プレゼント・フォウ
Ⅰ
「森(しん)さん」
それは。
(あ……!)
偶然。
「おめでとう、鎧(がい)」
さわやかな。
「偉いねー」
なでなで。自分よりはるかに大きな相手を。
「し、森さん」
さすがに。
「俺は」
言いかけ。
「………………」
ただ。頭を。
「鎧」
優しく。
「いいんだよ」
「しかし」
「鎧は」
手を。大きく広げ。
「とーってもいい子なんだから」
「………………」
あぜん。
「ふっ」
苦笑の。
「かなわないな」
「まーねー」
わかっているのか。
(なんだよ)
それを。
(オイラのオヤビンに)
物陰から。
(オヤビンもオヤビンだし)
ムカムカと。
(あんなやつに)
あんな――
「ねーねー」
「!」
完全に。
(う……)
声が。
(嘘だ)
ずっと。見ていた。
目を離したおぼえもない。
それが。
「ユイエン」
(あ……)
しまった。
「何をしている」
「な、何って」
ますます。
「そ……」
苦しまぎれ。
「そんなのオイラの勝手だろ!」
逃げ出す。
「おい……」
あぜんと。
「んー」
微笑ましく。
「かわいいねえ」
口に。
Ⅱ
「あ、ユイエン」
足を。
「ちょうどよかった。また」
「実験台はヤだよ」
「もー」
頬を。
「お姉ちゃんがお願いしてるんでしょ」
「知らないし」
そっけなく。
「ユイエン」
と。
「何かあった?」
「えっ」
ドキッ。
「あ……」
また。
「ふふー」
してやったり。
「お姉ちゃんには何でもわかっちゃうのでーす」
「関係ないよ!」
声が。
「えいっ」
「!」
思いがけない。
「ちょっ、何!?」
「練習してるから」
離さない。
「護身術」
「えっ!」
イメージに。まったく。
「医療学部はね」
ぐいっ。絞めつけ。
「危険なところにも行く必要があるから」
「そんなの」
詰まる。それでも勢いで。
「オイラが守るし」
「えー❤」
ぐいぐい。
「うれしー」
だったら。
「あっ」
不意に。
「ユイエンの相手してる場合じゃなかったー」
(おい)
なんて言い方だ。
「冴ちゃんと約束があったんだー。かわいい妹をお待たせできないしー」
「はぁ?」
何を。
「ふふーん」
こちらを。
「相手してほしい?」
「はぁ!?」
横を。
「さっさと行けば」
「ふふっ」
わかってる。言いたげに。
(何なんだよ)
どいつもこいつも。
Ⅲ
「ユーイエン」
「!」
ぎょっと。
「……いいの?」
それでも。
「こんなところに普通にいてさ」
「んー?」
笑顔で。
「ありがとう」
「は!?」
「僕のこと心配してくれるんだー」
「ぜんぜん違うし!」
あせって。
(ムカつく)
何を。うれしそうに。
「言っとくけど」
あらためて。
「許さないから」
「ん?」
「オヤビンに何かしたら」
というより。すでに。
(こいつが)
渡した『槍』で。
〝父〟は。
「優しいね」
「っ……」
そういう問題で。
「話になんない」
無駄だ。わかってる。
(くっ)
逆らえない。
どうにもできない。
存在。
(オヤビンも)
だから。
「ユーイエン」
まだ。
「鎧のこと、好き?」
「は!?」
そんなこと。
「関係ないし!」
「あるあるー」
ない!
「僕にだけ教えてほしいなー」
つんつん。
(おい)
沸騰寸前。
「オヤビンはオヤビンだ」
ゆるぎなく。
「そっか」
それで。十分と
「フン」
わかってたまるか。
「何がいいかな」
「えっ」
不意の。
「ほらー、遠慮しないでー」
「え、遠慮って」
わからない。
「プレゼント」
「は?」
何の。
「楽しみにしててねー」
「えっ、ちょっ」
あぜんと。
「………………」
呼び止めることも。
「……プレゼント」
口に。
(どういう)
わからなかった。
Ⅳ
(プレゼント)
あれから。
(贈り物……だよね)
当たり前の。
(何のつもりで)
得体が知れない。それだけに。
(何を)
不安が。
(……もう)
これ以上は。それだけは。
「ぷりゅ」
はっと。
「麓華(ろっか)」
こちらを。
(う……)
また。
「なんでもないし」
言って。横を。
「………………」
そらさない。
「……はぁ」
敏感。人間よりずっと。
「おまえさぁ」
たてがみを。
「どう思う」
「ぷりゅ?」
唐突の。
「いや、さあ」
探す。言葉を。
「おまえだって」
そうだ。
「悔しいよな」
その。想いは。
「ぷ……」
はっと。
「ぷりゅ」
うなずく。
「そっか」
笑みを。
(わかって)
くれた。
「賢いよねー」
「ぷりゅ」
なでられ。
「さすが」
言いかけ。
(シルビアの)
抵抗が。
(オヤビンの馬の娘で)
長い。
「おー、仲良くしてるやーん」
「!」
その〝主人〟が。
「仲良くとか」
ない。とは。
「関係ないし」
結局。
「関係してるやーん」
なでなで。
「ちょっ、やめてよ」
いつもいつも。
「お世話するのは当たり前でしょ」
そう、当然。
娘なのだから。父親と同じように。
「ふふーん」
からかうようで。どこかうれしそうな。
「ユイエンはええ子になったな」
「えっ」
何を。
「うふふー」
「わっ」
かいぐり、かいぐり。
「や、やめてよ!」
「照れんとー」
「ない!」
いいかげんに。
「麓華もええ子やしなー」
「ぷ、ぷりゅ」
同じように。しかし。
「ぷりゅぅ」
やがて。
心地よさげに。
(まあ)
自分の〝主人〟なのだから。
(オイラは)
いくら〝姉〟でも。
(……あ)
そうだ。
「シルビアはさ」
口を。
「どう……思ってるの」
「ん?」
こちらを。
「いや、だから」
後は。
「んー」
考えるように。
「まかせるわ」
「えっ」
何だ、それは。
「娘やし」
「っ」
やはり。
「なー」
「……っ」
同意を。
「知ら――」
言いかけ。
「何でもない!」
ごまかせて。まったく。
Ⅴ
「鎧君」
それは。
「あ、ど、どうも」
ぎこちなく。
「むー」
こちらを。にらむよう。
「な、何スか」
「鎧君」
断定。
「いじめられてるでしょ」
「えっ!」
「もー、おっきいカラダしてー」
バンバンッ!
「う……」
「ちゃんと言わなきゃだめよ、鎧君」
「は、はあ」
「森はアホなんだから」
(いや)
そこまで。
(いじめ……)
とは。
後輩を『かわいがっている』つもりではあるのだ。
もちろん、悪い意味でなく。
「あっ」
思い出したと。
「もうすぐなんだよね」
「え……」
「森が言ってたの」
「あ」
思い至る。
「そ、そんな」
猛烈に。照れくさく。
「かわいー」
「ええっ!?」
「森が構いたくなる気持ちもわかるなー」
「そんな……」
縮こまるしか。
(うう……)
情けない。
自分は。
(騎士だ)
見習いに毛が生えたようなものとはいえ。
(けれど)
誇り。それは。
(なのに)
レディへの尊崇。欠くべからざる徳目。
それが。
「っ……」
だめだ。こんなことでは。
「えっ」
不意の。
「あ」
驚き。声が。
「鎧君」
(お……)
自分は。何を。
「す、すみませんっ」
あわてて。手を。
「………………」
ぽかんと。
が。
「ふふっ」
おかしそうに。
「あやまっちゃうんだー」
「えっ!?」
「悪いことしたとか思ってるのかなー」
「そ、そんな」
では。どんなつもりだと。
(手に)
キス――
「へー」
「……!」
まさか。
「鎧、だいたーん」
見られた!
