zoku勇者 マザー2編・33
ちょっと休憩編
ジャミル達はフォーサイドの街をウロウロ歩いている間に
いつの間にか元、モノトリービル近辺まで来ていた。ダウドは
モノトリービルを知らないが。
「そういや此処も、今は経営者が代わって人手に渡ったん
だっけか……」
「モノトリーさん、今頃……、どうしてるのかしら……」
「なになに?モノポリー?」
「……おめえはいいんだよ、知らねえんだから……」
「何だよお!そう言う言い方ないよお!オイラだって
仲間じゃないかあ!教えてくれたっていいじゃん!」
「あのね、……ダウド……」
アイシャが複雑そうな顔をする。それを見たアルベルトは慌てて
ダウドに声を掛けた。
「ダウド、今は……、ちょっと、ね……、控えて……」
「何さアルまで!そう言えば、何か此処での事はあんまり
みんなオイラに教えてくれないんだね!別にいいけどさ!」
モノトリービルでのあの出来事は、アイシャにとってトラウマ的
出来事だった為、アイシャの気持ちが落ち着くまで普段はなるべく
ほじくり返さない様、ジャミル達も気を遣っている。ダウドには
大変だったという事は伝えてあるが、細かい話はその所為もあって
ダウドには伝えていない。勿論、狂った世界のムーンサイドに
送られたジャミル達も此処でのトラウマを思い出したくない
気持ちは同等であった。
「てめーらっ!此処を何処だと思ってやんだっ!脳天ブチ抜くぞ!」
「あっ……」
突如、ビルからいかつい禿げ頭のSPが出て来て四人を怒鳴った。
「おっさん、アンタ……、まだ此処にいたのかよ、しかも……、
別会社でもSPやって働いてたのかい?」
「……お前達はっ!!」
ビルから出て来たのは以前にモノトリービルでSPをしていた
男であった。アイシャが拉致られている間も彼女を常に監視、
脅して散々酷い目に遭わせた、あのSPである。結局は改心した
モノトリーに解雇され、何処かへ行ったのだが、又、別の経営者に
雇われ、此処に戻って来ていたらしい。
「すぐに此処から立ち去れ!……でないと……」
SPがマシンガンを四人に向けた為、ジャミル達は慌てて
その場を離れた。やはりあのSPは全く変わっていない。
「ふう、……あんなのを又雇うんじゃ、新しい会社の経営者も
碌なモンじゃねえや……」
「……」
「アイシャ、大丈夫かい?」
「あっ、うん、……アル、私は平気だから……」
「とりあえず、ホテルだホテル、行こうや……」
4人は宿泊所の定番となったフォーサイドホテルへ。此処に
泊るのも何回目になっただろうか。フロントでチェックイン。
部屋に一旦荷物を置いてからロビーへと集まり、皆で顔を
合わせた。
「あのね、ダウド、さっきの話なんだけど……」
「ん?」
「……アイシャ!」
ジャミルが心配するがアイシャはううんと首を振った。
「そうね、何時までも内緒にしておくのもね、……ダウドにも
話しておくわ……」
アイシャはフォーサイドのデパートで誘拐され、モノトリービルに
閉じ込められ、ジャミル達が助けに来るまでの数日間、今でも
うっかり思い出す度に心の傷になってしまっている程の……、
怖い思いをした事を……、全てダウドに打ち明けた。
「そうだったんだ、……アイシャも皆も本当に大変だったんだね、
それなのに、ごめんね、オイラ……、何も知らなくて、酷い言い方
してさ……」
「ううん、いずれダウドにもちゃんと話しておきたかったの、
こっちこそごめんなさい……」
「……でもさ、やっぱり、オイラだって皆の仲間だし、
友達なんだよ……、アイシャは辛くて心に留めておきたい
傷かもしれない、でも、皆の苦しみはオイラの苦しみでも
あるからね、悲しい事も辛い事も一緒に分かち合いたいんだ
よお……、これからもね……、だから、何でも話して欲しいな
……って、何か似合わないね、こんなセリフ、オイラには、
えへへ……」
顔を赤くしてダウドが笑う。それを見てアイシャも心から微笑む。
「ううん、ありがとう、ダウド……」
「うん……」
「ダウド、お前って、……いいヘタレだな……」
「だからっ!何だよお!もうっ!……もういいよ、早く遊びに
行こうよお!チェックインは済ませたんだからさ!」
「よっしやよっしゃ、そうすべ!嫌な事は何もかも忘れて、
皆でパーッと遊ぼうぜ!折角の休日期間だしな!派手に遊ぶぜ!!」
「いや、……君は普段から何もかも忘れ過ぎなんだよ……」
「……アル、うるせえっ!」
「ホント、脳みそが飛んじゃってる……、アタ、アタタタタ……!
