zoku勇者 マザー2編・34
ストーンヘンジ編・1
「……」
「おい、ダウド……、お前何時までそうやってる気だ?」
「知らないよお!」
ダウドはフォーサイドのホテルの部屋で……、ベッドに座ったまま
不貞腐れて動かず。どうしてももう少し遊ばないと気が済まない
らしい。
「ねえ、ダウド……、まだ何か不満があるのかしら……?ちゃんと
言ってくれないと私達も分からないのよ……」
「……」
ジャミル達はダウドの気が済む様、ちゃんとゲーセンにも行きたい
所にも連れて行った。美味しい食事もきちんと食べに連れて行った。
それなのに……。何時までも不機嫌でブスブス。頭を抱えてジャミルは
ふうとため息をついた。
(なーんか最近、我儘っぷりがマジで高○ブーじみて来たな、こいつ……)
「分ったよ、……お前だけもう少し遊んでていいからさ、後でテレポで
ちゃんと魔境出口付近まで追い掛けて来いよ……」
「!!!ちょ、ちょ、ちょっと待ってよお!何でそうなるのさ!」
「……ああん!?」
ダウドは部屋を出ようとした3人の前に立ち塞がる。
「皆はヒエログリフの写し読んだでしょ!?……侵略者は時の彼方に
隠れ、悪の巣箱を置いた。時の彼方は魔境のはるか先。地の底のむこう。
……つまり……」
「つまり……?」
「……この侵略者ってのは、ギーグの事……、魔境のはるか先、
地の向こう……、魔境を越えたらもうギーグがいる場所まで後
少しなんだよ……」
「だから……?」
「それでいいのって事だよお!……魔境の先に行ったら、もう本当に
遊んでる余裕なんかなくなっちゃうんだよ!……生きて帰ってこれるかも
分からないし……、オイラまだ……、皆と一緒にいっぱい楽しい思い出
作りたいよ……」
「ダウド、君の言いたい事は分らなくもないよ、ただ……、僕らは
ギーグを倒す為選ばれた少年少女達なんだよ、ちゃんとやり遂げる
事はやり遂げないと……、本当の青空は見えないよ、……ギーグの手から
この世界に平和を取り戻すまでね……」
アルベルトも困った様にジャミルとアイシャの方を見ながら
ダウドを諭すが……。下を向いて唸ったままである。
「……」
「分ったよ、……後、一日だけだぞ、それでいいか?」
「ジャミルっ!う、うんっ!」
ダウドの顔がパッと明るくなり、一気に機嫌が良くなった。
まるでどうしようもない性悪幼稚園児である。
「♪ふんふ~ん、何処へ行こうかなあ~!」
「ま、悔いの残らない様にしっかり遊んどけや……」
ジャミル達も今はダウドに従って、残された休日を楽しもうと
いう事に……、無理矢理納得した。
……4人はホテルを出て、デパート近くの自動販売機へ。部屋に
持ち込んで飲み物を飲もうと買いに出掛けたが……。
「ありゃ、ここは……、みんな売り切れじゃねえか、おいおいおい……」
「業者さんがちゃんと仕入れてくれないのかな……」
「残ってるのは苦いコーヒーばっかりね!」
「……じゃあ、別の所の自販機行こうよお!」
「……君達、無糖コーヒーを舐めてはいけないよ!苦いコーヒーが
苦にならなくなれば、立派な大人の仲間入りだ!」
「!?」
……4人の前にぬっと……、やたらとコートの裾の長いおっさんが
現れた。両手に缶コーヒーの缶をしっかり二つ握っている。
「あの、あんた前に何処かで会った事なかったっけ?」
「それは分らないが、私は究極の美味いコーヒーを求めて世界中を
