やさしい侵略者

オレは、戦い疲れて、ちょいと道端の切株に腰を下ろした。
すると、割と低く、近い空中に、突然強い光が出現した。
「何だ・・・空電か?それとも・・・」
オレは考える前に、銃を構えていた。瞬時に光が収まると同時に、目の前には10~12歳ぐらいの少女が立っていた・・・
が、そのいで立ちは、何とも奇妙なモノだった。というか、オレの星にもある、女子児童向けのヒロインそのものの姿だった。
 少女は、周囲に金粉の様な光のくずを撒き散らしながら、華奢な・・・いや、小さな腕を上げると、手にした金ぴかの杖で、オレを指(さ)してのたまった。
「夜の世界のものよ、むだな抵抗はやめて、降参なさい!」

 オレは静かに両手を上げた。
「・・・ま、そりゃいいけど」
少女は、一瞬ぽかんとし、そのまま固まった。
仕方ないのでオレが、
「で、オレをどうするんだい?」
と、訪ねると、彼女は一所懸命考えながら、
「・・・そ、それじゃ、・・・なかまの居場所とかをおしえなさい!」
「そりゃ、あの中に、うじゃうじゃ居るさ・・・」
オレは空を指さして答えた。そこには、オレの・・・いや、オレ達の母艦が、超低空に滞空する姿があった。
 彼女は、またも困って、悔しそうな顔をしたが、やがて悔しそうなまま言い出した。
「あんたは、なぜ、わたしを攻撃しないのよ!」
オレはちょっと困って答えた。
「君ぐらいの、小さな子供は、殺すなというルールがあるからな。」
彼女は理解できない様子で、
「・・・そんなルールがあるの?」
オレはちょっと決まりが悪かったが、正直に答えた。
「ああ、一応はな。でも破られることも多い。」と言って・・・そこは小高い丘だったのだが・・・隣の町を指さして言った。
「あそこは、何も残さず吹き飛んでるだろ?母艦からの、砲撃一発でやられた。
町の中には、小さな子供も、女の人も、普通に暮らしていただろう。」
 ・・・彼女は目に涙をためて言った。
「どうして、そんなことをするの?」
オレは、分かりやすく説明するために、こう切り出した。
「お爺ちゃんや、お婆ちゃんに、聞いたことがあるだろう?君たちの国は、昔、戦争してた・・・って。」
彼女は、またしてもぽかんとした顔をした。
「ううん、そんなの、聞いたことない。」

 後からこの星の歴史をよく調べたら、それはこの惑星の周期で、80~90年ほども前の事だった。
少女にとっては、お爺ちゃんどころか、”ご先祖様”の部類に入る年代だろう。
だが辛うじて少女は、「戦争って何?」とは聞き返さなかったので、話を続けた。
「オレ達は、地球と戦争してるんだ。」
 ・・・それで彼女は、ようやく事情を察したらしい。
オレにこう提案して来た。
「じゃあ、あんたはわたしといっしょに来て、かくれて暮らせばいいのよ。
”敵”からは、わたしが守ってあげるから。」
 彼女にはまだ、オレに対して、友軍を指して”敵”と呼ぶ意味が、勿論分かっていない。それは仕方がない。
だからオレは、その辺は置いといて、こう返した。
「それは、誰でも言うんだよ。『おれたちと同じにすれば、戦争はおわるのに』・・・ってな。」
 段々、分かって来たらしい彼女は、何も言えなくなった。
それで、オレはこう提案した。
「オレは君を殺すことができない。君も同じことは、したくない様だ。
だからお互い、何もせず、合わなかった事にして、別れるのが良いんじゃないか?」
 少女は暫く考えて、単純明快に答えた。
「うん、そうだね。」

 そう言って彼女は、後ろを向くと、すたすた(歩いて)去って行った。
が、途中で振り返って、こう言った。
「でも、覚悟しときなさい。この次あった時は、新しい必殺技で、あんたを倒してやるんだから!」

やさしい侵略者

やさしい侵略者

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-29

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