「いや、し、森さん」
あたふたと。
「んー?」
普段と変わらない。
「あの、その」
こちらばかり。ますます。
「鎧」
にっこり。
「どうだった」
「!」
なんてことを。
「ど、どう」
何も。言えるはず。
「結真(ゆうま)」
顔を。
「結真はどうだった」
「んー」
考える。
「悪い気はしなかった」
(お……)
どう。取れば。
「そっかー」
こちらを。
「よかったね、鎧」
(うう……)
だから、どう。
「じゃ、僕も」
「コラ」
パシン!
「あ……」
そんな無造作に。
「あははー」
まったく。
「怒られちゃったー」
「当たり前でしょ」
あきれて。
「そんな、ついでみたいに」
「だめなの?」
「だめです」
「えー」
「『えー』じゃない」
パァン!
「あ……」
だから。
「あははー」
叩かれたほうは。
(う……)
アホ。言われてしまうのも。
「鎧」
また。
「よかったね」
もう。
どこからどの部分までが。
そんな。日々が。
あっさり終わってしまうことを自分は知った。
そして。
人がどれだけ壊れるかも。
(森さん……)
痛烈な。いまも。
(俺は)
思わずにはいられない。
家族が。
かけがえのない〝子ども〟たちが。
同じように。
「っ」
気がつく。
「どうした」
優しく。
「ユイエン」
逡巡の気配。
やがて。
「……ごめんなさい」
扉が。
「こんな遅くに」
構わない。微笑で。
「あのさぁ」
うながされるまま。
「………………」
しかし。
「ふっ」
せかすことなく。
「久しぶりに」
寝台の。隣を。
「一緒に寝るか」
「バッ……!」
赤く。
「子ども扱いしないでよ!」
バタン! 音高く。
「ふふっ」
笑みが。
(これが)
あの頃の。自分が知らなかったもの。
(それを)
これからも。
(………………)
不安が。どうしても。
(いや)
頭を。
(俺程度が)
何をどうこうしようとしても。
(……それでも)
胸の。
この。
Ⅵ
「心配ねぇ」
「心配やなぁ」
〝姉〟二人。
「みんなは?」
「何も知らんて」
「そう」
深刻な。
「なに、暗い顔しとるん!」
バンバンッ!
「ぐふっ」
「お姉ちゃんやろ! お姉ちゃんがそんな顔してたらあかん!」
「そ……そうね!」
力を。
「お姉ちゃんだもんね!」
「お姉ちゃんや!」
共に。
「……で」
たちまち。
「どうしよう」
「もー」
やれやれと。
「あかんやん」
「あかんかなぁ」
しおれる。
「よし」
気合の。
「ここは一発ウチが」
「やめて」
笑顔で。
「シルビアはよけいなことしないでね」
「よけいて」
心外と。
「ウチは長女やで。みんなのお姉ちゃんや」
「わたしでしょ、長女は」
いまだに。それは。
「とにかく」
真剣な。
「あの子に乱暴はしないこと。いいわね」
「そんなことするわけないやん」
「したでしょ」
にっこり。
「勝手に遠くの国までつれていったり」
「それは乱暴とは」
「言います」
ゆずらない。
「だから、シルビアは何もしないでね」
「ちぇー」
唇を。
「それにしても」
複雑な。
「水くさい子なんだから」
「ん?」
「ユイエンがよ」
ぽつり。
「家族なのに」
「んー」
頬を。
「家族だから違うん」
「えっ」
思わぬ。
「せやろ」
優しい。
「かえって言えないこともあるやん」
「それは」
「大事やから」
はっと。
「シルビア……」
微笑。
「そうね」
「そうや」
うなずく。
「さすが」
寄り添う。
「お姉ちゃん」
「まーなー」
「特別」
「ん?」
「今日だけ」
口に。
「一番お姉ちゃんで」
「それって」
言わずとも。
「へへー」
うれしそうに。
「じゃあ、お姉ちゃんから一つ言おうかなー」
軽く。咳払い。
「ユイファ」
「なぁに、お姉ちゃん」
「今日だけなんてケチくさいこと言わんで、これからもずっと」
「それはだめ」
Ⅶ
「かぞく?」
目を。
「ああ」
大きな手のひらが。
「そうだ」
「………………」
何も。
「嫌か」
責めるでも。哀しむでもない。
おだやかなまま。
「……わかんない」
正直に。
「それって、必要?」
「ん……」
詰まる。
「そうだな」
思案し。
「俺は」
語る。
「一人だった」
同じ。それは。
「一人でなくなった」
「えっ」
どっちだ。
「いまは」
頭に。
「おまえがいる」
「………………」
そうだ。
「……いいよ」
言っていた。
「やあ、シルビア」
「!」
気配に。
「ヨータの」
まったく。
「あ……」
氷解。
「そういうことか」
口の端を。無理やり。
「会うたやろ」
懸命の。
「ユイエンに」
「会うた」
あっさり。
「聞きたいことがあったから」
「聞きたいこと?」
「キミにも」
一歩。
「教えてもらいたいな」
「っ……」
後ろに。
(くっ)
踏ん張り。
「ウチはパパの子や!」
前に。
「そっか」
優しい。
「ありがとう」
それで。
「あっ」
行って。
「……な、何やの」
どっと。
「ふぅ」
何を。考えて。
「それでも」
間違いのない。
「パパや」
同じ。
それは。
Ⅷ
「ふぅ」
ゴキゴキ。
(こういうものか)
肩こり。無縁と言ってよかった。
「慣れないことは」
するものでは。
(……いや)
何を。
(いまさら)
分不相応と。最初から。
それでも。
「金剛寺(こんごうじ)さん」
ノック。
「何だ」
自然と。砕けた口調に。
「お疲れかと思って」
見抜かれている。
「すまない」
コーヒーを受け取り。
「………………」
ふと。
「アレックスさんは」
「えっ」
鍛冶仕事。一所で同じ姿勢を続けるという点ではデスクワークにも似ている。
(しかし)
変わった。お互い。
しかも。
「………………」
それは。同じ人物によって。
「あの、金剛寺さん」
はっと。
「いや、すまない。何でもない」
「そうですか」
釈然と。
「本当に」
言うも。
「………………」
まだ。そう顔に。
「フリーダ」
と、すぐ。
「……先生」
「いいですよ」
苦笑。
「学校ですけど」
特別と。
「そうか」
こちらも笑い。
「どう思った」
「え」
「………………」
その。先が。
「……ああ」
察して。
「そうですね」
言葉を。選ぶよう。
「ショックでした」
「……そうか」
静かに。
「でも」
微笑。
「よかったって」
「何?」
意外な。
「だって」
こちらを。
「生きてるんですから」
「っ……」
それは。
「……そうだな」
同意。
(それが)
偽らざる気持ち。
『オヤビン!』
忘れない。
『爸爸(パーパ)!』
意識は。なかったはずなのに。
「ふぅ」
肩を。
「やはり」
椅子に。しずみ。
「疲れているのかな」
「そうですよ」
あたたかく。
「がんばりすぎないでください」
「ハハッ」
自分程度が。
「まだまだだよ」
「もう」
仕方ないと。
「そういうのがいいところですけど、悪いところでもあるんですから」
では。
「休んでください」
思いがけない。
「それなら」
いま。こうして。
「休憩じゃなくて」
あきれ。
「休養です。しっかり休暇をとるんです」
「休暇……」
これまた。
「そうか」
答えに。
「いや」
しかし。
「職を引き継いでまだ十分には」
「休んでください」
にっこり。
「いいですね」
言われ。
(あ……)
これは。遠回しに。
「カン違いしないでください」
先んじて。
「わたしたちには金剛寺さんが必要です」
「む……」
正面から。
「無理をしてほしくないんです」
「………………」
言葉が。
「ふぅ」
ようやく。
「情けないな」
「金剛寺さん」
そういうことでは。
「いや」
わかっていると。
「甘えさせてもらう」
安堵の。
「お願いします」
(お願いは)
本当なら。こちらから。
