霊能探偵・芥川九郎のXファイル(44)【警視庁の特別係編】
第1章 警視庁の特別係
霊能探偵・芥川九郎は、中区にある彼の事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
芥川「東京の警視庁から、特別係の人が来るのは今日だっけ?」
牧田「うん。僕は今日、そのためにここへ来たんだよ。京子から、彼らの言動や動向を報告するように言われているんだ。」
芥川「気乗りしないけど、京子からの依頼だから仕方ないね。」
京子は愛知県警の刑事である。牧田は元刑事で、彼女の元同僚だ。数年前に退職し、今はフリーランスとして活動している。
芥川「警視庁の特別係・・・聞いたことないけど、どういう係なんだい?」
牧田「なんでも、普通の部署では対応できない怪奇事件を担当しているという噂らしいよ。」
芥川「噂って・・・警視庁の正式な部署ではないっぽいね。」
牧田「これも噂だけど、その特別係の左京さんは、警視庁随一の狂人らしい。」
芥川「狂人・・・その人は一体、何をしでかしたんだろう?」
牧田「それは知らないけど、今日ここに来る目的は明瞭だから、そんなに心配する必要はないだろう。」
芥川「先日、焼肉屋で起こった石焼きビビンバ事件についてだね。」
牧田「大した事件じゃないけど、東京で暗躍する魔物・魔人69面相が犯人だからね。怪奇事件を担当する特別係として、事情聴取をしたいんだろう。」
先日、芥川と牧田は友人・知人らと焼肉・牛魔王へ行ったのだが、芥川はラストオーダーで注文した石焼きビビンバを、彼に変装した魔人69面相に盗まれたのだ。
第2章 能年君の淹れたコーヒー
しばらくすると、噂の特別係が事務所にやって来た。
左京「こんにちは。警視庁特別係の左京です。今日はよろしくお願いします。」
鶴田「同じく鶴田です。お忙しいところ、事情聴取に応じていただいて、本当にありがとうございます。」
芥川「いえいえ。東京からはるばる、ご苦労さまです。」
牧田「どうぞ。座って話しましょう。」
左京「どうもありがとう。」
鶴田「すいませんね。」
左京と鶴田はそれぞれ、牧田に勧められたイスに座った。
芥川の助手の能年(鎧)が淹れたてのコーヒーを4人分、ゆっくりと運んできた。能年は鎧の妖怪で、芥川の事務所に住み込みで働いている。
芥川「能年君、ありがとう。」
牧田「ありがとう。いつも悪いね。」
左京「どうもありがとう。」
鶴田「どうも。いただきます。」
四人はそれぞれ、コーヒーを一口すすった。
左京「これは・・・おいしい!鎧の妖怪が淹れたとは思えない。すばらしい!!」
左京に褒められて、能年(鎧)は照れているような仕草をした。
第3章 左京の霊丸拳銃
左京は少し興奮して能年(鎧)に言った。
左京「能年君!君、警視庁に入りなさい。君なら立派な警察官になれますよ。我々と一緒に、東京で怪奇事件を解決しましょう!!」
鶴田「左京さん、落ち着いてください!能年さんは、芥川さんの助手ですよ。」
左京「名古屋くんだりの、こんなみすぼらしい事務所で働くよりも、東京の警視庁で働く方がよいでしょう。」
左京の無礼な発言に、芥川は激怒した。
芥川「東京の警視庁から来た狂人が、調子に乗るなよ!特別係だかなんだか知らないが・・・」
芥川がそう言って立ち上がった瞬間、左京は懐から拳銃を取り出し、芥川に銃口を向けて言った。
左京「侮辱は許しませんよ!特別係は狂人の隔離部屋ではありません!!」
さすがの芥川もあっけにとられて言った。
芥川「誰もそんなこと言ってませんが・・・」
鶴田「左京さん、やめてください!とにかく、落ち着いてください。」
牧田「左京さん。その拳銃は・・・」
落ち着きを取り戻した左京は、拳銃の説明を始めた。
左京「これは私が独自に開発した霊丸拳銃です。霊力を調整をすれば、魔物だろうと人間だろうと、一発で仕留めることができます。」
牧田「左京さんも霊能力を有する、能力者だったんですか。」
芥川「とりあえず、話を本題に戻しましょう。左京さんたちは魔人69面相について調査するために、わざわざ東京からここまで来たんですから。」
第4章 左京と芥川の推理合戦
左京はコーヒーを一口飲んでから言った。
左京「そうでした。私としたことが・・・申し訳ありませんね。」
牧田「それでは、先日、焼肉・牛魔王で起こった石焼きビビンバ事件の経緯をお話します。」
牧田は、左京と鶴田に事件の概要を説明した。彼の話を神妙に聞いていた左京がつぶやいた。
左京「魔人69面相は何のために、芥川さんの石焼きビビンバを盗んだんでしょう・・・」
芥川「魔人69面相は、どうしても石焼きビビンバを食べたくて、我慢できなくて、魔が差した・・・魔人だけに。」
左京「石焼きビビンバは、普通のビビンバと何が違うのでしょうか?」
牧田「石焼きだから、器が違いますね。」
左京「そうです。魔人69面相はきっと、石焼きビビンバの器がほしかったんですよ!」
芥川「器さえあれば、自宅で石焼きビビンバが作れますからね。」
左京「石焼きビビンバとは限りませんよ!チャーハン、ピラフ、焼きカレー、ドリア、リゾット・・・」
鶴田「左京さん、ご飯ものだけじゃないですよ。麻婆豆腐、スンドゥブチゲ、クッパ、サムゲタン、すき焼き、味噌煮込みうどん・・・」
芥川「他にも、ステーキ、ハンバーグ、餃子、焼きそば、あんかけスパゲッティ・・・」
鶴田「さすが左京さん!魔人69面相の動機を解明できましたね。」
牧田「・・・・・・」
左京と鶴田はそんな話を一通りした後に、東京へ帰っていった。牧田はため息をついて言った。
牧田「はぁー。狂人とまでは言わないけど、噂通りの変人だったね。」
芥川「いや。なかなかの人物だった。」
芥川は腕を組み、頭の中で左京との会話を反芻していた。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(44)【警視庁の特別係編】