何だよお!!」
そんな皆の様子を見て、アイシャは心から安心する。
どんなに辛くても皆がいるから頑張れる。何処までも
皆と一緒なら、きっと……。この先も、何が待ち受けていても
乗り越えられる。そう思った。
……ところが、ホテルを出て、まず最初に何処へ行くかで4人は
揉めてケンカ沙汰になる……。
「ハンバーガー屋で最初にプッピマッグを食うんだ、これに限る!」
「またっ、お腹壊すわよっ!……昨日最中で懲りたばっかり
でしょっ!本当にもうっ!食べる事ばっかりなんだからっ、
ジャミルはっ!」
「うっ、……けど、おめえだってアイス食べたいって言ってた
じゃねえかよ!……今更言い逃れすんなよ!?」
「ふぇ!?……だ、だって、食べたいけど、やっぱり……、体重が
気になるんだもん~……」
顔を赤くして指と指をちょんちょん合わせるアイシャ。
「だから今は我慢して、……お洋服が見たいのっ!」
「あのね、恐竜博物館はやっぱりお勧めだよ、何回見ても
本当に凄いと思うんだ……」
「ストリップ……」
「!?」
ダウド以外の3人が一斉にダウドの方を見た……。
「いや、ストップ、温暖化……って言ったんだよお……、
そんな事どうでもいいよっ、ゲーセン行こう、ゲーセン!」
「お?それもいいな……、けど、今は腹を満たすのが先だっての!」
「もうっ!このまんまだと、ジャミルは両○国○館行き
まっしぐらだね!ごっつあんです!」
「はあ!?うるせーな!おめえこそヘタレの国に
帰れってんだよ!!」
「……ないよっ!そんな国はっ!!バーカバーカ!バカジャミル
ううう~!!」
「ちょっとダウドっ!今、さりげなく目線が(ごっつあんです!
の処)私の方も見てた様な気がするんだけど!?」
「あの……、ちょっと……、……ねえっ!ちょっとってばっ!
僕の話聞いてる!?」
話がどんどん関係ない方向にずれ……、4人は等々揉めだした。
通行人は通りすがりに4人の方を見て、皆笑っていく。
「はあ、最近は……、博物館に来てくれるお客さんの数も圧倒的に
減ったなあ……、明らかに経営不振だよ、それに……、おや、あれは……?」
通行人の中にブツブツ言いながら通り過ぎてゆく男が一人、
恐竜博物館の館長、ライスボウルである。ライスボウルは
ギャーギャー騒いでいる4人組を見つけるなり慌てて駆け寄り、
声を掛けた。
「……君達っ!」
「ん?……お、おっさんはっ!」
「……生きていたのかっ!」
「……だ~れ?」
4人の顔が一斉に(´・ω・`)になった。 ライスボウルはその場に
滑ってこけた。
「酷いな君達っ!ボクだよっ、恐竜博物館の館長のライスボウルですっ!」
「あ、ああ……、飯の器さんか、あはは~、成程成程……」
「こんにちは……」
「お久しぶりです……」
「だよお……」
「たく、こっちはさ、あれから君達が全然下水道から
出てこないから死なれたのかと思ってずっとバツが
悪かったんだよ、……生きてるなら生きてるってちゃんと
言ってくれる!?」
「……だって……、なあ……」
ジャミルが困って仲間の顔を見ると他のメンバーも苦笑いした。
「それよりもっ、僕達、これから又、そちらの恐竜博物館に
是非見学に行かせて頂こうと思いましてっ!」
「……あ、アルっ!てめ、このやろ!」
アルベルトが率先して前に出る。この機会を逃さず、自分が
行きたい場所№1の恐竜博物館へ皆の足を運ばせる作戦であった。
「う~ん、それなんだけど、ちょっと困ってる事があるんだよ、
どう?君達、折角再会出来た事だし、この間の凄い物を見せた
あげたお礼も兼ねて、一つボクに協力してくれないかな?」
……果たして、ライスボウルの頼み事とは……。
「で、俺らに用って何?」
「うん、実はね……」
4人は恐竜博物館の奥の事務室へと通された。どうやらこの博物館に
