パンナコッタ革命


人物紹介

アリス・ラング・ド・シャ

ラング・ド・シャ王国の王女。城の爆発により父王と母妃を失う。そもそもは彼女の成長物語にしようと思ったが、いざ書いてみると既に成長していた。よって本作は群像劇にすることになった。



シド・バルロック

七人隊隊長。その名の通り、七人の部隊。魔力を武器に込めて戦うことができる、奇人の集まり。五年前、南の小国で起きた内乱を治めた者たち。その強力さを忌まれ、王国での閑職に置かれている。彼らも物騒な仕事からはなるべく距離を置いている。



レオン・シフォン

ラング・ド・シャ王国の全軍(第一軍、第二軍)を統括する。第一軍は主力で、第二軍はその名の通り第一軍に劣る。



ロイド・カルボナーラ

第一軍団長。王女を守るために、彼女を傷つけた第二軍を敵と見なす。部下に慕われている。



七人隊

物語的にはモブに近い、シドの愉快な仲間たちである。戦力としての必要性。



ニングベル・ノリベン

南の小国で争いがあったとき、特別な働きをしたとして、議員になっている。狡猾だが度胸がない。



アレイスター・クロウリー

大道芸人の一座として、王女の前で特技を披露したことがある。

五歳。しかし実際は輪廻転生を繰り返している。


開幕。
深夜。ラング・ド・シャ王国の王城で、天守閣が爆裂した。正門を馬が走り抜ける。手綱をとるのは十五歳の少女。王女アリス。

城内が騒然となる。

早朝。遠景の広野を馬が駆ける。王女アリスの顔に汗がにじんでいる。

場面転換。

王城の正門前。
大柄な男が開いた門に背を預けている。ライオンのたてがみのような赤毛。レオン大将軍である。彼は王国の全軍(第一軍、第二軍)を統括している。
そこへ長い金髪の男が歩み寄っていく。

金髪「レオン大将軍というのはあんたか」
レオン「お前が首斬り隊長シドか」
シド「その呼び名は気に入らん」

レオン、顎をしゃくって城を示す。

シド「おお、見事に天守がありませんな。ダイナマイトでパーティーでも?」
レオン「馬鹿をいえ。王女が行方不明なのだぞ。王と王妃も、みまかられただろう」
シド「探索の兵は出したのか」
レオン「第一軍と第二軍に、王女の行方を辿らせている」
シド「俺を呼んだわけは」
レオン「お前の部下七人、確か北の鉱山に出向いていたな。救助活動は近隣の兵にやらせる。お前の七人部隊を南下させろ」
シド「この閑職に大層なご贔屓で」
レオン「要らぬ口を叩くな。行け」
シド「へいへい、と」

場面転換。王女の馬に第二軍の軍用車が並走する。
銃声。馬が被弾し、王女は地面に投げ出される。
軍用車から出てきた兵士たちが、王女に近づいていく。
そこへ現れた第一軍の軍用車が、第二軍を追い払う。
伏せた身を震わせる王女の肩を、手が揺さぶる。
第一軍団長のロイドだった。

ロイド「もう大丈夫です。負傷はしておりませんか」

ロイド、王女の手を取って立ち上がらせる。

アリス「ロイド殿、第二軍は」

 アリスは辺りを見回し、息をのむ。第二軍の兵士の骸が転がっていた。
ロイド、部下に下知する。

ロイド「王女は無事だ。お前たちは城へ戻れ。第二軍、かなりの数を取り逃した。また襲ってこよう。レオン大将軍に伝えよ。第二軍は王女を亡き者にしようとしていたと」

ロイドの部下たちは承知し、軍用車は走り去る。

アリス「城で、私を撃ってきたものがおりました。あまりに恐ろしくて、逃亡を。父上と母上は、無事ではないのでしょうね」
ロイド「いったい何があったのです。あの爆発は」
アリス「わかりません。私には、何も」

アリス、手で顔を覆う。指に金色の指輪が光っている。

ロイド「こちらへ。土地が屋根のように張り出した場所を知っております」
アリス「わかりました。恐れてばかりではいけませんね」

場面転換。北の鉱山

シドの七人隊の一人、男勝りな性格のミカゲが、近隣の村から来た兵士と話している。
ミカゲ「話には聞いてたけど、本当に王女が行方不明なのかい」
兵士「一旦は第二軍がおいつめたそうですが」
ミカゲ「追い詰めた? 穏やかじゃないね。爆発は王女のせいなのかい」
兵士「それも含めて、王都に連れ戻さねばならんのです」

