zoku勇者 マザー2編・32
地獄の魔境編・2
「ジャミル、後方は僕が何とかする、だから……、少しの間
大変だろうけど……」
「……分った、俺も前方のクソ大木、何とかしてみる、アル、
後ろ任せていいか?」
アルベルトが静かに頷いた。そして背中に括っていたスーパー
バズーカを外して構えると、躊躇せずきついワニ達にドカドカ
発射する。……きついワニ達の頭部と胴体はふっ飛び粉々に
なって消えた。ついでに、ぼーっとしていたサカナ人間の
片割れにも衝突した模様。
「よしっ!俺もっ!」
……とは言ったものの、こんな状態でどうやって戦えばいいのか
分からず……。背中にはアイシャを背負い、打撃攻撃は出来ず……。
PKキアイβを試みたが早く何とかしようと気持ちが焦って
いる為か、波動を上手くコントロールする事が出来ず……。
「……!!」
(……ヨクモ、アニキヲ……、ユルサナイ……!!)
「きゃっ!?……ごぼおおおっ!!」
「……アイシャっ!!」
突如、もう一体の怒り狂ったサカナ人間が暴走し、ジャミルの方へ
素早くジャンプすると背中のアイシャをかっ攫いそのまま身体を抱えて
沼へと連れ込み姿を消す。……アイシャをこのまま溺れさせる気である。
そうはさせるかとばかりにジャミルもアイシャを助けに急いで沼の中へと
潜リ、後を追い掛ける。
(……畜生!早くアイシャを助けねえと!もしもこのまま
バトルが長引いたら……、俺もアイシャもアウトだっ!)
ジャミルはアイシャを抱えたまま沼の奥深くまで泳いで行く
サカナ人間目掛け、心を落ち着けてPKキアイβを水中で
思い切り飛ばし敵へと命中させた。ダメージを喰らった
サカナ人間は慌てて拘束していたアイシャを手放す。その隙を
逃さず、ジャミルはアイシャを救出すると急いで水面へ……。
「ぷはあっ!……はあ、はあ……、マ、マジで……、きつすぎるって、
鬼だぜ、いい加減にしてくれよ……、タコめ……」
急いでアイシャの状態を確認すると、又水は飲んでしまっていた
様だがどうにか意識は有る様で、ジャミルの顔を見ると安心した様に
彼に縋りついた。
「……二人ともっ!離れてっ!」
アルベルトが根性ウッドーに向けペンシルロケット5を発射した。
呼吸荒く、疲れ切っていたジャミルとアイシャに根性ウッドーが
今にも襲い掛かる処であった。結局、今回は常にアルベルトに
頼り切りだった。
「アル、サンキュー!」
「……けほっ、アル、有難う……」
「まだ油断しないで!完全に倒した訳じゃない!」
根性ウッドーは爆発系の敵である。下手に中途半端にダメージを
与えると自爆して大ダメージを与えてくる恐れもある。
ジャミルは考える。このまま無理して戦っても駄目だと。
特にアイシャはもう精神面でも疲れ切ってボロボロなのだから。
「イチかバチかだ……、アルも俺に掴まれ……」
「え?えええ?な、何を……」
「いいからっ!俺を信じろ、アイシャも……」
「分ったわ……」
「よし……」
ジャミルが再びアイシャを背中に背負う。アルベルトも言われるが
ままにジャミルの肩に掴まる。
「行くぞ!絶対にお前ら俺から離れんな!目を瞑れっ!……おおおおおっ!
テレポートαっ!!」
トリオはテレポート効果で……、沼の水面を物凄いスピードで走る、
走る、……只管走る!何処かにぶつかって止まるまで、このまま敵から
逃げ続ける作戦であった。
「……よ、よっしゃ!このまま魔境の出口まで突っ走れっ!!」
しかし、……テレポートは直に何かにぶつかって止まった……。
「畜生、出口までは無理だったか……、でも何とか……、敵からは
逃げら……」
「グェグェグェ……」
テレポートを妨害したその巨大な物体は……、ジャミル達の姿を
見ると汚い声を出した。
「久しぶりだな、……このおれ様の事を忘れたとは言わせねえぞ……、
グェ、ゲゲゲゲ!」
「お前は……、まさかっ!!」
巨大な生物がゆっくりと……、ジャミル達の方を振り向く。振り向いた
その姿に……、ジャミルを始め、アイシャとアルベルトも顔が真っ青になる……。
「う、嘘でしょ……」
「ゲップー……、どうして……、こんな所に……」
「そうだよ、おれだよ、ゲップーだよ、色は違うけどさあ~、やっと
帰って来たんだよ、テメーらを今度こそ抹殺する為によう~、……げえ~っ、
ぷううう~!!」
ゲップーはとてつもなく臭いゲップをトリオに向かってする。
その臭いは……、以前に戦った時の倍以上のオゲオゲの臭さで
あった……。
「!!!……~~!!」
あまりの臭さに、ジャミル達は口を押えたまま喋れなく
なってしまう。しかも今は周りは沼で自分達はその中にいる。
……一体どうしたらいいのか……。
「グェゲゲゲ、どうだい?帰って来た俺様のゲップは?最高だろ?