(情けない)
わかっている。
(しかし)
それに。甘えることは。
(俺は)
〝父〟なのだから。
「ええこと言うやん!」
突然。
「シルビア」
あぜんと。
「お、おい」
あせって。
「おまえ、いつから」
「いいこと言うやないですか、フリーダ先生」
感心したと。
「パパ、がんばりすぎやもん。休みがあってええんや」
うんうん。うなずく。
「てゆーか」
じろり。
「学園側がパパを働かせすぎやないんですか。労働基準なんたらとかどーなってんの」
「おい」
調子に乗るなと。
「けど、まあ」
こちらを。
「〝娘〟もこう言ってることですし」
「せや」
二人して。
「フッ」
苦笑。
「ほな、さっそく」
腕を。
「コラ、シルビア!」
あわてて。
「なんでだ!」
「はい?」
「そうだぞ」
たしなめる。
「今日はまだ仕事中だ。途中で帰るわけには」
「そうじゃなくて!」
「む?」
「あ……」
口を。
「ふふーん」
余裕の。
「何か、おかしいですかー。親子で腕を組んでたらー」
「そういうことでは」
「そういうことです!」
「え……」
「ひゃあっ!」
また。
「ああ」
わかったと。
「学園の中だからな」
教師と生徒。そのけじめは。
「そ、そうです」
ようやく。
「えー。でも、休みなんやしー」
「それとこれとは」
「だから、今日はまだ」
「家に帰れば休みってことやろ? そうやろ?」
「おいおい」
「そうと決まれば、早くウチらのスイートホームに~❤」
「言い方!」
Ⅸ
「いいか、麓華」
「ぷりゅ」
うなずく。
「これはオヤビンたちのためなんだ」
「ぷ……」
「おまえだって」
あらためて。
「このままになんてできないだろ」
「………………」
複雑な。それでも。
「よし」
目と。目を。
「やるぞ」
「……ぷりゅ」
「パパー、見て見てー」
「お父さーん」
「ははっ、これが終わったらな」
優しい。
「もー、あかんやん」
あきれて。
「お休みやろ、今日は」
「しかしな」
何もしない。それはかえって。
「ちょうど、この棚が曲がっていたから」
「そういうことはウチらにまかせたらええの」
言って。
「ほら、あんたらも。パパのお休みの邪魔したらあかんやろ」
「えー」
「『えー』やない!」
厳しく。
「ウチらは何や。パパの子どもやろ」
「そうだよ」
「子どもー」
「パパの子でいい子や」
「うん」
うなずく。
「せやったら」
ぐっ。
「わがまま言わんとパパに休んでもらう。ええな」
「はーい」
「わかったー」
渋々。
「ふぅ」
大げさな。
(しかし)
見渡す。
家族と過ごす。休日の。
(これが)
自分の。ずっと。
(……いや)
感傷的すぎる。
責任。
第一は。
「おまえたち」
呼びかける。
「パパ?」
うれしそうに。が、遠慮の。
「来い」
両手を。
「パパ!」
「うわぁ!」
たちまち。
「ちょっ、パパ!」
あわてて。
「あかんやん!」
「いけないことはないさ」
大らかに。
「親だからな」
「それはそうやけど」
そういうことでは。
「いいじゃない、シルビア」
「ユイファぁー」
こちらも。
「よくないやろ」
「いいの」
にこやかに。
「仲良しだもん」
「あのなー」
「ねーねー、ごはんできたー」
「ごはんはー、ユイファー」
「はいはい、『お姉ちゃん』でしょ」
言いながら。
「おー」
広い。木のテーブルいっぱいに。
「すごーい」
「ごちそー」
「みんな、いーっぱい食べてねー」
「はーい!」
元気よく。
「やるやーん、ユイファー」
手放しで。
「さすが、ヨリコねーさんのとこで修行しただけあるわー」
「ふふっ」
満更でも。
「お父さん」
笑顔で。
「みんな、お父さんの好きなものだから」
「……そうか」
こちらも。うれしそうに。
「ありがとう」
「どういたしまして」
それが。自然な。
「さー、いただくでー!」
「いただきまーす!」
「ちょっ、最初はお父さんに」
たちまち。
「ははっ」
圧倒される。小さな身体に似合わない一同の食欲に。
(これで)
いい。これが。
やはり、自分の望んでいた。
「ユイファちゃん、おかわりー」
「もうっ、『お姉ちゃん』で」
固まる。
「んー、おいしいねー」
周りも。あぜんと。
「パパだ」
しかし。
「葉太郎(ようたろう)の」
そう。
「おいしー」
当人は。いたってのんきに。
「依子(よりこ)に負けてないよー、ユイファちゃん」
「は、はあ」
当惑の。
「あっ」
立ち上がり。
「お姉ちゃんとして葉太郎をかわいがってくれて、ありがとうございます」
深々。
「……ど、どういたしまして」
もう。
「ちょっ……ヨータのパパ!」
ようやく。
「なんでや!」
「なんでだ?」
「こっちが聞いてんねやろ!」
爆発。
「シルビア」
真面目に。
「ごはんのときはちゃんと座って食事しないと」
「そ、そうよ、シルビア」
取りつくろうよう。
「いまはごはんの時間なんだから」
「せやかて」
「シルビア」
静かに。頭を。
「パパ……」
釈然と。
「やっぱりいいよねー、大家族」
あくまで。
「みんなで食べると、ごはんもおいしいし」
「……はい」
うなずく。
「おまえたち」
見渡し。
「冷める前に」
「………………」
おずおず。
一人。また一人。
「おいしい」
「うん……」
弾まない。
「パパ」
じろり。自分のではないほうに。
「家族の団らん、どうしてくれるん」
「ごめんなさい」
あっさり。
「じゃあ、本番に」
「は?」
「ふははははははははっ!」
マント。ひらめく。
「!?」
そこに。
「待たせたね」
誰も。
「そう、私が」
聞いて。
「ファザーランサー!」
高らかに。
「ハッ!」
「ああっ!」
驚愕。
「パパ!」
まさかの。
「な……」
それは。初めての。
「お姫様だっこぉ!?」
自分たちの〝父〟が。
「さらば!」
「あっ!」
まったく。ついていけない。
その間に。
「………………」
誰も。何一つ。
「……パ……」
ようやく。
「パパがさらわれたぁぁぁ!?」
ほとばしった。
Ⅹ
(何やってんだよ、バカ!)
己に。
不意を突かれたとはいえ。
いや、それはわかっていたこと。
(ぜんぜんダメじゃん!)
止まらない。
「どうするの!」
いら立ちをぶつけるよう。
「シルビア!」
「ど、どうするて」
普段になく。情けない。
「何もしないの!」
「バッ……」
あり得ないと。
「けど」
たちまち。
「わけわからんし」
確かに。
「わかってたでしょ」
しかし。
「オイラたちの周りをうろちょろしてたのは」
「それは」
否定は。
「ユイエン」
そこに。
「シルビアだけが悪いわけじゃないでしょ」
「姐々(ジェジェ)」
そんなの。わかって。
「だったら、どうするのさ!」
「みんなが探してくれてるじゃない」
安心させるよう。
「………………」
そうだ。
あの後、我に返った子どもたちが一斉に飛び出した。
誰に言われずとも。手がかりを求めて四方に散っているはず。
もちろん、自分もそうしようとした。
しかし。
(無駄だ)
近くでその異常さに触れたためか。
見つからないときは、どうやったって見つからない。
その確信が頭を冷まさせた。
(狙いが)
ある。はず。
それが軽挙を止めた。
〝姉〟二人は。自然とこういうときは家に留まるようになっている。
全員がいなくなっては、まとめ役がいなくなる。全体の指揮と情報の把握。それぞれを二人が担っているのだ。
「シルビア!」
飛びこんできた。
「こ、これ」
その手に。
「手紙?」
封を。
「……!」
目が。
「何の手紙? 何て書いて?」
「……あかん」
「えっ」
「パパを返してほしかったら」
息を。
「一人で」
一人で?
