもの、お節介過ぎたの
よね、私が……、だから今度からもう何も言わないわ、だから安心して……、
お節介はもう卒業するから……」
 
「あ……、アル、これって……」
 
「うん……」
 
アイシャは相当傷ついて疲れている。ジャミルが自分の言う事を
聞いてくれず嘘をついて又一人で暴走して突っ走ろうとした事に。
アイシャはもう、ジャミルにこれ以上何も余計な事は言わないと
決めたのであった。アイシャはジャミルにそれだけ伝えると、再び
ジャミルの側を離れた。
 
(……私、ジャミルに信頼されてなかったんだよね、そんな事も
気づかなかったなんて……)
 
「……どうすんのさあ~、ジャミル、アイシャにちゃんと
謝りなよお~……」
 
「謝った処でどうにもならないだろ、別にあいつがそう思うのなら
それでいいさ」
 
「ジャミル、……君、本当にこのままでいいのかい?」
 
「……」
 
ジャミルはアイシャの方を見た。これまで二人は周囲が呆れる
ぐらいのケンカを繰り返し、仲直りし、そして又喧嘩し、それが
日常で当たり前であった。
 
「……もう、今度こそ駄目かもな……、俺達……」
 
ジャミルがぽつりと呟いた。
 
「!!!ア、アルぅ~、これ、今回……、マジでやばいよ、
やばいよお……、なんだけど」
 
「大丈夫だよ、いつもみたいに時間が立てば……」
 
すぐに仲直りすると、二人もそう思っていた。しかし、今回は
少々厄介な事態になっている。アイシャと皆に迷惑を掛けたく
なかったジャミル、何でも話して欲しかったアイシャ、それぞれの
立場の誤解とすれ違いの思いが生んだ大きな喧嘩であった。
 
「これ以上此処にいても仕方ないよ、そろそろ立とう、ジャミル、
大丈夫かい?」
 
「ああ、行けるよ……」
 
「じゃあ……」
 
アルベルトがアイシャにも声を掛けようとした時、アイシャが
自分から皆の方まで戻って来る。
 
「行くのね?……この先に大きな穴があったわ、多分そこから
地底へ行けるのよ、行きましょう……」
 
「アイシャ……」
 
アルベルトが心配する。アイシャはジャミルの方を全く見ていない。
ジャミルも黙って明後日の方を向いている。
 
「はああ~、これから地底へ行くのに……、本当に大丈夫
なのかなあ~……」
 
「別に関係ねえだろ、俺、先に行くわ」
 
ジャミルは先に歩いてアイシャが言っていたらしき穴の中に
さっさと飛び込んだ。勿論もう、アイシャがジャミルに対して
何も言う事はなかった。
 
「あああーっ!もうーっ!アルっ、スーパーバズーカ貸してっ!
オ、オイラが一発、脳天ばあ~んでっ!……」
 
「ちょ、ダウド……」
 
「大丈夫よ、ジャミルなら、何があってもこの先きっと、
乗り越えられるわ、……私達は見守るしかないんだから、ね?」
 
アイシャが微笑む。しかし、本当は心から笑ってなどいない
事を嫌と言う程アルベルトとダウドは彼女から感じ取っている……。
二人もどうする事も出来ないまま、ジャミルとアイシャは
ギクシャクしたままの状態で……、4人はルミネホールのその先の
穴から次の場所、地底大陸へと向かう……。
 
 
「……着いた……、のか?」
 
「ああ、此処が地底だよ、もう限りなく……、ギーグに近い場所に
等々僕らは近づいたんだ……」
 
「……そうだな」
 
アルベルトが周囲を見回す。辺りは広い草原と……、
まだ倒れているダウドとアイシャの姿であった。
 
「ああーーっ!着いたんだね!……もうすぐギーグに近づくの
かと思ったらっ!オイラ怖くて自動的にお目覚めしたよっ!」
 
「はは、はは……」
 
珍しくダウドが自分でむっくり起き上がり、アルベルトは頬を
ポリポリ掻いて笑った。
 
「ほらジャミル、アイシャは君が……」
 
「んーっ!よく寝たっ!あれ、此処が地底なのね!等々着いたのねっ!」
 
アイシャも自分で起き上がり、大きく背伸びをした。……アルベルトは
ちらっとジャミルの方を見たが……。
 
「よし、これで此処も探検出来るな、……行こうや」
 
相変わらずのぶっきらぼうな態度で……、ちょっとアルベルトも
カチンと来たのだがアイシャも態度を変える事は無く、普通に
落ち着いている。勿論、ジャミルは無視したままで。
 
