霊能探偵・芥川九郎のXファイル(76)【東北霊能学院編】

第1章 盛岡から来た宮沢

 霊能探偵・芥川九郎が、仙台にある東北霊能学院に在学していた頃の話である。彼は名古屋の高校を卒業後に、この学院に進学して法術や魔法の勉強をしていた。
宮沢「芥川君!いるかい?入るよ。」
芥川「うん、いるよ!どうぞ。」
芥川の部屋に同じクラスの宮沢政宗がやって来た。彼らは市内にある東北霊能学院の寮で生活していた。学院と言っても、1学年1クラスで2学年しかないので、みんな顔なじみだ。
宮沢「勉強中かい?じゃまして悪かったね。」
芥川「いや。図書館で借りてきた本を読んでいただけだよ。何か用かい?」
宮沢「そろそろ学校にも慣れてきたから、僕は時々、こうしてみんなの部屋を訪問しては雑談しているんだ。」
芥川「宮沢君は案外、社交的なんだね。僕は高校時代から、クラスメートと交友して友情を育むこともなく、一人で読書や勉強をしていたよ。」
宮沢「僕も、高校時代はそれでいいと思うよ。でも、東北霊能学院には、全国から霊能力者の卵が集結している。人生でこんな機会は、そうそう訪れないよ。」
宮沢は盛岡出身の学生である。

第2章 東北霊能学院

 東北霊能学院は、山形出身の法術師・梅田が開学した霊能力者のための専門学校である。
芥川「仙台にあるんだから、仙台霊能学院という名前でもよかったのにね。わざわざ東北霊能学院という、東北地方を代表するような名前を付けたところに、開学者の精神が現れているよね。」
宮沢「確かにそうだね。でも、霊能学院なんて全国的にも少なくて珍しいんだから、逆に控えめな名前と言えなくもない。」
芥川「ハハハッ。なるほど。そういう考え方もあるね。いっそのこと、北日本とか東日本とか冠すれば良かったのに。」
 宮沢は話題を変えて芥川に聞いた。
宮沢「芥川君はここを修了したら、名古屋へ帰るのかい?」
芥川「うん。でも、僕は一応、霊能探偵を目指しているから、どこかの霊能探偵事務所で研修を受けないといけないんだけど・・・」
宮沢「僕もそうだよ。僕は山形の霊能探偵事務所で研修を受ける予定だ。」
芥川「宮沢君はもう、そこまで考えているのか。さすがだねぇ。」
芥川も宮沢もお互い、高校を卒業したばかりの学生である。芥川は宮沢がそこまで考えていることに、素直に感心した。

第3章 芥川の志望動機

 宮沢は芥川に志望動機を質問した。
宮沢「そもそも芥川君は、なんでまた東北霊能学院を選んだんだい?」
芥川「ここに来れば、いろいろなことを勉強できると聞いてね。法術、魔法、魔獣学、妖怪学・・・」
宮沢「あぁ、なるほど。芥川君も学院の宣伝に乗せられた口だね。かく言う僕もそうなんだけど・・・」
芥川「霊能探偵を目指すだけなら、ここで十分だからね。」
宮沢「でも、霊能博士とか魔法博士とか、専門家として大成したいなら、霊能探偵事務所ではなく、各学会の権威のもとで修行する必要がある。」
芥川「霊能学会、魔法学会、魔獣学会、妖怪学会・・・いろいろあるからね。専門家を目指す人は、ここを出た後にじっくり考えればいいんじゃないかな?」
宮沢「そういう人は、僕たちのクラスにも数人いるよ。」
芥川「1学年1クラスしかないし、1クラスの人数も少ないから、数人いれば大したもんだと思うけど。」
 宮沢は腕時計で時間を確認してから、芥川に言った。
宮沢「ちょっと小腹が空いたね。何か食べに行こうよ。」
芥川「うん、いいけど。どこへ行こうか?」
宮沢「飯田屋にでも行こうか?」
芥川「ハハハッ。そこでいいよ。」

第4章 大衆食堂・飯田屋

 宮沢と芥川は寮を出ると、最寄りの飯田屋まで歩いていった。
芥川「宮沢君は飯田屋が好きだよね。僕は仙台に来て、宮沢君に教えられて初めて知ったんだよ。」
宮沢「名古屋にはないのかい?」
芥川「うん。ないよ、多分。見たことない。君と一緒に行ってから、僕もあそこへ行くようになったんだ。」
宮沢「そうなんだ。」
 宮沢と芥川は飯田屋に入ると、惣菜数品を選び、ご飯と味噌汁を頼んだ。空いているテーブルのイスに座り、さっそく食べ始めた。
芥川「おいしいね。」
宮沢「おいしいし、ご飯の量が多いから助かるよ。」
芥川「宮沢君はいつも、寮の食事はご飯が少ないと文句を言っているからね。」
宮沢「文句ではないよ。とにかく、腹が減って仕方がないんだ。」
芥川「僕たちはまだまだ食べ盛り、育ち盛りだからね。健康な証拠だよ。」
宮沢「せっかく外出したから、これを食べた後に、どこかへ行くかい?」
芥川「そうだねぇ。図書館か本屋にでも寄っていこうかな。」
宮沢「図書館はタダだし、本屋も見るだけならタダだからね。」
芥川「ハハハッ。そうだね。宮沢君が仙台で成功したら、ちゃんと仙台の本屋で本を買ってくれよ。僕の分まで。」
宮沢「ハハハッ。いつの時代も、出世払いは当てにならないもんさ。」
 二人は飯田屋を出ると、書店がある仙台の繁華街へ向かった。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(76)【東北霊能学院編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(76)【東北霊能学院編】

「宮沢君は飯田屋が好きだよね。僕は仙台に来て、宮沢君に教えられて初めて知ったんだよ。」 名古屋の霊能探偵・芥川が、仙台の「東北霊能学院」で法術や魔法を学んでいた頃のお話。 学校にも慣れ始めたある日、芥川の部屋にクラスメートの宮沢がやって来た。 高校時代はぼっちだった芥川だが、盛岡出身の宮沢との出会いにより、少しずつ学生らしい日常が始まっていく。 全国から霊能力者の卵が集まる珍しい学院で、将来の夢を語り合い、大衆食堂「飯田屋」でご飯をモリモリ食べ・・・ 霊能探偵の「原点」を描いた青春ライトノベル第76弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-16

CC BY
原著作者の表示の条件で、作品の改変や二次創作などの自由な利用を許可します。

CC BY
  1. 第1章 盛岡から来た宮沢
  2. 第2章 東北霊能学院
  3. 第3章 芥川の志望動機
  4. 第4章 大衆食堂・飯田屋