292 散文詩集『失われた記憶を求めて』

292 散文詩集『失われた記憶を求めて』

1愛で満たして

月が満ちる夜
愛で満たして
この身も音も命さえ
愛で満たしてくださいな
そしたらクレマンチーヌが笑う
妖艶な唇、ワインに溶ける
月夜に二人は愛を誓う
夜道で子猫が鳴きながら

2夢

君はどこで目覚めたかい? それを知ることは逆説的に不可能だとしても、きっと輪廻の中で探しているのだろうね。そんな郷愁も、憂いの持つニヒリズムに時の逆光を重ねて、相対性理論の解き放つ索に囚われる凡愚の理を表す。
死して解脱の真理なら、永遠流転の世界なら、私は愛を求めることなどしなかったのに。水面に映る知らない顔はあなたの面影を残して、クリムトの白のように儚い音色は、きっともうここには残っていないだろうに。だが、文学の最高天に咲く花は聖仙の定めた掟とその矛盾律に悖る含蓄の中でこそ咲き誇る。努努、そのことを忘れてくれるな。
ありがとうという言葉は素晴らしいかな。だがな、愛していると伝える面映ゆさを思い出したら、きっと恥ずかしさも忘れてしまえ。
まだ生まれてくる前に願っていたことは、世界平和とか真理の探求じゃなくて、より楽しい人生だろうか。それなら持ち得る全てで以って楽しむが良い。涅槃図もあの日には帰らなかった!
嗚呼、振り咲き誇る銀世界!
嗚呼、ようやく叶ったよ、仰げば尊し!
さぁ、物語は楽園へと移行する!
エデンの園へ、薔薇の道を辿り着く。確率の丘を越えて、無限の今の中で、可能性の到達点へ。それでもなお違わぬ造化らは、有限の時の扉を開け放つ。そこに差し込む斜陽の煌めきは、生命流転の一時の奇跡にも似る。
ライオンが去って、仔羊の季節になる。季節は巡りて、安穏を謳歌せよ。それが永遠の幸福になるのだろうから。

3朝日を浴びて

朝日の中で散歩する
朗らかな春はもう終わる
カロリーヌは満面の笑みで
桜が舞うかのように咲う
詩人の恋を歌にして
詩人の血を絵にして
世界が終わってしまうほど
切なく甘い愛とキスした
ヘレーネ、君は光そのもの

4七夕の夜に

あの夜、全てが終わりと始まりを迎えた7日目の夜にわたしたちは1つになった。わたしはあの時に得た快楽に勝る福楽を享受したことはない。
だが、それさえ夢と散る儚き世の常は、久遠の昔に涅槃真理に根ざす心音を解き放つことを雨に溶かす。輪廻の中で探してた答え、みつかったかい?
永遠の中でわたしたちは、あなたという答えを探していたけれど、きっとそれは到達不可能点としての可能性の海に溺れるが如く、ニブルヘイムへと遊泳する乙女にも比する翼らは、金色に輝かん。
病める時も健やかなる時も。たとえ死が二人を運命から断絶するとても。魂の繋がりは体よりも強く、脆いのだから。だから努努忘れるでないぞ。
あれがデネブアルタイルベガ。夏の大三角。織姫と彦星は天の川の……。この記憶は夏の記憶。ある晩夏へと続く夏の記憶。
年に一度も会えるんだね。わたしたちは世界の始まりと終わりにしか会えないのにね。もうね、十分頑張ったから。神は「ご苦労さま」と告げたから。だから、帰ろうよ、還ろうよ。
似もせずに、咲く薔薇を言うのだ。
七夕の夜に見た夢は、世界の終わりと始まりの狭間で泣いたあの子のようで、目覚めた頃には忘れても、きっと魂は忘れない。

5終末に取り残されて

主のいない部屋に取り残されて
どうしようも無い孤独を知った
世界の全ての部屋が同じなら
何も苦しむことはないのに
アリシア姉さん、こんにちは
時がまた経てば新しい主が来て
過ぎた記憶をこの温もりと共に
永遠のような母胎に帰り
菩提樹の下で悟りを開く
涅槃寂静は明日でいい
今日はしばらく休みたい

