zoku勇者 マザー2編・25

サマーズ編・2

もう一度、住宅街の人に色々と話を聞いて回る。どうやらストイック
クラブに入るには電話予約が必須らしい。
 
「よし、電話番号もちゃんと控えたぞ、後は此処に電話すりゃ
いいんだな、……それにしても手間が掛る……」
 
先程、装備品を買ったショップの公衆電話から急いでストイック
クラブに電話を掛ける。
 
……プルルル……
 
「通じたかな……?もしもし?」
 
『もしもし?わたし、リカちゃん!お電話有難う!今、ママと
お料理してるの!』
 
「……は、は……、は……」
 
どうやら電話を掛け間違えたらしい。
 
「ジャミル、その顔は……、間違えたね?」
 
「ち、ちげーよ!……す、すんません!間違えました!」
 
「間違えてんじゃないか……、いつもいつも言ってる事だけどね、
君は本当に少し落ち着いた方がいいよ……」
 
しかし、落ち着いたジャミルと言うのも中々想像が出来ない
モンでもある。
 
『なんだ、テメエ!ざけてんじゃねえぞコラ!……なーんて、
玉にはリカもこんなにお転婆になっちゃうの、えへっ!じゃあね、
クソお電話有難う!……ガチャン、ツーツーツー……』
 
「……」
 
ジャミルが一旦受話器を置いた。その顔には大量に冷や汗が滲んでいる。
 
「よっぽどマズイ所に掛けたね、君……」
 
「だから違うって……、えーと、次は真面目にと……」
 
「にゃーお、ごろごろごろ……、にゃあ~……」
 
「可愛ーい!猫さん、おいで!」
 
ジャミルが電話を掛けている間にアイシャは店の外で猫と
遊んでいる。一部始終をアイシャに見られていなくてほっと
するジャミル。
 
「も、……もしもし?」
 
『はい、ストイッククラブです、ジャミル様ですね?お電話での
ご予約有難うございます……』
 
「……今日の夕方、……じゃあ……、ふう~、たかが電話予約
入れるだけで……、何だってこんなに焦ってんだよ、俺は……」
 
「……プッ!」
 
「電話終わった?」
 
ジャミルが電話を掛け終え、再度受話器を置いたのと同時に
アイシャが店に入ってくる。
 
「ああ、今日の夕方に店まで来いとさ」
 
「そうなんだ、じゃあもう少し時間があるね、まだ15時
だものね、私、お腹すいちゃった!」
 
それまで何処かで軽食でも食べて時間を潰そうと言う事で、
トリオはショップを出るが。……店を出ようとした際に今度は
通信電話の方が鳴った。ジャミルは慌てて電話に出る。
 
「又、リンゴデブ……、アップルキッドからかな、
……もしもし?」
 
『アルベルト?……アルベルトかい?や、やっと通じた!
僕です、トニーです!』
 
「!?だ、誰だよ……」
 
『えっ!?ち、違うんですか!?』
 
やけにキラキラした様な、燥いだ感じの馬鹿でかい声が受話器の
向こう側から聴こえた。その声は側にいたアイシャとアルベルトの
耳にも聴こえた様子。
 
「ジャミル、ちょっと電話を貸して貰えるかな……」
 
「べ、別にいいけど、だから誰なんだ?」
 
「……スノーウッド寄宿舎にいた頃の僕の……、友達だよ……」
 
「そうなのか、初耳だな……」
 
「……」
 
ジャミルは戸惑いつつもアルベルトに受話器を渡した。何故か
困った様に顔が赤いアルベルト。
 
「コホン……、えーと、トニーかい?僕だよ、アルベルト本人だよ……」
 
『うわっ!アルベルト、アルベルトなんだね!?ぼ、ぼく……、
君の声が又聴けて……、凄く嬉しいんだ、うん、うんっ!うんっ!
あのね、ぼく、ア、アルベルトの事が心配で心配でいても立っても
いられなくて……、今回初めて君の所に電話を掛けてみました、
えへへ!でも、何で電話番号を知っているかというとね、
……内緒なんだ!』
 