そこへ刀を腰に帯びた童顔の男、カサゴがやってくる。

カサゴ「聞いた話では、色男が一緒に逃げてるとか。これっすか」

カサゴ、小指を立てる。「これ? 違う?」その頭をミカゲがはたく。カサゴはものすごい勢いで吹っ飛び、岩に叩きつけられる。起き上がって刀に手をやる。

カサゴ「加減してくださいよーう。刀の錆になりたいんすか」
ミカゲ「おおー? やるかあ?」

 ミカゲ、妙な拳法の構えを取る。

兵士「い、言いましたからね。即刻、王女様の探索に赴いてください。ああ、こっちの頭がおかしくなる」

場面転換。夜。
地面が屋根のように張り出した場所。
ロイドが缶詰めを開ける。

ロイド「何かは口にしないと、倒れてしまいます」

アリスは缶詰めの肉を豪快に手ですくいとる。

ロイド「いちおうフォークはあったのですが」
アリス「訓練くらいは受けていますから」
ロイド「あとは、仕留めたウサギがあります。食べられる草も。奥で調理しますね」

兎の脂が火に落ち、香ばしい。
アリスは青緑色のふっくらした月を見上げる。

アリス「城へ戻れないのは、私が親を殺めたと思われているからでしょうか」

 しかしその声はロイドに届かない。あえて答えを保留しているようでもあった。
 アリスは腰のホルスターから拳銃を抜く。エングレーブが月明かりに妖しく光る。

アリス「手に馴染む」

 月は位置を変える。
 アリスとロイドは兎肉にかぶりついた。

場面転換。シドの夢。

まだ髪を短くしていた頃のシドが、森の道を上司と歓談しながら歩いている。鎧を着た騎士たちも一緒だ。シドも騎士だった。
しかし小さな村が見えてきた辺りで止まる。上司は下卑た笑みを浮かべて何事か言う。
周りの騎士たちが声を立てて笑う。シドの歯噛み。
(照明が赤くなる)
気づいたとき、騎士たちは周りに倒れており、胴と首がおさらばしていた。

場面転換。城の正門前に座り居眠りしていたシドが、後頭部を銃口で小突かれる。振り向くとレオンがいた。

シド「なんだ、あんたか」
レオン「七人隊は動いたか」
シド「さっき連絡があったよ。そろそろ俺も行かねえとな」
レオン「ロイドに油断するなよ。一騎当千のつわものだ。跳んだりはねたりしながら撃つ」
シド「ジャムらねえの?」
レオン「光線銃だ。科学者がロイドに合わせてこしらえた。しかし、わしに言わせればロマンがない。正しく構えて、撃ち、薬莢の落ちる音に士気を鼓舞される。それがいい」
シド「第二軍は、ロイドが王女を拐かしたと言うのだろう」
レオン「ああ、しかし第一軍は、第二軍が議会に踊らされていると言う」

シド、ほこりをはたいて立ち上がる。

シド「ロマンなら俺にもあるぜ」

シド、剣の鞘をカチリと鳴らす。
七人隊は魔力を武器に込める。

シド「じゃあな、レオン。あんたも血が熱くなったら来いや」

シドは石段を降りていく。
レオンは銃のスライドを下げ、そこに薬莢があるのを確認してから、スライドをそっと戻した。

場面転換。広野。シドが地を浮くように走っている。魔力を用いた高速走行である。
しかし立ち止まり、バテて息を切らす。
背筋を伸ばし、固まった微笑を浮かべながら。

シド(やべえ、糧食を忘れたぞ)

ふと、地面が屋根のように張り出しているのを見つける。
何かあるかもしれない。シドは歩み寄っていく。と、その後頭部に銃口が突きつけられる。

ロイド「七人隊隊長、シドだな」


シド、ゆっくり手を上げる。

ロイド「仲間はどこだ」
シド「別行動だ。ロイドだな、あんた」
ロイド「頭を吹き飛ばす。用意はいいか」

シド、慌てる。

シド「待て待てッ。めっちゃ腹減ってんだよ」
ロイド「熊か」
シド「みたいなもん。それとなあ、ロイド。俺の部隊は閑職ゆえに自由度が高いんだ。なにも、あんたらに危害を加えるつもりはない。俺はどっちかつーと、第二軍のクーデターと読んでてね」