旅をしているんだよ、いやあ、中々見つからないがね……」
……そんなモン探してわざわざ旅してんなよとジャミルは思ったが。
「噂によると、キラーカップと言うモンスターとやらの中の
コーヒーは絶品で最高だと言う噂が有る……、そんな物に
出会えたら是非、美味しいコーヒーを味わってみたいね……」
おっさんはブツブツ言いながら何処かに去って行った。
「キラーカップ……、畜生、思い出したらムカムカしてきた……」
……それはジャミルに向かって2度に渡って熱いコーヒーを
ぶっ掛けてきた忘れもしない敵であった。
「1度目は……、確かモノトリーデパートの中で遭遇したよね、
でも今はあそこは敵は出ないし」
「そんなに美味しいコーヒーなのかしら……」
「……そうだ、確か、ブリックロードのおっさんのダンジョンの
中にもいたよな?よしっ、行ってみるか!」
「えっ?……まさかジャミル……、キラーカップの中のコーヒー
飲みに行くんじゃ……」
アイシャが聞くと、ジャミルは即答!とばかりに返事した。
「君も……、何考えてるの……、それ程までして飲みたい物でも
ないだろ……」
「これは復讐でもあるっ!俺にコーヒーを掛けてくれた……、な……、
今なら余裕で倒せるしな、オラ、お前らもペットボトル持てっ!」
「えええーー!?」
ジャミルが他のメンバーに無理矢理空のペットボトルを持たせる。
これにコーヒーを大量に詰めさせる気である。余裕の割には、
この間、キラーカップにコーヒーをぶっ掛けられて喚いていたのだが……。
「さようなら、オイラお部屋で待ってます……」
しかし、逃げようとしたダウドの肩を後ろからジャミルが
がっちり掴んだ……。
「待てっ……、オメーの為にとった休日だぞ……、残り少ない時間、
部屋で無駄に過ごしてどうする……、付き合えよ……、それにあそこの
ダンジョンはすげー親切でサービスがいいんだぞ……、ダウドは
修行に行ってたんだから、まだ行った事ねえだろ?連れてってやるよ……」
「……あああーーっ!だからってーっ!こんなのは嫌だよおーーっ!!」
「はあ……」
二人の様子を見て、いつもの如く溜息をつくアイシャとアルベルト。
コーヒー親父の余計な言葉で……、他のメンバーはジャミルの暴走に
付き合う羽目になったのであった。
4人はテレポートで再びダンジョン男の所へと飛んだ。……ダンジョン男は
相変わらずヤシの木の間に挟まれたままの状態だった。
「あら?張り紙がしてあるわ……、えーっと……」
※ちょっと出かけて来やす。ご用のある方は四階まで来てお待ち
下さいやし。
ブリック・ロード
「出掛けてって……、中の本人不在かよ、けど、4階まで行くのに
どれだけ大変か分かってんのかあの親父は……」
「じゃあ、ブリック・ロードさんには会えないのね……」
「うん、何だか残念だなあ~……」
「そうだね、ご本人が不在なら勝手に入っちゃ悪いよねえ、
じゃあ帰……」
「待て、俺たちゃ今日はおっさんに会いに来たんじゃねえ、コーヒー
収穫の為だ、ちょっくらモンスター相手にするぐらい、いいんだよっ!」
「……うえええ~、……外道おおおお~!!」
無理矢理ダウドを引っ張り中まで連れて行くジャミルを見て、
仕方なしにアイシャとアルベルトも後を追う。
「ほらほらほら、ダウドも此処に来て!一緒に座りましょ!
