霊能探偵・芥川九郎のXファイル(55)【召喚魔法の謎編】

第1章 妖怪たちのアルバイト

 霊能探偵・芥川九郎は、自分の事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
牧田「御手洗君のアルバイトは続いているのかい?」
芥川「うん。清掃の仕事は楽しいみたいだよ。さすがアライグマの妖怪だ。」
御手洗は化け猫ならぬ、化けアライグマである。先日、猪高緑地で芥川と牧田によって捕獲・保護されたという経緯がある。
牧田「鬼塚君もアルバイトを始めたんだろう?」
芥川「うん。鬼塚君は警備員として働いている。みんな妖怪のくせに案外、真面目に仕事をしているよ。」
鬼塚は恐ろしい形相の悪鬼である。もとは魔術師・守屋愛の手下だったが、今は芥川の下で働いている。守屋は魔法学会から危険視され、追放された魔術師だ。芥川と彼女の間にはいろいろ因縁があるのだが、現在はビジネスパートナーとしてお互いに利用し合っている。
牧田「でも、妖怪が働いてお金を稼いで、何に使うんだろう?まさか君が全部、上納金として巻き上げているわけではないだろうね?」
芥川「僕はそんなことしないよ。鬼塚君は最近、どっきりピンキーのハンバーグにハマっているみたいだよ。」
牧田「鬼塚君は肉が好きだからね。」
芥川「御手洗君は推し活にハマっている。」
牧田「推し活って・・・彼は一体、何を推しているんだい?」
芥川「名古屋のアイドルグループ・あんこ娘だよ。」
牧田「へぇー。御手洗君はあんこ娘が好きなのか。」

第2章 柊博士の容態

 二人がそんな話をしていると、助手の能年(鎧)がコーヒーを運んできた。
芥川「ありがとう。能年君。」
牧田「いただきます。いつも悪いね。」
能年は鎧の妖怪で、芥川の事務所に住み込みで働いている。彼(鎧)は部屋の片隅にある机のイスに座り、本を読んでいる。
牧田「能年君は今、どんな本を読んでいるんだい?」
能年(鎧)はしおりを挟んで本を閉じ、その本を牧田に手渡した。
牧田「・・・『妖怪大百科』か。おもしろそうな本だね。」
牧田はそう言いながら、能年(鎧)に本を返した。彼(鎧)はコクッと1回、小さく頷きながら本を受け取った。
芥川「子ども向けの本だけど、なかなかの良書だと思うよ。妖怪の勉強になるしね。」
 芥川と牧田は淹れたてのコーヒーを一口すすってから、会話を再開した。
牧田「東京に行ってきたんだって?」
芥川「うん。入院中の柊博士のお見舞いに行ってきた。牧田君は今日、その話を聞きに来たんだったね。」
牧田「容態はどうなんだい?」
芥川「小康状態だそうだよ。」
牧田「榊原博士には会えたのかな?」
芥川「さぁ。聞いたけど教えてくれなかった。」
榊原は研究のために悪魔と契約した魔獣博士である。柊は高名な魔法博士で、榊原の旧友だ。柊は榊原との再会を果たすために、霊力で形成した仮体で魔界トンネルを抜け、魔界を旅してきたという経緯がある。

第3章 芥川の推理

 牧田はコーヒーを一口飲んでから言った。
牧田「芥川君は目上の年長者にも容赦ないから、嫌われてしまったのかな?」
芥川もコーヒーを一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
芥川「柊博士はそんな人ではないよ。多分、僕の推測が真相に迫っていたから、警戒されたんだろう。」
牧田「推測って、何の話をしたんだい?」
芥川「召喚魔法の仕組みについてだよ。」
牧田「先日、僕にも説明してくれたよね。召喚魔法は、魔法学会によるサブスクリプションだって。学会に所属する魔術師は、魔法ポイントと引き換えに召喚魔法などの魔法を使用できるというシステムなんだよね。」
芥川「魔法学会にそんな力があるのはなぜか・・・それが謎なんだよ。」
牧田「芥川君はその謎について、自分の仮説を柊博士に話したのか。今度は、どんな仮説を組み立てたんだい?」
芥川「魔法学会の重鎮である柊博士は、悪魔と契約した榊原博士と旧知の仲だ。魔法学会は過去に、榊原博士と何らかの裏契約を締結したのではないだろうか?」
牧田「・・・なるほど。おもしろい仮説だね。魔法学会は絶対に認めないだろうけど。」
芥川「そう考えれば、魔法学会を追放された守屋先生がなぜ、召喚魔法を使用できるのかが説明できる。」
牧田「どういうことだい?」
芥川「守屋先生はきっと、別ルートで榊原博士と裏契約を締結したんだろう。守屋先生は若く見えるけど、僕らの倍は生きている長老格なんだ。榊原博士と接点があったって、何の不思議もない。」
牧田「なるほどなぁ・・・」

第4章 あんこ娘のライブ

 芥川は残りのコーヒーを飲み干してから言った。
芥川「この話はもうやめよう。魔法学会に限らないけど、世の中のタブーに触れるとろくなことはない。」
牧田「魔法学会のタブーか。」
芥川「能年君。そろそろ時間だろう。僕たちのことはいいから、行ってきなよ。」
芥川にそう言われた能年(鎧)はコクッと1回、大きく頷いてから立ち上がった。
牧田「能年君はどこかに出かける予定があるのかい?」
芥川「うん。御手洗君に誘われて、あんこ娘も出る音楽フェスに参加するんだってさ。」
牧田「へぇー。あんこ娘のファンがここにもいたのか。」
能年(鎧)はいそいそと、お出かけの準備をしている。
牧田「僕も一緒に行こうかな。」
芥川「ハハハッ。あんこ娘のファンがもう一人いたね。牧田君もあんこ娘が好きだからね。」
牧田「芥川君だって嫌いじゃないだろう?一緒に行こうよ。」
芥川「そうだね。会場は久屋大通公園だから、散歩がてら歩いていこうか。」
芥川はそう言ってイスから立ち上がり、外出の準備を始めた。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(55)【召喚魔法の謎編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(55)【召喚魔法の謎編】

「この話はもうやめよう。魔法学会に限らないけど、世の中のタブーに触れるとろくなことはない。」 名古屋の霊能探偵・芥川は、友人・牧田との会話で召喚魔法の裏にある魔法学会のタブーに言及する。 シリアスな謎解きかと思いきや、話題は妖怪たちのアルバイトや推し活へ! 地元のアイドルグループ・あんこ娘のライブに参加するため、鎧の妖怪・能年君もいそいそと準備を始め・・・ サクッと読めてクスッと笑える、相変わらずお気楽なオカルトコメディ第55弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-01

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  1. 第1章 妖怪たちのアルバイト
  2. 第2章 柊博士の容態
  3. 第3章 芥川の推理
  4. 第4章 あんこ娘のライブ