そこへ王女の声。

アリス「ロイド! その方は大丈夫です。初対面ではありません。軍事調練のとき、なにかとお世話していただきました」
シド「ほら、な」

ロイド、銃を下ろし、シドの背中を小突く。

ロイド「妙な動きをするなよ。承知せんぞ」
シド「しねえってば」

シドは十分な量の缶詰めと、水筒の水を飲む。

シド「ごっそさん。ずっとここにいたのか」
ロイド「近くに来た何人かは、狩りをさせてもらった」

 ロイドの背中の向こう、穴の奥に幾人かの死体が折り重なっている。
シド、総毛立つ。

シド「俺は、人畜無害だから。お前さんら、そろそろ動かないとだろ。俺が味方になるよ」
ロイド「ほお(意外そうに)」
アリス「大丈夫です、ロイド。背中を預けられるお人です」

ロイド、シドをじっと見据える。

シド「はは、背中がかゆいね、どうも」
ロイド「いいだろう。ついてこい」
シド「張り切ってお供させていただきます!」

三人の旅が始まる。なんやかんやある。アリスがキノコを見つけ、シドに食べられるか尋ねる。ロイドが地図を広げる。ミュージカル。

いっぽう、七人隊はばらけて王女を探していた。カサゴ、ミカゲ、イワノフが一緒に行動している。

カサゴ「どこにもいねーですよ。もう第二軍が捕まえたんじゃ」
ミカゲ「無駄口叩くな」

ふと、緩やかな崖を登ってくる三人を見つける。

カサゴ「(口を大きく開け)ああ!」
ミカゲ「シド!」
イワノフ「んあ? どしたんじゃ、いったい」
カサゴ「見事に二人とも捕らえたわけですね、隊長!」
シド(気まずそうに)「いや、そういう訳じゃ」
ミカゲ「捕まったのかい!」
シド「いや、ちがう」
アリス「シドさんは、私たちの仲間です」

双方、にらみ合い。

ミカゲ「悪いけどねシド。王女の身柄を確保、ロイドを捕らえよて指示がでてね」
シド「おいちょっと待て、おめえら!」
ロイド「やはり我々を誘導したな」
シド「ちゃうって!」
アリス「ひどい、騙すなんて!」

ミカゲ、ナイフを構える。カサゴは刀に手をやり、イワノフはスコープのついた銃を構える。

シド「おとーさんは君たちをそんなふうに育てた覚えはありません!」
ロイド「どうするのだシド。頭を撃ち抜こうか」
シド「しかたねえっ! ちっと暴れるぞ、てめえらッ!」

戦闘が始まる。シドは双方に負傷者が出ないように動く。やがて、エンジン音が近づいてくる。第二軍の車両だ。

第二軍の兵士「こらあっ! お前ら何をしとるかッ。と思えば王女様ご一行か。みんな、やるぞっ!」

 シド、ミカゲと目を交わす。

シド「ロイドさんよ。敵の敵は味方、てことで。蹴散らすぞ、第二軍」
ロイド「信用させてもらおうっ!」

ミカゲ、カサゴ、イワノフが、第二軍に狙いを定める。
激しい戦闘の末、第二軍を追い返す。

ミカゲ「隊長~。なにやってんの、あんたは」
シド「すまんすまん。腹が減ってたところへお食事をいただいて」
ミカゲ「熊か」
シド。「お前もそう思うか」

アリス、吹き出す。

カサゴ「いや相変わらずの剣裁きで、シド隊長。これからどうします」
シド「第二軍に牙をむいちまったからな。王女様についてくよ」
カサゴ「つっても、いつまで逃げても状況は変わりませんぜ」
シド「そこでだ。アリス王女」
アリス「もう王女じゃありません」
シド「おうさ。なら北西の隣国を目指そうぜ。亡命だ亡命」
アリス(胸の前で手を握り)「亡命……」
ロイド「いや、それが一番安全かもしれません。ミシュラ国には知己の者もおります」
アリス(うなずく)「そうですね、そうしましょう」