このベンチに座ると疲れが一発でとれちゃうの!」
「……また始まったな……」
「ほんとに……?」
アイシャがダウドをベンチに呼んだ。ダウドは恐る恐るベンチに腰掛け……。
「ほええ~、本当だ、気持ちいい~……」
「でしょう~……」
ダウドもベンチの魅力に取りつかれてしまったらしい。
「……お前らシルバー老人かよ……」
「僕も……、お邪魔します……」
「あっ!アルまでっ、畜生~!俺だってっ!」
ジャミルもやけになってどっかとベンチに腰を降ろし、……ベンチは
ぎゅうぎゅう。それでも4人はぽや~んとふにゃけ顔……。
「♪し~あ~わ~せえ~……」
「だよおお~……」
4人はベンチに座ったまま動かず……、気が付いた時は30分経過していた。
「たくっ!……時間食っちまったわ!」
「何よっ、私の方なんで見るのよっ、ジャミルっ!」
「はうう~、は、早くコーヒー集めないと、折角のお休みがああ~!」
「あ?来たよ、ジャミルっ!コーヒーカップが歩いてくる!」
「アル、ホントか?よしっ、お前らペットボトル出せっ!」
4人はペットボトルを準備するが……。
「でも、あれ……、どうやってこの中にコーヒー詰めるのよう……」
「あん?とにかく倒しゃいいんだよ、俺がコーヒーカップに
穴を開けるから!そっから零れたコーヒーをお前らボトルに
どんどん詰めろ!」
「……また難しい事を言うね、君は……、簡単に言うけど……」
「よしっ、行くぞっ!」
ジャミルはリュックからスリングを出すとバットから持ち替えて
キラーカップに向けて撃とうとするが。……その前にキラーカップが
素早く前進し、ジャミルに向けて体当たりしてきた。
「う、うわっ!またっ!!……んぎゃああーーー!!」
「……ジャミルっ!!」
ジャミルは又も熱いコーヒーをぶっ掛けられたと思いきや……。
「……つめてええーーっ!!」
「冷たい……?」
状況を見ていた他のメンバーが揃って首を傾げた。
「こ、これ、……冷水だぞっ!何なんだああーーっ!!」
キラーカップが看板を掲げて何やら跳ねて燥ぎだした。
「何かしら、文字が書いてあるわ……」
コーヒーやめました。今年から中身は激冷たい麦茶にします。
「♪~」
「あ、そうなの……、て事は、あなたの中身はもうコーヒーじゃないのね……」
「♪♪~」
アイシャに対して返事をする様にキラーカップがぴょこぴょこまた跳ねた。
「ふざけんじゃねえぞ、この野郎!……こうなったら麦茶でも何でも
構わねえ!絶対にボトルに詰めて持って帰ったらあ!があーーっ!!」
「♪♪♪~」
キラーカップはそのまま逃げて行く。その後をムキになって
追い掛けて行くジャミ公。何だかキラーカップに……、わざと
構われているかの様……でもあった。
「どうするんだよお~、あの人、ああなったら意地でも目標達成
するまで帰らないよお~……」
「もう、ホントにやるって決めたら絶対実行するんだから……」
「……はあ」
結局、その日は、こんな事もあろうかと、アルベルトがこっそり
別に用意しておいた別容器のコーヒーをさっとボトルに移し……、
ジャミルが暴走して走り回っている間、他のキラーカップから
摂取したという事にして、ジャミルを何とか納得させたのだが。
「……これ、なーんかあんまり美味くねえなあ……、あいたっ!」
「うるさいっ!贅沢言わないで黙って飲めっ!アホっ!」
……アルベルトにバシバシスリッパで頭を叩かれながらも不満顔で
ジャミルはコーヒーを堪能したのであった……。
休日も等々終わった。ダウドも観念したので、4人は再び魔境の
出口へとテレポートで移動した。目指すは先に見えていたあの
洞窟である。
「はうう~、なんかもう、都会から此処に来ると、一気に現実に
引き戻されるよお~……」
「さあ、先に進もうぜ!」
「はう~」
ジャミルが先頭に立って4人は洞窟の中へと。其処にいたのは……。