「来いて」
こちらを。
「ユイエンが」
「森さん」
悪ふざけが。さすがに。
「ファザーランサー」
口もとに。
「でしょ」
「………………」
逆らえない。
「子どもたちに」
それでも。
「心配をかけるようなことは」
「うん」
もちろんと。
「渡したから」
「えっ」
「手紙」
「………………」
わからない。
「鎧」
あたたかく。
「キミは立派なお父さんだよ」
「そんな」
面はゆい。
「まだまだ足りないところが」
「そういうのが鎧のいいところだよねー」
うんうんと。
「プレゼント」
「えっ」
「いい子……じゃなかった、いいお父さんな鎧に」
「は、はあ」
何を。
「ねぇ、鎧」
優しく。
「いま、一番ほしいものは何?」
ストレートな。
「何も」
ためらいなく。
「子どもたちが無事に育ってくれれば」
それが。
「なら、大丈夫」
にっこり。
「みんな、鎧の子だもん」
「……ええ」
それは。こちらも。
「鎧の良くないとこ」
「え……」
不意の。
「もっと自分のことも考えないとだめだよ」
「っ」
また。
「俺は」
とっさに。
「めっ」
制される。
「もー。しょうがないんだから、鎧は」
「………………」
言葉も。
「じゃあ、僕から聞くね」
「は、はあ」
「鎧」
真っすぐ。目を。
そして。
言った。
「騎士に戻りたくない?」
Ⅺ
(ここか)
指定のあった場所。
(オヤビン……)
食いしばられる。
(許さない)
怒りに。身震いする思いで。
「ぷりゅっ」
はっと。
「……悪い」
冷静に。
(オイラが)
必ず。
(こんなところで)
確かに。人気はない。
槍の墓場――
そう。
(なんだよ)
再び。ざわつく。
(墓場なんて)
まるで。〝父〟が。
「違うからな!」
声を。
(あ……)
来たと。知らせるような。
(……いや)
最初から。
こそこそする。気は。
意味が。
(だから)
自分は。
「あれー」
「!」
また。
「おかしいなー」
「っっ!」
飛び退る。
「んー」
まったく。のんきなまま。
「一人だけって書いたんだけどなー」
「一〝人〟だろ」
「あー」
納得の。
「合ってる」
そこに。仮面の。
「フッ」
きどったポーズで。
「よく一人でここまで来たな、勇敢なる子どもよ!」
(おい)
何を。
「しかし」
にやり。
「私から父を奪い返せるかな」
「そんなの」
言い返し。かけ。
「………………」
ぐっと。
「無理だよ」
肩を。
「なんでさ」
弱々しく。
「なんで」
涙。目に。
「こんなことするの」
「………………」
答えない。
「なんで……」
力なく。
「ごめんなさい」
膝を。
「もう、しませんから」
そのまま。
「………………」
お互い。
「お、お久しぶりです」
ぷりゅ。頭を。
「そうね」
優しい。
「白椿(しろつばき)様」
おずおずと。
「実は」
「いいの」
わかっている。
「森様のことでしょ」
「………………」
いななきが。
「森様は」
おだやかな。
「森様なのです」
「ぷ……」
それは。
「……ぷりゅ」
不思議と。説得力の。
「わたしは」
それでも。
「金剛寺家の者です」
いななく。
「もし」
目を。
「何かあるときは」
「ぷる」
わかっている。
「娘なのですね」
「えっ」
「麓王(ろくおう)の」
「ぷ、ぷりゅ」
面はゆく。
「やめなさい」
はっと。
「森様は」
真剣な。
「森様なのですよ」
「………………」
同じ。
しかし。より。
「っ」
いけない。
(ユイエン様)
自分たちの思惑が。
逆に。
「だめだよ」
はっと。
「ユイエン」
微笑。しかし。
どこかさびしげな。
「いけないんだ」
ゆらり。
「っ……」
後ろに。
「嘘」
口に。
「それは」
はっきり。
「いけないことなんだ」
「っっ……」
震えが。
「!」
手が。
「嘘と仮面は違うんだよ」
まったく。
「あ……」
顔に。
「な、何だよ、これ」
あせる。
「こんな」
あわてて。
「っ」
外れない。
「なんだよ……」
混乱。
「なんで」
そこに。
「お父さんはもうすこし預かっておくね」
「えっ!」
馬鹿な。
「待っ――」
いない。
「………………」
ぼう然。と。
「なん……だよ……」
力なく。
「これ」
顔に。手を。
(う……)
夢でない。
(仮面)
意味が。
Ⅻ
「はー」
深い。
「あかんやん」
どうして。こう。
(あないなこと)
言わなければ。
『あかんやん!』
あのとき。
『いろんな意味で!』
『どういう意味?』
『あんた、一番きかん子なんやで』
いまさらと。
『一人で行かせられるわけないやん』
『だったら』
わかってた。そんな。
『麓華つれてくし』
『は?』
確かに一〝人〟ではなくなるが。
『あかん』
『じゃあ、どうするの』
『それは』
代案が。
『オヤビンを見殺しにする気?』
『バッ……!』
あるはず。
『だったら』
ぐっ。
『オイラが行くしかないよね』
『………………』
結局。
しかし。
「はぁ……」
また。
「シルビア」
優しく。
「きっと、大丈夫よ」
「ユイファ」
誰よりも。
「ごめんな」
「違うでしょ」
にっこり。
「心配なのは」
肩に。
「一緒だから」
それは。
「けど」
ゆれる。
「ウチが」
「あなたが決めたことは」
きっぱり。
「みんなで決めたのと同じこと」
「………………」
「家族なんだから」
言って。
「っ……」
抱きしめられる。
「……あんがと」
ようやく。
「よっしゃ!」
気合の。
「あかんやん!」
それこそ。
「ウチがこんなウダウダしとったら! 長女のウチが!」
「違うでしょ」
そこは。
「けど、一番お姉ちゃんでええて」
「一日だけです」
「ええやーん」
そこに。
言葉にはしなくとも。
(なんだよ……)
何度も、何度も。
(なんでだよ)
わからない。答えなど出ない。
「ぷりゅっ」
顔を。
「麓華」
食べ物の入った袋をくわえ。
「……ありがと」
実際。いてくれなかったら。
「ぷりゅ」
案じるような。
「わかってるよ」
盗みなど。したり。
(だって)
金剛寺家の。
(オイラは……)
いまも。
「っ」
弱気な。目ににじむそれを。
「く……」
ぬぐえない。
「くそっ」
これのせいで。
「このぉっ!」
外れない。どうしても。
「ぷ、ぷりゅ」
無理は。
「わかってるよ」
投げやりに。
(いつまで)
こんなものを。
「ぷりゅぅ」
すりすり。
「麓華……」
気遣いの。
「ぷりゅ。ぷりゅぷりゅ」
「……行けないよ」
こんな姿で。
(会えるわけ)
ない。
『嘘と仮面は違うんだよ』
思い出す。
(本当の)
いまの自分は。
(嘘)
それは。違うと。
(わかんないよ)
わかるわけ。
「何やってんだ」
「!」
まさか。
「な、なんで」
行動パターンは把握して。
「あ……」
違う。
〝家族〟たちが探すことは予測していた。
しかし。
「モーリィに聞いたんだよ」
はっと。
「なんか、シルビアの馬の様子がおかしいってな」
「おい!」
思わず。
(っ……いや)
悪いのは。これを予測できなかった。
「おまえ」
当惑して。
「それ……」
「っ!」
とっさに。
「見るな!」
「いや」
言われても。
(くぅっ)
見られたくない。こんな。
「好きでつけてる」
「!?」
「わけじゃなさそうだな」
当たり前だ!