「そ、そうなんだ、心配してくれて有難うトニー……、
寄宿舎を出てから色々あったけど、僕は元気でやっているから、
心配しないで……」
 
『うんっ!処で、さっき最初に電話に出た男の子は……、
誰なんだい?』
 
「一緒に旅をしている仲間のジャミルだよ、……通信電話の
持ち主のね」
 
『……そう、ちょっとその子と代って欲しいんだけれど……』
 
「分った、ジャミル……、トニーが君と話したいんだって……」
 
「え?又俺?」
 
アルベルトがジャミルに受話器を渡す……。いきなりでジャミルは
戸惑いの表情を見せた。
 
「仕方ねえ……、えーと、初めてだったな、俺はジャミル、
アルと一緒に旅してる奴さ、宜しくな……」
 
『あなたがジャミルさんですか、……初めまして、僕はアルベルトの
大親友のトニーです!大親友の!……トニーです!!アルベルトを
アルだなんて、あ、あなたは一体何処までの仲なんですか!?
……僕ですらまだ、そんな呼び方した事ないのに……!そ、それと……、
君、親友のアルベルトを危険な目に遭わせていませんか!?僕、
もう……、心配で心配で……』
 
嫌に、大親友の……の、処を強調してんなとジャミルは思った……。
何だかトニーの声が段々いじけ声になってきてるみたいだし、
かなりややこしい事態になっている様である。
 
「わりいけど、俺らこれから回る場所があってよ、忙しいんだよ、
だから用があんなら簡潔に……」
 
『ま、ま、ま、……回るですって!?何て羨ましい……、
僕ですらまだアルベルトと外出なんか一緒にした事が
ないのに!き、寄宿舎の規則がどれだけ厳しいか……、
あ、あなたは分かってるんですか!?』
 
「……あのなあ~……」
 
トニーは何だかハンカチを噛みながら悔しながらに喋っている
様な声になっている……。相手をするのに疲れが来たジャミルは
再び受話器をアルベルトに渡す。今回あまり出番の無いアイシャは
又猫とじゃれて遊び始めた。
 
「にゃあ~?にゃにゃにゃ、ごろごろ、ごろろろろ……」
 
「にゃーん、♪うふふっ!」
 
「えーと、もしもし?僕、アルベルトだよ、又電話を代ったよ、
僕は本当に大丈夫だからさ、時間があれば、もっと君と話したいん
だけどさ、何せこれから本当に行けなければならない場所があって……、
うん、うん、……うんうん、今度時間が空いた時は又ゆっくり電話
するから……」
 
『本当にかい!?お電話してくれる!?』
 
「うん、ちゃんと電話を入れるから……」
 
『じゃあ、アルベルト……、名残惜しいけど長くなっちゃうから
もう切るね……、又、元気な君の姿に会える事を願って、電話を
切ります……、では、アルベルトの大親友のトニーより……でした、
ガチャン、ツーツーツー……』
 
「はい……」
 
アルベルトが受話器をジャミルに返した。ジャミルはやっと
安心した様子で受話器をアルベルトから受け取るが。
 
「けど、又掛って来たりしねえだろうな、けど、スゲエな、
お前の知り合い……」
 
「今日は大丈夫だと思うけど、今後は分らないよ?時間が
空いた時は電話するって言っちゃったからね、まあ、悪い子
じゃないから仲良くしてあげてよ……」
 
「……」
 
明らかにトニーは何だか知らんが、自分に嫉妬心を燃やして
いる様な……、どうしてもそんな気がして脅えるジャミルで
あった……。それにしてもトニーがどうやってこの電話の番号を
知ったのか、謎である。