「……」
「……」
どせいさんに続く、謎の異星人達の集落……?であった。
異星人達は何だかキノコ?の様な形をしており、これまた
ぷにぷにな雰囲気で触ったら柔らかそうな感じ。
「こ、こんちは……」
試しにジャミルが挨拶してみると、……何の反応も返ってこない。
「聞こえないのか?……こんちわっ!」
しかし、駄目である。反応なし。……無視されたと思い、ジャミルの
機嫌が悪くなってきた。
「ま、まあまあ、僕らも挨拶してみよう、こんにちは」
「初めまして……、あの……」
「オイラ、ダウドだよお!」
「……」
他の3人も挨拶するが、誰一人として返事をしてくれず……。
「困ったわね、ここの人達……、お話をしてくれないのかしら?」
「これじゃ何も聞けないよお……」
「う~ん……、あっ、ジャミルっ!」
機嫌の悪いジャミルが何とか謎の異星人と話をしようと突っ掛って
行きそうになっていた。
「おい、この野郎!返事しろって言ってんのが分かんねえのか、この野郎!」
ほぼ、ケンカ腰になっている。それでも異星人達はジャミルを無視
し続けた。もうジャミ公は噴火寸前。慌ててアルベルト達がジャミルを
止めに行こうとするが……。
「……無口、おれたち……」
等々、異星人の1人が口を開いた。
「おおっ!やっと喋ったか!」
「も、もうっ、ジャミルったら……」
「おれたち、グミ族……、無口……」
「おれたち、無口」
「おれたち、無口……、でも、お前うるさい……」
「はうっ!?」
痛い所をつかれ、ジャミルが飛び上がる。それを見てアルベルトが
ぷっと吹きだす。
「お?温泉もあるのか……」
4人は温泉に入らせて貰う。無論、服のままで……。
「無口、おれたち……」
「此処の人達は大人しいのねえ~……」
「うん、ジャミルがうるさ過ぎて、ちょっと口を開かずにいられなく
なっちゃったのかな?」
「うるせーよ、バカダウド!」
「そうだね、ジャミルもこの人達ぐらい、玉には大人しくなればね……」
「あら、でもうるさくないのなんてそんなのジャミルじゃないわ!」
「……お前ら皆纏めて地獄へ行けっ!このっ!」
「ちょっとっ!お湯飛ばさないでよっ!」
「ふう~、ビバノンノン……、だなあ~……」
「……オイラ、やっちゃった……、おなら」
「……うわっ!!」
「♪えへへ~」
4人が風呂の中で騒いでいる処に、一人、グミ族がぽてぽて近寄って来た。
「無口でないグミ族も一人います、それは私です、ねえ知ってます?
地面の下から恐い物が出てくるので私達で蓋をしております恐竜が
この下にいるんですよ、以前にこの下まで行った事があるんですけど、
いや~、とても大変でした!それ以来、穴を塞いでしまったんです
あっ、喋る岩もいたんですよ!」
他のグミ族と違って、このグミ族は本当にベラベラよく口が回る様だ。
「ねえ、ジャミル、この下って……、地底に通じているのかしら?」
「……だろうな、だとしたら……、もう次に向かう場所は決まったな……」
「そうだね、何とか蓋を外して貰わなきゃ……」
「ひいいい~!……きょ、恐竜っ!?」
ジャミル達は風呂から出た後、ベラベラ喋るグミ族に尋ねてみる。
「なあ……、俺達ここの下に行ってみたいんだけど、通して貰えんのか?」
「行ってみたいですか?でも、私はこう見えてもひ弱な男ですんで、
力があるのは隣の男です、……まずはあいつの無口を治さないと、
会話が成り立ちませんから」
……見ると大きな岩の側にムキムキで筋肉質のグミ族が。
「一応、グミ族って性別あんのか……」
「ああ、何か喋りたい……」
ムキムキなグミ族は只管身体を動かしている。
「長老様にも一応お話を伺ってみてはいかがでしょう?」
お喋りグミ族に勧められたので、4人は長老にも会ってみる事に。
「わしたち、全体、無口、無口治す本あるうわさ、どこ?……知らない?
