zoku勇者 マザー2編・31
地獄の魔境編・1
「何してんだよ、アル……」
「うん、何があるか分からないからね、常にこれだけはいつでも
使える様に準備しておかないと!」
「……」
アルベルトはバズーカ砲を紐で自分の背中に括り付ける。
……今度は特攻ランボー野郎になってしまった。
「あ、見て、オウムさんよ!あはは、可愛いー!」
「お?本当だ……」
密林にひっそりと佇むオウムが一匹。さすがジャングルの地らしい。
魔境到着で緊迫していたアイシャの緊張をほぐしてくれ、アイシャも
にっこりする。試しに話し掛けてみると、何故か電話の呼び出し音を
発す。
「トゥルルル……」
「このオウムは、どうやら電話の役割を果たしてくれる
みたいだね……」
「マジかよ?んじゃ、謎の親父に電話掛けてみるかな!
……もしもーし!」
『もしもし、パパだよ!冒険の調子はどうかな?お前の銀行に……、
~~ドル……、疲れたらいつでも電話しなさい、ガチャン、
ツーツーツー……』
「すげえ、マジで通じたし!よーしっ!」
ジャミルは面白がって、次はファラの処へと電話を掛けた。
「こっちも大分暫く電話してねーかんな、……もしもし!」
『ああ、ジャミルかい?何か凄く電話が遠いねえ、月の世界にでも
行ってるのかと思ったよ、ダウ犬は元気かい?迷惑掛けてないかい?
……うんうん、トレーシーもさあ~…………んじゃ、又電話しなよ!
ガチャン、ツーツーツー……』
「ふう、ああ面白かったなあ!……此処でピザ屋に電話掛けたら……、
来るかな……」
「……やめろってば!」
一体何が面白いんだか。ジャミルはピザ屋に電話を掛けようと
したがアルベルトによって電話を妨害された。トリオは再び沼に
向かって密林地帯を歩き出した。少し進むと、沼の近くに可愛い
おさるがおり、ジャミル達に話し掛けてくる。
「キャ、こんにちは、おさるのお宿はどうですか?この奥の
森にあるよ」
「疲れてるしな、……行ってみるか?」
ジャミルがアイシャとアルベルトに聞くと、二人も揃って頷いた。
「ではこちらだよ、大丈夫だよ、おさるくさくないから、
旅の思い出に、おさるのお宿もいいもんだよ」
おさるに案内され、行ってみると木の上に小屋が……。
縄梯子がぶらさがっており、其処から上にあがる模様。
「変わってんなあ、流石ジャングル……」
ハシゴを登り切り、小屋の中に入る。……特に設備がある訳でも
なし、只管身体を休める場所だけの様。それでも皆、疲れて
しまっていたので直ぐに爆睡してしまう……。翌朝までトリオは
しっかり目を覚まさなかった。
「バナナ、此処に置いておきますね、目が覚めてお腹が空いたらどうぞ!」
おさるは親切に、眠っている3人の所にバナナを置いて行った。
そして翌朝……
「ふぁあ~、快適過ぎて……、見事に眠っちまったなあ~……」
「ホントに何時間寝たんだろうね、僕、まだ頭が……、ぼーっと
してるよ……」
「バナナも美味しかったわね!おさるさん、どうもありがとう!」
「いえいえ、おさるのお宿も中々だったでしょ?又疲れたら
いつでも来てね!」
おさるはジャミル達に手を振ると、又森の奥へと姿を消した。
「……さて、癒されてばっかいらんねーぞ、……いよいよ沼に入るぞ……」
ジャミルの言葉にアイシャとアルベルトが息を飲み込み、目の前の
沼を見つめた……。
「まず、俺が先に入るから……、よっ!」
「ジャミル、大丈夫……?」
