霊能探偵・芥川九郎のXファイル(56)【バーニング大谷編】

第1章 モンジェロの転売ヤー

 霊能探偵・芥川九郎は、中区の事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
牧田「芥川君はモンジェロという薬物を知っているかい?」
芥川「モンジェロ?初めて聞いたけど、若者の間で流行している新手の違法薬物かい?」
牧田「ちょっと違う。違法薬物ではなく、れっきとした医薬品だよ。」
芥川「一体、何の薬なんだい?」
牧田「一言で言えば、痩せ薬みたいなもんかな。美容と健康に良いらしい。特に、美ボディ維持に効果があるんだとか。」
芥川「ふーん。薬局とかで買える薬かい?」
牧田「買えると思う。みんな、ドラッグ杉ちゃんで購入しているらしい。」
芥川「特に、女性たちが買っているんだろう?」
牧田「最近は、男性も美容と健康に気を使っているから、女性だけではないよ。まぁ、特に女性の間で流行っているのは間違いないけどね。」
芥川「女は自分を磨き、男はチンコをしごく・・・まぁ、そういうことだよ。」
牧田「・・・そのモンジェロを組織的に大量購入し、転売している輩がいるらしいんだ。」
芥川「転売ヤーか。転売自体は違法ではないだろう。日本は資本主義経済なんだから、市場における自由な取引は全ての人に保障されている。」

第2章 鎧の秘書・能年君

 牧田は首を振って芥川に反論した。
牧田「原則はそうだけど、モンジェロは医薬品だよ。」
芥川「あぁ、そうか。医薬品の転売は違法だ。と言うより犯罪だね。」
その時、助手の能年(鎧)がコーヒーを運んできた。
芥川「ありがとう。いただきます。」
牧田「ありがとう。いつも悪いね。」
能年は鎧の妖怪である。芥川の助手として、彼の事務所に住み込みで働いている。能年(鎧)は部屋の片隅にある机のイスに座り、ノートに何かを書いている。
牧田「今度は、能年君に何を勉強させているんだい?」
芥川「能年君は僕の助手だ。僕と来訪者の会話をメモさせているんだ。」
牧田「会話のメモ?メモするほどのことは話していないけど・・・」
芥川「能年君の勉強にもなるしね。能年君。ジェロニモンだか何だか知らないけど、とりあえずメモしておいてくれ。」
芥川の指示を聞き、能年(鎧)はコクッと1回、小さく頷いた。
牧田「ジェロニモンじゃないよ。モンジェロ。ちなみに、ジェロニモは『キン肉マン』に登場する、超人に憧れ、キン肉マンたちと共に闘う人間の青年だよ。」
芥川「医薬品の違法転売は、県警の生活環境課が取り締まるんだろう?」
牧田「うん。ネット上の転売ならサイバー犯罪対策課だ。でも、今回は県警内でもめているらしい。どうも、スネークヘッド(蛇道)が関係しているらしい。」

第3章 蛇道(スネークヘッド)

 芥川は腕を組んで考えながら言った。
芥川「スネークヘッドか・・・最近、設立されたばかりの異種能力者団体だね。」
牧田「警察・・・と言うか、公的機関は超能力の存在を公式には認めていないからね。」
芥川「それで京子から依頼が来たのか。」
牧田「うん。とりあえず、スネークヘッドの調査をすることになった。」
京子は愛知県警の刑事で、牧田の元同僚だ。牧田も刑事だったが数年前に退職し、今はフリーランスの身である。
芥川「調査しろと言われても・・・新興の能力者団体だから、僕にもよく分からないよ。」
牧田「代表のバーニング大谷は、栄のドラッグ杉ちゃんにほとんど毎日、出没するらしいよ。」
芥川「あぁ、あのバーニング大谷さんか。話せば分かる人だから、医薬品の転売は犯罪だと、僕から警告してみよう。」
 こうして二人はさっそく、栄のドラッグ杉ちゃんに向かった。店内には、黒いTシャツを着たバーニング大谷がいた。医薬品を物色しているようだ。
芥川「あの人だ。間違いない。Tシャツに蛇道とプリントされている。」
牧田「すごい体格だね。君の鉄パイプでも倒せないんじゃないかい?」
芥川「・・・倒す必要はないよ。話し合いに来たんだ。人間を鉄パイプで攻撃するのは重大な犯罪だよ。」
牧田「・・・そうだね。」

第4章 バーニング大谷の勧誘

 芥川はバーニング大谷に話しかけた。
芥川「大谷さん。お久しぶりです。」
大谷「おぉ!びっくりした。誰かと思ったら芥川君じゃないか。」
芥川「こちらは、僕の友人の牧田君です。」
牧田「はじめまして。よろしくお願いします。」
大谷「はじめまして。よろしくな。ところで、芥川君。あの話、考えてくれたかな?」
芥川「スネークヘッドへの入会の件ですか。入会するだけでいいなら入会しますけど、大した貢献はできませんよ。」
大谷「ありがとう!君が入会すれば千人力だ。魔法学会、魔獣学会、妖怪学会、霊能学会、NCK(日本超能力協会)・・・既存の団体は全部、既得権益やしがらみで機能不全だ。それを改革するために俺たちは、敢えて邪道な闘いを続けていくんだ!!」
牧田「あのー、大谷さん。既存の能力者団体と戦うのはいいんですけど、モンジェロは医薬品で、その転売は違法行為です。」
大谷「えっ!そうなの?知らなかったよ。教えてくれてありがとう。事務局の連中が考えたんだ。活動資金を捻出するために、みんな一生懸命なんだ!その熱い思いだけは分かってやってくれ!!」
芥川「大谷さん!!よく分かります!僕もみんなと共に戦います!!」
芥川はいつの間にか、バーニング大谷の熱い思いに感化されていた。
牧田「とにかく、違法行為や犯罪はやめてください。お願いします。」
大谷「牧田君、ありがとう!君もスネークヘッドに入会するんだ!!今なら年会費無料だよ!」
牧田「・・・・・・」
芥川と牧田はその日、バーニング大谷の熱い勧誘により、スネークヘッドに入会することとなった。その後、牧田はバーニング大谷の能力に仰天することになるのだが・・・それはまた別の話。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(56)【バーニング大谷編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(56)【バーニング大谷編】

「女は自分を磨き、男はチンコをしごく・・・まぁ、そういうことだよ。」 霊能探偵・芥川のもとに持ち込まれた、新興能力者団体・スネークヘッドによる医薬品・モンジェロの違法転売の噂。 その実態を暴くために、芥川と友人・牧田は栄のドラッグストアへ。 圧倒的な体格を誇る代表・バーニング大谷との緊迫の話し合いが始まるかと思いきや、彼が熱く語るのは、既存の団体を改革しようという情熱だった! 犯罪捜査のはずが、いつの間にか年会費無料で入会することに・・・ 軽妙な会話とシュールな世界観がクセになる、探偵(?)コメディ第56弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-01

CC BY
原著作者の表示の条件で、作品の改変や二次創作などの自由な利用を許可します。

CC BY
  1. 第1章 モンジェロの転売ヤー
  2. 第2章 鎧の秘書・能年君
  3. 第3章 蛇道(スネークヘッド)
  4. 第4章 バーニング大谷の勧誘