三題噺 「お姉さん」 「眼帯」 「狐面」

三題噺 「お姉さん」 「眼帯」 「狐面」

「裏山に妖怪がいる」

そんな話題が一週間前から学校で持ちきりだった。

話によると、6・7くらいの友人達が裏山で隠れんぼをしていた時

隠れ場所を数名が一緒になって探していると

狐の顔をした人影が目の前を通り過ぎたらしい。

それに怯え、隠れんぼは即お開きになり、すぐさま裏山から立ち去り家に帰った。

翌日、そのグループのメンバーが友達だったりにその話をし、そこからまた別な人へと話が伝わっていき

現在、学校中の話題の的となっているわけだ。

だけど

僕は皆がその話題で盛り上がっている中

話に加わろうとしていなかった。

きっと木か何かを見間違えたんだ。

狐の顔したの妖怪なんかいるわけない

幽霊や妖怪がいるなんて思うなんて子供だよ

というように思っていたからだ。

そんな僕は

今、話題の裏山の中にいる。

別に狐の顔した妖怪が本当にいるなんて思っちゃない

ただいつまでも子供みたいに話しているクラスメイト達に言ってやりたいんだ

「狐の顔した妖怪なんていない」って

それを証明―

その真実を知りたいために山の中を歩き回っている。

かれこれ三時間ぐらい歩いているけど、そんな人影一つ見なかった。

「なんだ、やっぱりいないじゃないか」

そう思った時―

目の前に人が現れた。

狐の顔・・・・というより狐面を顔にすっぽり覆った人が。

「・・・・・だ、誰?」

驚きの後に出た言葉は自分が思っているよりも怯えを含んでいるものだった。

正直、驚いた。

まさか話の通りの存在が出てきたのだから。

でもこの狐面の正体は妖怪じゃない―人間だ。

狐面の下に見える体は

幽霊見たく透けてるわけでもなく

妖怪見たく異形なものではない

すらっとした体、人の体だ。

問いかけてみたけど、返答はなかった。ただ、こちらをじっと見つめているだけ。

「黙ってないで何か言えよ」

あぁ、ダメだ。声が震えてる。何だかんだいって怖がってるよ、僕。

やっぱり僕も子供じゃないか

いや子供なんだ。怖くて当然だよ。

逃げようと思っても、足が動かない。

狐面の人はやはり何も答えず

ゆっくり、ゆっくりと僕に近づいてくる。

そして、僕と同じくらいの目線にかがみ

「怖い?」

そう尋ねられた。

「へ?」

「だから、私のこと怖い?」

綺麗な、澄んだ声でそう再び尋ねてきた。

「お、驚いたけど・・・怖くない・・・かも?」

「そう」

そう答える狐面の人の声は少し明るかった。

嬉しがっているように思えた。

実際、怖くはなかった。

狐面の声があんなに高く、そう女性の声だったから安心した。

「なら・・・・」

安心している僕を見て、狐面の人は顔を覆った面に手をかけて

「これでも・・・・そう言える?」

取った。

顔を覆っていた狐面を。

面の下は

お世辞抜きに綺麗な人だと思った。

子供でもそう思う。

ただ一つ

左目に眼帯がつけられていた。

そして眼帯から大きな傷がはみ出して見えている。

「これでも、怖くない?」

「・・・・・・うん」

「本当に?」

目の前の狐面―女の人は真面目な顔で確認してくる。

「ほ、ほんとだよ!!びっくりはしたけどさ・・・・怖くはないよ」

傷に関しては怖さっていうより

逆に大丈夫かな、と心配をしてしまった。

「そう、よかった・・・・。驚かせてごめんね、立てる?」

女の人は立ち上がり、僕に手を差し伸べる。僕はその手を掴んで立ち上がる。

「なんで、狐面をつけて山の中歩き回ってたんだよ」

気になったことを聞いてみた。

すると、少し寂しそうに笑って

「君は怖がらないかもしれないみたいだけどね、この傷で結構嫌な思いしたんだ。気味が悪いとか、近寄るなって言われ続けてね。
 だからこういうふうに仮面をつけてれば傷も見えないから、何も気にせずに歩いて入れるしね」

「まぁ、山の中限定だけど」と表情に陰りを見せているものの明るい声でそう話した。

「いや、それ逆効果だから、うちの学校で・・・えっと、お姉さんのこと話題になってるし。妖怪とか言われてるよ」

「よ、妖怪って・・・・それはあまりにも失礼じゃない?」

「僕が言ってるわけじゃないし、お姉さんがそんなことしてるからじゃん」

「まぁ、それはそうだけど。これは仕方ないし・・・・」

お姉さんは少し考える素振りを見せ

「君、私のこと怖くないって言ったよね?」

「あぁ、言ったよ」

「ならさ、―」

お姉さんは僕の目を見て

「私たち友達にならない?」

そう言ったんだ。

三題噺 「お姉さん」 「眼帯」 「狐面」

久々に三題噺を書いてみたけど・・・・うまく書けていないのが丸分かりな文章で自分でも苦笑です。
ですが、久々に書いてみてすごく楽しかった。
これからも少しづつでもいいから物語を紡いでいけたらいいなぁなんて思ってます

三題噺 「お姉さん」 「眼帯」 「狐面」

「お姉さん」 「眼帯」 「狐面」 という三つのお題から短い噺を書いてみました。 お口にあえば幸いです

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted