ふしだら

ふしだら

「過食症」

食べるしかないのよ
何を食べても満たされないから


「秘密」

欲しいと云うなら差し上げます
身体だけと云わず心までも
  愛は砂のよう
  掴もうとしても
  指の間を滑り落ちていく
私は籠の鳥
飛ぼうとも離れることはできない
いつしかあなたは
この心臓をも手に入れるでしょう
  私の瞳はダイアモンド
  あなたを深淵まで映し出す鏡
嗚呼けれどもあなた
愛おしいあなた
あなたが嘘で覆っても
黄昏があなたを暴き出す

良いのです
それでもなお私は
あなたを愛するでしょう
幾千年に及ぼうとも
私はあなたのもの
  でも私の本当の顔は
  教えてあげない


「さよなら」

そばにいると
いとしい
はなれていると
もっといとしい

わたしのこころ
かみさまだけがしってる
ほかにはだれにもおしえてあげない
これはわたしだけのものだもの

ゆめのなかでわたしは
すきなひとにさよならをいう
だってあいしてるから

ゆうやけいろのくもがすき
あめのふるこうえんもすき
きっとしっていたんだ
ひとはだれでもひとりだって


「屁理屈」

言葉は借り物
なんて言うけどさ
なら今言葉を喋ってる私は何なのよ
誰なのよ


「皮膚」

もう誰も私を共有できない
血と痛みと引っ掻き傷が
私の身体に生命を焼き付ける
血と涙で紙上の文字が霞みます
えぇ もう
傷物の私を抱けなんて言わないわ
この皮膚の熱さだって
痛みだって
解って欲しいとも思ってないから
あんたも勝手なことを言わないでよ


「ふしだら」

あなたはそう云いますけれど
私はそう致しませぬ
あなたの嘘が私を卑しめ
私を強く抱きしめる
けれどそのとき
私は顔を合わせないの
あなたの瞳は私を暴こうとするけれど
私は決して
あなたに(なかみ)を見せません
あなたが欲しがるほど
私はあなたの目を覆う
隠されたものは隠されたまま
覆われたものは覆われたまま
本当は
あなたもそれが良いのでしょう?

けれどもあなた
愛おしいあなた
私はあなたの腕の中で
温もりながらあなたを騙す
ふしだらな私を許して
私の瞳が
決してあなたを映さなくとも


「天国」

二階のガラス窓から覗き込むの
下で笑ってるあなたの横顔
私の至福の時
こっちを向いて
ずっと顔が見たかったの
私に応えて
ずっと声が聴きたかったの
あなたは私の名前も知らないけれど
私の脳髄に焼き付いたあなたの声は
いつまでも初恋のように綺麗です
たとえこのまま
二度とあなたに会わなくても
ありがとうさよなら


「人形」

私はあなたの人形
私を人間扱いしないで
私は私で私の制作物(つくりもの)
私を知ろうとしないで
私を信じないで
私を玩具にしていい様に玩んで
そして飽きたら棄てて欲しいの
だから私を定義しないで
私は定義でなく私だもの
私を見ないで
私は真実でなく私だもの
あなたが私を解らなくても
いいのよ
私はあなたのものよ
それ以外の何物でもないのよ

(けれど私はあなたの人形)
(扉は固く閉ざされたまま)


「ヨコシマ」

私は私が忌々しい
混紡の私が忌々しい
嘘ばかりの私が忌々しい

ねえ一層
私をどこかへ連れて行って
ここじゃないどこかへ
けれどきっと
私は満足しないでしょう
あなたが私を欲しがっても
(よこしま)な私を所有できない

えぇ ごめんなさい
私はどこまでも私だから
あなたの自由にはなりません
だからあなたもご自由になさいませ
幾年も遠くへ
さよなら


「最期」

この夕はもう暮れない
昇ることも もうない
私の胸に刺さったまま
枯れたスイートピー
明日は来なくとも
いずれ私は死ぬのでしょう
青山通りに刻まれた世界とーー
ただ私の最期は
夢のように幸せな日々なのでした


「拒食症」

もう何も要らないわ
欲しいものがありすぎるから

ふしだら

ふしだら

小詩集です。約17年振りに書きました。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-10

Copyrighted
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