「大丈夫みたいだ、今の処は……」
此処で立ち止まってはいられない。ジャミルの後にアイシャと
アルベルトも続き、沼の中を歩いて行った。……ところが、数分
立たない内、先頭を歩いていたジャミルの姿が突然消え、沼に
沈んでしまう。
「……おぶっ!?」
「……ジャミルっ!!」
どうやら、急に深い場所になっていたらしい。まだ、足場はどうにか
付く様ですぐにジャミルは水から顔を出したが、びっくりしたのか
肩で息をしている……。
「……ハー、ハー……、び、びっくりした……、お、お前らも
気を付けろよ……」
……トリオは頭まで水に浸かり、窒息しそうになりながらも
どうにかこうにか沼の中を進む。やがて、再び陸へ……。
「ハア、……じょ、冗談じゃないや……、し、死ぬかと……、ゲ、ゲホ……」
「……もう、やだああ~!口の中まで泥水が!!ううう~……」
「これが魔境の怖さなんだな……、う、げーほげほ!げほっ!げほっ!」
しかし、こんなのはまだ序の口……、なのだが今の3人は魔境で
待ち受けるこれ以上の過酷な恐ろしさなど考えたくなかった。
「君達、何してるの?こんな所で……、早くお家に帰らないと
パパとママが心配するでしょ、家出かな?あ、僕、ある経済
大国からやって来たガッツある商社マンです!こんな田舎でも
張り切ってお仕事しちゃうんです!」
トリオがハーハー息を切らしている処に、眼鏡のスーツ男が
やって来る。……おっさんこそ何しとんねんとジャミルは思う。
「僕も商社マンだからね、ビジネスの為なら世界中何処でだって
頑張るのさ!何か買っていくかい?こんな田舎だから碌な物が
ないけどね」
商魂逞しい商社マンはジャミル達に色々と商品を勧めてくる。
これからの事も考え買い物していく事にした。防具はすでに
装備しているダイヤの腕輪で必要もない為、回復アイテム中心に
うらカンポー、ほしにく、カップめんを購入。
「どうもありがとう!でも、なるべく早くお家に帰るんだよ!」
……帰れるかい!……と思い、ふとジャミルは気づいた。商社マンの
横に変な医者が黙って立っておりジャミル達を見ていた。
「私とあなたが話をする必要を私は感じないのだ……」
「あ、この先生もエージェンシーやってます、先生は無口でね、
必要な事以外あまり喋らないのさ、でも本当は誰よりも患者さんの
事を心から心配している、ハートは熱いんだよ、いわゆるツンデレ……、
という奴かな?はははは!あ、僕、先生との仲介役も果たしてる
からね!先生にお話があったら必ず僕を通してね、じゃないと
法律違反になるからね!」
医者と違って商社マンはやかましい程ベラベラ喋った。……と、
それまで突っ立っていた医者が動きだしアイシャに近寄って行った。
「君、具合が悪いんじゃないのかい?どれ、見せなさい……」
「えっ、わ、私……、大丈夫ですっ!」
「嘘をつくんじゃない、いかんよ……、無理をしては……、毒を
喰らってるじゃないか、沼でやられたな……、命に係わるぞ、
こんな大事な事は決して黙っていては駄目だ!」
無口な医者に黙っているなと言われ、アイシャは困惑する……。
「あっ、……ま、まあ、この場合は先生から口を聞いたん
ですから……、ま、まあよしとしましょう……、仕方ない、
……もう、先生ってば……」
商社マンは医者が滅多に患者に見せないらしい態度が珍しかったのか
此方も困惑気味。
「何で言わなかったんだよっ!すぐにヒーリングβで治してやるのにっ!