「嫌だなあ、何なんだよ、この雰囲気……、流石に僕も
苛々してきた……」
 
「でしょっ、だ、駄目だよ、このままじゃ……」
 
何とかして二人をいつも通りに仲直りさせる方法はない物かと……、
アルベルトとダウドは考えて見るが、何も思いつかない。
これまで時間が立てば自然体で何て事無く、仲直りしてしまう
二人だったから。今回はその兆候が全然見えない為、どうしたら
いいのか……。
 
「そうだジャミルっ、オイラ、グミドリアン食べたい!切って
貰ったやつ!」
 
「あ~……?」
 
「そ、そうだね!疲れてるし、お腹もすいたし、丁度いいんじゃ
ないかな!?」
 
「……アルまで……、こんな所で食うのか?仕方ねえな……」
 
ジャミルが背負っていたリュックを降ろし、中から入れ物に
詰めて貰った方のグミドリアンを取り出す。
 
「ほらよ……」
 
「ねえ、座ろ、座ろうよお~!皆で食べ……」
 
「私、いらないわ……」
 
「俺も、食う気しねえから……、ゆっくり食べてくれや、
待ってるからよ……、食い終わったら声掛けて呼んでくれ、
それまで寝てるわ……」
 
「!!!」
 
「……があああ~んっ!」
 
……ジャミルとアイシャは二方向に別れてお互いの顔を見ず、
一旦アルベルトとダウドがいる場所から離れた……。仲良く
食べよう、グミドリアンで笑顔大作戦は空しく失敗に終わる……。
 
「どうひようう~、アルううう~、ほんとひもうだめはも
ひんない……、……ごっくん!く、口も……、全然聞こうと
しないよおお~!あああ~っ!!」
 
「ジャミル、アイシャ……、ギーグを倒すには……、僕達4人の心を
一つにしないと……、こんなバラバラになったままじゃ……」
 
やがて、グミドリアンを食べ終わる頃、ジャミルが戻って来るが。
 
「よう、食べ終わったか?」
 
「あ、ジャミル……、うん、あの、オイラ達で全部食べちゃっ
たんだけど……」
 
「いいさ別に、じゃあ行こうぜ!」
 
「待ってよジャミル、まだアイシャが戻って来てないよ!」
 
「アル、私ならちゃんといるわ、心配ないわよ……、子供じゃ
ないんだから」
 
「だな、もう俺がしつこく監視する必要もねえや、アイシャは
大人だよ、俺なんかよりもさ、ずっと……、な……」
 
いつの間にかアイシャも戻って来ていた。いつもなら絶対
アイシャが心配でジャミルはアイシャに纏わりついて離れず、
その耽美アイシャは子ども扱いするなと怒るのだが……。
 
「……」
 
それでもアルベルトは信じたかった。離れた二人の心は必ず又
戻って来てくれると。そう、思いたかったのだが……。最終決戦へ
近づく4人にとって、新たな試練の始まりでもあった。

4人は最悪の雰囲気のまま、黙ってだだっ広い地底大陸の地を
踏んでいる。歩きながらジャミルは魔境の沼でアイシャが毒状態に
なっているにも拘らず彼女が一人で無理をして我慢していたのを
思い出していた。
 
(何だよ、アイシャの奴……、あん時だってあいつ何も言わず
黙ってたじゃねえか……、無茶する癖を治さねえのはアイシャ
だって同じなんだよ……、アホ!)
 