無口治す本……」
「う~ん……」
どうやらまずはグミ族の無口を治さない事には何も始まらないらしい。
何故か此処のガラクタ置き場にアルベルト用の武器、デスビームが
捨ててあり、それを回収した後、4人は一旦グミ族の集落を出る事に
するが……。
「無口を治す本ねえ~……、けど、俺だったらやっぱ耐えらんねえな、
あれだけ静かなのはよ……、ぶっ倒れちまうな」
「だよねえ~、ジャミルならアホとバカを治す本てとこだよねえ!」
「そうだな……って、うるせーんだよ、バカダウド!おめーなら
ヘタレを治す本だっ!アルなら腹黒、アイシャならジャジャ馬だな……」
「ちょっとっ!どさくさに紛れて何言ってるのよっ!」
「……そんな本ないからっ!」
プルルルル……
「お、電話っ!アップルキッドだな!もしもしっ!」
誤魔化す様にしてジャミルが慌てて電話に出、その場の状況から逃げた。
「……もうっ!ジャミルのバカ!」
『もしもし?ジャミルさんですか?僕です、アップルキッドです、
いやあ~、等々念願のアンドーナッツ研究所まで来られましたっ!
こっちはとてもいいお天気ですよ!博士は今お留守の様なんですけど、
僕、勝手に此処でこけしけしマ……!!!!!な、な、な、な!!!
誰だっ!……何す……』
「おい?……キッド?どうした?……」
『ガチャン、ツーツーツー……』
「……どうしたんだよっ!おいっ、返事しろってばっ!!」
しかし、ジャミルが幾ら受話器に呼びかけてもうキッドの声はせず、
何の反応もしなくなってしまった……。
「……どうしたのっ!?」
他の仲間達も心配してジャミルの側に寄ってくる……。どうやら
只ならぬ何かが又起きているのには間違いはなかった……。
ジャミルは通信電話を握りしめ、その場で呆然とした。
「……アップルキッドが……アンドーナッツ博士の研究所に
来てたらしいんだけど、途中で悲鳴が聞こえて急に電話が
切れちまった……、何かあったらしいんだよ……」
「父さんの所に……、と、とにかく、研究所まで戻らないと……!」
アルベルトがそう言った瞬間、再び電話が鳴った。
「……も、もしもしっ、キッドかっ!?」
『もしもし、ジャミルさんですか?お久しぶりです、僕ですよ、
オレンジキッドです』
……そっちのキッドの方かい、と、ジャミルは思った。
『いよいよゆで卵を生卵に戻す研究も大詰めを迎えました!
……ところで、アップルキッドなんですが……、行方不明なんです、
ウィンターズのアンドーナッツ博士の所へ行くと言ったきり……、
連絡が取れなくて……、僕、彼に無口を治す本を借りようと
思っていたんですけど……、行方不明になってしまうなんて……』
「……」
どうやらアップルキッドは出掛けたまま、暫くオレンジとも
音信不通だった処に漸く研究所に辿り着いた際、……何か大きな
事件に巻き込まれたらしい……。オレンジは連絡の取れない
アップルキッドの身を案じており、ジャミル達に宜しくと伝えると
電話を切った。ついでに、研究も引き続き頑張るとの事で……。
「……聞こえるの……」
「ん?アイシャ、どうした……?」
「……私達とお話をしたがっている皆の声、……アルにとても関係の
ある場所よ……、学校……、それに湖畔……?」
「スノーウッド寄宿舎だよ、ジャミル……」
「ああ、すぐに行こうぜ!」
「……な~んか、また大変な事になりそうだよお~……」
4人はテレポートで再びウィンターズの地へと飛ぶ……。
これから4人にとって、これまでで最大の戦いの幕開けであった。
「……到着っと!アル、此処で間違いねえな!?」
「うん、間違いない、寄宿舎の正門前だよ……」