深刻な事態が起こっているらしいとの事だが。
「これ、何だよお?」
「あ、こらっ!いじるんじゃないっ!」
ダウドがライスボウルのデスクの上に置いてあった雑誌に
目をつけ、手に取ろうとするがライスボウルは慌てて
ダウドからそれを取り上げた。
「けちっ!」
「……けちじゃないよっ!余分な事はしなくていいんだよっ!」
「愛しのビーナス特集……って、書いてあったけど……?」
「い、だからいいんだってば!本題に入ろう、本題に……」
「そうね……」
何かを悟ったのか、アイシャが冷めた目でライスボウルを見た。
「なんだこりゃ?……ビーナスのぬいぐるみキーホルダーか?」
「こっちはカバンに缶バッジみたいだよお、うわ、痛バってヤツ?」
「だ、だからっ!……やめろっ、あわわわわわ!」
「……大変失礼しました、ライスボウルさん、本題に入ってください……」
事務所に置いてある大量のグッズ漁りを始めたジャミルとダウドの
頭をアルベルトがスリッパで叩いて大人しくさせた。アホコンビは
ご機嫌斜めで不満顔。
「うん、実はね……」
「……チラ、初ヌード、麗しのビーナス女神、遂に降臨す……」
「……あっあっあっ、き、君までっ!」
「んだよっ!アルっ、オメーだってちゃっかり見てんじゃねえかよっ!」
「ぶーぶーだよお!」
「つい、写真集が目についてしまったもので……、忘れます……、プッ!」
アルベルトは下を向いて、吹きだした……。
(くそお~、仕方ないんだっ!……この博物館を守る為にも……、
今はこの奇妙なガキ共に力を貸して貰うしか……)
「では、真面目に本題に入ります……、実はこの博物館に新しい
化石標本の展示物が贈呈される事になったんですがね、まあウチの
展示物は基本、レプリカなんですが」
「新しい展示物ですか!?」
「うーん、まあ……、とにかくみて下さい……」
アルベルトが一番興味深々の様子。4人は顔を近づけてライス
ボウルが見せてくれた新規展示物の写真資料を見せて貰う。
「……スカラビにて発見された、新種の恐竜、オーティンコ
ザウルスの頭部の化石……」
名称を見ただけでアイシャが膨れて機嫌が悪くなった……。
「仕方ねえだろ、文句があるんなら、名前付けた奴に言えよ……」
「べ、別に怒ってないもん……!」
アイシャはそう言うが、やっぱり何処となく機嫌が悪い。
「あの、この新種の……、恐竜が何か……?」
「新種っていうより、珍種だよねえ~!」
4人が騒いでいる処に、更にライスボウルが口を挟んでくる。
「……問題は、その新種の恐竜じゃないんだよ、……ほら、これ……」
「ん?何コレ……」
ライスボウルが別の紙切れを4人に見せる。手紙にはこう書いてある。
『今直ぐに、新種恐竜の資料の展示をやめろ。さもなくば……、
この博物館を近々襲撃する……、特に、此処の館長でもある
ライスボウルは小憎らしい。なので、絶対に襲撃してやる。
以上。』
「……」
「ね、ね……、恐いでしょ、ボ、ボク……、恐くて夜も眠れないんだよ……、
数日後にレプリカが届いて展示する事になってるし……」
ライスボウルはぶるっと身体を震わせるが。
「こんなモン、明らかに悪戯だろ、字もへったくそだし!それに、
おっさん……、アンタ誰かに恨み買われる様な事でもしたワケ……?」
「そんな事あるわけないだろ!清い心の持ち主の、こ、このボクが!」
……明らかに嘘である。
「う~ん……」
手紙を見てアルベルトも困った表情。
「こんなとこ、(……ライスボウルさん自体も)襲ってもしょうが
ないんじゃない?」
ダウドが一番失礼。
「でも、もしもの事があったら……、心配だわ……」
「そ、そ、そ!そうでしょ、お嬢さん!あーー、お嬢さんは
優しいなあー!野郎ガキと比べて!キスしてあげちゃおうかなー!
