前戯
指を絡める列車旅、夏の國に入っていって
見つめあうこと数十分、
言いたいことはもう分かるのです。
手のひらを揉み合い
肩にもたれかかり
手話で好きだよと伝え合う二時間で、
だいたいの問題は小さくなって
お気に入りの鞄のなか、
大切に懐かしめるようになるのです。
(恋とは、永遠を感じられること
(愛はその信仰
(そして終わりを受け入れること
光彩(ひかり)のシャワー、危うげに跳ねて
山々を攫う
鹿の子の錯覚が駆けぬけると、
そらの頬は
すこしも赤らむことなく
静かに陽ざしが弱まっていくので、
日没まで、あと数時間。
(せせらぎの沈黙に
(花嫁は眠って
いつまでも薄明(ひだまり)に埋もれるのです
前戯