トリオはストイッククラブとやらに訪れる。此処での目的は
船長さんの奥さんを探し出して又マジックケーキを作る様に
話をする事なのだが……。
 
「て、言われてもな、俺ら、船長の奥さんがどんな人なのかも
分かんねえぞ、船長からちゃんと話を聞いとけば良かったかな……」
 
「毎日出入りしているんだから、お客さんは知っている筈よ、
誰かに話を聞いてみましょ!」
 
「……君達、ショーがそろそろ始まるぞ、席に着いて待ってなよ」
 
「ん?ショー?何だろうな……」
 
トリオは客に勧められ、空いている席に座る。取りあえずショーと
やらを見て行く事にした。
 
「お水でございます……、どうぞ」
 
メイドさんがトリオのテーブルに水を置いて行く。
 
「お冷か、サービスならせめてさ、麦茶ぐらい……」
 
「聞こえるわよ、ジャミルったら!」
 
高級レストランでのサービスと此処では接待が極端に違う。
当たり前だが。
 
「……」
 
何だかよく分からない大きな石がフロアにどーんと置いてある。
そして、店に訪れている皆はそれをしきりに眺めている。
アルベルトは席を立つと興味深そうに石に近寄って行った。
 
「おーい、まーたあいつは……、どうしてこう、自分が興味を
そそるモンを見つけると輝き出すんだか……、たくよう……」
 
「あの、お尋ねします、皆さんはこの石を眺めている様ですが、
何かとても珍しい種類の新種の石なんでしょうか、……ど、何処で
発見されたんですか!?」
 
……眼鏡を光らせ、段々とアルベルトが興奮気味になって来た。
客はその様子を見てぷっと吹きだした。
 
「いや、これは只の漬物石だよ」
 
「石に新種も珍種もないよ……」
 
「……え」
 
数分後、アルベルトが顔を赤くしてちょこちょこジャミル達の
席に戻って来た。
 
「で、何の種類の石だったんだ……?」
 
「……う、うるっさいなあ~、ほおっておいてっ!」
 
……只の水だが、アルベルトはヤケ酒をほおる様に
顔を赤くしたまま、お冷をぐいっと飲み干した。
 
「もう~……、それにしても、ショーっていつ始まるのかしら?」
 
「いえ、これがショーなんですよ、もう始まってるんですよ」
 
「えっ?」
 
トリオの席のコップを回収に来たメイドさんが呟いた。
 
「……そう、水を飲んで石を眺めながら石について哲学し合うのよ、
もう馬鹿らしいったらありゃしないでしょ?あっ、さっきのお水は
サービスだったけど、又飲みたければ今度はきちんとお金を
お願いしますね」
 
メイドさんは笑いながらコップを持って奥に引っ込んで行った……。
トリオは黙ったまま顔を見合わせ暫く沈黙ムードになった……。
 
「早く、船長の奥さんを探した方がいいな」
 
「だね……」
 
「そうよね……」
 
そして席を立つと、店にいた客にマジックケーキ売りの婦人が
今日は来ていないか尋ねてみる事にした。
 
「つまり、今の世界では……、エントロピーの増大な流れに
あらがうという事は……、膨張する宇宙を否定し続ける心理が
証明されていると言う事……」
 
「君達って資本主義の最終イメージを創造する事さえ出来てないの!?」
 
「……ひひひひ~、……お勉強嫌い!」
 
「あっ、ジャミルっ!?どうしたのよっ!しっかりしてっ!!」
 
……客から訳の分からん哲学?をぶつけられ、パニックになった
ジャミルがその場にぶっ倒れた……。
 
「ちょ、困るよっ!此処で戻ったら、又電話予約し直しに
なっちゃうじゃないか!」
 
アイシャとアルベルトが必死でジャミルを揺さぶるが、ジャミルは
泡を吹いている……。
 
「おい、どうしたんだい?君達!」
 
客の1人が心配してジャミル達の側に寄って来た。
 
「はあ……、連れがひき付けを起こしまして……、彼はあまり難しい
話を聞かされたり、真面目なムードになるとパニックを起こして
しまうんです、はあ……、つまる処、早い話が、彼は大の勉強嫌い
でして……」
 
