霊能探偵・芥川九郎のXファイル(62)【死国トンネル編】

第1章 松山市千舟町の事務所

 霊能探偵・芥川九郎が、松山で霊能探偵をしていた頃の話である。彼は東三河の霊能探偵・神谷寛志の下での研修を修了した後に、母の故郷である松山での独立開業を望んだのだ。
芥川「小室景勝博士が四国に来るそうだよ。」
夏目「ほぉー。あの異能の天才博士がかい?」
芥川は、事務所で友人の夏目半兵衛と話していた。彼の事務所は千舟町にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「私淑する小室博士にとうとうお会いできる。楽しみだなぁ。」
夏目「君がそこまで小室博士に心酔する理由がよく分からないよ。確かに彼は霊能学、魔法学、妖怪学・・・とにかく、いろいろな分野に精通しているけど、本当の専門は何だろう?」
芥川「博士の専門は霊能学だけど、各種分野を横断して研究しているんだ。超能力、ひいては超常現象の本質を解明しなければ、怪奇事件を根本的に解決することはできない・・・これは、博士の受け売りなんだけどね。」
夏目「僕は法術師として、ずっと法術しか研究してこなかったけど・・・法術だけではダメなのかなぁ?」
芥川「夏目君はすでに一流の法術師だからね。霊能探偵である僕は法術だけでなく、魔法、魔獣、妖怪・・・とにかく、いろいろな分野を学ぶのが楽しいんだ。」

第2章 松山空港の到着ロビー

 夏目はお茶を一口飲んでから聞いた。
夏目「その天才博士がわざわざ、東京から四国まで何の用で来るんだろう?」
芥川もお茶を一口飲んでから、おもむろに答えた。
芥川「四国の山奥にある、禁足地・死の谷を調査したいとのことだよ。僕が車を出して案内する予定だ。君も一緒に来るかい?」
夏目「いつ行くんだい?」
芥川「来週だけど。」
夏目「ちょっと予定があるから行けないなぁ。残念だけど。」
芥川「そうか・・・予定があるなら仕方ないね。」
 こうして芥川は1週間後、小室博士を迎えるために松山空港で待っていた。東京からの飛行機が到着し、しばらくすると小室が国内線到着口まで歩いてきた。
芥川「小室先生!芥川です。はじめまして。」
小室「こんにちは、はじめまして。芥川君。今日はよろしくお願いします。」
芥川「はい!こちらこそよろしくお願いします。」
芥川は駐車場まで小室を案内し、二人は車に乗り込んだ。運転席の芥川は、助手席に座った小室に質問した。
芥川「先生、どうしましょう。先に、四国観光を楽しみますか?それとも目的地に直行しますか?」
小室「そうですねぇ・・・先に、死の谷の調査をしましょうか。調査が長引き、日が暮れてしまうといけませんから。」
芥川「そうですね。分かりました。」

第3章 禁足地・死の谷

 こうして芥川の車は、禁足地・死の谷を目指して走り続けた。山道を1時間以上かけて登り、とうとう死の谷に到着した。芥川は駐車してから小室に言った。
芥川「ここからは徒歩になります。」
小室「そうですか、分かりました。さぁ、行きましょう。」
二人は近くの登山口から山道を登っていった。しばらくすると小室が立ち止まって言った。
小室「死の谷の中心地に着きました。調査を始めましょう。」
芥川「はい!」
 小室はバッグからいろいろな器具を取り出し、何かを計測してはノートにメモしている。芥川はその間、死の谷の中心地を散策していたが、尋常ならざる霊力を感じた。
芥川「・・・なんだろう?不思議な感覚がする。」
芥川が早足で小室のいる場所まで戻ると、小室は魔術書を開いて呪文を唱えていた。
芥川「先生・・・これは一体!?」
小室「いくつもの特定の条件が満たされた特殊な場所で、霊力の場を形成すると異界へ続くトンネルが形成される・・・という理論の実証実験です。」
芥川「・・・すごいですね!冥府へ続いているんですか?」
小室「古来より、人はこの種の異界トンネルの先にある世界を、いろいろな名前で呼んできました。あの世、黄泉の国、地獄、霊界、魔界・・・」
 ズバァアーーーンッ!!!
 突然、小室の話を遮るように、死の谷の中心地に大きな音が響き渡った。

第4章 禁忌の秘術

 二人は驚き、音がした方向へ振り向いた。そこには夏目が立っていた。彼は何か、強力な法術を使ったようだ。
芥川「夏目君!・・・一体、何をしたんだ?異界トンネルが閉じてしまった。」
小室「法術師に尾行・監視されていたようですね。」
芥川「彼は私の友人の夏目君です。夏目君!君は法術で異界トンネルを閉じることもできるのか。」
夏目「・・・・・・」
小室「異界トンネルの形成には、複数の条件が満たされる必要があります。彼は法術で、それらの条件の一つを崩したのでしょう。」
夏目「小室先生。異界トンネルの形成は禁忌の秘術です。このことはNCK(超能力協会)及び魔法学会等、関係する学会に報告させていただきます。」
芥川「夏目君。騙し討ちみたいなことをするなんて、ひどいじゃないか!」
夏目「騙し討ちも何も・・・芥川君。小室博士が禁忌の秘術を研究しているという噂は、随分前から霊能力者のコミュニティで広まっていたんだよ。」
小室「・・・言い訳はしませんよ。私も年ですから、これを機に引退する覚悟でした。」
芥川「しかし、先生・・・」
小室「芥川君。最後の研究に付き合ってくれて、本当にありがとう。夏目君も、ありがとう。」
夏目「・・・・・・」
 この事件後に小室は本当に引退し、東京で隠居生活を送ることとなった。しかし、彼は引退後もしばらくの間、在野で精力的に研究を続けた。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(62)【死国トンネル編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(62)【死国トンネル編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-06

CC BY
原著作者の表示の条件で、作品の改変や二次創作などの自由な利用を許可します。

CC BY
  1. 第1章 松山市千舟町の事務所
  2. 第2章 松山空港の到着ロビー
  3. 第3章 禁足地・死の谷
  4. 第4章 禁忌の秘術