もっと嗅がせてやろうかい?……ぐううええええ~……プ……、
げんげろげ~のげろげろげ~ろげろ~……」
(もう駄目だ……、限界だ……、息も続かねえ……、今度こそ……、
もう俺ら駄目なのか……?)
……ジャミルも遂に諦めを覚悟した、その時……。
「何だよお!ジャミル、いつもオイラに怒るくせに!今日はどうしたのさ!
こんなの……、ジャミルらしくないよっ!!」
(こ、この声……、まさか……)
「グェェ?」
突如聞こえてきた声にはっとし、ジャミルが頭上を見上げると……。
「PKスターストームαっ!!」
「……グ、グェェェェェーーー!!」
無数の巨大な流星がゲップー目掛け降ってきて襲いかかり、
……ゲップーの身体を一瞬で粉々に打ち砕いたのであった……。
「す、すげえ……、ダウドお前……、来て……、くれたんだな……」
ジャミルが声を絞り出して感動するが、その直後……。
「……たーすーけーてえええ!!この沼深いよおお!
沈んじゃうよおおーー!!」
……でも、やはりこうなるか……、と、ジャミルは溜息をつく。急いで
ダウドを沼から引きあげ岸へと連れて行く。その後に続くアイシャと
アルベルト。魔境のゴールはもう直ぐ其処。漸くジャミル達は魔の
魔境を突破したのであった。
「はあ、今回ばかりは流石に助かったよ、ありがとな、ダウド……」
「ありがとう、ダウド!そして、お帰りなさい!」
「本当に星を落とす技を習得したんだね、凄かったよ、頑張ったね、
ダウド……、お帰り……」
「うん、案外早く修行が終われたからね、まぼろし仙人さんに
皆がいる場所を特定して貰ってね、はあ、どうにか間に合って
よかったよお~!……あ、ついでにこれ、お土産!ランマ名物
さとりの弁当だよお!!」
ダウドは4人分の弁当を差し出す。美味しそうな匂いに……、
ジャミル達のお腹も思わずグウ~と鳴った。
「ダウド……、お前って奴は……何ていいヘタレなんだ……」
「だからっ!語尾にヘタレってつけるのやめてよねっ!もうーっ!
何なのさ!」
「うん、ありがとな、ヘタレ……、今日からお前をほ○かほ○か亭と
呼ぼうか……」
「も、もういいよお、それよりも、早くお弁当食べよう、オイラも
お腹空いた!」
つい、ヘタレとうっかりつけるのは、素直になれないジャミルの
照れ隠しと捻くれである。とにもかくにも、ダウドが復帰し再び
4人に戻ったメンバー。石に腰掛け、弁当を食べ始める。
「うめえっ!マジうめえ!」
「ん~、本当に美味しい!おかずもいっぱいだし!」
さっきまで……、溺れ掛かっていた人間とは思えない程の
アイシャの元気復活ぶりである。
「うん、美味しい……、はあ、久しぶりだね……、こんなに
一息つけるのは……」
先に魔境に来たジャミル達は、おさるさんとのコミュ以外に
ずっと心休まる時がなかった。しかし、ダウドも無事帰って
来てくれ、漸く落ち着きを取り戻したのであった。そんな皆の
様子を見ながらダウドも美味しそうにお弁当を頬張った。
「あー!美味かったぜ!腹もポンポンだ!」
ジャミルは自分のお腹を撫でると大きく伸びをする。
……アイシャもアルベルトも……、お弁当を食べ終わった後、
急激に疲れが出て来た様で何だか眠そうであった。
「……もう少し此処の森付近で休んで行こうや……」
「そうね、あふ……」
「うん……」
「あの、みんな……?」
「zzzzz……」
ダウドを除くジャミル、アイシャ、アルベルトの3人は……、そのまま
その場に眠ってしまった。
「しょうがないなあ~、んじゃ、オイラも……、えへへ……」
……結局、ダウドも付き合い?で、皆の側で横になるとそのまま目を閉じた。
