映画『スーパーマン』レビュー
DCの知識はほとんどありません。バッドマンの映画をつまみ食いで観ていた程度です。
スーパーマンについても基本設定や主要な能力を認識しているぐらいで、彼が現れたらどんな難問も万事解決。ゆえに、ストーリーの展開も「その無敵っぷりにどうリミッターをかけるかで話を盛り上げるぐらいでしょ?単純すぎ」な舐めプな態度を私は取りがちで、『ガーディアンズ・ギャラクシー』シリーズなどを手掛けたジェームズ・ガン監督が脚本、制作を務められたという情報を取得していなければ正直、本作を観ようとは決して思わなかった。監督への信頼ありきで劇場へ足を運んだ次第です。
個人的に、総合的なエンタメ作品を作らせることに関してジェームズ・ガン監督の右に出る者はいないと思っています。
映像の迫力のみで逃げ切ろうとする力技に頼ることなく、スクリーンの向こう側で苦闘する登場人物にスポットを当て、その背景事情を台詞や行動又は関係性といった情報から想像させ、とくとくと脈打つ彼や彼女の内面へと観客の意識を自然に誘う。シネマに覚える没入感を生み出すお手本のような演出、その仕掛け方が抜群に上手い。
本作においてもその手腕は遺憾無く発揮されていて①冒頭から無敵を誇るスーパーマンがフィジカルでボコボコにされ、②必死に守ろうとする人々がSNSで行う誹謗中傷などの精神攻撃にイラつき、ちっとも完璧じゃない面を露わにする。付き合い始めたばかりのロイス・レインとは激しく口論。その内容も、自衛権を有する国家単位で営まれる地球の秩序に収まりきれない『スーパーマン』の異常性を浮き彫りにし、観てるこっちも思わず頭を抱えてしまうクリティカルな視点を劇中にセッティングします。
スーパーマンという存在自体に疑問を投げかける方向に傾いていくストーリーも「私たちは、どうやって彼と付き合えばいいのだろう?」というクエスチョンを観る側に投げかけ、劇中の中で逃げ惑う市民の姿と激しいリンクを見せる。それが「共存」というホットなテーマの提示と理解できた頃にはもう頭がすっかり『スーパーマン』。グリーン・ランタンといった極めて現実的なヒーロー稼業の描写にも背中を預ければ、DCワールドの面白さに心も体も浸かっている。その最後の仕上げとばかりにヒーロー映画でおざなりになりがちな普通の人間が抱く様々な思いを本作の悪役、レックス・ルーサーが代弁するのを目の当たりにすれば、もう完全に虜。だって彼、計画が露見し、全てが台無しになった時に悔しがって泣いたんですよ?大体の悪役は観念するような項垂れ方をするのが定番なのに、レックス・ルーサーはそれを全くしなかった。その胸に燃え盛るエンビーは、その勢いのままスーパーマンへの憧れに転じる。なんという純度の高いヴィランの描写。そのクオリティに、私は震えるほど感動しました。その直前のカットで異星人であるスーパーマンがその内面にある「人間」性を語っていたから尚のこと、善にも悪にもなれる私たちの不確かさに思いは至ります。
個vs集団の構図は『マトリックス』などでも使われる定番のものではありますが、そこにエモの塊をたっぷりと乗せて高カロリーで仕上げる手腕はほんと流石のジェームズ・ガン監督。ヴィランが映えるほどヒーローが磨かれるというレシピのエッセンスをこれでもか!と味わえる逸品です。そんな彼が率いる新体制(ニューオーダー)のDCは、今月の26日に公開予定の『スーパーガール』で「誰もがヒーローになれる」という物語を見せてくれるそう。その中心にクリプトくんがいるのも非常にアチアチ。観なくても楽しめること必至でしょうが、観れば余計に楽しめるのも間違いなし。興味がある方は是非。UーNEXTなどの各サービスで配信中です。
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