霊能探偵・芥川九郎のXファイル(34)【加賀美聖恵編】
第1章 作家志望の最上
霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「最上君にはSNSで知り合った恋人がいるんだよ。名前は来栖倫子さん。」
最上は芥川の友人である。最上は市役所に勤めているが、もともと作家志望で仕事の傍ら小説を執筆し続けている。
牧田「君は最上さんから個人的に、悪魔祓いの相談を受けたんだね。じゃあ、悪魔に憑かれているのは、その来栖さんかい?」
芥川「そうなんだよ。彼女は美しい女性でね。それが問題なんだ。」
牧田「女性の悪魔祓いは難しいのか。そもそも芥川君は、悪魔祓いができるのかい?まさか、鉄パイプで彼女を殴打して、悪魔を追い出すわけじゃないだろうね。」
芥川「いくら僕でも、そんなことしないよ。ちゃんと霊能力を使って、悪魔を祓うことができるよ。悪霊退治の応用だね。」
牧田「でも、君はさっき、対象が女性だと悪魔祓いは難しいと言ったじゃないか。できるけど、できない?・・・」
芥川「話を無駄にややこしくしてしまったね。簡潔に説明するよ。技術的には可能だけど、被術者が女性だから、セクハラで誣告されるリスクがあるんだ。」
第2章 芥川の懸念
牧田は、芥川の懸念をようやく理解して言った。
牧田「あぁ、そうか。錯乱した被術者が後から、セクハラされたと告訴するリスクがあるね。」
芥川「そうなんだよ。おまけに相手は悪魔だ。万が一失敗した場合、悪魔は僕たちを陥れるために何を言い出すか、分かったもんじゃないよ。」
牧田「じゃあ、どうするんだい?最上さんは本当に困っていて、芥川君に救いを求めているんだろう。」
芥川「うん。実は、僕の知人に女性のエクソシストがいるんだ。彼女に依頼すれば問題ないだろう。」
牧田「芥川君の知人には、エクソシストもいるのか。」
芥川「ハハハッ。蛇の道は蛇だよ。彼女の名前は加賀美聖恵さん。もう彼女に話はしてあるんだ。」
牧田「そうだったんだ。じゃあ、今回は僕たちの出る幕はなさそうだね。」
芥川「いや、そうでもないんだ。加賀美さんは悪魔を追い出すことはできるけど、息の根を止めることはできない。」
牧田「じゃあ、加賀美さんが追い出した悪魔を、君が退治するわけか。」
芥川「そう。そのための準備もしてある。それで明日、悪魔祓いの儀式があるから、僕たちはその近くで待機する手はずになっているんだ。」
牧田「分かった。僕も一緒に行くよ。」
芥川「ありがとう。いつも悪いね。」
第3章 昭和区の住宅街
こうして翌日、芥川と牧田は最上の恋人・来栖が住む住宅に向かった。彼女の住居は昭和区の住宅街にあった。芥川を乗せ、牧田が運転する車は、来栖の住宅に面する道路の路肩に停まった。
牧田「ここでいいのかい?」
芥川「うん。ここで大丈夫。」
芥川はスマホで、エクソシストの加賀美と連絡を取り合っている。
芥川「予定通り、儀式が始まったみたいだ。」
牧田「僕たちは、ここで待っているだけでいいのかい?」
芥川「うん。そのうちこの家から、悪魔が逃げていくはずだ。その時に、これで狙撃する。」
芥川は牧田にライフルを見せた。
牧田「これは・・・」
芥川「狙撃用霊丸ライフルだよ。悪魔退治用に調整してある。準備万端だ。」
牧田「悪魔がいつ、どこから出てくるか分からないと狙撃できないだろう。大丈夫かい?」
芥川「僕はこれでも一応、霊能力者だよ。悪魔の探知はお手の物さ。そろそろ来るよ。さすが加賀美さんだ。」
牧田「霊能力がない僕には、さっぱり分からないよ。」
第4章 悪魔の行方
しばらくすると、芥川はライフルを構えた。
牧田「来るのかい?」
芥川「来るね・・・1発で仕留めてやる。」
しかし、その数十秒後、芥川は舌打ちをしてつぶやいた。
芥川「チッ・・・やっかいなことになった。」
牧田「どうしたんだい。失敗したのかい?」
芥川「来栖さんから追い出されて、家から飛び出した悪魔が、あの犬に憑りついたよ。」
牧田「犬!?」
見ると、二人の乗っている車の横を、犬を連れたおばあさんが歩いている。犬の散歩だろう。確かに、犬の様子がちょっとおかしい。芥川は車を降りて、ライフルの照準を犬に合わせた。驚いたおばあさんが叫び声を上げた。
おばあさん「キャアーー!!!」
芥川は躊躇なく引き金を引いた。
ズバァアーーーンッ!!
霊丸は犬に命中し、犬はその場に倒れ込んだ。
おばあさん「誰かっ!助けてぇえー!!警察を呼んで!!!」
車に乗り込んだ芥川は、牧田に向かって叫んだ。
芥川「牧田君!車を出してくれ!!さっさと逃げよう!!!」
牧田「えっ!いいのかい?」
芥川「大丈夫、問題ない。犬は一時的に気を失っているだけだ。」
牧田は急いで車を発進させた。バックミラーで確認すると、犬は意識を回復したようで、立ち上がり、おばあさんにじゃれて甘えている。
牧田「芥川君。無茶なことしないでくれよ。」
牧田があきれてそう言うと、芥川は申し訳なさそうに言った。
芥川「本当にごめん。あれはちょっと無茶だったね。」
芥川は耳に残るおばあさんの悲鳴を振り払うように、首を振った。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(34)【加賀美聖恵編】