霊能探偵・芥川九郎のXファイル(54)【猪高緑地の化けアライグマ編】
第1章 名東区の化け猫騒動
霊能探偵・芥川九郎は、中区の事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
牧田「名東区で化け猫が出たらしいよ。」
芥川「京子からの情報か。名東区もそれなりに広いからね。名東区のどこで出たんだい?まさか、住宅街で子どもが食い殺されたわけではないだろう。」
京子は愛知県警の刑事である。牧田は、京子の元同僚の元刑事だが数年前に退職し、今はフリーランスとして活動している。
牧田「ハハハッ。そんなわけないだろ。そんな凄惨な事件なら、とっくの昔に全国ニュースで報道されているよ。」
芥川「ハハハッ。それもそうだ。」
二人はそんな冗談で笑った後に、コーヒーを一口飲んでから話を続けた。
牧田「現場は、深夜の猪高緑地だよ。」
芥川「なるほど。猪高緑地は住宅街の近くにあるけど、森の中には街灯がほとんどない。夜になれば真っ暗だろう。どこぞの若者かカップルが夜中に、大型の獣にでも遭遇してビックリしたんじゃないかな?」
牧田「それが、ただの獣ではないらしい。目撃者の話によると、江戸時代の物語に出てくるような化け猫らしいよ。」
芥川「今回は化け猫退治か。腕が鳴るなぁ。」
牧田「君のことだから、どうせまた鉄パイプを振り回すつもりなんだろう?」
芥川「さすが牧田君だ。読心術を使えるのかい?」
牧田「・・・読心術を使うまでもないよ。」
第2章 魔法のポイント(MP)
牧田はコーヒーを一口飲んでから、改めて芥川に質問した。
牧田「芥川君は式神を使役できるし、霊丸も撃てる。召喚魔法だって使える。なのに、なんでいつも鉄パイプで解決しようとするんだい?」
芥川「式神だってロボットじゃないから、それなりに気を使う必要がある。霊丸は霊力を消費するから、心身にとても負担がかかる。最近、僕は健康に気を使っているからね。鉄パイプを振り回して解決できるなら、その方がいいんだよ。」
牧田「召喚魔法もそうなのかい?」
芥川「召喚魔法は特に、ポイントを消費するからね。」
牧田「ポイントって、何のことだい?」
芥川「君は、呪文を唱えるだけで、魔界から召喚された魔物たち無償で、タダ働きしてくれると思っているのかい?」
牧田「えっ!違うのかい?」
芥川「そんな都合のいい話はないよ。実は、魔法学会によるサブスクリプションみたいなもんなんだ。学会に貢献すればポイントが加算される。逆に、召喚魔法などを使用すると、貯めたポイントから引かれるんだ。」
牧田「そんな仕組みだったのか。」
芥川は冷めたコーヒーを飲み干してから話を続けた。
芥川「守屋先生が魔法学会から追放された理由は、そういうルールを無視して、やりたい放題やっていたからだ。」
牧田「ルールを無視って・・・そんなことできるのかい?」
芥川「あの人は学会を無視し、自分で考案した闇の方法でポイントを管理しているらしい。詳しくは知らないけどね。」
守屋愛は稀代の魔術師である。芥川は彼女との間にいろいろ因縁があるのだが、今はビジネスパートナーとしてお互いに利用し合っている。
芥川「この話はもうやめよう。守屋先生の闇の方法、僕は本当に知らないんだ。」
牧田「そうだね。今回はただの化け猫だから、強力な魔法は必要ないと思うよ。」
第3章 深夜の猪高緑地
こうして二人は、深夜の猪高緑地をパトロールすることになった。
芥川「本当に真っ暗だね。いろいろ準備をしてきてよかったよ。」
牧田「うん。大きめの強力な懐中電灯を持ってきて正解だったね。」
二人は懐中電灯で足元を照らしながら、猪高緑地を巡回していた。
芥川「妖気を感じるね。そんに広大な緑地ではないから、妖気を探知しながら進めば簡単に見つかるだろう。」
牧田「本当かい?」
芥川が先導し、牧田はその後に続いた。しばらくすると芥川は立ち止まり、牧田に向かって小声で言った。
芥川「あそこに妖怪がいるよ。見えるかい?」
牧田「確かに何かいるね。」
芥川は静かに呪文を唱えた。
芥川「念のために、アレが逃げられないように結界を張った。」
牧田「いよいよ化け猫とご対面か・・・」
二人はそろそろと妖怪に近付いた。妖怪は二人の接近に気付いて逃げ出したが、結界に阻まれてしまった。妖怪は観念して言った。
妖怪「結界か・・・どこの術師か知らないが助けてくれ。私は人間に危害を加えるつもりはない。」
牧田「芥川君。善い妖怪かもしれないよ。無闇な殺生はやめよう。」
芥川「・・・お前は何の妖怪だ?」
牧田「猫かな?犬・・・狸にも見えるけど。」
妖怪「猫ですニャア。」
第4章 化けアライグマの改心?
芥川は少し沈黙した後に、いきなり怒り出した。
芥川「・・・嘘をつけ!お前はアライグマだ。かわいこぶってんじゃねーぞ!!しっぽを見れば分かる。嘘つきの化けアライグマめ!ブッ殺してやる!!」
芥川は、右手に握った鉄パイプを振り上げ、化けアライグマを始末しようとした。
化けアライグマ「ヒェーーー!!誰か助けて!人殺しっ!!」
化けアライグマは両手で頭を守りながら、結界内を逃げ惑った。牧田は芥川を羽交い締めで制止した。
牧田「芥川君!落ち着いてくれ!!殺すことはないだろう!」
少し落ち着きを取り戻した芥川は、化けアライグマに向かって言った。
芥川「人間に危害を加えないなら、見逃してやるか。ところでお前、何かおもしろい特技はないのか?」
化けアライグマ「・・・洗い物が得意ですが。」
芥川「人間の姿に化けて、厨房の皿洗いや清掃のアルバイトができそうだな。よし!今日からお前は、御手洗熊五郎だ。心を入れ替え、精進するがよいぞっ!!」
御手洗「ハハァー!芥川様のために、一生懸命に働きます!!」
牧田「・・・・・・」
こうして芥川は鉄パイプを振り回すだけで、猪高緑地の化け猫・・・ではなく化けアライグマ騒動を解決した。御手洗はその後、名古屋市内で清掃会社のアルバイトとして働くことになるのだが・・・それはまた別の話。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(54)【猪高緑地の化けアライグマ編】