んーーっ!」
「……きゃ!?」
……パンッ!!
速攻でライスボウルの頭をスリッパで叩くジャミル。
「あっ、僕のスリッパ……」
「とにかくだ、おっさんが俺らに何をして欲しいかは大体理解出来た、
要するに、レプリカを初公表する日まで俺らに護衛して欲しいワケかい?」
「……そうそうそう、そうなんだよ!あのね、私ははっきり言って、
君達にお礼をする気もお金を払う気もない、でも、この間の
凄い物のお礼のお返しを私にもっとしてくれてもいいんじゃ
ないかな?」
一人称がコロコロ変わる、忙しい親父である。
「たく、何ておっさんだよ、で、お前らはどうするんだ?」
「そうね、ライスボウルさんにはお世話になったし、いいと思うわ!」
「しょうがないなあ~……」
「新種の恐竜の公表を阻止しようとしているという事は、少なからず、
あなたをライバル視している厄介な学会の手先かも知れませんね、
貴重な恐竜の資料を守る為にも協力しますよ!」
(……このおっさん、そんなに偉いおっさんなのかなあ~……)
やっぱり、さりげなくダウドが一番失礼。
「頼めるかい!?レプリカの公表は一週間後だ、それまで……、君達、
護衛を頼むよ!」
「……了解!」
こうして、数日間の間……、4人組は恐竜博物館のガードを
務める事になった。
……翌日。
「ちーっす!」
「いらっしゃい……って、何、その恰好は……」
再び博物館に現れた4人の格好を見てライスボウルは仰天する。
「こういうのは雰囲気が大事だかんな!」
4人組はグラサンに黒スーツで……、SPもどきの格好をしていた。
子供服衣裳店でレンタルしてきた物ではあったが。
「ま、まあいいや、しっかり頑張ってください、頼むよ……」
「よっしゃ!護衛だ護衛!」
「……」
やたらと張り切っているガキ共を見て、ライスボウルは不安を
抱きつつも、早く事が済んでくれる様、願うほかなかった……。
「くすくすくす……」
「坊や達、かわいいね、コスプレかい……?」
博物館を訪れる客人達は皆、笑って通り過ぎる。
「……うふふ~ふふ、脳天ばあ~ん……」
スーパーバズーカを構えてアルベルトが薄ら笑いを浮かべている。
こいつが一番危険かも知れなかった。客はバズーカを玩具だと
思っているみたいだが。
「なあ、アイシャ、客で何か怪しい奴とか、来てないか?」
「ううん、ずっと見てるけど、今の処は……」
「やっぱ、悪戯だよな……、それにしても、恨み買うとか……、本当に
困ったおっさんだなあ~……」
「あはは~……」
ライスボウルが心配している程、大した事は起きないだろうと
ジャミルはそう思っていたのだが。
「……眠いよお~……」
「ダウド、寝ちゃ駄目よ!ほらほらほら、博物館を護衛しなくちゃ!」
「だって……、眠い物は眠いんだよお~!」
どう見ても、お子様の職場体験学習なので、緊迫感も何もあった
物ではない。誰が見てもこのお子様達が博物館の隠れガードマンを
勤めているとは夢にも思わないであろう。
そして、数日は特に何事も起こらず、……等々新種恐竜の頭部レプリカの
お披露目日、当日となった。
「わあ、お客さん、結構入って来るわねえ~……」
「はあ、面倒くせえ、来るなら来るで早く来いよ!」
「……ジャミルっ、不謹慎な事言うもんじゃないよ……」
「ねーむーいいい!あ、スカシでた」
4人はブツブツ、お喋りしながら寛いでいた。この瞬間、この時まで
平和であった。が、遂にその時は訪れる。
恐竜博物館、受付にて……
「……」
「いらっしゃいませ?……あのう……」
受付に、下半身パンツ一丁だけの奇妙な客が訪れた。しかも顔には
覆面マスクを装着し……。履いているパンツは……女児向けアニメの
ガラである。
「あのう、等博物館は……、全裸の方のご入場はお断わりしておりま……」
「騒ぐな!……ライスボウルを出せ!それに私は全裸ではない!