6神詩

命の脈々と流れる様を、菩提樹の下で見るは永遠の如き、禍福の終わり。詩はもう十分記された。それでもなお求める己のレゾンデートルならば、天上楽園の乙女はきっと貴方との永遠の愛を望んだことでしょう。
輪廻の狭間で私たちは愛をつむぎ、罪を犯し、赤い糸や黒い糸で作る布は、糾える禍福。そんな確率に収束する仕組みにも、エデンの園配置を求めて病まないのだな。
涙の理由を知ったから、優しくなれる気がしたのは、あの朝泣いていた自分が今も忘れられないから。なら、あの時に全て終わっていたのに。この世界は美しく、楽しいもので満ちていた。
死ぬことが怖くはなかった。だが、いずれ来る定めを嘆いても何も変わらない。なら、世界の終焉を留めて、あの冬の日の朝に帰るために祈ろうか。これはそんなある一人の神に贈る詩。神詩は、世界に伝播していき、希望の光=ヘレーネになる。

7この病室から連れ出して

病室で晴れ渡る空を見上げて
永遠の記憶を思い出してた
美しく、儚く、脆い
あなたは窓辺に咲く花のよう
世界に一つだけの私のお花
いつか私が連れ出そう

8軽くなれるなら

少しだけ私が私でいられるように、自分自身を癒して認めてあげよう。ニブルヘイムに咲く花は妖艶。その色香につられて導かれる蜜蜂の作る蜂蜜酒はバーで飲むには贅沢過ぎた。
大丈夫、大丈夫。淡い赤の血、流れ来て。泉の水を濁らせる。その泉で沐浴する賢者は花唄を謳う。上等な旋律に、己の運命を乗せて吟遊詩人のように水中を踊る。飛沫は彼女の実った身体を隠し、ダ・ヴィンチはその刹那を絵に残した。
天上楽園へ旅立つ日。私も軽くなれるなら、もっと悔いは無いから、自己愛抱いて前へとすすめ。

9酔生夢死

こんな夜くらいは酒を飲もう
下戸のあんたも酒を飲もう
ワルプルギスの夜くらい
聖なる夜さえ酒を飲もう
酔って酔って酔いしれて
天上楽園の乙女に向かって
愛の詩を紡ぐ
波止場に転がるビール瓶
バーでカチンと鳴るグラス
空っぽになればまた注ぐ
人生も同じ
あなたも同じ

10 もし死ぬのなら

もし死ぬのなら阿寒の雪を見てみたい
もし死ぬのなら楽園の花を見てみたい
もし死ぬのなら時の流れを止めてみたい
もし死ぬのなら世界を平和にしたかった

失われた時を求めて酔った夢に生きてみた。その末に至る永遠の幸福に打ち震えて。まだ覚えていますか? まだ僕は死んでいない、死んでなんか居ない!

水門は開く。その先に待つきみを、永遠の君を、楽園の乙女を。それがきっと……きっと。命の始まりと終わり。その狭間で立って、凪いだ渚に映る色。永劫の記憶、ぼくときみの記憶。

人は死ぬ時思い出す。目覚める度に思い出す。ある日永遠の眠りから、全知全能の眠りから目覚めると、そこは楽園で、8人の天上楽園の乙女がこちらを見ていた。美しき麗人よ。だが、その中に君はいない。
そうか、君は永遠の自己愛。神なる孤独。それらに内包される自己同一性なのか。ならばこの愛もこの闇も、光を与える翼となろう、似もせずに。さしずめ、咲く造花にこそ水をあげる。

11トーラスの森

遠く昔、光が疾しさを携えていた頃、記憶は海に溶け込んでいて、まだ言ノ葉として、意識の種子として、飛沫となることはなかった。久遠元初から幾星霜ののち、その意識は水滴となってイデアの海から誕生する。それこそ生命の開始であった。
世界の欠落、欠如としてのアートマンは己をその鏡像の境界面の軛に囚われる愚かさを捨てきれず、いずれブラフマンに帰する運命を甘んじて受け入れる。だが、その涅槃寂静も、無余涅槃になるとしても、我らはその先へと向かうべきではあるまいか、と遠き賢者が語った。
福楽には二つ。その意味を知る頃には人は人生の夢を諦めてしまうのだろう。死の定めが来訪する日に人は現実に立ち返るのなら、さしずめその時こそ解脱の日となるかもしれない。神の理性へと向かうは真理探求者らだ。だが、彼らは神でさえ知らない唯一の謎、『神のレゾンデートル』を求めることを忘れてしまっている。
本来のことを語れば我らは神の意志の元、神のために生きることはなかったか。わたしたちは無知蒙昧にも、己や衆生の幸福だけを考えて、上位存在の幸せは祈らない。それは怠慢ではなかろうか。
ソフィアは、汝らを永遠の無限性、三千世界のトーラスの森から導く祈りの力である。一切皆苦、一切皆空、色即是空、空即是色、灰身滅智、無住処涅槃。嗚呼、我らは歓喜を味わうために生まれたのだ。いいや、知るべきものは愛なのかもな。それ故の利他。だが為の知性。
トーラスと内空の輪郭に自我が投影されるなら、世界は虚空に映し出された虚像だ。だとしても、人生がただの歩く影法師だとしても、その影の主人を思って我らは考える葦になるべきなのだ。
遠き記憶、ここより先は、まだ。
さよならの向こうで待ってて、彼岸には、まだ。
まだ、まだ、まだ、だから……。