……まーたデコピンされてえのかっ!?」
「何よっ!だって、……魔境は本当に危険なのよ、この先、敵だって
いるだろうし、PPを無駄には出来ないでしょ、アイテムだって……、
私の為になんか使った……、きゃーーっ!!」
アイシャ、又ジャミルに結局デコピンされた。まあ今回はちょい
強めに一発だったが。
「んな事言ってたら、魔境の先だって進めねーんだよっ!いいか、
今度我慢したらハイパースーパーデリシャスウルトラデコピンの
刑だかんなっ!!」
「……またっ、何よそれっ!ジャミルのバカっ!!」
「でも、ジャミルの言う通りだよ、僕ら仲間じゃないか……、どうして
今更遠慮なんかする必要があるんだい……?助け合ってこその、仲間だろ?」
「うん、……有難う、ジャミル、アル、ごめんね、心配してくれて有難う……」
アイシャが笑う。その様子をみてジャミルも笑顔をみせた。
「よしっ!辛かったら直ぐに言えよ!アルもな!」
「ああ、君もね……」
その様子を見ていた商社マンはハンカチを取り出してちーんと鼻をかんだ。
「なんとまあ……、友情に溢れたお子様達なんだ……、うう、若いって
いいなあ、ね、先生……」
「……」
(若者たちよ、ぼーいずびー、あんびしゃすだ……)
「では、今回は特別に無料で治療してあげよう、さあ、こっちへ来なさい、
お嬢さん……」
「いいんですか?……先生、有難うございます!」
「ありがとな、先生!」
「本当にお世話になります!」
ジャミルとアルベルトも医者に礼を言い、アイシャの毒は
すっかり完治した。
「この先も危険な沼が続くだろう、無口な私はあまり喋りたくないが、
これ以上行くなともいえん、若い君達の為にこれだけは言っておこう、
何があってもへこたれるな、……以上……」
無口な医者の言葉を胸に刻んでトリオは再び密林を歩きだし、
次の沼の中へ……。……そして、今度は3人いっぺんに揃って
仲良く沼に沈んだ。沼から顔を出す時も慌てて揃って顔を出した……。
「……ぶはああっ!!」
「も、もう……、駄目、苦しい……、い、息が出来ないわよう!」
「ア、アイシャ、諦めちゃ駄目だっ!!」
「うっぷ!ど、どんどん……、さっきの場所よりも……、深くなってる
気がする……!畜生!」
頼むから……、せめて今だけは敵が出てくんなとジャミルは思う。
ついでに、今この場にダウドがいなくて本当に良かった……、とも
思った。しかし、魔境の過酷さは更に度を増して、それが後に
現実になる……。
トリオは再び陸に上がり、休憩も兼ねて沼で冷えた身体を暖めようと
商社マンから買ったカップラーメンを食べる事にした。ペットボトルの
水をアイシャの軽いPKファイアーで温めてお湯にする。
「……」
……皆、黙りこくってズルズルカップラーメンを啜っている……。
が、アルベルトがやっと口を開き沈黙を破る。
「でも、凄いサバイバル経験だよね、中々……、スリルがあり過ぎって
いったらいいのか、悪いのか……、何が何だか……、ごめん、言ってる事が
自分でもよく分からない……」
「マジで死にそうだけどな……」
しかし、アイシャは唯一人、黙ったまま口を聞かず。
「おい、……アイシャ?」
やはり、女の子であるアイシャが一番気が滅入っていた。魔境は危険で
過酷な場所だという事は心得ていた。だからこそ、潜水艦に乗る前にも
わざと明るく気丈に振舞っていた。ジャミルとアルベルトに心配を
掛けない為にも。でも、もう限界だった。普段は元気で冒険好きな
お転婆娘が。これ程冒険が辛いと感じた事はなかった。つい、
うっかりと……、二人の前で弱音になり涙を溢しそうになった。
ガサガサ……
「誰だっ!?」
突如、目の前の草が揺れ、ジャミルが身構える。アイシャも慌てて目を
擦り涙を隠した。
「キャキャ!お兄さんたちから美味しそうな匂いがするね!