ちゃんとパンツは履いている!」
……きゃあああああっ!!
「何だ何だ、何だよっ!?」
「ジャミルっ、あれっ!」
受付の方から悲鳴が聞こえ、他の客も騒ぎ出した。ジャミル達も
後ろを振り返る。すると……、受付のお姉さんを人質に銃を突きつけ
抱えながら、此方の方に突進してくる変な男が一人。……客は皆
慌てて逃げ回る……。
「騒ぐんじゃねえーっ!……ライスボウルは何処だーっ!!
出て来いっ、ライスボウルっ!!」
「あいつが犯人かよ、やっと来やがったか」
「どう見ても弱そうだね、オイラでもあんなの一撃で
ノックアウトに出来るよ」
「ダウドに言われちゃお終いだなあ~」
「うるさいよっ、馬鹿ジャミルっ!」
「でも、あの人、何処かで見た様な気がしないかしら……?」
「……」
四人は考え込もうとしたが、そんな暇はない。男は人質を抱えたまま
博物館内を走り回っている。ちなみに、アイシャが言った言葉、
何処かで見た……、と、言うのは以前にビーナスのコンサートに
乱入してきた変態男の事を指している。しかし、その時は変態男が
ライスボウルと気づかないまま、4人は撃退したが、今回暴れて
いるのは、当然ライスボウルではない。恰好は同じ様な物であったが。
「このままだと、貴重な資料も破壊されてしまうかも知れない、
とっとと倒してしまおう!」
……ちなみに、ライスボウルは何をしているのかというと、
一人で事務所に引き籠って鍵を掛け、隠れていた。
「後は任せるからね、君達にね……、もしもこの博物館に何か
あったら、それは君達の責任にしておくよ……」
「アルもまあ、待てよ、皆も落ち着け、こういうのは演出も大事だ、
ちょっと奥へ行こうや!」
4人は変態男に気づかれない様走った。走って、ある部屋へと
入る。其処はとんでもない物へと続いていた、例のマンホールが
ある部屋である。
「ジャミル、本当に大丈夫なの?」
「……頃合いになった頃、出て行くんだよ」
「……しっかし、変な演出に拘る人だねえ~!」
「でも、他のお客さんに何かあったらどうするんだよ!
ぐずぐずしていられないだろ!」
アルベルトがジャミルを一括するが、ジャミルは余裕で答える。
「平気だっての!どう見たってあの銃は玩具だぜ!落ち着いて
よく見て見ろよ!」
「そ、そうだったかな、……そうかも知れない……」
「おいおい、アル、しっかりしてくれよ、オメーはこの話じゃ、
銃メインで戦ってんだろうが……」
……と、言っている処に……、再び客の悲鳴が聞こえてきた。
「ジャミルっ!」
アイシャの言葉にジャミルが頷く。
「よし、行くぞ……!」
人質を抱えたままの男は更に声を上げ喚き出す。ライスボウル
早く出て来いの一点張りである。
「は、早くっ、ライスボウルめっ、いい加減にしないとっ!
よし、分った、そっちがその気なら……、本当に博物館を……」
その時……
♪やーるーときめたーら、どこまで~も……、たにんーのめいわ~く
かえり~みず、ひたす~らだいぼうそう~……
「な、なっ、何だ、この声はっ!?」
突如、異様に音程の外れた歌声が……、博物館内にこだました。
変態男は慌て始める……。その隙に他の客は皆とっとと博物館から
脱出する。
「あっ、ああーーっ!ちょっと待って、逃げないでっ!」
「皆さん、私が人質になってるって言うのに!案外冷たいんですね!」
変態男は一瞬、声が弱弱しくなったが……、ヤケクソになり直ぐに又、
持ち直す。
「畜生っ!いいよいいよ、もう絶対にこんな博物館破壊してやるっ!