そして……。
「……畜生、……寝る前に小便行っときゃ良かった……」
……尿意に邪魔をされ、結局ジャミルは目を覚ましてしまったのである。
「ん?」
「……ぐう~……、ホントにジャミルってば、オイラがついてないと……、
何にも出来ないんだから~、えへ、えへへ……、だから、道に
落ちてる物は拾い食いしちゃ駄目だって何回も言ってるでしょ~、
それは象のうんこだってば~、食べちゃ駄目、……むにゃ……、ああ、
遂に食べちゃった……」
「……たく、相変わらず失礼な夢みやがってからに……、俺を何だと……」
そう言いながらジャミルは眠っているダウドの顔を見る。何かを
思い出した様であった。そして自分のリュックからごそごそと……、
ブタの鼻を取り出した。
「許せダウド……、どうしてもやらずにはいられないんだっ!」
ジャミルがダウドの鼻に……、ブタの鼻を付けようとした瞬間……。
「……何、してんの?」
「ひ、ひいいい~っ!な、何でもございませんっ!」
丁度目を覚ましたダウドと目が合ってしまい、ジャミルは慌てて
ブタの鼻を後ろに隠した。
「何こそこそしてんのさ、今なんか後ろに隠したでしょ?」
「な、何でもねえって!だから、オメーも疲れてんだからもう少し寝て……」
ポトン……
「ん~?」
「わわわわっ!だから、何でもねえって!」
慌てて落としたブタの鼻を後ろ足で遠くに蹴飛ばそうとするが、
ダウドの方が行動が早く、さっと屈んでジャミルの後ろに回ると
素早くブタの鼻を拾って回収した。
「……へえ~、面白いね、ジョークグッズかな?ジャミル、まさかこれ、
オイラが寝てる隙に鼻につけようとしてたの?……ねえ……」
「いや、まさか……、んな事ある訳がねえだろ、あは、あは、あはは……」
「ふう~ん?そうなんだ~?ふう~ん?」
ダウドがジャミルの顔をじろじろ見る。……修行の所為か気の所為かも
知れないが、若干ダウドが……、少し気が強く……なっている様な気が
する様なしない様な……、何だかダウドから得体の知れないオーラを
感じるジャミルであった。
「ねえ、二人とも何してるの……?」
「!!!」
声に気づいて……、等々アルベルトまで目を覚ます。その後で
アイシャも起きてしまう。結局、全員目を覚ましてしまった。
「……ジャミルがこれ、オイラが寝てる間に鼻につけようとした」
「わーーーっ!!」
ダウドがアルベルトにブタの鼻を見せた。隠した処でもう
無駄の様である。
「これは……、ふう~ん、面白いね……」
「あら?ブタさんのお鼻ね、可愛いじゃない」
アイシャもアルベルトの側に寄り、ブタの鼻を見て確認する。
……そして、二人とも一斉にぱっと顔を上げ、ジャミルの顔も見た。
「まさか、これ……、僕の鼻にも付けようとしてたんじゃないの?」
「と、言う事は……、私にもよね?」
「そうか、アイシャにもか、其処まで考えてなかっ……、い、いや、
アルにはスカラビのホテルでもうやったし!……あ!」
「……」
今度はアイシャ、アルベルト、又ダウドも……、ジャミルの顔を見た。
焦ってつい、ジャミルは……口を滑らせてしまったのだった。
「ダウド、ジャミルが逃げない様に……、ちょっと身体拘束してくれる?」
「分ったよお……、全く悪戯ばっかして……、しょうがないんだから!」
「ちょ、待て、おま……!」
ダウドはジャミルを側にあった木に素早くロープで縛って括りつけた。
「……さあ、アル、どうぞ!人思いにやっちゃってください!」
「ダウドっ!……テメー、後で覚えてろっ!」
「ふん、明日には忘れるよお~……」
(ダウド、修行から帰って来てから何だか感じが変ったみたい?
……気の所為よね……、いつもあんな感じだったかしらね……)
アイシャもダウドを見て不思議そうな表情をする。
「さあ、行くよ、ジャミル……、うふ、うふ、うふふふ……」
……眼鏡を光らせたアルベルトが……、ブタの鼻を持って……
ジャミルに近づく。
「よせっ!……や~め~ろおおおおお!!ああああああーーー……」
……そして、夜が明けて朝になった。
「……ジャミルったら、悲鳴あげる程の事でも無いでしょ!あんなに
大騒ぎして……、もう、恥ずかしいったらないわよ……、オーバー
なんだから!」
「……うるせーやい!」
アイシャが呆れる。ジャミルは独り、後ろを向いている。
罰として、ブタの鼻は暫くつけられたままの状態に……。
「……冗談じゃねえブウ、……ちょ、これつけてるだけで……、
うっかりブタ言葉になっちまうブウ!」
「キャー、あ、お兄さん、ブタの鼻つけてますね?」
「……ぶひっ!?」
何処かからか、又おさるがやってくる。つい反動でジャミルは鼻を
鳴らしてしまった様子。
「……ぷ、ぶひっ!だって!ぷぷぷぷ!」
「ダウド……、てめえ、マジで後で覚えてろよ……」
「……やめなさいよっ!ダウドったら!」
アイシャが注意するが、ダウドは腹を抱えて笑っている。
……アルベルトも笑いたくて困っている。
「ブタの鼻はね、着けているとマジックトリフの場所が分るんだよ!
凄いキノコなんだよ!いいなあ~、ボクも着けたいなあ~……」
「……マジックトリフ?」
「魔境の彼方此方の沼の中に生えているキノコだよ、PPを80も
回復してくれるんだよ、ブタの鼻を付けていれば、それを探せるんだよ、
でも、PPって…何ですか?ウキャ?」
「そうか……、よし分った!」
「ジャミル……?あ!ちょ、ちょっと!」
アイシャが声を掛けようとするが、ジャミルがその場から消えた。
……テレポートで何処かへ飛んだらしく、本人一人だけなら
瞬時にすぐ移動出来る瞬間移動も出来る様になってしまったらしい。
「ただいま!」
「お帰りっ……て、何処へ……、それは……」
戻って来たジャミルは……、手にはしっかり3人分、ブタの鼻を
持っていた……。
「何だよ、それ、まさかまさか……」
アルベルトの顔が青ざめる……。ジャミルもアルベルトの顔を見て
ニヤッと笑った。
「此処まで来りゃテレポートで何時でも出口近くまで戻れるからよ、
さ、お前らの分だ、早く付けろ、マジックトリフ探そうぜ!」
「……ええーーっ!?」
ジャミル以外の3人が一斉に口を尖らせた……。余計な事を口走った
おさるはもう姿が見えない。
「えーじゃねえっての!PP回復80だぞ!これはこれからの
冒険にも絶対役に立つモンだ!これを探さずにして魔境を
抜けられるかっ!さあ、行くぞ!」
「て、事は……、ま、また……、沼に入るの……?」
「アイシャ、大丈夫だって!もしも敵が出ても、今度は強くなった?
ダウドもいるしな!」
ジャミルがダウドの顔を見る。どうやらPKスターストームを
当てにしているらしい。
「やだよ、あれは物凄くPP消費量が激しいんだよお……」
「……そういう時の為のPP大量回復出来る便利なアイテムに
なるんだろうが!戦いもどんどんきつくなってきてるし、
PPなんか、もうちまちま使ってられねーってんだよ!」
「それは……、そうかも知れないけどさあ~……」
「さあ、テレポで魔境の入り口に戻るべ戻るべ、♪トリフ探し~!」
「だ、だけど……」
イマイチ煮え切らない他のメンバー達。それを見たジャミルは
不満そうな顔をする。
「じゃあ、お前ら此処で待っててくれよ、俺一人で行ってくるからさ、
危なくなったらすぐに戻って来るから!」
この男はやると言ったら必ず一人でも行動する男である。危険な
魔境に一人、ジャミルを送り出す訳にもいかず……。結局他の3人も
しぶしぶ同行する事に。仕方なしに……、他のメンバーもブタの鼻を付け、
4匹の子豚が出来上がる。
「もうやだっ!……絶対お嫁に行けないわっ!!」
「……姉さん……、僕、もう……、駄目だよ……」
「ぶぎいいい……」
こうして、魔境の入り口に戻った4匹の子豚は……、日が暮れるまで
沼を探し回り、恥姿と引き換えにマジックトリフを数個、収穫したのであった。
