霊能探偵・芥川九郎のXファイル(66)【今池の性魔人編】

第1章 霊能忍者の予備校通い

 霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
牧田「霊能忍者の桃井さんは、伊賀から名古屋に引っ越して予備校に通っているらしいよ。」
芥川「えっ!あの桃井さんが?彼女は大卒だけど・・・医学部でも再受験するのかな?それとも資格試験のためかい?」
桃井は伊賀の山奥で修行中の霊能忍者である。霊力を込めた割り箸手裏剣で、熊を殺すことができる猛者だ。
牧田「彼女、伊賀市の忍者認定試験を受けたけど、落ちてしまったんだ。相当なショックを受けて、しばらく落ち込んでいたそうだ。でも、彼女はそんなことであきらめて東京に帰るような人間ではない。」
芥川「それで桃井さんは、忍者認定試験に再チャレンジするために、名古屋の予備校で勉強しているのか。でも、牧田君はその情報、どこから仕入れたんだい?僕が知らないうちに、彼女と連絡先を交換していたのかな?」
牧田「いや。実は、真理さんから聞いたんだ。彼女が税理士の勉強のために通っている予備校は、税理士だけでなく、他にもいろいろな資格試験の講座を用意しているからね。」
芥川「なるほど。真理さんと桃井さんは、同じ予備校に通っているんだね。そのうちに、お互い能力者同士であることに気付き、知り合いになったわけか。」
明智真理は、東京の霊能探偵・明智光太郎の娘である。彼女は現在、名古屋で働きながら税理士の勉強をしている。

第2章 中警察署の鯱島

 助手の能年(鎧)がコーヒーを淹れる準備を始めた。彼は鎧の妖怪で、芥川の事務所に住み込みで働いている。
芥川「あぁ、そうか。そろそろ鯱島さんが来る時間だね。」
牧田「そうそう。僕は今日、芥川君に霊能忍者の動向をご注進しに来たんじゃなかったね。」
鯱島は中警察署の刑事である。彼は国家公務員総合職試験に優秀な成績で合格した、いわゆるキャリア組だ。しかし、とある警察幹部と表に出せないような因縁があるらしく、ずっと中警察署の現場で働いている。
 二人がそんな噂話をしていると、鯱島が事務所にやって来た。
鯱島「こんにちは。芥川先生、お久しぶりです。牧田君も来てくれたんだね。二人とも相変わらずだね。」
芥川「こんにちは、鯱島さん。お久しぶりです。」
牧田「こんにちは。鯱島さんもお元気そうで何よりです。」
ちなみに、牧田は愛知県警の元刑事で、もともと鯱島とは面識があった。牧田は数年前に県警を退職し、今はフリーランスとして活動する身だ。
芥川「どうぞお掛けください。」
鯱島「うん。ありがとう。」
鯱島は芥川に勧められたイスに座り、芥川と牧田もそれぞれイスに座った。能年(鎧)が淹れたてのコーヒーを3人分、運んできた。
芥川「能年君、ありがとう。」
牧田「いただきます。いつも悪いね。」
鯱島「ありがとうございます。」
三人はさっそく、淹れたてのコーヒーを一口すすった。

第3章 今池の性魔人

 鯱島は芥川に対し、単刀直入に用件を切り出した。
鯱島「最近また、東京の霊能力者から情報提供がありました。名古屋の風俗街で性魔人が暗躍しているという話です。」
牧田「情報源はまた、東京の霊能力者ですか。鯱島さんは大学時代、東京に住んでいたと、私がまだ警察にいた時に誰かから聞きました。」
芥川「なるほど。だから、鯱島さんは東京の霊能力者界隈の人脈をお持ちなんですね。」
鯱島「実は、大学時代につるんでいた連中の中に、霊能力者がおりまして。彼と今池で飲んでいたら、その性魔人を見かけたそうです。私には霊感がないのでよく分かりませんでしたが、彼は嘘をつくような人物ではありません。」
芥川「今池ですね。承知いたしました。私たちで調査し、必要であれば退治します。」
鯱島「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
牧田「ちなみに、鯱島さんのご友人のその霊能力者は、今池の魔物についてどのようにお話されたんですか?」
鯱島「彼は昔から、そういうのを見て喜ぶだけの、少し悪趣味な人間です。あいつのおかげで名古屋の街が潤って、けっこうなことじゃないかと、笑いながら話していました。」
芥川「ハハハッ。おもしろそうなご友人ですね。僕も一度、一緒に飲んでみたいなぁ。」
牧田「・・・・・・」

第4章 性の喜びを知る男

 その日から芥川と牧田は、夜の散策がてら今池の街をパトロールした。
芥川「確かに、何かの魔力を感じるけど、なかなか特定できないなぁ。」
牧田「芥川君でも探知できないような、狡猾な魔物なのかな?」
芥川「いや。今池に限らないけど、人間の欲望が渦巻く風俗街のような場所には、いろいろな悪霊や魔物を引き寄せる磁力・磁場があるんだ。」
牧田「そうなんだ。じゃあ、そういう雑多な霊気、妖気や魔力が混ざり合って、探知が難しい混信状態なのかな?」
芥川「ハハハッ。混信状態は言い得て妙だね。でも、東京の霊能力者がおもしろいものを見たと笑っていたそうだから、それなりの魔物のはずだ。」
 二人は深夜から今池を散策していたが、とうとう丑三つ刻となった。さすがの風俗街も静かになったが、場所によっては人が点在している。芥川が立ち止まって言った。
芥川「やっと見つけた。なるほど。おもしろいね。」
牧田「見つけたのかい?何がおもしろいんだい?」
芥川「奴は悪霊だよ。男に取り憑いては、風俗で遊ばせているんだ。自らの欲望を満たすために。」
牧田「なるほど。それで、名古屋の夜の街が潤うということか。」
悪霊に取り憑かれた男が、芥川に気付き襲いかかってきた。
牧田「悪霊が気付いたみたいだ。君を見くびっているのか、やけくそで先制攻撃してきたのか・・・」
芥川「悪霊、退散!」
芥川は退魔の法術を使った。聖なる光が、悪霊に取り憑かれた男の胸を貫通した。
男「性の・・・性の!・・・性の喜びを知りやがって!!グワァアーーー!!!」
男は気を失って倒れてしまった。
牧田「悪霊を退治したのかい?彼は大丈夫かな?」
芥川「直に意識を取り戻すだろう。一見落着!さぁ、帰ろう。」
芥川と牧田はようやく帰路に就いた。深夜と早朝の狭間、静かで心地よい時間と空間を感じながら。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(66)【今池の性魔人編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(66)【今池の性魔人編】

「性の・・・性の喜びを知りやがって!!」 霊能探偵・芥川は、中警察署の刑事・鯱島からの依頼を受け、友人・牧田と共に夜のパトロールへと繰り出す。 今回の調査対象は、夜の街を徘徊する今池の性魔人! 欲望渦巻く風俗街、丑三つ刻に芥川の法術が炸裂し・・・ クスッと笑えてサクッと読める、相変わらずお気楽なオカルト探偵コメディ第66弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-11

CC BY
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  1. 第1章 霊能忍者の予備校通い
  2. 第2章 中警察署の鯱島
  3. 第3章 今池の性魔人
  4. 第4章 性の喜びを知る男