ジャミルとアイシャ、お互いに意地っ張りな処は似ているの
かも知れなかった。
 
「ね、ねえ、二人とも……、いい加減に……」
 
「いつまで続くのかな、この景色は……、見飽きたわ、何か
変わった場所がねえかな……」
 
「……」
 
「あああーーっ!苛々するよおーーっ!!」
 
「ダウド、もう無理だよ、諦めよう……」
 
アルベルトがダウドを宥める……。けれどいい加減にこの状況が
どうにかならない物かと思っているのはアルベルトも同じである。
 
 
……ズシン、ズシン、ズシン……
 
 
「ん?地震か……?」
 
地響きがし、地面が揺れ始めた。
 
「……ち、違うよおおーーっ!恐竜だよおーーっ!つ、遂に
出ちゃったあーーっ!!」
 
ダウドが騒ぎ始めた。4人が身構えると……、確かに目の前に
巨大な恐竜が立っていた。大きいが、やたらと目が小さい
カニメサウルスである。可愛い顔はしているが……。
 
「ひゅー!でけえなっ!」
 
「……こんな状況の時にっ!恐れていた事がっ!」
 
「大丈夫さ、アル、バトルはちゃんとできっからよ、心配すんな!」
 
「ジャミル、そう言う問題じゃないんだよっ!」
 
アルベルトが心配しているのは、ちゃんと戦えるのか……、という
事ではなく……。ジャミルとアイシャ、二人の心の絆の事である。
 
「……~!」
 
側でアイシャも精神統一し、PSIの集中力を高め始めるが……。
 
「きゃあ!」
 
「アイシャっ……!」
 
カニメサウルスが尻尾を振り回し、アイシャの妨害をした。
途端にアイシャはコントロールが乱れ始め上手く集中
出来なくなった。
 
「大丈夫かっ、アイ……」
 
「ジャミルっ!あああーーっ!」
 
「……来た!」
 
アイシャの危機に、いつもの如くジャミルが反応したの
だった。これが出た途端、アルベルトとダウドは思わず
喜びで顔を見合わせたのだが……。
 
「……余計な事、しないで……」
 
「アイシャっ……」
 
「な、なんでだよお~っ!!」
 
アイシャは自分を助けに来たジャミルから目を反らして
小さく喋った。
 
「自分の事だけに集中して、私は平気だから……」
 
「そうか、余計なお世話だったな、はあ、俺もつくづく
バカだったぜ!癖でよ!」
 
「……」
 
ジャミルは再びアイシャから離れ、アイシャは引き続きPSIの
集中力を高め始めた。
 
(やっぱり、上手く集中出来ない……、感情が乱れてる
所為なのかしら……)
 
「……よっ、ほっ、たっ!このやろこのやろ!」
 
ジャミルは苛々して只管カニメサウルスの足をバットで
叩き捲る。……しかし、打撃だけでは本体があまりにも
デカすぎるので、どうしたらいいか分からず。
 
「よし、PKキアイ当ててみっか!」
 
「ジャミル、無茶したら駄目だよ!落ち着いて……」
 
そう言ってアルベルトは溜息をつく。主にこの台詞を言うのが
多かったのはアイシャだったからである。しかし、今は……。
 
「……PKフリーズγ!」
 
ジャミルがPSIを使うよりも早く、アイシャがPKフリーズγを
カニメサウルスにぶつけるが……。
 
「うそ……」
 
「あの、今の……、確か、γだったよ……、ね……」
 
ダウドがおずおずとアイシャに確認してみるがアイシャは顔が
真っ青であった。アイシャは確かにPKフリーズγを使った
つもりだったが、威力はα程度のダメージしか与えていなかった。
 
「……どうしよう、私、私……」
 
「わわわ!アイシャ、落ち着いて!心が疲れてる時だから
いつも通りに出来なくなってるのかも!……此処はオイラ達に
任せて!アイシャは休んでた方がいいよお!ね!?」
 
「ごめんなさい……」
 
アイシャはそう言うなり、ダッシュでその場を離れる。……ダウドは
恨めし気にジャミルの方を見る。いつもならばこの手のフォローする
役目はジャミルだからである。しかし、当の本人はまるで知らん顔
している。……様に見えたが。
 
(バカ野郎……、無茶しやがって……)
 
心の中は……、アイシャを心配する気持ちでいっぱいであった。
 
(私、どうしたらいいの……、本当はやっぱり……)
 
アイシャが一旦外れ、バトルは男3人だけとなる……。
 
「うわ!」
 
「あうううーーっ!いた!いたた!……あたたたた!!」
 
カニメサウルスは尻尾を振り回し、アルベルトのスーパーバズーカを
遠くへとおっ飛ばした。急いで通常武器に切り替えようとした
アルベルトに更にダメージを与え追い打ちを掛けた。ダウドも
尻尾でげしげし叩かれている……。
 