つい、匂いに釣られて来ちゃったキャ!」
「何だ……、又猿かよ、びっくりさせんない……」
出て来たのがお猿さんだったのでジャミルもアルベルトも
ほっと安心する。アイシャは少しでも又気分を変えようと
急いでおさるさんを呼んだ。
「あは!おいでおいで!一緒にカップラーメン食べましょ!」
「♪キャキキ!お邪魔します!」
おさるさんはちょこちょことトリオの側に来て一緒に並んで座った。
「猿がカップ麺食うのか……?」
「別におかしくないでしょ、君だって食べてるんだから……」
「……おう、それじゃ俺は猿だって言いたいのかよ!」
「プ……、どうなんだろう……」
自分で言っておきながら吹く腹黒アルベルト。アイシャはおさるさんの
分もお湯を沸かしてカップ麺を作ってやった。
「すぐに食べちゃ駄目よ、3分立ったら食べてね、熱いから気を付けて……」
3分後、おさるさんは美味しそうにカップ麺を食べ、全て完食した。
「キャー!」
「……美味しかった?あはっ!良かったー!」
「ゲブ、キャブウ……、何処かの砂漠のおさるはテレポーテーションが
出来るんだってね、すごいなあ、ぼくもやってみたいなあ……」
おさるさんは丸くなったお腹を撫でながらぼそっと喋り出す。
「ん?テレポートやってみたいのか?実は俺も砂漠の猿から
教わったんだぜ、ほら」
ジャミルはテレポートαをちょろっと使い森をひとっ走りすると
又戻って来た。見ていたおさるさんは感激し、興奮する。
「すごいすごいすごおーい!キャキャーー!」
「……ジャミル、何処へ飛んで来たんだい……?」
「内緒!」
「ねえ、ぼくにも教えてほしいなあ、テレポート!キャ?
……駄目ですか?」
「んー、いいよ、教えてやるよ、アイシャもアルもちょっと
いいよな?」
二人も頷いた。ジャミルももう少し二人に休憩をさせて
やりたかったのでこれも又いいかなと思った。……おさるは
ジャミルに教わりながら一生懸命森を走り回り、……何回も
木にぶつかり黒焦げになりがらも只管テレポートの練習を重ねる。
「ウキャ……、こ、こんな事で……、負けないぞ!」
「頑張って!きっと出来る様になるわよ!」
「ウキャ!」
おさるはアイシャに励まされ、再び森を走り出した。……そして、
数時間に及ぶ練習と特訓の成果を重ね、等々テレポートαを習得した。
「凄いわ、良く頑張ったわね、おめでとう!」
「ま、俺の教え方が良かったからかな……」
「……プウっ!」
「何だよ、何笑ってんだよ、……アルベルトおおおお!このやろっ!!」
「本当に有難うございます、キャ!これも皆さんのお蔭です、それから、
親切にしてくれてどうもありがとう!これ、受け取ってください、
ぼくからのお礼の気持ちです!」
おさるはお礼の気持ちとして、ジャミルにサルのきもちを渡した。
これは使うとおさるさんが現われ、敵一体を破壊締めにして
行動不能にしてしまう凄いアイテムらしい。しかも何回でも
使用可能とのこと。
「ありがとな、けど、お前はテレポート習得して何処に行くんだ?
教えてくれよ、気になるなあ……」
「キャー、それは内緒です!いつかまた、お会いする日があれば……、
お師匠様、皆さん、ではさようなら!キャー!」
「プ、や、やっぱり……、師匠と同じ事を……」
「だから何なんだよっ!アホベルトっ!!」
「さようならー!気を付けてねー!」
アイシャが森へ消えて行くおさるに手を振る。失敗しながらもテレポートを
何とか頑張って習得しようと練習をし、そして等々テレポートを習得した
おさるさんの姿はアイシャに又勇気と元気を与えたのであった。
(そうよ、こんな事ぐらいで挫けるもんですか!そうよっ!!)
「さあ、おさるさんのお陰で大分休憩も出来たし、また行きましょう!