全てはライスボウル、君の所為だっ!!」
「やれるもんなら……、やってみ?」
揃った足音がコツコツと近づいてくる。そして……、足音は変態男の
前で止まった。
「な、何だっ!お前らはっ、!?う、うっ!?……君達……」
変態男は現れたジャミル達の顔を見て一瞬たじろぐ。何故か
ジャミル達の顔を知っている様であったが。4人はグラサンは
していた物の。
「俺達は……」
「ふざけるんじゃなーいっ!……ガキは家に帰ってママのおっぱいでも
吸ってろ!」
「……4匹の、お子様だよ!」
「畜生っ!……お、お、おおお、大人を舐めるとどういう事になるか、
思い知るんだよっ!どうなっても知らないからなっ!」
変態男がクソヤケで叫んでいる。何だか異様に涙声の様な……、
感じも見受けられた。
「……こんなのにPSI使うのも勿体ねえなあ……」
「折角オイラ達カッコつけてるのに!ねえおじさん、召喚獣とか
バハムートとか召喚してよ!」
いつもなら喚くヘタレが……、今日に限っては強気な態度だった。
「……ダウドバーカ!バカバカバカバーカ!」
「何だよお!バカジャミルっ!」
「そう……、ならこっちも本気で行かせて貰うよ、これ、何だか分る?
ダイナマイトだよ……」
変態男はごそごそと、隠していたダイナマイトを取り出した。
「おい、あれはマジ、モノホンだぞっ!やべえっ!」
「そうだよ、この博物館を破壊するのは本気だからね、
決めていた事だよ、僕だってやるって言ったらやるんだからね!」
変態男が今にもダイナマイトに点火しようとしたその時。
アイシャが素早くPKフリーズαでダイナマイトを凍らせた。
「あなたが一体ライスボウルさんに何の恨みがあるのか
知らないけれど……、他人に迷惑掛けるんじゃないのよっ!
いい大人の癖に!」
「う、うわ!な、なんなんだよう~!お前らはっ!」
「折角バズーカ用意して来たのに……、仕方ない、相手があれじゃ
撃つわけにいかないからこれで我慢しようかな……、よいしょ、
えいっ!」
「……あいた!」
アルベルトがコルク銃で男の頭を狙った。前回のライスボウルの時は
かなり攻撃的だったが、今回はやけに落ち着いていた。
「んじゃ、俺も……」
ジャミルがバットを取り出し、肩に担ぐと、男は途端に
半泣きになってその場に土下座して謝り始めた。
「……ひいい~っ!勘弁してください、勘弁してください、
もうしないよう~!」
「何だよ、もう終わりかよ、思ったよりは……、早かったなあ~……」
「本当だよ、何だったのさあ!」
「さあ、あなたは早く外に逃げて!」
「は、はいっ!」
アイシャに言われて、受付のお姉さんは人質から解放されると
慌てて外に逃げて行った。
ドタドタドタ!
「ん?おっさん……」
けたたましい足音がし、振り返ると、隠れていたライスボウルが
事務所から出てきた。かなり怒り狂っている様子。
「……このテロ犯め!よくもっ!正体は誰だっ!姿を見せろっ!!」
「あっ、ああああ~……」
事が済んだと分った途端、ライスボウルは急に強気な態度になり、
男の覆面を無理矢理剥ぎ取った。……出て来た顔は……。
「あんたは……、スカラビ文化博物館の……」
「……」
「チャップスティック君、……チャップ君じゃないか!一体どうして
こんな事を……!!何を考えているんだっ!!言えよっ!!」
ライスボウルがチャップスティックに掴み掛った。
ジャミル達は慌ててライスボウルを止めようとする。」
「まあまあ、おっさんも落ち着けよ、話を聞いてやれよ……」
「これが落ち着いていられるかっ!……恐竜博物館を爆破しようと
した上に、おまけにこのボクの命まで狙おうとしていたんだぞ!
