掌編集 60

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591 ついに……

 夫は月に1度はそこへ行く。いつからか? 
 50歳くらいまでは無頓着で構わなかったくせに、よほど気に入ったのか、毎月欠かさずそこへ行く。

 もう70歳だ。老い先短いのによく食べる。よく働いてくれた。身体は悪いとこだらけ。飲んでる薬は6種類。医者代も毎月高い。
 
 老後の資金は消えていく。溶けていく。なのに言う。
「金残すな、思い出残せ」
と。

 だからって、老い先短いのに必要ですか? 
 ブリッジだらけの歯が寿命で作り直し。女医の言葉に
「セラミックでお願いします」
と、言ってきたのだと。

 今年は温水器が寿命を迎え変えたばかり。
 去年は車のタイヤを変えたわね。
 もう家具家電も次々殉職していくだろう。
 おまけに7人目の孫が生まれる。
 当然のように手伝いに行くと思っている娘。私の歳を知っているのか? 

 それにね、一昨年生まれた子は心臓病で大変な思いをしたのに。3人欲しいから、とあなたはすごい。あなたにも心臓の手術の跡がある。

 ドッキリすることはたくさんあったけど、辛いドッキリも多かったけど。
 よく頑張ったわ。
 穏やかな日々が欲しい。



【お題】 家庭内ドッキリ

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-18

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