こんなアホらしい説明、どうやってすればいいのか分からず、
アルベルトは尚も必死でジャミルを起こそうとするが、ひっくり
返ったままである。
 
「こんなモンしかねえけど、取りあえずやってくれ、口に合うか
分かんねえけどよ、特製あんこ焼きだよ、お目覚めの薬になると
いいんだがな」
 
「……食うーっ!」
 
「あ!」
 
急にジャミルが起き上がる。そして客から貰ったあんこ焼きを
むしゃむしゃ食べ始めた。
 
「美味しい?ジャミル、良かったわね!」
 
「♪うめえーーっ!あんこがすげー甘いっ!」
 
……こいつ、又頭スリッパで引っ叩いたろか……、と、アルベルトは
心で舌打ちした。
 
「取りあえず良かったな、気持ちは分るよ、おれだって
他の客から訳の分からん話を聞かされてパ二くりそうだった
からな、倒れたくなる気持ちは分る、……はあ、興味本位で
こんな場所来るんじゃなかったよ、君達もいつまでもこんな所に
いない方がいいぞ、水だけは美味かったけどな……」
 
客は去って行く。……あんこ焼きを食べ終わったジャミルは
満足そうにお腹を擦った。
 
「ああー、美味かった!……さて、俺らだってこんなとこ、
いつまでもいたかねえけど、そうもいかねえんだよな……」
 
「早く船長さんの奥さんを探さないとよ……」
 
「全く、君が倒れたりするから……、しかも自分だけ、……ブツブツ……」
 
「何だよっ!」
 
アルベルトがジャミルを横目で見ている。何となく一人で
おやつを食べたのが気に入らないらしい。
 
「君達、マジックケーキ売りのお姉さんを探してるのかい?
だったら入口近くにいるよ……」
 
「え?あっ、あっ!……あの人がそうだったのか!」
 
確かに入り口近くに、金髪で花ピアスの夫人らしき人物がいた。
ぼーっと只管何か考え込んでいる様でもあったが。
 
「あの幻想的で完美的なマジックケーキをもう一度、是非
味わってみたいと思っているんだがね、何せあの女性が毎日
店に入りびたりで動かないんだよ……、世界で唯一唯一人、
不思議なマジックケーキを作れるのは彼女だけだからね」
 
「そうなのか、……そんなに美味いのか、其処まで言われると俺も
何だか気になってきた……、食ってみたいな、マジックケーキ……、
食わせて貰えねえかな……、食いたい……」
 
「あのね、君、さっきおやつ食べたばっかり、……ジャミルっ!」
 
アルベルトが止める間もなくジャミルがふらふらと奥さんに近寄って行く。
 
「私、やっとこの頃自意識に目覚めたと言っていいと思うの、
このクラブの人達って自己の意識を穴があくほど見つめていて、
私も穴があきそうな程に、心地よい自己よ、このままずっと
見つめていたいわ、四六時中でも、五六時中でもこの店に
存在していたいわ……、って、あら?あなた達、何かご用?」
 