親友だと思っていたのに!許せないよっ……!!」
「まあ、分る様な気もするけどな……」
「だよおね」
「とにかくっ!チャップスティックさんも!ちゃんと理由を
話してくれないと僕らだって巻き込まれたんですし納得
いきませんよっ!こんな大きな騒動になったんですから!」
ジャミルとダウドの頭を抑え付けてアルベルトが必死でチャップ
スティックに訴えた。……4人が騒動に巻き込まれるのは毎度の
事である。それを見たチャップスティックは仕方がないと言う様に、
静かに頷いた。
「いいよ、話すよ……、僕は飛行機でフォーサイドまで飛んできたんだ、
ライスボウル君に復讐する為にね……」
「きゃあ、復讐ですって……!?」
「おっさん、アンタやっぱ恨まれてんじゃねえか……」
「知らないよっ!だって何も覚えがないよっ!!」
「……正確に言うとね、ライスボウル君、僕は君に嫉妬していたんだ、
君の所だけが……、どんどん発展していってさ、ボクの所は落ちぶれて
行くばかりだよ、この間も、後で凄い電話を掛けるって言ってたから、
最初はワクワクして待ち焦がれていたけれど……、段々イライラして
きてさ、今回の事もそうさ、羨ましかったのさ、君がね、近頃は全然
僕の事なんか相手にもしてくれなくなったし、一人で好景気を
楽しんでさ……」
「何言ってんだい、経営が火の車なのはボクの所だって同じだよ、
客なんか来やしないよ、何勘違いしてるんだい、玉に来る客って
言ったら、……こんなのばっかりじゃないか」
「ん?」
ライスボウルはそう言って、ジャミル達の方を見た……。
「そうだったんだ、君も大変だったんだね、ごめんよ、僕の勘違い
だったみたいだ……、でも、君も苦労してる事が分っただけでも僕は
一安心だ、本当にごめんよ、……許してくれる?」
「うん、わざわざ飛んできてくれて有難う、君に会えて
嬉しかったよ」
「僕もだよ……、ライスボウル君、僕、犯罪を起こし掛けたけど、
それが引き金になって君に会えたんだしね」
……二人の親父は……、手を取り合って互いの顔を見やる。
「……おい、俺ら全然良かねーんだけどっ!」
「……」
結局、今回の騒動は……、行き過ぎた駄目ホ……モ親父達の
嫉妬に狂った盛大なケンカであった。その後、ライスボウルと
チャップスティックは遠く離れても、もっとお互いに色々連絡し
合おうと言う約束をし、チャップスティックもサマーズへ戻って
行った。
それから一夜明けて、……フォーサイドのホテルロビー。
「これからどうするか?此処もそろそろ飽きて来たしなあ~、
いい加減に魔境へ戻って先に進むか?」
「うん、そろそろ遊んでばっかりいるのも、どうもね……」
「いっ!?ちょ、ちょっと待ってよお!オイラまだゲーセン
行ってない、……もっともっと美味しい物も食べたい!
嫌だよおお~!」
「もう、ダウドったら……」
「……おめえも往生際が悪いなあ、またライスボウルが来るぞ!」
「呼んだかい?」
「……うわああああっ!?」
ホテル入口の自動ドアが開いて、ライスボウルが中に入って来た。
「やあ、昨日はどうも!」
「何なんだよ、おっさん……、まだ何か用があんのかよ……」
「うん、実はね、あの後……、実はね、又チャップ君と電話で口論に
なってしまってね、大ゲンカしたんだ」
「……はいい!?」
「近々、……チャップ君のスカラビ博物館にいいい~っ!
ビーナスの蝋人形が展示されるらしいんだっ!な、何で
あいつの所にっ!……絶対に許せないよっ!……なので、
是非又、君達の力を借りたい、サマーズまでひとっ走り飛んで、
博物館を爆破して欲しいんだよっ!」
「アル、いいぞ……、俺が許す」
「うん、じゃあ……」
アルベルトはやれやれと溜息をつくと、スーパーバズーカで
ライスボウルを撃った。……ライスボウルはそのままチャップ
スティックのいるサマーズまで飛んで行ったらしい。
zoku勇者 マザー2編・33