12この輪から去ろうとて

望まぬ鳥籠から比翼の鳥が飛んでいく。私はまだ死んでいないよ。ここにいる。助けてよ。今の僕には祈る力もないけれど。その背負った宿命に、夜桜は散り散りに舞う。その光景を網膜に焼きつけながら、このひと時を心失くしてしまうほどに選べない季節に捧げる。だがな、清廉な雨よ。心の雲間予報が当たるって言ったとして、誰が信じる?
この散文詩の行く末に、お酒を一杯飲みましょう。ワインを飲んで、手を取りあって、幸せならば、手をたたこう。
ニヒリズムの音を奏でよう。深紅の痣に木蓮の雪。世界の真ん中で罪を背負った赤子の泣き声。暗すは夜空、晴れるは曙光。この蟠りをば、解き放て。この輪から去る鳥よ。

13始まりと終わり

永遠の時があるとしたら、それは世界の始まりと終わり。永遠も半ばを過ぎる頃、きっと楽園で二人は出逢える。そんな期待を胸に抱いては凍える冬の日の空の下で、私は生きる歓びに打ちひしがれていた。嗚呼、きっとこの日のために生まれてきたのだから。だから、もう病むんだ。この身も、音も、命さえ。この願いも祈りも、いつかは愛に包まれるなら、私は夢の中でも目覚めることを求めやしない。

晴れたなら、いっそ君をこの晴天に呼んで、青天の霹靂にも贖う罪を背負ったルサンチマンを救うべく、この筆を運ぶ。その因果の為せる記憶の道理さえも、確と送り届けるのなら、見せる色香は永遠を内在するのだろうか。

私たちは歴史の中で、孤独に死んでいく。それを認めては、諦めるのも、抗うのも自由だけれど。私たちはその時の逆流の中で何を成し、何を求めて、何を愛するのだろうか。光もない闇の中で、光を、愛を与える光であろうとするだろうか。

これは終末ノート。永遠の終わり、終末に贈る、葬送の詩。

14闇の中の光

かつてそこは闇だった
いいえ、ひとつの光だった
眩しすぎて眩んでいただけ
私は私の光が見えない
ここはどこなの?
私は誰?
海辺のマリー
花園のクララ
何にでもなれる可能性
それが私と気づいた時には
もう原初の光は遠退いて
私は私の光を噛み締め
遠い故郷を想っては泣く
闇の中の光になれた
私はきっともう大人

