霊能探偵・芥川九郎のXファイル(42)【モッチョリンさん編】
第1章 モッチョリンさん
霊能探偵・芥川九郎は、中区の事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
芥川「最近、若者の間でモッチョリンさんがまた流行っているらしいね。」
牧田「モッチョリンさんって・・・何のことだい?」
芥川「牧田君は知らないのか、モッチョリンさんを。まぁ、無理もない。昔、オカルト好きの間で流行った遊びだからね。」
牧田「モッチョリンさんは、オカルト的な遊びなのかい?」
芥川「地域や時代によっていろいろなバージョンがあるんだけど・・・一番ポピュラーなやつを説明しようか。」
牧田「うん、教えてよ。」
芥川「まず紙を用意して、上部に赤ペンでドーナツのような二重丸を書く。右側にYES、左側にNOと書く。下部には0〜9の数字とあ〜わの文字を書く。これを使用して降霊術を行うんだ。」
牧田「降霊術か。確かにオカルトだね。」
芥川「ドーナツの位置にスロットのメダルを置く。参加者全員の人差し指をメダルに乗せる。『モッチョリンさん、モッチョリンさん、どうか答えを出してください。いらっしゃるならYESへお進みください』と唱える。メダルが自然にYESへ動けば成功だ。」
牧田「呼び出した霊が質問に答えてくれるんだね。」
芥川「そう。聞きたいことを質問すれば答えてくれる。」
第2章 恐ろしい悪霊
芥川はコーヒーを一口飲んでから言った。
芥川「本当は、遊び半分で降霊術をやってはダメなんだけどね。」
牧田「恐ろしい悪霊を呼び出してしまったら、大変なことになりそうだね。怪談や都市伝説にありそうな話だ。」
芥川「怪談ではなくて、実際に事件が起こっているんだ。最近、深夜の久屋大通公園を全裸で疾走する男がいるという噂を聞いたことがあるだろう?」
牧田「えっ!あの噂は本当なのかい?」
芥川「どうやら本当らしい。正確に言うと、全裸ではない。性器が見えないように、ちゃんとドーナツがアソコに刺さっているらしいんだ。」
牧田「その男は、モッチョリンさんに取り憑かれているのかな?」
芥川「うん、多分そうだろう。その全裸マンのアソコに刺さっているドーナツはきっと、ミセスドーナツのドーナツに違いない。」
牧田「恐ろしい悪霊だね。」
芥川「今夜、そいつを捕まえる予定なんだ。牧田君、一緒に来てくれ。あと、今回は能年君ではなくて、鬼塚君に手伝ってもらうよ。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ!」
能年は鎧の妖怪である。芥川の助手として、彼の事務所に住み込みで働いている。鬼塚は魔術師・守屋愛の手下で、力の強い悪鬼である。守屋は魔法学会から追放された危険な魔術師だ。芥川と彼女は、ビジネスパートナーとしてお互いに利用し合っている。ちなみに、鬼塚(鬼)は現在、芥川の下で働いている。
牧田「今日は、能年君は外出中かい?」
芥川「うん。叔母さんと買い出しに行ったよ。鬼塚君が肉をたくさん食べるから、業務スーパーに行くと言っていた。」
牧田「そうか。大変だね。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
第3章 深夜の久屋大通公園
その日の深夜、芥川と牧田、それに鬼塚(鬼)は久屋大通公園を巡回していた。
芥川「この辺りは、深夜になると人通りが少ないね。」
牧田「そうだね。全裸マンが走っていても、気づく人は少ないかもしれないね。」
芥川「昼間に人通りの多いところでやれば、すぐに捕まるのにね。」
牧田「捕まらないように、ちゃんとTPOをわきまえているのかな。」
芥川「悪霊の霊気を探知すれば、全裸マンが今どこを走っているのか、おおよそ見当がつく。近くにいるね。」
牧田「もしかしてアレかい?」
牧田が指差した方向に目をやると、確かに誰かが一生懸命に走っている。よく見ると裸だ。
芥川「よし!捕まえよう!!」
三人はそれぞれ、別の方向から全裸マンに近づいた。疾走する全裸マンが気づいた時には、完全に行く手を阻まれていた。
全裸マン「!?」
牧田「止まれ!!」
鬼塚(鬼)「ガルルッ!!」
芥川「悪霊!退散!!」
芥川は退魔の法術を唱えた。聖なる光が全裸マンの胸を貫通し、悪霊に取り憑かれていた男はその場に崩れ落ちた。
第4章 全裸マンの正体
しばらくすると、男の意識が戻った。
男「・・・ここは?」
牧田「大丈夫ですか?あなたはモッチョリンさんに取り憑かれて、深夜の久屋大通公園を裸で走っていたんですよ。」
男「あなた方は?」
芥川「私は霊能探偵の芥川です。ご自宅までお送りしましょう。あなたのお名前は?」
男「ありがとうございます。私は甘利と申します。」
芥川たちは、牧田の運転する車で甘利を彼の住むアパートまで乗せていった。そして、芥川たちは渋る甘利をなだめすかして、彼の部屋に上がり込んだ。
牧田「これは・・・」
芥川「・・・・・・」
芥川たちは甘利の部屋を見て驚愕した。違法ポルノが部屋中に陳列されていたのだ。
牧田「甘利さん。まさかあなた・・・」
甘利「違うんです。みんな、モッチョリンさんがやったんです・・・私は知りません。」
芥川「鬼塚!こいつを縛り上げろ!!」
鬼塚(鬼)「ガルルッ!!」
第5章 牧田の提案:解放の条件
芥川は、鬼塚(鬼)にきつく拘束された甘利に向かって言い放った。
芥川「僕の友人に、人間を解体したいという欲望を持て余している奴がいる。彼にこいつを解体してもらって、鬼塚君の食べる肉にしてもらおう。」
芥川の恐ろしい話を聞いた甘利は、必死で弁明した。
甘利「違うんです!みんな偽物です。本物もありますが、ネットで買っただけです。助けてください!反省します。これからは心を入れ替えて生活しますから。」
芥川「お前が反省しようが心を入れ替えようが、どうでもいいんだよ!鬼に食わせる肉が必要なんだ!!」
牧田は慌てて芥川を説得した。
牧田「芥川君!落ち着いてくれ!!さすがにそれはまずいだろう。甘利さんの部屋にあるコレクションは少々いかがわしいけど、君のやろうとしていることはとんでもない凶悪犯罪だよ。」
芥川「しかし、牧田君。鬼塚君の食べる肉が必要なんだよ。ちょうどいい機会じゃないか。」
甘利「助けてください!信じてください!!お願いします!!!」
牧田「ぞれじゃあ、甘利さんにはしばらくの間、疑いが晴れるまで、鬼塚君のためにお肉を買ってごちそうするという条件を飲んでもらいましょう。それでいいかな、芥川君。」
芥川「・・・牧田君がそこまで言うなら仕方ない。鬼塚君、甘利さんを解放してくれ。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
鬼塚(鬼)が甘利を解放すると、甘利はその場に力なく座り込んだ。
甘利「た・・・たすかった。」
芥川は完全に納得していないようでムスッとしていた。牧田は芥川の言動にあきれていたが、よくあることなので何も言わずに黙っていた。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(42)【モッチョリンさん編】