霊能探偵・芥川九郎のXファイル(35)【明智真理編】

第1章 東京からの家出娘

 霊能探偵・芥川九郎は、中区にある事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
芥川「SNSで知り合った東京の家出娘が今日、ここに来るかもしれないよ。」
牧田「なんだい、唐突に。家出娘って・・・大丈夫なのかい?」
芥川「君が言う大丈夫の意味合いがよく分からないけど・・・彼女は19歳だから大丈夫だろう。高校卒業後に就職した会社が合わなかったそうだよ。そこを辞めて今は、パートやアルバイトの仕事をしていると本人は言っている。」
牧田「19歳か。微妙な年齢だなぁ。未成年・・・ではないね、今は。」
芥川「確かに、昔なら未成年だ。結構前に成人年齢が引き下げられて、今は18歳だからね。」
牧田「でも、そんな家出娘にかかわらない方がいいと思うよ。家出と言うことは、親御さんとケンカして出てくるんだろう?何かトラブルを抱えているかもしれないよ。」
芥川「その点は大丈夫だと思うよ。多分、本当につまらないただの親子喧嘩だ。彼女は・・・名前は明智真理というんだけど、真理さんは高校を卒業した立派な成人なんだから、自分の人生を生きればいいんだよ。」
牧田「君がただの家出娘を引き受けるわけがない。何か理由があるんだろう?」
芥川「ハハハッ。まいったな。牧田君にはかなわないや。そのとおりだよ。彼女には素質があるんだ。」

第2章 東京の霊能探偵

 芥川はコーヒーを2杯入れた。それを見て、助手の能年(鎧)がイスから立ち上がったが、芥川は彼(鎧)を手で制止した。
芥川「能年君、気を使わなくていいよ。これくらい自分でやるから。能年君は勉強を続けてくれ。」
芥川の言葉に、能年(鎧)はコクッと1回、小さく頷いた。能年は鎧の妖怪で、芥川の事務所に住み込みで働いている。彼(鎧)は部屋の隅にあるイスに座り、小学校の国語の教科書で文字を勉強している。
芥川「はい、どうぞ。」
牧田「ありがとう。いただくよ。」
芥川は牧田にコーヒーを1杯手渡し、自分の分を持って席に戻った。芥川はコーヒーを一口すすってから言った。
芥川「どこまで話したっけ?」
牧田もコーヒーを一口すすってから言った。
牧田「東京からの家出娘に素質があるという話だよ。」
芥川「そうそう。彼女は能力者の卵だ。まだ覚醒していないけどね。近い将来、目覚めるだろう。」
牧田「彼女はどんな能力を持っているんだい?」
芥川「それはまだ分からない。でも間違いない。彼女の父親は、東京の霊能探偵・明智光太郎氏なんだ。」
牧田「東京の霊能探偵・・・の娘というわけか。」
芥川「後生畏るべしだよ。家出娘とバカにしない方がいい。丁重にもてなして、適当に機嫌を取って、話を合わせておけばいいのさ。」
牧田「・・・気を付けないといけないのは君の方だと思うよ。心の中でバカにしているのを、若い子は敏感に察知するからね。」

第3章 鬼塚(鬼)と家出娘の来訪

 芥川は思い出したように言った。
芥川「あっ、そうだ。今日は鬼塚君もここに来るんだよ。守屋先生からまた頼まれてね。夜まで預かってくれってさ。」
鬼塚は、魔術師・守屋愛の手下の悪鬼である。守屋愛は魔法学会から追放された危険な魔術師で、芥川ともいろいろ因縁があるが、今はお互いにビジネスパートナーとして利用し合っている。
牧田「あの鬼の鬼塚君かい?」
二人がそんな話をしているところへちょうど、鬼塚(鬼)がやって来た。
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
芥川「やぁ、鬼塚君。ひさしぶりだね。元気にしていたかい?」
芥川がそう声をかけると、鬼塚(鬼)は1回、大きく頷いた。
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
牧田「鬼塚君。こんにちは。」
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
 そこへちょうど、東京からの家出娘・明智真理がやって来た。
真理「こんにちは、おじゃまします。芥川先生!はじめまして、明智真理です。よろしくお願いします。」
真理は鬼塚(鬼)にそう言って、頭を下げた。
鬼塚(鬼)「ガルルッ。」
芥川「真理さん。僕が芥川だよ。彼は鬼の鬼塚君。」
真理は少し驚いて言った。
真理「えっ!?ごめんなさい。芥川さんはすごい能力者だけど、鬼のように非情な人間だと聞いていたので・・・」
芥川「・・・誰から聞いたんだい。」
牧田「ハハハッ。まぁまぁ、芥川君。はじめまして。僕は、芥川の友人の牧田です。」
真理「明智真理です。よろしくお願いします。」

第4章 真理の言い分

 芥川は気を取り直して、真理に言った。
芥川「僕は独身で一人暮らしだから、真理さんはとりあえず事務所に泊まるといいよ。警備員もいるしね。」
芥川はそう言って、能年(鎧)を彼女に紹介した。
芥川「彼は鎧の妖怪・能年君。僕の助手だよ。事務所に住み込みで働いているんだ。」
真理「能年さん。よろしくお願いします。」
能年(鎧)はコクッコクッと2回、大きく頷いた。
芥川「真理さん。とりあえず、家出の経緯を聞かせてくれないか。」
牧田「どうぞ、真理さん。このイスに座ってください。」
真理「はい。ありがとございます。」
 彼女は勧められたイスに座り、家出の経緯を話し始めた。
真理「父と、私の仕事や将来のことで言い合いになってしまって・・・」
芥川「親子喧嘩だね。よくある話だ。」
真理「・・・・・・」
牧田「・・・お父様は東京の霊能探偵・明智光太郎氏だね。明智さんは、真理さんにどんなことを言ったんですか?」
真理「再就職しないなら、大学や専門学校で勉強しろと言うんです。」
芥川「明智氏は案外、保守的な人間だね。でも、間違ったことは言ってない。」
真理「・・・・・・」
牧田「・・・真理さん。せっかく名古屋まで来たんだから。気持ちが落ち着くまで、ここで過ごすといいですよ。」
真理「ありがとうございます。」
三人がそんな話をしている間、能年(鎧)は部屋の隅で勉強を続けていた。鬼塚(鬼)は、三人の話を難しい顔で聞いていた。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(35)【明智真理編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(35)【明智真理編】

「芥川さんはすごい能力者だけど、鬼のように非情な人間だと聞いていたので・・・」 霊能探偵・芥川の事務所にやって来たのは、東京から家出してきた19歳のワケあり美少女・明智真理だった! 「鬼のように非情」という根も葉もない(?)噂を信じる真理に対し、ため息をつく芥川。 彼女は東京の霊能探偵の娘で、近い将来に能力が覚醒する「卵」らしいのだが・・・ 危険な魔術師・守屋の悪鬼も巻き込んで、奇妙でお気楽な日常コメディ第35弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-31

CC BY
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  1. 第1章 東京からの家出娘
  2. 第2章 東京の霊能探偵
  3. 第3章 鬼塚(鬼)と家出娘の来訪
  4. 第4章 真理の言い分