4人は再び魔境の出口近くに戻る。ゴール場所はと言うと、大きな
洞窟の入口であった。もう少しで完全に魔境を抜けられる。誰しも
そう思ったのだが。
「……」
「ダウド、どうしたの?」
アイシャが後ろを振り返ると突如ダウドが立ち止まる。何だか先に
進みたくない様子。
「何してんだよ……、まさか、この先に進むのが嫌……、とか言うんじゃ
ねえだろうな……」
ジャミルも聞いてみると、少しダウドは口を曲げ、そしてボソボソ
喋りはじめる……。
「皆はさ、いいよね……」
「はあ?」
「大きな都会や海で遊んできたんでしょ、いいなあ、オイラだって……、
遊びたかったよお、この先魔境を抜けたらもっともっと厳しくなるに
きまってるよお、遊ぶ余裕なんかもうなくなるんだ……」
「あのな、確かに俺らは暫くはフォーサイドに滞在してたけど、
……どれだけあそこが大変だったか、お前分かってねえだろ、
ええっ!?」
「ふん……、オイラその時は皆と一緒にいなかったもん、
知りませんよお!」
ジャミルはカチンと来てダウドと口論しそうになるが……。どうにも
最近、戻って来てからダウドがやたらと捻くれてきた様な気が……、
皆はしていた。一体彼はどんな修行をしてきたのか。
「ま、まあまあ、ジャミルもおさえて、冷静になろう」
アルベルトがジャミルとダウドの間に割って入る……。
「……アルはヘタレに甘すぎんだよっ!」
「ねえ、ダウドは……、都会で何かやりたい事が有るの?」
「……」
アイシャが聞くと、ダウドはウ~ンと言う様に首を傾げ暫く
考えていたが……。
「特にない」
「……お前なあ~……」
「でも、これから先、戦いがもっと辛くなるのなら、オイラ、せめて
もう少し遊ぶ余裕も欲しい、以上!」
ダウドはそれだけ言うとそっぽを向いた。
「弱ったな、急に、この馬鹿……」
「でも、ダウドの言う通りかも知れないわね、私にも感じるわ、
……ギーグとの決戦の足音が近づいているかも知れない……、
そうなったらもう、心に気持ちも余裕も無くなるかもだものね……」
「お~い……」
アイシャまで……、ダウドに便乗され掛かっている……。
「でしょっ、でしょっ!?」
「ジャミル、私、サーティーフォーの雪ダルマンアイスが
食べたいわ!」
「だよおだよお!もういつでもテレポでいつでも此処に来れるん
だからさあ~、ね!ジャミルだって遊びたくないなんて絶対
おかしいよお!ぶっちゃけありえな~い!だよお!」
「お、お~い、アル……、どうす……」
ジャミルが困ってアルベルトに助けを求めると……、アルベルトも……、
様子がおかしい。
「うふふ、恐竜博物館、まだまだ見たい……」
「駄目だこりゃ……、えーいっ!畜生!……しょうがねえ、てめえら
もうこの先遊ぶ余裕なんかねえと思えよっ!戻るぞ、畜生!!」
「はあ~いっ!」
……こうして、4人はこれからますます激しくなる戦いに向け、悔いを
残さない為にも……、暫くはテレポートで色んな処へ飛んで遊んで
行こうと決めたのであった。
まずは大都会、フォーサイドへとテレポートで再び飛んだ。
「はあ~、この都会の空気も久しぶりだな、……まずは何処へ行くかな?」
「……ストリップ劇場……」
「ダウド、お前今何か……?」
「ん?べ、別に何にもいってないよお?」
「……」
やはり、ダウドは何処かおかしい。全てはまぼろし仙人が原因なのか。
「くすくす……」
通り掛かる人が皆、ジャミル達を見て笑っている。そう言えば、沼に
入り至りの所為で……、顔も洋服も真っ黒になってしまっていたのを
すっかり忘れていた。
「これじゃ何処のお店も入れないね、まずは汚れを落そう、それからだよ」
「んじゃ、ちょっくらサターンバレーへ行ってくるかね!」
「……サターンバレー……???」
「ダウドは初めてよね、行けば分るわ、とても楽しい所よ!」
「ふう~ん……」
一旦、フォーサイドからサターンバレーへ……。……丁度飛んだ場所が
温泉の真上で、4人はすぐに温泉に揃って墜落した。
「はあ~、相変わらずすげえな、ここの温泉……」
「……服着たまま入れるなんて、変わってるよお~……」
「うふふふ~ふふ、うふふ~……」
「幸せだわあ~……」