15生と死

死とハデスの狭間で
己の全能に慄く少年は
全知の乙女に恋していた
華やかなるかなアナスタシア
君は記憶の中で眠ります
楽園の花に包まれて
永遠の中で眠ります

少年は死の宣告を受けてなお
その娘を求めました
春が来て、花が咲く季節
少年は再会を願い
その身を海底に投げたのでした

嗚呼、なんと彼は生きていた!
彼は真に生きていた!
彼は愛に生きていた!
穏やかな季節にやっと
神は初めて眠りに落ちる

16小さな花

真理を纏った空の花
都はキャラバンで賑わう
フィヨルドの不凍港は相も変わらず
それでも花は健気に咲いた

真理を求めた老夫婦
真理を見つけた賢者が一人
彼らは今際に語り合う
結局何が正解なんだ
愛と呼べば問題はない

花嫁姿のルーシーは凪ぐ
穏やかな笑みでブーケトス
愛が紡がれ渡されて
いつしか世界は愛で満つ

17言葉と宇宙

アートマンが震えてる
ブラフマンと共鳴してる
宇宙の虚空に溶け込むみたいに
イデアの海に溶け込むみたいに

日々の中で探し求めてた
真理や神や祈りの証
イルマとアメリア
二人はまるで古の
菩提樹そして沙羅双樹
祈り組む手に出来たあかぎれ
四年に一度の祭りの日にて

言葉は神が作ったか
劫初に、既にあったのか
営みの中で人が育む
いずれにせよと、詩人は語る

18遺伝子と罪

連綿と紡がれた生命の記憶
螺旋と円環、遺伝子と罪
終末のEveに犯される愛は
アダムとイブに繋がる祈り

輪廻の中で藻掻く葦らは
考えもせず生きては死んで
最後の裁きに眠らずにいて
リリスが望んだ賢い子
夢から目覚めて泣いた朝

蜩の声が晩夏を告げる
きっと私はもう時期死ぬと
解った時に使命は終わる
悟った時に生命も終わる

19さよなら、全ての

光で満ちていた頃の残滓は、きっと、もうお別れをしてしまったことでしょう。永遠の鎖から解き放れるなら、グスターヴはさぞかし笑う。

命は螺旋の中で色づく。
季節は死の香りを運ぶ。
特別でなくてもいい、幸せでなくてもいい。

だが、私はずっと求めていたい。

月が浮かぶ夜の静けさ。
そこに意味を求めて歌う。

20アリア

天に轟く悲痛なアリア
生命の終始を結ぶ詩
G線上の記憶と響き
私は白いドレスを纏う

21球遠の詩

生きとし生ける造化らよ
造花に水をあげる日に
産まれた赤子よ泣かないで
私もきっと泣かないからね
泣くのはきっと嬉しいからね

全ての御霊、テーゼへ還る
ミューラー婦人が集めた宝石
海辺に咲いたリコリスの色
門が今開く、水門の先へ
さぁ、この望まぬ球から
遠くへ行こう、遠くへ行こう

22泡沫

鳩ぽっぽ!
泡に映る君の顔
嘘をついたの
君のため
身体は正直
いつだって
薔薇石英の数珠が解け
千年の眠りに就いたとさ

泡沫、泡沫、エアロジーヌ
汝が唇奪った夕方
遠くの沖で海猫が鳴く
刹那が泡に乱反射して

23呼ばれることのない名前たち

レヴィ=ストロースは垣間見た。名を呼ぶことを恐れるモノらを。暴力を外部から持ち込んだと、彼は告げたが、ジャック・デリダは異を唱える。名付けこそが暴力と。内部にあった潜在的な、圧倒的な暴力は、我らの社会に根ざしてる。ただ、彼は一つの暴力を暴いただけで、本質はいつもそこにある。本質は観測の前にも後にも先立つ。なんと、不思議なことに!
言葉の起源に思いを馳せれば、反復可能性の真理に至る。幸せの起源を辿れば、セロトニン、ドーパミン、オキシトシン、βエンドロフィンの幸福物質に起因する。癒し、安定、興奮、鎮静。
現象世界に現れる、長期的自己実現の類は、だが、やはりこれらの物質に行き着く。ならば、私たちが求めるべきなのは幸福ではないのではないか?
真理こそ、賢者となって求めるべきだ。否、知識という翼で天に至れたとしても、私たちは繋ぎ合う手を選んだ種族。もしそうなのだとしたら、終わり来るまで、フィニスの刻まで、愛を紡ぐ愚者であろう。
私たちの名前は天のノートに記される。幸せの意味も、死ぬ訳も、本当の名前も、宇宙の劫初も知らないけれど。神様がいるのなら、彼はきっと「私を求めて敬う前に、愛し合いなさい」と言うだろう。例え、この世界の構造に暴力が内包されていたとしても……。

24幽玄の彼方へ

この言葉らよ、バラよ、咲け。凛として咲くはこの花、コノハナサクヤ。姫はラインの畔に住まう。エーデルワイスの響きあり。オールトの雲のその彼方。光も闇も溶けていく。幽玄の奥へ、深淵へ。その双眸にて眼福せしめよ。
記憶の扉を開けてから、タイムマシンは祈りだと。過去も未来も変えられる。タイムマシンは脳だったのだ。信仰の力、祈りの力。我らをソフィアが導くのだ。雷鳴は遠くに消えて、カノンの旋律で踊ろうか。
威風堂々、金木犀。
石楠花、アルル。
伽藍堂な宇宙は泣いた。孤独の神がサイを振る。世界はランダム、出鱈目の苑。楽園世界に住まう乙女よ。今宵は宛ら万魔殿。パンデモニウムに祝したい。ご懐妊おめでとうございます、ミセスたち。誕生日はもう過ぎたけど。

25神の隣で愛されたくて

リコリス、リコリス、フリージア
油凪に夕日が映る
雪が降ったら時が溶け
水夫の船が門を行く

凪いだ渚に、星が降る
華は可憐な色香を運ぶ
水は太古より罪穢れ
禊ぎ祓いて有為転変

渚を歩く子どもの顔が
笑っているようにみえたから
最後のお願い聞いてくれ
神を幸せにしたかった
神の隣で愛したい
神の隣で愛されたくて

26渚、水

水面に映る知らない顔が
笑っていたように見えたんだ
遠く、遠く、鳥が飛んでいる
夕刻、黎明期の如き新世界
泡沫のメロディー
エアロジーヌは笑わない
あなたを想っては裏切られる
期待なんてしなければ楽だったのに

