霊能探偵・芥川九郎のXファイル(43)【石焼きビビンバ事件編】
第1章 八田さんの予知能力
霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「今日の夜、守屋先生が焼肉をおごってくれるんだ。牧田君も一緒に行こうよ。」
牧田「守屋愛が・・・何かのお礼でかい?」
守屋愛は魔法学会から追放された危険な魔術師である。芥川と彼女は過去にいろいろ因縁がある関係なのだが、今はビジネスパートナーとしてお互いに利用し合っている。
芥川「八田さんの予知能力のおかげで、大儲けしたらしい。」
牧田「へえー。さすが八咫烏の八田さんだね。」
八田は先日、芥川に捕縛された八咫烏である。普段は人間の姿に化けて、八田硝子という名前で生活している。
芥川「僕が八田さんと鬼塚君をトレードしてくれたおかげだってさ。本当に嫌味なことを言うお人だよ。」
芥川は素直に命令を聞かない八田に手を焼き、守屋の提案により、彼女の手下の悪鬼・鬼塚と八田をトレードしたという経緯がある。
牧田「焼肉かぁ。食べたいけど、八田さんと鬼塚君のトレードの件と直接関係ない僕が、一緒に食べにいってもいいのかな?」
芥川「守屋先生は相当儲けたんだろうね。友だちも連れて来なさいだってさ。」
第2章 焼肉・牛魔王
芥川はコーヒーを一口飲んでから言った。
芥川「そうだ。野鳥観察会に僕を誘ってくれた真里さんも連れて行こう。」
明智真理は東京の霊能探偵・明智光太郎の娘である。彼女は東京から家出して芥川のところに来た時に、能力者として覚醒した。今は名古屋で一人暮らしをしている。
牧田「そうだね。それはいい考えだと思うよ。」
芥川は真理に誘われて野鳥観察会に参加し、その際に式神を使って八田(八咫烏)を捕縛したのだ。
芥川「せっかくの機会だから、たくさん飲んでたくさん食べよう。」
牧田もコーヒーを一口飲んでから言った。
牧田「それで、どこの焼肉屋に行くんだい?」
芥川「焼肉・牛魔王で飲み放題・食べ放題のコースだと言ってたよ。」
こうして芥川と牧田、それに真理は、日が暮れてから焼肉・牛魔王を訪れた。店の前にはすでに、守屋と八田が待っていた。
芥川「こんばんは、守屋先生。お待たせして申し訳ありません。こちらは、牧田君と明智真理さんを連れて来ました。」
牧田「今日はありがとうございます。」
真理「ごちそうになります!」
守屋「私たちも今来たところよ。さぁ、入りましょう。」
八田「・・・・・・」
一行が店に入り、守屋が店員に名前を告げると、テーブルまで案内してくれた。守屋がきちんと予約していたようだ。
芥川「さっそく飲み物と肉を注文しよう。」
牧田「おいしそうだねぇ。」
五人はメニューを見ながら、注文用タブレットでお酒やソフトドリンク、そしてお肉をどんどん注文した。
第3章 鬼塚君と甘利さん
注文したお酒やソフトドリンクが運ばれてきた。その後に、お肉もどんどん運ばれてきた。芥川はとりあえず生中を飲み干すと、次からは酎ハイを頼んで飲んでいる。牧田は最初に注文した生中を少しずつ飲んでいる。真理と八田はソフトドリンクだ。守屋は梅酒、焼酎、それに日本酒など、いろいろ飲んでいる。みんな好きな肉をどんどん焼いては食べている。
真理「焼肉、おいしいですね。」
牧田「うん。うまい。」
五人が食べたり飲んだりしていると、隣のテーブルに男性二人組が店員に案内されてやって来た。
甘利「あれ?芥川先生と牧田さん。奇遇ですね!」
鬼塚(鬼)「ガルルッ!」
隣のテーブルに来たのは甘利と鬼塚(鬼)だった。甘利は悪霊に取り憑かれ、深夜の久屋大通公園を全裸で走っているところを、芥川に除霊された男だ。
牧田「甘利さん、こんばんは。本当に奇遇ですね。」
芥川「こんばんは、甘利さん。約束通り、鬼塚君に肉をごちそうしているんですね。」
芥川たちは除霊後に甘利の部屋へ行ったのだが、そこで大量の違法ポルノを発見した。それを見た芥川は激怒したのだが、牧田になだめられて、甘利が大食いの鬼塚(鬼)に肉をおごるという条件で矛を収めたという経緯がある。
甘利「鬼塚さんはここの焼肉が大好物なんです。私たちはよくここに来るんですよ。もちろん食べ放題で。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
第4章 消えた石焼きビビンバ
芥川、牧田と真理、守屋と八田、そして甘利と鬼塚(鬼)も加わり、七人はいろいろ話しながら、食べたり飲んだりしていた。
守屋「そろそろラストオーダーよ。」
牧田「もうお腹いっぱいです。」
芥川「最後に石焼きビビンバを食べよう。」
芥川の提案で、七人は最後に石焼きビビンバを注文した。ビビンバが来るまで、みんな残っているお酒やドリンクを飲んだり、トイレに行ったりした。しばらくすると、店員が石焼きビビンバを持ってきた。
真理「石焼きビビンバが来ましたよ。」
牧田「おいしそうだね。」
甘利「さっそく食べましょう。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
芥川「あれ?僕の分がないよ。1つ足りない・・・6つしかないぞ。」
店員「さきほど、芥川様とすれ違った際に、お渡ししましたが。」
芥川「えっ?そんなバカな!」
店員「その際に、お客様から名刺をいただきました。『私は霊能探偵の芥川です。怪奇事件に巻き込まれたらご連絡ください』と。」
芥川は店員から名刺を手渡された。確かに芥川の名刺だ。しかし、彼は名刺の裏を見て驚愕した。
芥川「魔人69面相・・・やられた!魔人69面相の仕業だ。僕の石焼きビビンバが盗まれた!!」
真理「本当ですか!?」
魔人69面相は東京で暗躍している魔物である。真理の父である東京の霊能探偵・明智光太郎の宿敵だ。
第5章 魔人69面相の名刺
芥川以外の六人は、石焼きビビンバを食べながら話していた。
真理「魔人69面相がとうとう、名古屋にまでやって来たんですね。」
牧田「真理さんのお父さん・明智先生が東京で追っている魔物だね。」
守屋「魔人69面相・・・東京の霊能探偵たちが執念深く捜索しているんでしょ?いまだに捕まえられないのね。」
甘利「なんでまた、石焼きビビンバなんて盗んだんでしょう?わざわざ芥川先生に変装して。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ?」
芥川「きっと石焼きビビンバを、どうしても食べたかったんだろう。」
八田「・・・バカがまたバカなことを言ってる。」
八田の言葉を聞いて、芥川が激高した。
芥川「八田!人をバカにするのも大概にしろよ!!カラスの手羽先にするぞ、この野郎!!!」
牧田「芥川君!落ち着いてくれ!!」
守屋「芥川君!やめなさい!!」
八田「芥川。うるさい。」
八田はうつむいて表情を隠しているが、明らかに芥川をバカにして喜んでいる。
芥川「・・・クソッ!小賢しいカラスが。しかし・・・」
芥川は魔人69面相の名刺を見つめながら、静かにつぶやいた。
芥川「こいつは、名古屋に何をしに来たんだろう?」
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(43)【石焼きビビンバ事件編】