「シルビアたちは知ってんのか」
「………………」
答えない。それが。
「なんでだよ」
それは。
「家族だろ」
そう。だから。
「あんたに関係ない!」
駆け出す。
「わっ!」
あっさり。
「まあ、任せろ」
「えっ」
首根っこを。
「あたしも家族みたいなもんだからな」
「っ……」
「なんだよ」
気に入らないと。
「あたしじゃ信じられないってか」
信じるも何も。
「違うし」
「あ?」
「ただの先生だろ」
それだけ。
「……まあ」
仕方ないと。
「おまえらと金剛寺さんとの絆には比べられないよな」
当たり前だ。
(っ……)
そうだ。こんなところで。
(オヤビン)
そちらのほうが。
ずっと。
(こんな)
仮面よりも。
「離してよ」
「えっ」
「いいから!」
突然の。その。
「あっ」
力が。
「お、おい!」
すり抜けられる。
「麓華!」
飛び乗る。
騎士の馬。本来は主人しか乗せない。
しかし。
(騎士じゃない)
自分は。だから。
(そんな〝伝説の騎士〟とか)
知ったことでは。
ない!
「行けぇ!」
応えて。
「お、おい!」
驚き。思わず。
「カムバーーーーーーック!」
帰って。
当然。
こなかった。
ⅩⅢ
「っと」
降り立つ。
(ここに)
と言うより。ここしか。
「………………」
そろり。入口へ。
「コラ」
「!」
後ろから。
(くっ)
吹き飛んでいた。
この場所に。〝家族〟の注意が向かないはずがなく。
「え……」
安堵。だけでない。
当然の。
「何や、それ」
「っ」
隠そうと。
「………………」
いや。
「悪い?」
逆に。
「……ううん」
それ以上。
「あっ」
「?」
指を。
(あ……)
古典的な。
「くっ」
あわてて。
「!?」
そこに。
「じゃーん」
「な……」
なにが『じゃーん』だ!
「い、いや」
どういう。
「せやな」
うんうん。
「ヒーローやもん」
「は!?」
「せやろ」
ニッ。
仮面からのぞく口もとに。
「美少女騎士! シルバーランサー推参や!」
美〝少女〟はもう。
「行くで、フレイムフェザー!」
「は!?」
名前? 誰の!
「ええやろー」
ドヤ顔で。
「謎の仮面のヒーローやし」
「おい!」
何が。大体。
「ヒーローや」
断言。
「とらわれのパパを助けに行くんやもん」
「……!」
それは。
「行くでーっ、フレイムフェザー!」
だから!
(くっ)
そんなことより。
「待ってよ!」
後を。
(オイラが)
助ける。そのことだけは。
「なあ」
「何?」
慎重に。進みながら。
「ここ、暗いやん」
当たり前の。
特殊な採光構造のためか照明がいらないほどだが、それでも地下であることには。
「いらんなあ」
いらない?
「これ」
コツコツ。
「………………」
仮面。
「なあ」
さらり。
「外さん?」
「な……」
なんだそれは! 入る前のあれは何だったのだ!
(くっ)
外せるものなら。
「だって、アレやん」
アレ?
「こんな暗いとこで二人して仮面で顔をって」
真剣に。
「ヘンタイやん」
ブッ!
「その歳でそっちに目覚められても」
「目覚めないし! ヘンタイじゃないし!」
なんてことを。
「正直、ウチもこれ恥ずいしなー」
なら、やるな!
「人に見られてるならともかく、誰も見てないところでって逆に」
「それは」
わからなくも。
「外そ」
(う……)
だから。
「それとも」
疑惑の。
「ウチらの知らんところでずっと」
「してないし!」
不可抗力で。
「せやったら」
「いるから!」
強引に。
「い、いるかもしれないから」
わかっている。
せめて何か手がかりだけでも。そう思ってここに戻ってきた。
しかし。
(あのとき)
すでに。
最初に仮面をつけられ、我に返って飛びこんだとき。
どこにも。もう人の気配は。
『だまされた……』
思った。
違う。
最初にだまそうとしたのはこちら。あどけない子どもを装い、その心の隙を突こうとしたのは。馬同士を接触させたのだってその延長。とにかく、どんな手を使ってでも、こちらをふり回す〝敵〟に一撃くらわせたかった。
指示に従うつもりなんて頭からなかった。
甘かった。
(騎士は)
嘘をつかない。その根源にあるのは。
至誠。
制約の絶対。
交わした約定を破るようなことは絶対に許されない。
(それが)
罰。
「ええで」
「っ」
我に。
「そのままで」
(ど……)
どういう。
いや、外せるものならこんなものいますぐ。
「……!」
そのときだ。
(まさか)
気配が。
(けど)
戻ってくる。その理由が。
「っ!」
違う。そこに。
「出たなー」
指を。
「仮面のヘンタイ!」
「おまえが言うな!」
もっともだ。
「ティーチャー」
「それもやめろ」
がっくり。
「つか」
持ち直し。
「何してんだ、こんなところで」
「それはこっちのセリフやないですか」
負けず。
「まさか、人のいないところで仮面をつけて楽しむシュミが」
「あるか!」
だから、お互い。
「ごまかすなよ」
真剣な。
(あ……)
そうか。追跡を許してしまったのは。
(こんなの)
ばかり。
自分の失態が。すべて。
「う……く……」
だめだ。わかっていても。
「あんた」
気づかれる。
「なに、泣いて」
「……ない」
ごまかしようも。
「この仮面のオバサンが怖くて」
「おい」
「こんな小さい子を仮面つけておどかすって! 節分か!」
「あれはお面だろ!」
違いは。不明な。
「なまはげか!」
あれもお面。
「包丁くっついた槍持ってるし」
「これは斧だ!」
構える。思わず。
「やっぱり」
緊迫の。
「ヘンタイ行為をばらされんよう口封じ」
「するか!」
あらぬ疑いに。
「あたしはなぁ!」
声を。
「ア……アクセルティーチャーだ!」
照れが。
「先生でも何でもない!」
「いや『ティーチャー』て」
「だから!」
強引に。
「見逃す」
「えっ」
思わぬ。
「先生じゃないんだ」
強引に。
「だから」
凛々しく。
「言え」
「………………」
つまり。
「へー」
感心の。
「止める気はないと」
「それはまだわからん」
きっぱり。
「危険なことだったら許すわけにいかないからな」
「先生やん」
口の中で。
「仮面は」
ぽつり。
「仮面やないんやなあ」
(えっ)
深い。感慨の。
「さあ、どうする」
「どうするて」
「っ」
我に。
「だめだよ」
すかさず。
「何も言っちゃだめだからね」
「ちょ、あんた」
そんなあからさまな。
「家族の問題なんだ」
ゆずれない。
「おまえら」
探るように。
「なんだか、普通じゃないよな」
「お互い様ですやん」
「仮面のことじゃ……ってそれもあるけど」
「ヘンタイの自覚が」
「お互い様だろ!」
そこは。
「おまえら家族全員がだよ」
「ええっ!」
ショック。
「なんて侮辱や」
わなわな。
「ウチら全員がヘンタイて」
「はいはい」
わかっていたと。
「って、つれないですやーん」
「ごまかすな」
真剣に。
「だめだよ」
こちらも。
「えーと」
板ばさみの。
「金剛寺さんは」
ぎくっ。
「どうしたんだよ」
(チッ……)
まさに。そのことが。
「だめだから」
念を。
「せやかて」
どうしろと。
「あり得ないから」
頑なに。
「オヤビンが」
そもそもの。
「認めない」
「あんた……」
伝わってくる。
自分たちの〝父〟に対する。
絶対の。
「おい、金剛寺さんがどうしたんだよ」
あわてて。
「何でもないって!」