寄宿舎を出てから本当に色々あったけど、又此処に戻って来た事を
アルベルトは実感していた。
「はっくし!……此処、寒いねえ~!!」
ダウドが大きなくしゃみを一つ。それを見たアルベルトは苦笑い。
「まあね、一年中極寒の地だからね……」
「う~!ぶるぶる……」
「あら?アルベルトさん達ではないですか、キャキャ、家内でございます!」
正門前にいたのはあのバルーンモンキーの奥さんであった。
「よう!」
「こんにちはー!」
「……此処にもお猿の知り合いかあ~……」
「元気そうだね、処で……、あの、旦那さんは?」
アルベルトが訪ねると奥さんは少々怪訝な顔をする。
「主人はタス湖の畔でタッシーに乗って遊んでますの!私を置いて、
全く困った亭主ですわっ!ギャギャ!もしも見掛けたら
注意してやって下さいまし!ギャギャーのギャー!!」
「は、はあ……」
奥さんはブリブリ怒りながら何処かへ去って行く。……ぼけーっと
それを見ているだけの4人……。
「アルベルト、アルベルトじゃナイカ!」
「……ガウス先輩!」
更に、無精髭を生やした男がこちらに近寄って来る。スノーウッド
寄宿舎でのアルベルトの先輩、ガウスであった。
「知り合いか?」
「うん、寮の先輩だよ……」
「久しぶりだな、お前随分背が伸びたなあ!門の前で待ってたら
会えるんじゃないかと思ってずっと待ってたのさ!」
「先輩もお元気そうで何よりです、あのう、処で……、さっきのは
誰の真似でしょうか……?」
「細かい事はいいんだよ!はは!」
「いえ、良くないです……」
「こんちは、俺、ジャミル」
「こんにちは、アイシャです!」
「オイラはダウドです!」
ジャミル達もガウスに挨拶した。
「おお、君達がアルベルトの友達か!特に……、君が噂の超能力ガール、
アイシャちゃんだね、うーん、可愛さは想像を超えていたな!……おい、
アルベルト、お前も中々隅に置けないな!ははは!……進展したのか?」
「……は、はあ!?な、何言ってるんですかっ!先輩はっ!
僕とアイシャは、た、……たたたた!タダの友達ですよっ!!」
ガウスがアルベルトを肘で突っついてからかい、アルベルトは
顔を赤くしてムキになる……。アイシャは相変わらずこういう
状況を良く分かっておらず、ぽーっとしている。
「……!?べ、別に俺、関係ねーし!」
そうは言うものの、黙ってガウスとアルベルトのやり取りを見ていた
ジャミルは内心面白くなかった。
「実はね、アイシャちゃん、君がテレパシーを使えると聞いて、
君に呼びかけてみたのは俺なんだよ……、大事な話があってね、
何とか通じて良かった……」
「あっ、そうだったんですか……」
「うむ……」
ガウスは急に真剣な表情になって4人と向きあう。
「アルベルト、……落ち着いて聞いてくれ、実はな、トニーの奴が
行方不明なんだ……」
「!?」
「……え、ええっ、トニーがですかっ!?」
「ああ、急に消えちまってな、もしかしたらお前の所に一緒に
いるかも知れないと思ったんだが……、几帳面な奴だからメモ位は
残していくかと思ったんだが……」
「トニー……」
「最近は此処でも異変が目立ってる様なんだ、……タス湖の方から
ユーフォーが何体もびゅんびゅん飛んでくるのを見掛けた奴が寮でも
沢山いるし……、実際に湖のタッシーウォッチ隊の人達の仲間も何人か
行方不明になっているらしい……」
「私に呼び掛けてくれた人達の声、タス湖の方からも聞こえたし……、
何だか泣いている様な……、ねえ、行ってみましょうか……?」
「だな、善は急げだ!」
アイシャの言葉にジャミル達も頷いた。
「先輩、僕達、これからタス湖の方に行ってみます……、色々と