ゴーゴーよっ!」
「ははは、アイシャってば……」
「おい、今度は本当に大丈夫なんか……?」
「な、何っ!?」
ジャミルがアイシャの顔をジト目で見る。またデコピンされるのではと
思ったアイシャは思わず身構える。
「隠したってすぐ分かんだよ、お前、さっき泣きそうだったろ、たく……」
「ええええっ、ええっ!?」
「大丈夫だよ、今日はもうやらねえから、俺だって指がイテえし……、
つまりだな、俺が何を言いたいかというとだな、俺はお前の泣き顔を
見るのが嫌だ、けど、お前が泣いて迷惑だなんて思ったことは一度も
ねえよ……、でも、俺はやっぱりだな、笑顔のお前が好きなんだ……、
だから、さっきも医者の所でも言った通り、何でも我慢はすんなよ、
辛かったら泣いたっていいんだ、その、えーと、何言ってんだか自分でも
訳わかんなくなってきたじゃねーかよ……」
ジャミルは顔を赤くして喋り終えるとチラッとアイシャの顔を見た。
「有難う、ジャミル……、嬉しい……」
「う、うっ!……そ、そうだ、それでいいんだ!んじゃ、俺、先に沼で
待ってるから!」
「あ、ジャミルっ!」
アイシャの笑顔を見て混乱したのか、ジャミルがさっさと沼に飛び込む。
……そして、足が攣り溺れかかった……。
「うえー!死ぬ死ぬ!」
「……いきなり飛び込むからっ!ほら、落ち着いてっ!」
アルベルトが手を貸し、ジャミルを沼から引き上げた。
「はあはあ、……わ、わりィ……、へへ……」
「全く……、ドジなんだからさ、ねえ、アイシャ」
「うふふ、でも、其処がジャミルだもん、ね?」
「どうせ俺はドジの塊ですよー!んじゃホントに次進むぞ!
お前らも又溺れねえように口ン中にしっかり空気ためとけ!」
「はいはい……」
「ふふっ!」
処が……、沼に入ろうとした3人の前に……、沼からゴボゴボと音を立て、
何かが近づいて来た。
「きゃあ!な、何っ!?」
「敵かっ!?畜生、等々出やがったか!アル、アイシャ!
まだ沼には入んな!って、あれ?」
「どうもー!」
ざばあと勢いよく音を立て、何者かが沼から浮かび上がってきた。
それはダイバースーツを身に着けた人間であった。良く見ると口に
水団らしき潜水道具を銜えている。
「おい、……また変なのが……、まあ、敵じゃなさそうだな……」
「ほっ……」
……アイシャとアルベルトはびっくりしたらしく、二人して
背中合わせでその場に再びしゃがんでしまう。
「私は銀行と同じ役割を果たす、キャッシュディスペンサー
男です、引き出す場合は引き出す金額と同等の手数料を頂きますが、
宜しいですか?」
「それじゃ、もしも9999ドル降ろしたら、それだけの手数料が
掛るって事だろ?やだよ、今んとこ金はあるからいいよ!」
「そうですか、では私の事は忘れて下さい!では失敬!」
「……うわ!」
キャッシュディスペンサー男は再び沼に飛び込んで姿を消した。
ドルを降ろさなかった嫌がらせなのか、飛び込む際にキャッシュ
ディスペンサー男は勢いよくジャミル達に泥水を跳ね飛ばして行った。
「……なんなんだよ~、ちきしょう……」
「やーん!でも、泥パックってお肌にいいのかしら……、
だとしたら沼探索も悪くないと思った方がいいわね!」
「……」
アルベルトはアイシャを見て苦笑するが、完全に元気を取り戻した
彼女を見て安心した。
「あっ、私、何時でも此処にいますので、お金を降ろす時は是非
声を掛けて下さい!」
少し離れた所から……、水団を通してキャッシュディスペンサー男の
くぐもった声が微かに水中から聴こえた。
「……誰が降ろすかっての!」
暫く沼ルートを進むと……、トリオに再び試練が訪れた。視界が
真っ暗になり、先に進めなくなってしまう。沼の中で困り果てる