言い張る。
「……!」
そのとき。
「あ……」
ぬうっ。と。
「う……うう……」
うめくような。
「………………」
あぜん。三人とも。
「……か……」
その巨影に。
見た。
「仮面!?」
ⅩⅣ
「なんで……」
見紛いようもない。
「嘘だよ」
ふるえる。
「オイラだけじゃなくて」
ひどすぎる。
「ち、ちょっと」
その反応に。
「あの」
近づく。
「どうした……んですか」
聞いてしまう。
「………………」
何も。
「なんで黙っとるん」
不安に。こちらも。
「おかしいやん。そんなもんつけて」
この場の全員が。
そのツッコミが出ることもなく。
「つけさせられたんだ」
「……!」
「あいつに」
怒りの。
「ちょっ、それってどういう」
ますます。
「下がってろ」
「えっ」
何か。感じ取り。
「どうしちゃったんだよ」
それでも。
「子どもたちがいるんだぞ!」
そのとき。
「!」
掲げられた。そこに。
「や……」
あり得ない。
――槍。
「嘘やん」
こぼれる。
「だって……もう」
その先は。
「なんでさ」
こちらも。
「これも、あいつが」
「何やねん!」
こらえきれず。
「さっきから『あいつ』『あいつ』て!」
「決まってるでしょ」
「……っ」
決まっていた。
「おい、おまえら」
蚊帳の外。
「さっきから『あいつ』『あいつ』って」
同じことを。
「そいつが」
「そうだよ」
ぶっきらぼうに。そして。
「聞いて!」
声を。
「助けるから!」
ピクッ。
「オイラがいるから!」
自分のことは助けられなくても。
それでも。
「あんた……大げさな」
言うも。
「………………」
向こうは。
「……!」
不意に。
「どないしたん!」
膝を。
「来るな!」
はっきり。
「あ……」
その。凛々しい。
「くっ!」
槍を持つ。
手に。
「違う……」
苦しげな。
「いまの……俺は」
突如。
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」
咆哮。
「……っっ」
驚きに。
「あっ!」
背を。
「待っ……」
しかし。
「えっ」
動かない。
「……ふ……」
背中越し。
「ふ……はっ」
突然。
「ふはははははははははははははははははははっ!」
大哄笑。
「………………」
完全に。
「あ」
駆け出す。
「やっ、ちょっ」
動けない。
「あ……」
行かれて。
「…………………」
沈黙。ただ。
「……壊れた」
ようやく。
「嘘やん」
誰もが。
ⅩⅤ
『仮面の騎士、現る――!?』
たちまち。
「なんでや……」
がっくり。
「まあまあ、シルビア」
元気づけるよう。
「ヒーローだっていうじゃない」
そう。らしい。
島民が困っているところにさっそうと現れる。レディだけではなく、老若男女を問わず。どこからともなく風のようにやってきて、お礼も何も受け取らずに去っていく。
謎の仮面のヒーロー。
〝騎士の学園〟。そう呼ばれる施設を中心として成り立っている島だけに、そのような存在への警戒心や抵抗感はほぼないと言っていい。
むしろ、大いに人気を集めているとも。
「やらされてるんだ」
そこに。
「自分の考えじゃないよ」
「なんでや!」
二つの。意味で。
「あ、あの」
おそるおそる。
「それ……いつまでつけてるのかな」
「………………」
触れられたくない。
「……違うし」
くらい。しか。
「そうや、違う」
うんうん。
「いつまでも何も、これが正義のちびっ子ヒーロー・フレイムフェザーの」
「誰が『ちびっ子』だ!」
以外にも。
「まあ、これは置いといて」
『これ』扱いか。
「肝心なのは謎のヒーローのほうで」
「謎なんかじゃない!」
そうだ。はっきり。
「くぅっ!」
「あっ、フレイムフェザー」
呼ぶな。そんな名前で。
拒絶。
あれは。確かに。
(あり得ないよ)
自分たちのことを。
(違う)
だから。
自分の意志のはずがない。
あの格好だって。
(オイラと)
同じ。
「くっ……」
いまもなお。
「ぬぅぉーーーっ!」
外れない。
「ハァッ……ハァッ……」
恥ずかしい。すぎる。
(こんな)
思いを。
同じように。
(……ううん)
自分よりひどい。おそらくは。
(あやつられて)
そうとしか。
(何のつもりで)
堂々巡り。
(けど)
それは。最初から。
「……わかったよ」
一人。
「やってやる」
あらためての。
「ちょうどいいや」
顔に。
正確には『それ』に手を。
「仮面の」
ヒーローだけと。思うな。
むしろ。
顔を隠さなければならないのは。
「手を上げて」
それは。久々の。
「……おい」
あきれた。
「覆面強盗ってのは聞いたことあるけど」
仮面強盗――
「っていうか、おまえ、誰に向かって」
「フリーダ・バルバロッサ先生」
しれっと。
「だったら」
ポキポキ。
「そういうことしたら、どうなるかわかってんだろ」
「こわーい」
わざとらしく。
「だったら、その物騒なもんをさっさとしまえ」
「ヤだよ」
言うなり。
「お……」
引鉄に。
「お、おいっ!」
パァァン!
「っ……」
身を。
「おもちゃだよ」
ひらひら。銃口から出た紙を。
「おまえなー」
どっと。
「ん?」
気がつく。
「そ、それ」
「よく撮れてるでしょ」
ひらめいている。それは『紙』でなく。
「いつの間に!」
すぐさま。
「おっと」
予想済みの。
「これだけだと思う?」
「!」
「知らない人はどう感じるんだろうねー」
にやり。
「ティーチャー」
「く……」
がくっ。
「何が目的だ」
「そっちで言ったし」
見下ろし。
「強盗」
「……!」
ビッ。指を。
「やってもらうよ」
ⅩⅥ
「おらぁっ、てめぇら手を上げろぉ!!!」
激しく。
「………………」
きょとん。するも。
「きゃー」
「逃げろー」
大はしゃぎで。
「お、おい! 逃げろとは言ってないんだよ!」
あわてて。
「だから、手を上げて」
「横断歩道を」
「違う!」
交通量と言えるものもない島で。
「おとなしくしろ!」
きゃっきゃっ。
「悪い子はいねがー!」
ますます。
(やっぱ、なまはげじゃん)
あきれて。
(まあ)
手始めに幼稚園バス。そんなことを思ったが。
(ないし)
幼稚園『馬車』ならあるが。
(とにかく)
これで。
「きゃっ」
逃げていた一人が。
「あーん」
「おい、大丈夫か」
優しく。
「ちゃんと、前見ないからだぞ」
泥を。払って。
(先生じゃん)
完全に。
「ありがとー、ティーチャー」
「ティーチャー」
わらわらと。
「ちょっ、おい」
何を目的としていたのか。
もはや。
(これ)
仮面姿の写真。
(いらなかったかも)
こんな〝脅迫〟は。
「おまえらなー」
弱り切って。
「あたしはおまえらから大事な物を」
「じゃあ、これー」
「あげるー」
あっさり。
「い、いや、くれって……まあ、言うつもりだったんだけど」
花の首飾り、貝殻、描きかけの絵、泥団子。
腕の中がいっぱいに。
(はぁー)
だめだ。こんなことでは。
「ハーーーッハッハッハッハ!」
(……!)
来た。
「あー」
「出たー」
歓声が。
「ファザーランサーだー」
(っ!)
その名前で。
(なんで)
仮面は。
(けど、ぜんぜん)
違う。
はずで。
「たぁっ!」
跳んだ。
「きゃーっ」
さらなる。
「おお!?」
軽やかに。子どもたちをかばうように。
「いや、あの」
途端。
「ごめんなさい!」
(おい!)