「……おおおおーーっ!PKキアイγっ!!」
 
ジャミルが全神経を集中させ、ありったけの波動を放出し、敵に
ぶつけようとした……。
 
……プス。
 
「……ありゃ?」
 
ジャミルからは煙がぷしゅーっと身体から出ただけであった。
 
「お、おかしいな……、こんな事ってあんのかよ……」
 
「ジャミル、やっぱり……、君も……」
 
やはりジャミルも心の乱れか……、PSIを自由に使いこなす事が
出来なくなっているらしかった。瞬く間に男3人は危機に陥った……。
 
「どうしよおおーーっ!このまんまじゃオイラ達、潰されちゃう
よおおーーっ!!」
 
「諦めんなっ!……ダウド、お前はまだPKスターストームαが
使えるだろ?……頼むよ……」
 
「ジャミル……、うん、分った、やってみる……」
 
「ダウド、君が気を高めている間に、此処は僕らが抑えておく……」
 
「うん……、何かオイラ重大責任だよお~、とほほのほお~……」
 
と、ダウドが精神を集中させようとした、その時……。
 
「……どいてどいてどいてえええーーっ!!」
 
「……アイシャ!な、何でっ、あれは僕の……スーパーバズーカ!」
 
「うわあ!?」
 
(……マジ……?)
 
……アルベルトのスーパーバズーカを抱えたアイシャがよろめきながら
走ってつっこんで来た。さっき、カニメサウルスがおっ飛ばした物を
アイシャが拾い回収したのであった……。
 
「PSI使えなくてもっ、わ、私だってっ!……でも重ーいっ!
きゃーー!!」
 
「アイシャ!無理したら駄目……、あ、あああっ!?」
 
……スーパーバズーカはアイシャには重すぎる為、彼女には上手く
使いこなす事が出来ず……、アイシャはスーパーバズーカを四方八方に
滅茶苦茶に撃ちまくる……。そして。……アイシャがいい加減に撃った
一発がカニメサウルスの脳天をぶち抜いた。
 
「……うそ……」
 
「すっ、ごい……ねえ……」
 
「……」
 
奇跡の一発であった。急所を貫かれたカニメサウルスは
大きな地響きを立て、地面に倒れ息絶えた……。
 
「……こわ……かった……」
 
「!アイシャっ、大丈夫!?しっかり!!」
 
「大変だよおおーー!!」
 
アイシャ自身もびっくりしたのか、その場に倒れ込み気絶して
しまったのであった。アルベルトとダウドは思わずアイシャに
駆け寄る。……ジャミルは……。
 
「ジャミル!何してるんだよ!早くアイシャの介護をっ!!」
 
「お、俺は……」
 
「……早くっ!」
 
アルベルトが怒鳴るがジャミルはその場から突っ立ったまま
動こうとしない。
 
「俺の……、知った事じゃない……、多可が気絶しただけだろ、別に
怪我した訳でもねえし……」
 
「……」
 
煮え切らず、何時までも意地を張り続けるジャミルのその態度に
等々アルベルトが切れた。アルベルトはダウドにアイシャを一旦
任せるとジャミルに近寄って行き……。
 
「……ア、アルうううっ!?わわわわっ!!」
 
拳で思い切り……、ジャミルの頬をブン殴ったのであった……。
 
「もう君には任せられない、アイシャは僕が守るからっ!!」
 
「……勝手にすりゃいいさ……」
 
アルベルトに殴られ、ジャミルは口から流れ出た血を乱暴に
拳でぐしぐし拭いた。ジャミルは特にアルベルトに反発する
様子も見せなかった。此処まで来て……、ジャミルはアルベルトとも
亀裂が生じてしまったのであった……。ジャミルは無言で再び先へと
一人で歩き出す。
 
「も、もう……、オイラ達……、完全に駄目だよ……、終わりだよお~……、
こんなんじゃギーグを倒すのはもう完全に無理だよ……」
 
「……ダウド、行こう……」
 
アルベルトがアイシャを背中におぶった。はっきりと口には
出さない物の……、今回の事で、今まで抑えていたアイシャへの
素直な気持ちが溢れ出てきたのであった。背中で眠るアイシャの
温もりを感じながら……。

zoku勇者 マザー2編・38

zoku勇者 マザー2編・38

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-18

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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