勇者落ち吟遊詩人
嘆きの歌
「ただの音楽好きは私のチームにはいらない……」
彼女は私に冷たくなっていい放った、まるで氷河に放り込まれたような、暗くて、冷たくて、刺すような一言をなんのためらいもなく言い放った。
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私は「フレット」、「アルペ•フレット」だ。一応勇者だ。趣味は音楽で、剣よりも音楽でひとを幸せにしたい。そう願う平和主義な勇者だ。
そして……このでっかい男がパーティーの副リーダー、「ピッグ」。上の名前はよく知らない、だって「ピッグ」は「ピッグ」なんだもん。
「フレット?なんだ、ニヤニヤして」
自己紹介でニヤニヤしてるへんなやつに見えただろうか?
「もう、相変わらず頭がお花畑ですか?」
彼女は「ユミ」、「ユミ•ダウンポウ」だ。お淑やかなお嬢様、なのに口が大変わるい。そんなにいわなくたって……シュン……
私含めて3人で「勇者弦楽団」として世界を回ってきた。
ある時、私達はいつも通り旅をしていた。いつも通り、とりとめのない会話をした。しかしそんなのは長くは続かなかった。その夜私は夜風に当たりながら弦を弾いていた。満点の星空で、うっすらと五線譜を照らしていた。
ふと、キャンプから大きな音がした。
「何?」
私は走ったその場に大切なハープをほっぽって走り出した。風が急かすように追い風に、星が押すように強く瞬いた。
しかし、遅かった
私がレイピアを抜く頃にはユミだけが瀕死で倒れていた。
「……今さらですか?遅い、遅すぎる」
血が乾いた土に広がって、ピッグが四肢を失って倒れている。辺りに敵はいない、ただ、私がノンノンと歌っている間に二人のパーティーメンバーを殺した。
「フレット、貴女は……勇者なんかじゃない……パーティーメンバー放って呑気に歌ってるようゃ……勇者じゃないです」
「今すぐ治療をっ喋らないで!」
「本当にお花畑ですね……」
彼女は顔をしかめて言った。
「ただの音楽好きは……私のチームにはいらない」
「最期くらい楽に逝かせてください、最悪の勇者様」
そう言って、静かに息を引き取った。冷たくなっていく片方だけの手を握って。心まで凍らせ視界を塗りつぶしていく。血の香りと涙の味がゆっくり体に染みていく。
"ああっ無力だな…"
私は歌った……歌が招いた災いをその原因で弔う。二人からしたらひどい皮肉だ。
"それでも私にはこれしか出来ないから"
夜闇に震えた歌声が小さく響く。ハープすらない勇者落ち吟遊詩人が必死に声を張って歌った。歌でひとを幸せにする、そんな無駄なことに私は縛られていたのだろうか。そんな机上の空論を唄っていたのだろうか。
"あぁ……声が枯れてきた……"
もう月も星も消えかけていた。それでも歌った歌うしかやはりなかったから。
それでも無情に太陽は上り、二人の血肉をてらした。二人を埋めて私はその場を去った。やはり私にはそれしかできなかったのだ。
勇者落ち吟遊詩人