場面転換。議会。
円卓を十人の議員が囲んでいる。

議長「あー、先ほど、連絡が入った。第二軍が撤退したそうだ。そこには七人隊の姿もあり、何やら王女に味方していると」
議員「なぜそうなるのやら」
議員「独立性の高い部隊ではあるが。なんということだ」
議員「七人隊を使役しようと申したのは、あなたでしたな。ニングベル殿」
議員ニングベル(冷や汗をかきながら)「はっ」
議員「手綱を握れぬとは」
議員「七人隊が味方しているとなれば、王女の捕縛は至難になりましたな」
議員ニングベル「大軍を動かさねば、仕留められぬかと」
議員「軽々しく言うな。既に第二軍は三割が王女捕縛の任に就いている」
議員「とはいえ、人海戦術となりますか」
議員「やむを得まい。第一軍は任務をボイコットしておる。第二軍を全て動かしましょう」
議長「どうやら、それが良さそうだな。レオンに率いてもらおう。これでやつらは終わりだ」

場面転換。滝のある小川。王女たち、銘々が休んでいる。
王女、素足を小川の流れに浸している。彼女は自分の指にはまった金色の指輪を太陽に照らして眺める。
そこへロイドが声をかける。

ロイド「その指輪は」
アリス「ああ、これは、城に来た大道芸人の一人、五歳のかわいらしい男の子にもらったのです。私を守ってくれるでしょうと」
ロイド「なにやら、人を惹き付ける魅力があります」
アリス「ねえロイド。私は隣国で生きていけるかしら」
ロイド「私たちは追われているがゆえに、忘れていることがたくさんあります。いずれ」
アリス「いずれ、何?」
ロイド「あなたのご両親の死が、あなたを暗闇に引きずり込むやも知れません」
アリス「馬鹿言わないでロイド。私は父と母がいなくなる悪夢を、見てこなかったわけではありません。でも、弔いは、落ち着いたあと、厳かに行いたいわ。そうでなくては、浮かばれませんもの」
ロイド「そうですね」

七人隊、川で泳いだり、武器の調整をしている。
そこへ木々の奥から三人の人物が現れる。
七人隊の残るメンバーである。
彼らはシドを見つけて、声をかける。

ヒツギ「悠長に水遊びか、隊長」
シド「お前らか。よく見つけたな」 
リギー「迂闊ね。痕跡ならいくらでもあったわ」
シド「糞とか?」
ディトス「がはは。そんなところだ。サイコロでもふらねえかい」

ディトス、手中で三個のサイコロをもてあそんでいる。

シド「ディトス、茶碗よこせ」

ディトスは腰の袋から、茶碗を取り出して渡す。シド、真剣な目で三個のサイコロを茶碗に放るが、一個が茶碗の外にこぼれる。

ディトス「糞の次はしょんべんか」

場面転換。騒がしい王城。
レオンの周りだけは静まり返っている。
レオンが的に向けてS&WM500みたいな大口径の銃を撃つ。米粒のように遠い皿が弾け跳ぶ。
そこへニングベルが現れる。

ニングベル「見事なものですな」

レオン、振り返る。

レオン「何か用か」
ニングベル「ああ、いや。議会からレオン殿に指令がおりた。第二軍全軍を差配し、王女を捕らえよと」
レオン「……」
ニングベル「うう、ああ……」
レオン「七人隊が離反したと聞いた。離反とも呼ばぬかもしれぬが。第二軍の差配、ニングベル殿に譲ろう」
ニングベル「は……?」
レオン「不満があるか。第二軍と議員が怪しい話をしていた。私はこの城を守ろうと思う」
ニングベル「不満は……」
レオン「強いとはいえ、たかが十人そこら。勝てぬ戦いではない。手柄を譲ろうと言うのだ」
ニングベル「は……はっ! 承知した! レオン殿が私を見込んで任せたと!」

ニングベル、ぎくしゃくしながら帰っていく。

レオン「(すました顔で)ふん……」

場面転換。
アリスたちは森を通ることになり、敵と戦いながら突破する。敵の軍用車を借り、草原を疾走する。

第二軍の軍用車とチェイスになり、ロイドが敵を撃ちながら突破する。

ロイド「第二軍が増援されたようだ」
シド「今さらかよ。嬉しいねまったく」

荒れ野を軍用車は走る。七人隊は浮き走りする。

シド「そろそろ国境が見えてくるところだ」

 しかし、運転手のシドは車を横滑りさせる。国境前に第二軍が先回りしていた。
 後ろからも第二軍が追い付いてくる。

シド「囲まれた」
ロイド「第二軍め」

そこへシドの聞き覚えある声がする。

ニングベル「王女の簒奪者! 聞こえるか! 降伏して王女を解放しろ! わしは許さんぞ!」
シド「(ロイドに向けて)昔の上司だ。汚え仕事に送り出されて、俺は味方をあやめた。南の動乱があった頃の知り合いだ」
ロイド「いいヤツなのか」
シド「どうでもいいヤツだ」
ニングベル「返事がないな! 良かろう! 攻め滅ぼしてくれる! 行くぞ!」