「こんちは!……あのさ、マジックケーキってのはもう作らないのか?
俺達、あんたの作るマジックケーキが食べたくて……、此処まで
来たんだけど……」
 
確かに此処まで、船長と奥さんを仲直りさせるべく、奥さんと話を
しに来たのだが、ジャミルの言い方だと微妙に何かがずれている
様な感じである。
 
「そう、わざわざ私の……、マジックケーキを食べに……、
こんな所まで……、でも、本当に食べたいの?マジック
ケーキを……、本当なの?」
 
「本当さっ!食べてみたいんだよ!」
 
奥さんは最初、困った様な顔をしていたが、ジャミルの心からの
笑顔(ケーキくれくれ)、を見ると、納得した様に頷いた。
 
「そう、分ったわ……、では明日、朝にショップ前までいらっしゃい、
待ってるわ、それにしても、人懐こい、わんこみたいな子ね、あなた……」
 
「わう!?」
 
奥さんは笑いながらストイッククラブを後にする。どうやら
ジャミルの食い意地が彼女の心を揺り動かした様であった。
 
「マジックケーキ売りの彼女、……どうやら我々の仲間から
外れた様だね……」
 
先程のおじさんが、クラブを出て行く奥さんを何となく淋しそうに
見つめていた。
 
「まあ、これで……、結果的には良かったのかな……、と思うべき
なのかな……」
 
「そうね!それにしても、ジャミルが犬って……、ふふふっ!」
 
アルベルトが苦笑いし、アイシャも笑った。
 
「おいおい、ダウドも今、犬になってんだけどな、んじゃ、俺ら
揃って事実上犬かよ……」
 
 
その頃の、遠い実家にいる、犬になってるジャミ公の相棒……
 
「……わっくしんっ!!ま、ま~たクシャミが……、何なのさあ~……」
 
 
そして、翌朝……
 
「いらっしゃい、来てくれたのね……」
 
約束通り、早朝にショップ前に行くと、奥さんがワゴンを用意して
トリオを待っていた。
 
「誰に聞いたか知らないけれど、遠い国からわざわざ私の
マジックケーキを食べに来てくれたなんて……、とても嬉しいわ、
……やっぱり私、あれこれと考えるよりも、こうやってケーキを
作って皆に食べて貰って喜んで貰う事の方が何よりも嬉しいんだって、
そう感じたのよ……」
 
「じゃ、じゃあ……、ケーキ作り辞めないんだな!?」
 
「ええ、でも、残念だけどマジックケーキの材料はもう
無くてこれで最後なの、けれど、又新しいケーキを思考して
皆に食べて貰うわ、必ず営業を再開します、その時は又、是非
食べに来て頂戴ね!有難う、……仕事の楽しさをあなた達が
思い出させてくれたわ……」
 
「やったわね、ジャミル!」
 
「これできっと船も出して貰えるよね!」
 
「ああ、へへ、苦労した甲斐があったな!」
 
「さあ、沢山食べて!最後の材料をふんだんに使った、スペシャルな
マジックケーキを!」
 
 
「♪いただきまーすっ!!」
 
 
トリオはマジックケーキを頬張る。……口いっぱいに広がる
甘くて何だか……、それはとても不思議な味がした……。しかし、
段々何だか……意識も遠退いていき、とても眠くなってきた……。
 
そしてジャミルは夢を見た。それはとてもはっきりとした夢であった……。

……分かんない、全く分かんないよお。……この前のシリーズから
読んでくれている人は大体感づいてたと思うけど、そうだよ、
世界を救う少年少女達、最後の四人目はオイラ、どうせダウドだよ。
分かってるよね、言わなくても。でも、オイラ今回は犬の役どころ
だったから。じゃあ、何で今こうして人間体になってるかって?
何かね、この話の勝手設定だと、オイラは来たるべき時の為に
備えて、今まで犬の姿になってたんだって。
 
オイラのこの世界での本当の役どころは、ランマ国って
言う国の王子なんだよ。……少々ヘタレ気味の……。あ、
ちなみに頭は辮髪じゃありませんよお。いつものオール
バックヘアだからね。ハゲじゃないんだよお……。オイラの
この世界での使命は、主であるジャミルを守る事……、
なんだそう。オイラはジャミルの下部らしいよ。そうだよね、
オイラはそう言う役どころなんだよね。犬の姿の時でも、
これまでずっとジャミルを護衛して来たつもり……だよ。
 
※1話を思い出さないで下さい。
 
時が来たので、オイラもぼちぼち本格的に人間体に戻って
動き出した……、というワケ。一番最初にジャミルに、何で
オイラ犬の姿になってんのって試しに聞いた時あるけど、
こういうオイラしか知らない涙ぐましい裏事情があったと
いう訳です。……アホな主人の為に、なんて健気なオイラ。
ジャミルは知らねえよって、ストレートに言ったけどさ。
 