どせいさんは最初、空から温泉に落ちてきた4人を不思議そうに
眺めていたが……、墜落物がジャミル達だと分るとすぐに皆集まり、
歓迎してくれた。
「ぽえ~ん、またあえて、うれしうれしです。」
「おともだち、ふえた。」
「あっ、どうも……」
どせいさんは初めて見るダウドに興味津々。又新しい友達が
出来るのが嬉しいらしい。
「きゃー!みんな、元気だったーっ!?私は元気よーっ!ぎゅう~っ!」
「ひさしぶりに、はぐはぐ。です。」
「むぎゅうう~、なんだな。」
アイシャ、再びどせいさん達にハグをしまくる。ぼーっと見ていた
ダウドは口を開け、あんぐり。
「お前もやって来いよ、……気持ちいい、らしいぞ……」
「なっ!?や、やだよ、恥ずかしいっ!」
「けど、あそこにも……、色々とやりたくてしょうがない奴が
いるらしいがな……」
「アルっ!?」
「あの、久しぶりに……、いいですか……?」
「どうぞどうぞ、ごえんりょなさらず。」
「も、もう……、遠慮なんかしない……、僕は素直になるんだ、……えいっ!」
……ちょん、ぷにゅうう~……
「うひゃああああっ!は、鼻っ!ぷにぷに……、ああああああっ!!」
「……いつものアルじゃなああ~いっ!!」
「いいのさ、此処は素直になれる場所なんだ、ま、折角来たんだ、
お前もゆっくりさせて貰えよ、んじゃな!」
「あ、何処行くのさ!?」
「ん?いいんだよ!」
……ジャミルはどこかへ行き、その場にはダウド一人残された。
「素直になれる……、場所、ねえ~……」
そして、ジャミルが向かった場所とは……、どせいさんのお店。
「ちーっす!アーモンド最中、あるかい!?」
「たくさん、あるます。たべていって。」
どせいさんはジャミルにアーモンド最中を出してくれる。
ジャミルは興奮して最中を食べまくった。
「んーっ!うめえっ、これで1個22ドルとか信じらんね!安くって
こんなにうめえのってものすごー得だっ!んふふふっ!」
「♪ぽえ~ん。」
最中をガツガツ食べまくるジャミルの横で、どせいさんが幸せそうに
踊って寛いでいた。
「だんすがすんだ。」
んで、ハグも鼻ぷにぷにも、充分堪能したアイシャとアルベルト。
実に満足そうである。ダウドはというと、まだ此処に慣れないのか、
そのまま何もせず突っ立っていたが、どせいさん達が皆いい人?達
なのは理解した様子。
「ジャミル、あれから戻って来ないけど、……何しに行ったんだろう?」
ダウドが不思議そうに首を傾げると、先程、店で踊っていた
どせいさんが短足走りで此方に急いで向かって走って来た。
「あの、あなたたちのじゃみるさん、おみせでたおれてます。たいへん。」
「……ええええーーっ!?」
「もなかのたべすぎだー。」
「え……」
他の3人が急いでジャミルを迎えに、どせいさんのお店に掛け付けると、
其処で見た物は……。
「……ぐるじい、腹、腹が……、爆発する……、まーた……、やっちまった……」
「……」
最中の食べ過ぎで腹がパンパンになり、目を回して倒れている
ジャミルの姿であった。
「もう~っ!一人で欲張って食べるからよっ!」
「はあ~、僕、頭痛い……」
かつて自分も此処で鼻血を出し、どせいさんに迷惑を掛けた
事のある、前科犯のアルベルト。
「い、今なら……、コレ……、プ、プププププ!……は、腹いたああ~っ!!」
いつ用意して来たのか、ジャミルの鼻にこっそりとブタの鼻を付けて
馬鹿笑いするダウドであった。
そして、次の日。4人はフォーサイドに戻る事となった。
「あの、ぼくらのなかま、またいません。どこかでみたら、おしえて。」
「ん?……、ま、又行方不明なのか!?」
「大変だわっ!」
「……こんかいは、ひとりだけです。おねがい、ぼくら、とてもしんぱい。」
「ぷうう~……。」
余り表情は変わらないものの、又消えてしまった仲間をどせいさん達は
とても心配している様子であった。
「任せな!見掛けたら絶対連れて来てやるからさ!」
「ぷう。たのむます。」
「おねがいな~。」
ジャミル達はどせいさんと約束すると再びフォーサイドに飛んだ。
……この、行方不明のどせいさんが、後々の重大事件に関わっている事を
4人はまだ知らない。
zoku勇者 マザー2編・32