渚を行く二人の足跡
誰もいない星の上で
貝殻は私の耳で
君のメッセージ
届く信号、受け取る装置
静かな海で私は眠る

27最後のお願い

最後のお願い聞いてくれ
僕のことを忘れないでよね
最後のお願い聞いてくれ
僕のいない朝に泣いてよね
最後のお願い聞いてくれ
最後のお願い聞いてくれ

永遠みたいに咲いた花
終末みたいに枯れる花
記憶は水門の先を行き
遠く、ヴィスコンティの園には
ニヒリストらがルサンチマンらと踊ってる

最後のお願い聞いてくれ
もう十分に生きたから
最後のお願い聞いてくれ
もう十分に幸せだから
だからこれ以上は望まない
それでもやはり別れは辛い
この喪失を胸に抱いて
せめて明日朝泣いてくれ

28円環と螺旋

12の理、13の死
ラカン・フリーズはあの世、真理
ラスノートは最後の言葉、音律、香り
神のレゾンデートル探してた

7日目に世界創造、終末Eve
8日目に神、涅槃
9日目に神殺し

形象学はイメージを創り出す力
悟りは「さ」とり
渚から凪へ、陸と海の境目が失せる
涅槃寂静、風がやむ、ビッグバンの前の静けさ
波は命、飛沫が魂
そんな僕らはどこへ行く?

エデンの園配置はゼロの
先へと向かう諸行の流れ
虚空は色即是空と空即是色

磔は針、AIは愛
語りえないこと、言語ゲーム
論理の飛躍、CP対称性の乱れ
ゼロ×∞=?
陰と陽で生まれる子ども
123で始まる世界
二人目を求めた神の世界
そんな僕らは愛を求める

29福楽の神はサイを振る

生きているだけで幸せと、生存本能が告げる日々。死と隣り合わせの日々は、逆説的にも幸福であった。アニミズム、循環、自己愛、家族愛、友愛。
もし真理があるとしたら束縛される定め。ないものとすれば幸せでいられる。無執着、悟りの境地。ならば、果たして長期的な自己実現と、刹那の福楽とどっちが良いか。幸福の尺度は可変か不変か。恐らく人それぞれだ。変わらない過去、だが、解釈は変わる。コロコロ変わる。バイアスを通して、認識を通して。
思想は好奇心の表れであり、人生の通過点である。遺伝子と経験で人は決まる。だが、アイデンティティの崩壊は苦痛を引き起こす。
思考するのは苦しいか?
信仰が解体されるのは痛いか?
真理を見つけたとして、既に偽神を盲信している凡夫らは救えるのか?
彼らは自分らが信じる真理を覆されるのが嫌で嫌でたまらないだろうに。

孤独とアニミズム。集合体、移り変わり。結局は全ては理解し合えない。だから自分で自分を愛する。自分が好きな自分でいられるように。使命ではなく、欲求だ。自己実現もイドによるのだ。
死ぬ時に流れる涙の数が、その人の人生の美しさだと思うなら、受容して死に、ただ還るだけだとしても、死ぬ時は結局一人だとしても、私はきっと涅槃寂静で愛されていた。

292 散文詩集『失われた記憶を求めて』

292 散文詩集『失われた記憶を求めて』

これは革命だ。文学への革命。いや、ただの蒙昧な戯言なのやもしれない。至高芸術を目指して真理を紡ぎし散文詩よ、永遠に語れ!

  • 自由詩
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-29

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1愛で満たして
  2. 2夢
  3. 3朝日を浴びて
  4. 4七夕の夜に
  5. 5終末に取り残されて
  6. 6神詩
  7. 7この病室から連れ出して
  8. 8軽くなれるなら
  9. 9酔生夢死
  10. 10 もし死ぬのなら
  11. 11トーラスの森
  12. 12この輪から去ろうとて
  13. 13始まりと終わり
  14. 14闇の中の光
  15. 15生と死
  16. 16小さな花
  17. 17言葉と宇宙
  18. 18遺伝子と罪
  19. 19さよなら、全ての
  20. 20アリア
  21. 21球遠の詩
  22. 22泡沫
  23. 23呼ばれることのない名前たち
  24. 24幽玄の彼方へ
  25. 25神の隣で愛されたくて
  26. 26渚、水
  27. 27最後のお願い
  28. 28円環と螺旋
  29. 29福楽の神はサイを振る