ジャミル達……。
「そうだ、……た、確か……、こいつでっ!」
ジャミルは思い出すと半ズボンのポケットを探りタカの目を
取り出す。タカの目を高く翳すと、薄暗かった魔境が再び
明るさを取り戻した。周囲が明るさを取り戻すと、タカの目は
消滅してしまった。
「ほっ……」
「そうか、タカの目は此処で……」
「きゃああーーっ!!」
安心したのもつかの間、アイシャの悲鳴が聞こえ、ジャミルと
アルベルトは慌ててアイシャの方を振り返る。見ると、アイシャの
近くで何か水波紋が広がっている……。……今度こそ敵が現れたのか!?と、
二人は覚悟を決めるが……。
「静かにしろ!騒ぐんじゃねえ!」
「な……」
……沼から現れたのは、アルベルト用専用武器を取り扱ういつもの
密売人であった。
「あの、一応安心はしたんですけど、こんな所で……、あなたも
商売ですか?」
「ちょっと溺れちまってな、沈んじまってたんだ、で、何か
買う物はあるか?」
……溺れるまで商売すんな……、と、ジャミ公は思う。
「どいつもこいつも……」
「ふむ、それじゃペンシルロケット5を……、幾つか購入しておきます」
「毎度!……お前らもくれぐれも溺れんなよ!」
密売人は再び沼の中に消える。……それはお前だともジャミルは思った。
しかし、タカの目を使ったあたりから……、トリオに本格的に試練の時が
訪れる。等々、足場がない深い場所……、つまり、泳いで進まなければ
いけない場所へと突入した……。
「ハア、ハア……」
「アイシャ、平気か……?」
「だ、大丈夫よ!頑張るもん!」
沼は一層深さを増している……。泳ぎの得意なジャミルでさえ大苦戦し、
気を抜けば何回も沼に沈みそうになる。泳げるがあまり上手くは無く、
長距離は苦手なアイシャ、そして、体力の無いアルベルト……。トリオに
とって魔境最大の危機ルートかも知れなかった。……次の休憩ルート、
つまり陸地……、に辿り着いた時には……、3人同時に地面に突っ伏して
倒れてしまった……。
「アイシャ、次からは……、俺がおぶって進むから……、アルは大丈夫だな?」
「うん、僕は平気だよ、何とか……」
「え、えーっ!?だ、駄目よ!そんなのっ!!」
ジャミルがおぶうと言った瞬間、アイシャが大慌てで手を振って
嫌々をする……。
「何だよ、俺が背負うの嫌か?」
「ちっ、ちがっ!そ、そうじゃないけど……、だって私重いもん!
ジャミルが沈んじゃったら困るじゃないのー!キャー!」
顔が赤いことからおぶわれるのが決して嫌なのではなく、単に
恥ずかしいだけらしい。
「大丈夫だっての!俺、こう見えて結構力あるからよ!ほれっ!」
「キャ、キャーー!やめてーーっ!!」
試しにジャミルがアイシャをお姫様抱っこしてみる。騒ぐ二人を見て、
もう好きにして下さいとばかりにアルベルトが呆れるが……。
「これは……?」
何かを見つけたらしく、メガネを光らせアルベルトがそれに
近寄って行った。
「……うっ、や、やっぱ重いわ……」
「……何よっ!!」
「二人ともー、ちょっと来てー!」
「あん?何だ?」
「何かあった?」
ジャミルとアイシャはアルベルトが呼ぶ方向へ……。
「……マジか?」
「モノトリーさんが……、私達に貸してくれようとしていた……、
ヘリコプターだわ……」
「やっぱり……、間違いないね……」
ポーキーが無理矢理奪ったヘリコプターはこの地で墜落したらしく、
無残な残骸と化していた。……乗っていたポーキーは何処に行って
しまったのだろう。姿が見えない。
「……ポーキーはどうしたのかしら……」
「アイシャ、あんなの心配する事ねえって!散々、お前を酷い目に
遭わせたバチが当たったんだろ!いい気味じゃねえか!」
