霊能探偵・芥川九郎のXファイル(37)【フランクフルトの男編】
第1章 アイドルストーカー事件
霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「京子からの依頼は久しぶりだね。」
京子は愛知県警の刑事で、牧田の元同僚である。牧田も愛知県警の刑事だったが数年前に退職し、今はフリーランスとして活躍している。
牧田「僕と京子が芥川君と一緒に解決した、大須の痴漢騒動を覚えているかい?」
芥川「そんな事件、あったねぇ。なんだか随分、昔の出来事に感じられるよ。」
牧田「今回の事件も、犯人が悪霊である可能性が高いんだ。」
三人が解決した大須の痴漢騒動では、女性に破廉恥な未練を残して亡くなった男が悪霊となり、大須で痴漢を繰り返していた。
芥川「今回はどこの商店街で、痴漢騒動が起こったんだい?」
牧田「いや。痴漢ではないんだ。ストーカー事件だよ。」
芥川「スケベな悪霊がストーカーになったのか。被害者は女性だろう?」
牧田「性犯罪の加害者は男性で、被害者は女性だというのは時代遅れのステレオタイプだと思うけど、今回はそのとおりだよ。」
二人がそんな話をしていると、助手の能年(鎧)が淹れたてのコーヒーを運んできた。
芥川「能年君、ありがとう。」
牧田「ありがとう。いつも悪いね。」
能年は鎧の妖怪で、芥川の事務所に住み込みで働いている。
第2章 あんこ娘の美冬
牧田は、淹れたての熱いコーヒーを一口すすってから言った。
牧田「芥川君は、名古屋のアイドルグループ・あんこ娘を知っているかい?」
芥川も熱いコーヒーを一口すすってから言った。
芥川「知っているよ。最近、特に人気が出てきたグループだね。まさか今回のストーカー被害者は、あんこ娘の誰かかい?」
牧田「そう。被害者はあんこ娘の美冬さんだ。」
芥川「美冬さんか。彼女は男の娘アイドルで、熱狂的なファンがいるんだよね。」
牧田「芥川君は、意外と詳しいんだね。」
芥川「普通のストーカー事件なら愛知県警が相談・対応してくれる。京子がわざわざ僕たちに依頼するということは、大須の痴漢騒動みたいな感じか。」
牧田「うん、そう。多分、ストーカーは悪霊だ。見える人には見えるけど、見えない人には見えない。もちろん、防犯カメラにも写らないから、客観的に確認することができない。」
芥川はコーヒーを一口飲んでから言った。
芥川「能力者ではないアイドルに見えるくらいだから、かなり強力で凶悪な悪霊だろう。」
牧田「でも、悪霊が見えるということは、美冬さんはかなり霊感が強い方なんだろうね。」
芥川「霊感が強くて見えてしまう人はある意味、かわいそうな人間だよ。恐ろしい悪霊が目の前にいても、逃げることしかできないんだから。」
第3章 あんこ娘のアイドルライブ
芥川と牧田は中区のライブハウスにいた。あんこ娘のアイドルライブに参加するためである。
牧田「すごい人気だね。」
芥川「うん。こんなに熱心なファンがたくさんいるんだね。」
牧田「このライブの後に、美冬さんと個別に会うことができるなんて夢みたいだ。」
芥川「ストーカー事件は今日、解決できるだろう。」
牧田「悪霊がここに来ているのかい?」
芥川「うん。ぱっと見、普通のファンにしか見えない。見えない人はもちろん、見える人も彼には気付かないだろうね。」
ライブ終了後、二人は美冬と面会した。
牧田「はじめまして。牧田と申します。こちらは霊能探偵の芥川君です。よろしくお願いします。」
芥川「はじめまして。芥川と申します。お会いできて光栄です。」
美冬「はじめまして。京子さんからお話は伺っております。今日はよろしくお願いします。」
芥川「今日もストーカー男が来ていましたね。」
美冬「さすが霊能探偵さんですね。見えない人は信じてくれません。警察に相談しても、悪霊相手ではどうしようもないみたいで・・・」
芥川「アレは今日、私が退治します。安心してください。」
美冬「芥川さん・・・ありがとうございます!」
牧田「美冬さん。今日はこの後、まっすぐ帰宅されるんですか。」
美冬「はい。いつもは地下鉄を使い、歩いて帰ります。でも、私がストーカーのことを相談してからは、マネージャーさんが車で送迎してくれます。」
芥川「そうですか。今日は歩いて帰りましょう。私たちは少し離れて、美冬さんと悪霊を尾行します。」
美冬「・・・分かりました。」
第4章 フランクフルトの男
美冬は打ち合わせ通り、帰路に就いた。芥川と牧田は彼女を尾行した。美冬は自宅から最寄りの駅に着くと、自宅まで歩いていった。ストーカー男にとっては絶好の機会である。怪しい男が突然、彼女の前に現れた。
美冬「・・・!?・・・」
美冬は恐怖で声も出せない。男は衣服を脱ぎ捨て全裸になり、自分の股間を見せながら言った。
男「僕のも見せるから、美冬ちゃんのも見せてよ。」
芥川「悪霊が現れた!行くぞ、牧田君!!」
牧田「了解!」
駆け付けた芥川は退魔の法術を使った。
芥川「悪霊!退散!!」
聖なる光が男の胸を貫通すると、悪霊が真の姿を現した。
悪霊「グワァアーーー!!・・・美冬ちゃん・・・僕を・・・よくも騙したなぁあ!!!」
恐ろしい悪霊は、自分自身のフランクフルトをさすりながら美冬に迫った。
悪霊「美冬ちゃん・・・美冬ちゃん・・・美冬ちゃん・・・」
芥川「大変だ!あのフランクフルトは危険だ。美冬さん逃げるんだ!!」
牧田「・・・一体、奴は何をしているんだ!?」
美冬は走って逃げだした。同時に、芥川は霊丸を発射した。彼の放った特大霊丸は、悪霊を吹き飛ばした。
悪霊「ギャアーーー!!!」
悪霊の体は白い煙となって散り散りに霧散した。
牧田「・・・祓ったのかい?」
芥川「・・・とんだフランクフルト男だった。美冬さんのウィンナーに破廉恥な未練を残して亡くなった男の怨念が、恐ろしい悪霊になってしまったんだろう。」
ようやく落ち着きを取り戻した美冬は憤慨して言った。
美冬「私のウィンナーは、興奮したらちゃんとソーセージになるんですよ!」
芥川「すいません・・・」
芥川は即座にそう返したが、何を謝っているのか自分でもよく分からなかった。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(37)【フランクフルトの男編】