いきなりか。
「その、だから、これは違って」
言いわけに。
「キミたち」
くるり。背を向け。
「わたしが来たからにはもう安心だ」
大歓声。
(う……)
鳥肌が。
(違う、違う、違う!)
あらためて。こんなのが自分たちの。
「さあ」
ふり返り。
「……!」
槍を。
(やっぱり)
見間違いでは。
「悪しき仮面の騎士よ!」
「ええっ!?」
(おい)
動揺するなと。最初からそのつもりで。
「いざ」
「い、いざ!?」
うろたえまくり。
まったくそれっぽくない。
「がんばれ、ファザーランサー」
「がんばれー」
(だから!)
イライラが。
「まかせなさい」
ニカッ。ふり向き。
(もう!)
ぜんぜん。こんなのは。
「い、行きますよ」
完全な及び腰。
警戒。
というより、こちらがやりすぎてしまうことを心配して。
「わっ!」
踏みこまれた。
(あ……)
まったく。それは。
(同じ)
以前と。
「くっ!」
キィィィィィン!
音高く。
「あ……」
驚きの。
実際に槍を交えて。
感じた。
「くぅっ」
手加減など。とても。
「いけー、ファザーランサー」
「やっちゃえー」
声援に。応えるよう。
「あっ!」
一瞬の。
腕力だけでない技巧の冴え。互いの槍同士が絡みあったと思った直後、勢いよく跳ね上げられて。
空を舞う。斧付きの騎士槍。
「あ……」
悔しささえ。
それは。
「さすがです」
感嘆の。
「まだまだだな」
言って。
手を。
「!」
キス。
「な……ななな」
パニック。仮面で見えずとも。
「精進しなさい」
優しく。
「レディ」
「っ……!」
爆発。
「は、はいっ!」
乙女のように。
(だめだ……)
脱力感。最大級の。
「さらば!」
「あっ」
しまった。
「ち、ちょっと! 何してるの!」
「はぇ?」
ふぬけの。
「あ……」
もう。
「サイアク」
頭を。
と、そこに。
「誰ー?」
ドキッ!
「オ、オイラは」
何と。
「ファザーランサーの子ども?」
(う……)
それには。
「コドモランサーだー」
「コドモランサー」
「違う!」
そんな名前で。しかも、こちらよりチビ相手に。
「オイラは」
口に。
「………………」
できない。認められない。
「お……」
結局。
「覚えてろよーーっ!」
無意味すぎる。
「あ、逃げたー」
「恥ずかしがりー」
「かわいー」
違う、違う、違う!
(負け犬……)
遠吠えも。
ⅩⅦ
「何やってんだよ」
つぶやく。
「ねえ」
隣を。
「麓華」
「ぷ……」
戸惑いの。
「ごめん」
すぐ。
「あーあ」
寝転がる。
「………………」
触れる。
「くそっ」
慣れたくなんか。
「麓華」
つい。
「おまえもつけてみる?」
「ぷ……!」
それは。
「ぷりゅぷりゅぷりゅ」
気遣いつつも。首を横に。
「だよねー」
わかっていたと。
「冗談だよ」
しまらない。本当に。
「あ」
これって。
(罰……)
なのか。
自分のこと以上に。
「なんだよ」
悪態。さえ。
「ぷりゅ」
なぐさめるよう。
「いいって」
ぶっきらぼうに。
「おまえたちには」
はっと。
「そうか」
いらないのだ。
(仮面なんて)
あっても、なくても。
わかる。
(におい……)
だけではない。
野生の。本能の。
つながり。
「いいよね」
思わず。
「………………」
いや。
(ある)
自分たちにも。
「あるんだよ」
声に。
「そうでしょ」
「ぷりゅ」
その。目に。
「うん」
励まされ。
「やるから」
今度こそ。
(ううん)
何度だって。
それは。
(決まってる)
当たり前のこと。
「というわけで」
しれっと。
「総力戦で行くから」
久々に。勢ぞろいの。
「しつもーん」
手を。
「……はい」
渋々。
「バナナはおやつに」
「ちょっと!」
ふざけるのは。
「真面目や」
「っ」
「あんた」
真顔で。
「これくらいでカーッとなってどないすんねん」
「う……」
その通り。
「ごめん」
素直に。
「やるから」
静かな。気合の。
「小細工なしで」
おお……。軽いどよめき。
「本気やな」
「そうだよ」
目を。
「けど」
ここで。
「はっきりさせとくから」
ざわり。再び。
「どうしたいの」
見渡して。
「どうしたいって」
戸惑い。
「ねぇ、ユイエン」
なだめるよう。
「大丈夫だから」
「えっ」
「もう、それはファッションってことでみんな」
「違うし!」
顔の『これ』のことではなく。
「ほら、わたしだって」
くいくい。
「あのさぁ」
同じにしてもらっては。
「っ」
息を。
「それだ」
「え」
「一緒だよ!」
会心の。
「みんな」
にやり。
「忙しくなるから」
ⅩⅧ
「はーい、こっちですよー」
旗を。
「あ、ゆっくりで大丈夫でーす。医療学部は逃げませんからー」
愛想よく。
「………………」
その。顔に。
「えーと」
おそるおそる。
「先輩、それ」
「シスター」
久々の。
「そもそも『お姉ちゃん』でしょ」
「う……」
コメントは。
「あの」
それでも。
「何を」
根本的な。
「案内」
それは。わかって。
サン・ジェラール学園医療学部。〝騎士の学園〟と呼ばれる当校ではあるが、母体組織設立時の主活動の一つであった救護活動にも力は置かれており、そのことは対外的にも広く知られている。こうして島外から見学者が訪れることもめずらしくない。
しかし。
「なんで」
「当然でしょ」
いや。
「仮面……」
「家族だから」
そう。言われると。
「そっちじゃないですよー、こっちですからー」
引き続き。
「……が……」
それを。前に。
「がんばってください……」
しか。
「ゆっくり渡るんやでー」
馬車の前を。
「ありがとう、シルバーランサ―」
「ありがとー」
笑顔で。
「まー、島の馬はみんな賢いし。交通整理しなくても平気やけど」
「ぷりゅっ」
そうだと。騎士の馬に負けないというように。
「けど、万が一ってこともあるしなー」
「ぷりゅー」
不服の。
「まーまー、お互い気をつけようってことや」
なだめて。
「ほら、あっちでも」
「みんなー、あんまり、沖のほうに行っちゃだめだよー」
「はーい」
元気よく。
「あっ」
言った先から。
「もー」
仕方ない。そんな息をもらすも。
「よっ」
飛びこむ。
あざやかな。手をほとんど使わない魚のようなしなりで。
「コラ」
見る間に。
「遠くまで行っちゃだめって言ったでしょ」
「えー」
平気。言いたげな。
「だーめ」
厳しく。
「うわっ」
身体が。下から。
「きゅいっ」
「うわぁ」
笑顔が。
「イルカさんも仮面ー」
「だって、正義のイルカだもん」
「きゅい」
そうだと。
「ほーら、一名様ご案内ー」
「きゅいー」
スイー。安定感抜群の。
「いいなー」
「わたしも乗りたーい」
「イルカランサーだー」
「イルカランサー」
「きゅいぃ~?」
その呼ばれ方は。
「いいって、いいってー」
屈託なく。
「あっちもがんばってるみたいだし」
中央市場。
常設の店舗に加え、時節ごとに多種多様な露店が立ち並ぶ。島で要りような物はたいていここで手に入ると言われている。
そのにぎわいは小規模ながら祭りのようで、それだけに大小のトラブルも尽きない。
「これで全部ですか?」
籠の中に。
「いえ、遠慮なさらないでください」
器用に。頭に。
「もうすこし落ちつけるところまで行きましょう」
歩き出す。
落とした荷物を拾っただけでなく。当然と。
「ご心配なく」
言うも。
「その……」
気遣うよう。
「こんな見た目ですが」
普段から。口もとは布で覆い隠している。
が。
(目もとまで)
さすがに。
「あー、いたいたー」
「手伝うよー」
そこへ。
「ありがとう、みんな」
微笑の。
「あ……」
はっと。
「この子たちは」
すかさず。
「正義のヒーローだよー」
「仮面のー」
堂々と。
「一緒だよね」
「ねー」
左右から。腕を。
「あなたたち」
力が。
「そうですね」
自然と。
「行きましょう」
引け目を感じることなど。
ない。
「わたしは」
ヒーローなのだから。
「しないの?」
ぎょっと。
(また)
不意を。衝かれずには。
「しないよ」
それでも。
「えー」
残念そうに。
「しようよー」
「………………」
相手に。
「ヒーローなんだからー」
「っ……」
それを。
「外してよ」
押し殺し。
「オイラだけじゃない」
当然。
「そう思う?」
じっと。目を。
「……そんなの」
決まって。
「鎧は」
おだやかに。
「鎧なんだよ」
「そ……」
そんなこと。
(知って)
いて。
「本当に?」
「バッ……!」
あり得ない。
「馬鹿に!」
「してないよ」
優しい。
「だから」
「っ」
あっさり。
「あ……」
視界が。
「………………」
じわり。胸に。
けど、それを認めたくなくて。
「フ、フン」
強がるも。
「頼んでないし」
そもそもが。
「よかったね」
「おい!」
だから。
「おめでとう」
パチパチ。
「はい」
「!」
いた。
「ファザーランサー」
「っ!」
その呼び方。
「何なんだよ!」
こちらも。仮面を。
「二人とか!」
「いるよ」
当然と。
「お父さんだもん」
どちらも。
「キミたちだって」
それは。
「その通りや」
「あ」
勢ぞろい。
「子どもやもん」
(な……)
何を。
「そうだね」
微笑。
「いいよねぇ」
しみじみ。
「じゃあ」
パン。手を。
「しよっか」
する?
