霊能探偵・芥川九郎のXファイル(59)【今宵の月のように編】
第1章 宇宙の山姥
霊能探偵・芥川九郎は、友人の牧田と名古屋駅周辺を散策していた。
芥川「手羽先を食べるならやっぱり、宇宙の山姥かなぁ。」
牧田「そうだね。山姥に入ろうか。」
二人は久しぶりに、居酒屋でビールを飲むために名駅エリアに来たのだ。
牧田「あれ!あそこで信号待ちしている女の子、明智真理さんじゃないかな?」
芥川「あっ!本当だ。真理さんだ。」
二人は真理の方に歩いていき、彼女に声をかけた。
牧田「真理さん、こんにちは。」
真理「えっ!びっくりした。牧田さんと芥川先生。こんにちは。」
芥川「仕事帰りですか?」
真理「いえ。今日は専門学校で勉強していたんです。」
牧田「税理士の勉強をしているんですよね。勉強は順調に進んでいますか?」
真理「えぇ、まぁ。牧田さんたちはお買い物か何かですか?」
明智真理は、東京の霊能探偵・明智光太郎の娘である。名古屋で一人暮らしをしている彼女は、父との約束を守り、働きながら税理士の勉強をしている。
芥川「僕たちはこれから、近くの山姥で手羽先を食べながらビールを飲むんです。そうだ!真理さんも一緒にどうですか?おごりますよ。」
真理「そんな、申し訳ないです。」
牧田「いいじゃないですか。真理さんは晩ご飯を食べたら、途中で帰ればいいんですよ。」
真理「そうですか。それじゃあ、ごちそうになります!」
第2章 蛇道Tシャツ
こうして三人は名駅近くにある宇宙の山姥に入店した。とりあえずビールと手羽先を注文すると、ビールが先に運ばれてきた。
芥川「とりあえず乾杯しよう。」
牧田「それじゃあ、真理さんの学業成就を祈って、乾杯!」
真理「ありがとうございます。」
三人がビールを飲みながら話していると、手羽先も運ばれてきた。
真理「おいしそうですね。いただきます!」
芥川「手羽先、うまいねぇ。」
牧田「真理さん。手羽先以外に食べたいものがあれば、遠慮なく注文してね。」
真理「はい。ありがとうございます!」
三人は手羽先を食べ、ビールを飲み、会話を続けた。
真理「芥川先生がスネークヘッド名古屋支部を立ち上げ、何か良からぬことを企んでいるという噂をお聞きしたんですけど・・・」
芥川「スネークヘッドに入会し、名古屋支部を立ち上げたのは事実だよ。だけど、特におかしなことを企んでいるわけではないんだけど・・・」
牧田「名古屋に来ていたバーニング大谷さんに、熱心に勧誘されてね。それで入会しただけなんだ。」
芥川「ところで、真理さん!蛇道Tシャツを買ってくれないか?今なら半額だよ。」
真理「Tシャツですか?半額なら買ってもいいですけど・・・」
芥川「ありがとう!」
第3章 Take Me Home, SNAKE ROADS!
芥川はバッグから蛇道Tシャツを取り出し、真理に手渡した。
真理「へぇー。意外とデザインがかっこいいですね。蛇道・・・英語もプリントされていますね。」
牧田「本当だ。蛇道の文字がインパクト強すぎて、今まで気付かなかった。」
真理「えーと。Take Me Home, SNAKE ROADS!・・・」
芥川「言葉の意味はよく分からないけど、とにかくCOOLなデザインだね。」
牧田「・・・・・・」
芥川は中ジョッキに残っていたビールを飲み干すと、真理に提案した。
芥川「真理さんは今、働きながら税理士の勉強をしている。本当に素敵な女性だ。我々は、頭が下がる思いだよ。」
真理「いえ。私なんて、何をやっても中途半端で・・・」
芥川「しかし、これからはAIの時代だよ。税理士の勉強をするよりも、アイドルを目指した方が・・・」
牧田は慌てて芥川の話を遮って言った。
牧田「芥川君!真理さんにその話は・・・」
芥川は気にせず、そのまま話し続けた。
芥川「AIが普及した社会では、推し活にハマる人間が増えるだろう。そういう連中に夢を見させることができれば、人気とお金をゲットできるだろう。真理さん。僕たちと一緒にがんばろう!我々スネークヘッド名古屋支部は、がんばる君を全力でサポートするよ!!」
第4章 今宵の月のように
芥川の提案を聞き、真理はしばらく考え込んでいた。その後、彼女はビールを一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
真理「とりあえず、スネークヘッド名古屋支部に入って、会計係をやります。アイドルの話はその後に、みんなで話し合いましょう。」
真理の言葉を聞き、芥川は手放しで喜んだ。
芥川「ありがとう、真理さん!みんなで力を合わせて、天下を取ろう!!」
牧田「・・・真理さん。ありがとう。」
真理は晩ご飯を食べ終わると、先に店を出て帰っていった。
芥川「さすが東京の娘だ。おまけに父親に反発して、家出してきただけのことはある。彼女は成功するよ。僕の目に狂いはない。」
牧田「君は彼女の父親の明智先生を、スカした東京野郎と罵倒していたじゃないか。」
芥川「えっ!そんなこともあったかなぁ?ハハハッ!今日は愉快な一日だ!!」
牧田「芥川君。今日はビールだけにしておこう。それ以上、飲まない方がいいと思うよ。」
店を出た牧田と芥川は、おぼつかない足取りで帰路に就いた。
芥川「今日は夜風が気持ちいい。歩いて帰ろう。」
牧田「うん。分かった。」
ご機嫌な芥川は歌を歌い出した。
牧田「懐かしいなぁ。エレファントカシマシの曲だね。」
芥川「牧田君。一緒に歌いながら帰ろう!」
牧田「『今宵の月のように』・・・か。」
見上げると、名古屋の夜空には雲一つなく、美しい満月が光り輝いていた。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(59)【今宵の月のように編】