「……でも、心配じゃないの!もしも酷い怪我でもしていたら……」
ジャミルは困惑する。どうして自分に散々酷い事をしたポーキーの
事を其処まで心配出来るのか……。しかし、それがアイシャの持つ
優しさである事も承知していた。しかし、ジャミルも腹の底では……、
少なからずポーキーの事を気にかけていた。
(ったく、豚野郎め、何処まで迷惑掛けんだよっ!俺ら、お前の
事なんか……、普段から思い出したくもねえってのに、これじゃ
嫌でも脳裏に浮かんじまうだろが……)
「何時までも此処にいても仕方がないね、彼が無事である事を
どうか願って……、僕らは先に進もう……」
トリオはヘリコプターの残骸を見つめながらも複雑な思いで
その場を離れた。
そして、再び地獄の沼ルートへと入る……。
「ジャミル、あの……、本当に大丈夫?」
「大丈夫だ!俺にしっかり掴まってろよ!」
「……うん」
ジャミルにおぶわれたアイシャが顔を赤くする。アイシャの体重は軽い。
普段は彼女、太った太ったと大騒ぎするがとにかく痩せ過ぎで軽い。
……しかし、やはり、こんな深い沼で背負って泳ぐとなると話は別であり、
大丈夫だと言っているジャミルも本音はきつかった。
「……ぶわ!」
「……きゃあ!」
「……ジャミル!アイシャ!」
後ろで泳いでいたアルベルトが沈んでしまった二人に慌てて
呼びかける。しかし、根性ですぐにジャミルはアイシャを背負ったまま、
水から浮かび上がった。
「ぷはあ!……はあ、はあ……、ご、ごめんな、アイシャ……」
「へ、平気よ、私の方こそ……、私を背負ってるから……、ごめんなさい、
ジャミル……」
「だからそれは言うなっての!……デコピン……」
「もうっ!デコピンは嫌よお~、ぐす……」
こんな状況でも、決して漫才根性を忘れない二人にアルベルトも
くすっと笑う。……しかし、遂に笑ってもいられなくなる状況へと
入るのであった……。
「……何だ?急に水が……、うわっ!!」
「ジャミルーーっ!!」
「うわああーーーっ!!」
突如、物凄い地鳴りがし、沼も揺れ始め、ジャミルとアイシャは
再び沼の中へ……。今度はアルベルトも沼に沈んでしまう。
「はあっ!はあ、はあ、……く、冗談じゃねえぞ……、これ以上……、
不味い水を飲むのはごめんだっての!」
ジャミルがアイシャを背負ったまま、再び水から顔を出す。その後で
アルベルトも慌てて水から浮かび上がった。
「……ジャミル、アイシャが大変だ!い、息をしてない!」
アイシャの様子に気づいたアルベルトが慌てて彼女の側まで近づいて
表情を確認する。大量に水を飲んだらしく、顔も真っ青で呼吸が無い。
ジャミルは背中のアイシャに大声で必死に呼びかける。
「アイシャっ!駄目だ、目を覚ませーーっ!……起きねえと……、
デコピンするぞーーっ!!」
「やっ!……げほ、デコピンは嫌だって言ってるでしょーーっ!
ジャミルのバカっ!!……げほっ!!」
デコピン効果でアイシャが慌てて息を吹き返し、飲んだ水を何とか
自力で全部吐いた。
アルベルトはびっくりしたが、アイシャの様子にほっと一安心……。
してはいられなかった。
「……ジャミルっ!」
「アル、分ってるっ、……畜生、等々本当に出やがったか、さっきの……、
地鳴りの原因はこいつだったのか……」
目の前に立ちはだかり、往く手を阻む大木の姿をした大きな敵、
根性ウッドーが現れる……。更に後ろには半漁人の容姿の様な
サカナ人間兄弟……と、きついワニ数匹が沼の中から現れた。
ジャミル達は上手く身動き取れない沼の中で完全に敵に囲まれ、
最大のピンチに……。
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