ちなみに、この世界でのジャミルの妹、トレーシーが、最近
オイラが勝手に散歩に行くって心配してたけど、あれは
こっそりと、人間体に戻って、この世界のオイラの故郷で
あるらしい、ランマと行き来していたんだよ。オイラは
最初から勝手設定でテレポートαが使えるので。……決して、
発情期なんかじゃありませんよお。……本当だよ。
 
さて、場面をランマ王国の宮殿に切り替えますね。オイラが
皆と冒険に動き出す切っ掛けになったお話を読んで下さいな。
 
 
「ダウド王子様、やっと最後の試練に挑む時が来ましたな」
 
「うん?修行なんかやってたかな?あんまりやったの
記憶にないけど」
 
……王子だって。やっぱり慣れないよお。ジャミルに分ったら
大笑いされるね。どうせ。そんな柄じゃないのは分かってる
からいいよ、もう。ちなみに、話しているのは老子のイースーチー。
オイラが宮殿に居る時にはそそっかしいオイラをいつも良く
面倒を見てくれているこの世界の住人。
 
「なるべく早くムの修行場に赴いて下さい、そして一刻も早く
修行を終わらせて下さい、このイースーチー、陰ながら応援
しておりますぞ」
 
「……嫌、だよお」
 
「何ですと?今何か言いましたか?」
 
「いきますよお……」
 
オイラはしぶしぶと修行場に赴く為、宮殿を後にする。
仕方ないよね、嫌だけど。
 
「これはこれはダウド王子、お水のご用意は出来ておりますか?
PP回復の為に是非、おかゆもありますよ」
 
料理屋のおじさんが食事を勧めてくる。オイラ、人間体の
時は主に回復は水と少しの食べ物でしか回復出来ない仕様
なんだって。嫌ですよお、そんなの。
 
「はーい、ダウド王子、今日もその困ったお顔、素敵ねえーっ!
ねえ、私とまたいちゃいちゃしてえーんっ!」
 
「いちゃいちゃ」
 
「きゃあーっ!素敵いーーっ!!」
 
オイラ、この国では結構もてるんだよ。やっぱ一応王子の
役柄だからかな。
 
 
〔これはムの場所 ここにて試練を受ける者はすべてを
ムにし、一切を空にし、ムのなんたるかを知る時にこの
場所を抜けるものなり ムとはム〕
 
……さてさて、崖をロープで登って頂上の修行場まで来たよ。
途中で何回も足を滑らせて落ちたけどさ。頭、タンコブ
だらけだよお、……ぐす……。
 
「わしはまぼろし老人、そなたがダウド王子であるな、
……そなた、困った様な顔をしておるが大丈夫か……、さて、
話をしよう、わしも一度はムの修行を成し遂げた者、
もっと高度な智恵をそなたに預けたいがわしも修行の身、
今はひとまずここまでとしよう、では、また会おうぞ!」
 
まぼろし老人さんは竜巻術に乗って消えてしまった。
なんなんだよお……。さて此処で、ムの修行とやらを
するらしいよ。どんな修行なんだか。オイラは取りあえず
座り込んで冥想に入る事にした。……自分でも、冥想なんて……、
似合わない事するなあと思う。けど仕方ないんだよお。
 
「……ムの修行、……ム……、むうう~……」
 
冥想に入って只管考え込むと、何だかそのまま寝て
しまいそうだった。……そんなオイラの修行を邪魔する様に、
急に甲高い声が耳に聞こえてきた。でも、オイラもう
睡眠モードに入り掛けてたよ。
 
「ああ、ダウド王子様!私はイースーチー老子の使いの
者でございます!たった今、老子様が冥想をやめてすぐに
宮殿に戻る様に伝える様、私を差し向けました!さあ、
ダウド王子様、私と一緒に今すぐ宮殿に引き返しましょう!」
 