有難うございました」
「ああ、気を付けてくれよ、アルベルト、トニーの事、くれぐれも
宜しく頼むな……」
「はい……」
ガウスに見送られながら、4人は今度、一路タス湖へ向かった。
……4人がタス湖に到着した時には、既にエライ事になっていた。
テントからはウォッチング隊の人達が出て来てかわりばんこに
あっち行き、こっち行き、オロオロオロオロ……。
「皆さん、落ち着いて下さい!何があったんですか!?」
「……おお、君はいつぞやの……、眼鏡少年!又会えるとは!」
「セバスチャンがーーっ!攫われちゃったようーー!!」
「ポマスチャンもだようーー!」
「……ぺマスちゃんもーーっ!!」
……やはり、ガウスが話していた通りであった。どうやらタッシー
ウォッチ隊のメンバーが何人か謎のユーフォーに連れ去れたと
いう事であった……。
「ショックだようー、いい奴だったのに……、……セバスチャンを
攫ったユーフォーはストーンヘンジの方へ飛んで行ったんだよう~、
しくしく……」
「……ストーンヘンジ……、確か、アンドーナッツ研究所の近くにある……、
謎の遺跡だよ……、もしかしたら……」
アルベルトは考え込む。あまり口にしたくない様だが、嫌な
推測が彼の頭の中には浮かんでいた……。
「アル、とにかく研究所に行ってみようぜ、博士も心配だしな……」
「うん、分かってる、ジャミル……」
頭に浮かんだ暗い推測を振り払う様にして、アルベルトが
ジャミルの顔を見て頷いた。
「んじゃ、オイラは此処でタッシー隊の皆さんと……、あたたたた!
……冗談だってばぁ!耳引っ張らないでよお!ジャミルのアホう!」
「冗談に聞こえないっての、お前の場合は!」
「でも、此処からどうやって研究所まで行くの……?」
アイシャがアルベルトに訪ねると、アルベルトは心配ないよと
言う様に頷いてフーセンガムを一枚取り出す。
「これを使うんだ、さあ、湖の畔まで行こう、……皆さんも……、
どうか気を落さないで下さい、お仲間は必ず僕らが助けます!」
「おお、頼むよ!眼鏡少年とそのお仲間達!」
「セバスチャンをどうかよろしくお願いします!……しくしく……」
「ポマスチャンも……、助けてね……」
「ぺマスちゃんも~……」
しっかし、適当な名前だとジャミルは思いつつ、4人は
タス湖の畔へ……。
「……バルーンモンキー君!」
「キャ?おお、腹黒ドSメガネと変態のお友達だな!まーた
タッシーに乗りたいんだろう?いいよ、早くガムよこせよ!」
「変態のお友達って……、何だよお……」
「失礼ねえ!もうっ!」
「おい、口がわりィ猿だな、ったく、碌な知り合いいねえな、
お前もよう……、まあ、アルがドSなのは理解出来るけどな」
「ジャミルに言われたくないんだよ……、とにかくっ、事は一刻を争うんだ、
頼むよ、ほら!」
アルベルトはジャミルとバルーンモンキーを同時に
ブン殴りたいのを堪えて、フーセンガムを一枚渡した……。
「おおっ!湖から何か出てくる!」
「タッシーだよ、あれに乗せて貰うんだ、行こう……」
「♪わあー!素敵っ!」
「キャキャ!オレもついていこ!」
「やっぱオイラは……、あだ、あだだだだ!」
一人抵抗しかけたダウドを引っ張り、ジャミル達、バルーンモンキーは
タッシーの背中へ……。アンドーナッツ研究所を目指す……。
(父さん、トニー……、どうか……、無事でいて……)
アルベルトは心の中で皆の無事を祈るが……。無残にも彼が最初に
推測した悪い事の方が的中してしまう事となる……。
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