第二軍、動き出す。シドは運転を任され、ロイドが車から銃を撃つ。七人隊も各々の戦い方で動き出す。
しばらく戦ったとき、シドたちの車の下から青い光が爆発し、車は動かなくなる。

シド「魔法だと。なぜこの国の軍人が。つーか誰が」
???「ここだ! シド・バルロック!」

シドたちが視線を向けると、国境を固める第二軍の前に幼い男児が立っている。不敵な笑みで。

シド「誰だ!」
アリス「あれは、城に来た五歳の! この指輪をくれた!」
シド「指輪だと!」
???「私はアレイスター・クロウリー。ここまで指輪を持ってくるとはな、アリス王女! 無知な貴様らに教えてやる。城を破壊したのは私だ。城に忍び込んで、射程距離からその指輪の魔力を解き放った!」
シド「クロウリーだと! マジで輪廻転生したのか貴様! 南の動乱を扇動したあいつと、同じなのか!」
アリス「そんな、するとあなたが、私を利用して、お父様とお母様を!」
クロウリー「どうした、憎かろう! その憎しみ、ここまで届かせて見せろ!」
シド「大丈夫だ。その指輪の魔力は使い果たされている。どこかへ投げとけ」

アリス、悔しそうに指輪を投げる。

クロウリー「ふん、しゃべりすぎたな。魔法を見せてくれよう!」

クロウリー、本を開く。

クロウリー「主の御使いは、柴の間に燃え上がっている炎のなかで彼に現れた。彼が見ると、見よ、柴は火で燃えているのに、柴は焼け付きなかったッ!」

シド「魔法だッ! 来るぞ!」

上空から火の矢が降り注ぐ。
魔法をかわしながら戦う。
長期戦になる。ジリ貧である。そこへ、何台もの軍用車が走ってくるのを見る。

シド「増援か! 万事休す!」
ロイド「いや、あれは」

軍用車の屋根にレオンが乗っている。第一軍だった。

ロイド「我々の援軍だ!」
ニングベル「な、なんだと! レオン、計りおったな!」
レオン「何を言うか! そこのクロウリーと一緒に、計りおったのは貴様らだ、議会の犬の第二軍!」

戦いは有利に展開し始める。カサゴは銃弾を弾きながら居合で仕留め、ミカゲは魔力線(魔力の込められた糸)を閃かせる。ヒツギは敵の影から影へと移動し、喉首をかききっていく。イワノフはいつのまにか遠くの丘におり、狙撃銃で敵を狙い撃つ。ディトスは拳で戦い、リギーは敵の動きと自分の動きを同調させ、敵の喉首をかき切っていく。
長い長い死闘の末、とうとう敵は総崩れとなる。

ニングベル「くそっ。なんということだ! くそーーっ!」

アリスを乗せた軍用車が、こちら側の国境を抜ける。

ニングベル「第二軍! あとを追え! 誰もおらんのか!」
レオン「おらんよ」

レオン、ニングベルの背後から銃口を突きつける。

レオン「今ごろ、俺の部下が議会を解散させている。力ずくでな。議員ニングベル、戦犯として連行する」

ニングベル、失禁して倒れる。

緩衝地帯を軍用車が走る。

アリス「クロウリーは、どこへ」
シド「すっかり逃げやがったな」
ロイド「シド、お前も逃げるのか」
シド「そういうわけにはいかんな」

車を止め、降りるシド。

シド「うちに用があったらいつでもご連絡を。お待ちしてますぜ」

ロイド、運転を変わる。
車は走り出す。

ロイド「アリス様。見てください、赤い夕日です」
アリス「……」
ロイド「これから先は、心配なきよう。向こう側の国境が、見えてまいりました」
アリス「(寝息を立てる)」
ロイド「疲れてしまわれましたか。おやすみなさい、アリス」

 城への帰途につく第一軍と、七人隊。赤い夕日に草原が燃えるようだ。
一転して青く暗い照明。
墓前に花束を手向けるアリス。

物語は終わる。

パンナコッタ革命

革命後の調印式はパンナコッタ地方で行われました。

パンナコッタ革命

ファンタジーの脚本です。 お気軽にどうぞ。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-24

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