「zzzzz……、ジャミルってば、ホント馬鹿だよね、
分かってるけどさあ、何でわざわざ犬のウンコ踏むの!
あ、お、オイラじゃないよお!!」
 
「駄目か……、寝ぼけておる……」
 
「……あ、あれ?声消えた?何だったんだろう……?」
 
首を傾げるオイラに、更に別の声が聞こえて来て……、辺りが
急に真っ暗で変な空間になった。
 
「さてさて、ダウド王子、儂はお前の先祖の霊じゃ、
修行の仕上げにお前の足を折るぞ、足もなくなるぞ、
良いか?」
 
オイラの後ろに……、何だか巨大な顔が浮かび上がってる。
この人がオイラの御先祖様らしいよ。この話だけだからね。
でも、知らないよお~!それに、足なんか折られちゃタイへ……。
 
……ボキ。
 
お、折られたみたい……、恐くて目が開けられない……。
それに、じわじわと折られた箇所に痛みが広がってくる……。
 
「さてもさてもダウド王子、足を無くして動けぬか、次は
お前の腕を圧し折り千切ってカラス共に食わせるが、
……良いな?」
 
「嫌です……、ああっ!?」
 
……ボキッ……!
 
御先祖様は、その後、次々とオイラに問い掛け、耳をもぎ取り、
目をも潰した。……オイラは何も聞こえず、目も見えなくなった……。
何で?嫌だよお、こんなの……。……痛いよ、死にたくないよ……。
 
「ダウド王子……、お前の心に直に問いかける事しか出来なく
なってしまった……、もはやお前には心しか残っておらぬ、
最後に心を奪うがそれだけはお前にも許せまい?……返事も
出来ぬか、動く事も出来ぬか、悲しいか?……淋しいか……?、
辛いか?切ないか……?、心を奪われたら悲しみさえも
失うのだぞ!……ダウド!心を奪い取るぞ!!」
 
オイラにしては珍しく、もう全てを覚悟した……。と、同時に
目の前がぱっと明るくなった……。
 
「あれ……?足もちゃんとある、耳も、腕も……、ちゃんと
全部ある……、???」
 
「おお、ダウド王子、無事修行を終えられましたな、
イースーチー老子もさぞかしお喜びでしょう、ささ、
宮殿にお戻り下され!」
 
気が付くと、いつの間にか宮殿の使いが目の前にいて迎えに
来ていた。どうやらこれでムの修行とやらは終わったらしい
けど……、冗談じゃないんだよお!もう金輪際、こんなのは
ごめんだよお!……オイラはプンプンしながら宮殿に戻る……。
 
「ダウド王子、よくぞムの修行に耐えてくれました、この
イースーチー、あなたにお教えする事は何もなくなりました、
……今こそ、あなたが陰から守っていた主を本当にお守りする
時が来たのです」
 
※1話を思い出さないで下さい……。
      ↑
「上、う、うるさいんだよお!」
 
「ダウド王子、選ばれしランマの王子のあなたに天のお告げを
お伝えしまする……、全ての邪悪なる者を動かし、支配する神が
歴史上最大の戦いを挑んでおりまする、これを受けて立てるのは、
たった四人の少年少女達……、ジャミルと言う者がその頭になります、
……そう、あなたがずっとお守りしてきた……、大切な主でございます、
四人の最後の一人があなたです、最後の試練に打ち勝った今、すぐに
主の元へ飛んで下され!多くの人々の為に、……この世の平和の為に……、
大きな力になって下され!!」
 
オイラのLVは一気に飛んで18まで上がった。そしてシールドβと
テレポートβも同時に習得する。そして、ジャミル達が今いる場所、
サマーズまで飛んで冒険に一緒に参加する事になったんだよ。

zoku勇者 マザー2編・25

zoku勇者 マザー2編・25

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-06

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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