霊能探偵・芥川九郎のXファイル(58)【蛇道名古屋支部・幹部会編】

第1章 蛇道Tシャツ

 霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
牧田「大谷さんはようやく東京に帰ったんだね。」
芥川「うん。大谷さんもいろいろ忙しい人だから、いつまでも名古屋にいないさ。」
バーニング大谷は最近、異種能力者団体・スネークヘッド(蛇道)を立ち上げた能力者である。スネークヘッドの目的は、既得権益やしがらみで不自由な既存団体の改革だ。
牧田「でも、スネークヘッドの活動資金を確保するために、何か考えないといけないんだろう?」
芥川「僕たちはスネークヘッド名古屋支部の幹部だからね。スネークヘッド存続のために汗をかき、知恵を絞ろうじゃないか。」
牧田「経営の神様・松下幸之助の名言だね。『汗を出せ、汗の中から知恵を出せ』か。」
芥川「とりあえず、スネークヘッド名古屋支部のホームページを立ち上げる。それから、蛇道Tシャツなどのグッズを販売するためのサイトを構築しよう。」
牧田「了解。でも、Tシャツの販売だけでは心もとないね。」
芥川「少しずつグッズを増やしていこう。時々、イベントも開催したい。」
牧田「課題は、スネークヘッドという団体の認知度だね。」

第2章 安形クリステル

 二人がそんな話をしているところに、珍しいお客がやって来た。
クリステル「こんにちは、芥川先生。牧田さんもいらっしゃったんですね。」
芥川「びっくりした、安形さんか。こんにちは。」
牧田「こんにちは。久しぶりですね。何かあったんですか?」
クリステル「いえ。たまたま、近くを通りかかったものですから・・・」
安形クリステルは名古屋の女子高生探偵である。千里眼の能力で難事件を解明し、名古屋ではちょっとした有名人だ。
芥川「ちょうどよいところへ来てくれた。安形さん。蛇道Tシャツを買ってくれないか?今なら半額で買えるよ。」
クリステル「蛇道Tシャツ?芥川さんがスネークヘッドに入会し、名古屋支部を立ち上げて、何か良からぬことを企んでいるという噂は本当だったんですね。」
芥川「・・・スネークヘッドに入会し、名古屋支部を立ち上げたのは事実だけど、別におかしなことは企んでいないよ。」
牧田「名古屋に来ていたバーニング大谷さんと知り合ったんだ。話の流れで、スネークヘッドに入会することになっただけだよ。」
芥川「そうだ!安形さんも入会するといいよ。今なら年会費無料だ。君のために、名古屋支部・副支部長のイスを用意しよう。」
クリステル「・・・入会するだけなら、別にかまいませんけど。」
牧田「名古屋支部と言っても、今のところ名前だけで大した活動はしていません。心配することはないですよ。」
芥川「現役女子高生が入会して、生徒会を舞台にした学園ドラマみたいだね。おもしろくなってきたぞ!」
クリステル「・・・・・・」

第3章 名古屋支部・幹部会

 スネークヘッド名古屋支部事務局員の能年(鎧)が淹れたてのコーヒーを3人分、運んできた。
芥川「ありがとう、能年君。」
牧田「いただきます。いつも悪いね。」
クリステル「ありがとうございます。能年さんも相変わらず、お元気そうですね。」
能年(鎧)はコクッコクッと2回、小さく頷いた。彼は鎧の妖怪で、芥川の助手として事務所に住み込みで働いている。
芥川「名古屋支部の幹部がそろったところで、さっそく幹部会を開催しよう。」
牧田「蛇道Tシャツ以外に、何か話し合うべきことがあるのかい?」
芥川「そうだなぁ。まずは役割分担だ。能年君はコーヒー係だ。」
それを聞いて、能年(鎧)はコクッと1回、大きく頷いた。
芥川「クリステルさんには・・・クッキーでも焼いてもらおう。」
クリステル「意味が分からないんですけど。」
牧田「芥川君。女性だからクッキーを焼けというのは、今のご時世、ちょっとまずいよ。」
芥川「そうか・・・ポリコレのジェンダー論だね。それでは、クッキーは能年君に焼いてもらおう。能年君。今度、叔母さんに教えてもらうといいよ。」
能年(鎧)はコクッコクッと2回、小さく頷いた。芥川の叔母は、彼の事務所の隣にある税理士事務所の先生の奥方である。服部夫人は甥っ子の芥川を心配して、いろいろ世話を焼いてくれる心優しいご婦人だ。
牧田「能年君がクッキーを焼くなら、僕がコーヒーを淹れようか。」
芥川「そうだね。それじゃあクリステルさんは、たまに紅茶を淹れてもらおう。」
クリステル「・・・別にいいですけど。芥川先生は何をするんですか?」
芥川「僕は連絡調整係をするよ。」

第4章 推し活にハマる人々

 芥川はコーヒーを一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
芥川「さて、次に企画会議だ。」
牧田「蛇道Tシャツ以外のグッズを考えるんだね。」
芥川「そうだ!いいことを思いついた。安形さんをYouTubeアイドルとしてプロデュースしよう。」
牧田「芥川君、それはまずいよ。安形さんはまだ高校生なんだから。それに、スネークヘッドは芸能事務所じゃないよ。」
クリステル「私はアイドルになるつもりはありません!受験勉強で忙しいんです。」
芥川「受験勉強って、大学に進学するのかい?」
クリステル「一応、医学部を目指して勉強中です。」
牧田「さすが安形さん。才色兼備だね。」
芥川「千里眼の能力があれば医学部も楽勝だろう・・・しかし、これからはAIの時代だ。大学で勉強するよりも、アイドルを目指した方がいいよ。」
クリステル「・・・・・・」
牧田「芥川君。僕もちょっと、意味が分からないんだけど・・・」
芥川「AIが普及した社会では、推し活にハマる人間が増えるだろう。推し活で現実逃避する連中・・・敢えて言おう、カスであると!そんなカスどもに夢を見させて、人気とお金をゲットするんだ!!」
クリステル「人をカス呼ばわりする人こそ、本当のカスです!」
安形クリステルは怒って立ち上がると、「ごきげんよう」と言い捨て、事務所から出ていってしまった。
牧田「安形さん、怒って帰っちゃったよ。」
芥川「うん。ちょっと言い過ぎた・・・」
さすがの芥川も反省の色を見せていたが、彼は何を反省しているのか・・・それは誰にも分からなかった。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(58)【蛇道名古屋支部・幹部会編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(58)【蛇道名古屋支部・幹部会編】

「推し活で現実逃避する連中・・・敢えて言おう、カスであると!そんなカスどもに夢を見させて、人気とお金をゲットするんだ!!」 異種能力者団体・スネークヘッド名古屋支部の幹部となった霊能探偵・芥川と友人・牧田。 活動資金について話し合っている最中、偶然にも女子高生探偵・安形クリステルが来所する。 強引に勧誘されて巻き込まれたクリステルを待ち受けていたのは、意味不明な「名古屋支部・幹部会」だった。 クッキーを焼くことになった鎧の妖怪・能年君、そして芥川がぶち上げた「YouTubeアイドル・プロデュース計画」とは!? 相変わらず不条理な迷言ばかりの、お気楽日常コメディ第58弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-04

CC BY
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  1. 第1章 蛇道Tシャツ
  2. 第2章 安形クリステル
  3. 第3章 名古屋支部・幹部会
  4. 第4章 推し活にハマる人々