霊能探偵・芥川九郎のXファイル(72)【呪具・夢現鏡編】

第1章 江戸川乱歩『少年探偵団』

 名古屋の霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「最近、夏目君と会ったせいか、夜中に酎ハイを飲みながら昔のことを思い出すんだ。」
牧田「君が昔、松山で霊能探偵をやっていた頃の話か。」
夏目半兵衛は滋賀の法術師である。芥川は松山時代に彼と知り合い、同じ霊能力者として切磋琢磨していた。
芥川「コーヒーでも飲もうかな。今朝、能年君が淹れてくれたのが残っているから。」
芥川は立ち上がろうとした助手の能年(鎧)を手で制止し、自らコーヒーを入れた。
芥川「能年君、自分でやるから大丈夫だよ。読書を続けてくれ。」
能年(鎧)はコクッと1回、小さく頷いてから読書を続けた。彼(鎧)は、芥川の事務所に住み込みで働いている鎧の妖怪だ。
牧田「能年君は今、どんな本を読んでいるんだい?」
芥川は牧田にコーヒーを手渡しながら、能年(鎧)の代わりに答えた。
芥川「はい、コーヒー。彼は今、江戸川乱歩の『少年探偵団』を読んでいる。」
牧田「へえー。江戸川乱歩か。ありがとう。いただきます。」

第2章 守屋愛の訪問

 芥川は、まだ熱いコーヒーを一口すすってから言った。
芥川「江戸川乱歩という名前はペンネームで、エドガー・アラン・ポーをもじっているんだよね。」
牧田もコーヒーを一口すすってから言った。
牧田「有名な話だよね。エドガー・アラン・ポーは世界で初めて探偵小説を書いた、推理小説の父だ。そして江戸川乱歩は、日本の推理小説の父になった。」
 二人がそんな話をしていると、珍しい人物が事務所を訪れた。
守屋「芥川君。こんにちは。」
芥川「守屋先生!こんにちは。珍しいですね。何かあったんですか?」
守屋愛は、魔法学会から追放された危険な魔術師である。芥川とは過去にいろいろ因縁があるのだが、今はビジネスパートナーとしてお互い利用し合っている。
守屋「いえ、別に。八田を探しているんだけど・・・」
八田硝子は神獣・八咫烏である。芥川に捕縛されたのだが、鬼塚(鬼)とのトレードで守屋の手下となったという経緯がある。ちなみに彼女は普段、人間の姿に化けて生活している。
牧田「八田さんですか?ここにはいないですけど。どうぞお掛けください。今、コーヒーを・・・」
守屋「いえ、けっこうです。ちょっと用事があるので・・・」
守屋はそう言って、そそくさと事務所を後にした。

第3章 八田硝子と夢現鏡の行方

 守屋がすぐに帰ったので、二人は会話を再開した。
牧田「守屋先生、八田さんを探していたけど、何かあったのかな?」
芥川はコーヒーを一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
芥川「今から言うことは、ここだけの秘密にしてくれ。」
牧田「・・・何があったんだい?」
芥川「八田さんは守屋愛から、夢現鏡という非常に強力な呪具を盗み出した。」
牧田「・・・夢現鏡とは一体、どんな呪具なんだい?」
芥川「相手がどんな強敵でも一瞬で、夢幻世界に飛ばしてしまうことができる。効果は、ある種の封印魔法なんだろうけど・・・なにしろ伝説の呪具だから、僕にもそれ以上の詳細は分からない。」
牧田「八田さんはなんでまた、そんな恐ろしい呪具を盗み出したんだろう?」
芥川「彼女は神獣・八咫烏様で、予知能力がある。そんな恐ろしい呪具を、危険な魔術師・守屋愛が所有しているのは、非常に危険なことだと判断したんだろうね。」
牧田「なるほど。それで夢現鏡を持ち出した彼女は、どこへ行ってしまったんだろう?」
芥川「数週間前、彼女がここに来て、夢現鏡を置いていった。彼女は『後はよしなに』と言って、どこかへ飛んでいってしまった。彼女はもう二度と、戻って来ないだろう。」
牧田「それじゃあ、夢現鏡は今、芥川君が持っているのか。」
芥川「いや。夢現鏡の所有者は神谷先生だ。僕はすぐに先生の使いである稲見さんを呼び出し、彼女に手渡した。夢現鏡は今、神谷先生が持っている。」
神谷寛志は東三河の霊能探偵で、芥川の師匠である。稲見陽子は神谷に捕縛されて以来、彼に仕えている妖狐だ。

第4章 過去の因縁(夢現鏡の争奪戦)

 牧田は冷めたコーヒーを飲み干してから、おもむろに口を開いた。
牧田「芥川君が今までずっと黙っていたんだから、かなり重要な話なんだろうね。」
芥川「守屋愛と神谷先生の父である神谷龍之介との間には、並々ならぬ因縁がある。どうやら、過去に起きた夢現鏡の争奪戦が原因らしい。」
牧田「神谷先生のお父様の時代だから、かなり昔の話だね。」
芥川「その詳細は分からないけど、守屋愛が持つべきでないなら、神谷龍之介が持つべきだろう。」
牧田「神谷龍之介は故人だから、君は、その相続人である神谷先生に送ったというわけか。なるほど。筋は通っているね。」
 芥川はコーヒーを飲み干してから、腕を組んでしばらく黙っていた。やがて彼は、おもむろに口を開いた。
芥川「エドガー・アラン・ポーは、探偵小説というジャンルを発明した。しかし、その後にミステリーブームを起こし、これを普及したのはコナン・ドイルだった。」
牧田「さっきの話の続きかい?『シャーロック・ホームズ』のことだね。」
芥川「牧田君は、コナン・ドイルが物語にモリアーティを登場させた理由を知っているかい?」
牧田「確か、『シャーロック・ホームズ』を終わらせるために・・・」
芥川「伝説的な東三河の霊能探偵・神谷龍之介と、魔法学会から危険視され、ついに追放された稀代の魔術師・守屋愛。過去の対決はきっと、コメディとして描けないようなものだったんだろうね。」
牧田「悲劇にするか喜劇にするかは、作者のさじ加減だと僕は思うけどね。」
芥川「ハハハッ。それもそうだ。」
芥川は牧田の言葉に、笑いながら大きく頷いた。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(72)【呪具・夢現鏡編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(72)【呪具・夢現鏡編】

「今から言うことは、ここだけの秘密にしてくれ。」 霊能探偵・芥川は、事務所で友人・牧田と雑談していた。そこへ魔術師・守屋愛が突然の訪問。 彼女は、伝説の呪具・夢現鏡を盗み出した八咫烏・八田硝子を追っていた。 かつて繰り広げられたという「夢現鏡の争奪戦」に隠された、過去の並々ならぬ因縁とは・・・ 探偵小説の起源に思いを馳せる、今回はちょっとシリアスな霊能探偵小説第72弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-15

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  1. 第1章 江戸川乱歩『少年探偵団』
  2. 第2章 守屋愛の訪問
  3. 第3章 八田硝子と夢現鏡の行方
  4. 第4章 過去の因縁(夢現鏡の争奪戦)