「せやな」
だから。
「ここからは」
「……!」
一斉に。手に。
「家族の時間や!」
ⅩⅨ
(な、何なの)
理解が。
(仮面の)
乱舞。
(嘘だよ)
嘘では。なく。
目の前で。
現実に。
(現実)
もう。
「行くでーーーっ!」
恐れることなく。
「はぁっ!」
突きかかる。
「うん」
あくまで。
「さすが」
にこやかに。
「鎧の一番弟子だね」
「……!」
槍先が。
「あ」
しまったと。
「シルバーランサーだよねー」
てへぺろ。
「こっちはファザーランサーでー」
自分と。もう一人。
「ダブルファザーランサー」
「っ」
持ち直し。
「はぁぁっ!」
しかし。
(マジか)
当たらない。
ただの騎士ではない。
下位とは言え、そこにおける最上位。
〝権騎士(プリンシパリティ)〟
その一切手加減のない槍撃がだ。
「えーーーい!」
「はっ!」
さらに。
「ふんふふふーん♪」
鼻歌まじり。三人の〝権騎士〟を相手に。
(違いすぎる)
素人目にも。それは。
「えーいっ」
「やーっ」
一方。
(あっ)
こちらは。自分たちよりはるかに大きな相手に。
「えいっ。たぁーっ」
「ちぇやーっ」
かわいらしい。そう聞こえることも。
だが。
(ぜんぜん)
本気。
気の抜ける気合の声も。
技。それは。
敵をすこしでも油断させようという。
(意味ない)
知っている。
見た目の年齢にそぐわない実戦的な凶器による四方八方からの攻撃を。
寄せつけない。
まったく。
傍目には、稽古をつけているよう。
(く……)
むらむらと。
(なんだよ)
自分だけ。
一人。
(こんな)
仮面も。
(いやいやいやっ!)
何を。
(いらないだろ!)
なのに。
(なんで)
おかしい。
この空間で。自分だけ。
(一人……)
それは。
どこまでも。
(嫌だ)
はっと。
声に。自分の心の。
「ち、違う」
「違わないよ」
「!」
また。
「あ……」
そうだ。
「姐々たちは!」
「優秀だね」
「っ」
それは。
「姐々」
もう一人の。
それが。三人を。
(怪我は)
ぱっと見。目立つものは。
「話したかったから」
「っ」
こちらに。
「ユイエンと」
(う……)
仮面は。もう。
「どうだった」
どう?
「ユイエンじゃなくなってみて」
「っ」
それは。
「か、関係ないし!」
自分は。自分で。
「あるよ」
頬。
ふれる。
「鎧の大切な子どもだもん」
「な……」
だったら。
「ごめんなさい」
深々。
「……く……」
いまさら。
「いいかげんに」
言いかけた。
「……!」
そこに。
「あ……う……」
心の。まだ。
「いる?」
脇から。
「いらないし!」
すかさず。
(もう)
自分は。
「オイラは」
口に。
「オイラだ」
はっきり。
「だから」
ふるえる。
「やめてよ」
しかし。
「もう……」
その。先が。
(なんで)
わかっている。
(オイラたちが)
仮面の。その裏側では。
(重荷)
思いたくない。
けど。
「オヤビンは」
止まらない。
「オイラたちのこと」
どう。
(愛されている)
それは。嘘では。
(甘えて)
それに。
(オヤビンは)
本当に。
したかったことを。
「それ」
手を。
「ん?」
「だから!」
じれったく。
「貸してよ!」
乱暴に。
「ふんっ」
装着。
(あ……)
また。外れないようなことに。
しかし、いまは。
「すぅー」
息を。
「………………」
不思議だ。
言えそうな。いまなら。
仮面をつけているときのほうが。
(変だよ)
わかって。いて。
「爸爸」
口に。
「オイラ」
いや。
(いらない)
よけいな。
「何でも」
ただ。
「する」
心から。
「オイラ、もう」
仮面越し。
「子どもじゃない」
ピクリ。
「……子どもだけど」
それは。
「でも!」
前に。
「できるから!」
そうだ。
「だから」
言える。
「なって」
そう。
「なりたい自分に」
仮面。そんなものなくとも。
(って)
いまの自分が。
「お父さん!」
そこへ。
「パパ!」
「とーさん!」
次々。仮面の。
「お、おい」
迷わせるような。
「我慢できへんやん」
隣に。
「子どもなんや」
それは。
「みんなで正義のヒーロー」
にかっ。
「それでええやん」
(い……)
いいわけ。
「俺は」
はっと。
「何を」
息を。全員が。
「オヤビン!」
吹き飛ぶ。
「戻ったんだね、オヤ……」
それでも。まだ。
「………………」
ゆっくり。
「あっ」
仮面を。
「俺は」
思いがけない。しっかりとした。
「俺だ」
それは。つまり。
「そうや!」
歓声。
「パパはパパや! みんなのパパや!」
「ちょっ……」
こんな。あっさり。
「うわーい!」
「お父さーん!」
あっという間に。
「………………」
これで。
なのか。
ⅩⅩ
「ちょっとー」
無視。
「なに、ふてくされとんー」
つんつん。
「……してないし」
うっとうしい。
「フレイムフェザぁー」
それも。
(ううん)
自分は。また。
「そうだよ」
いまは。
(この)
仮面を。
「納得してないし」
ぜんぜん。
「そっかー」
わかったような。
「まー、何かあったらお姉ちゃんに相談しいやー」
ご機嫌な。
(フン)
わかってない。
(あんな)
あるいは。
(オイラが)
すねているだけ。
それでも。
(あるんだ)
違和感。むしろ。
(仮面)
いまのほうが。
(つけてないのに)
それは。
(わからないんだ)
仮面と素顔。
見た目に。
(わからない)
確信。深く。
「だから」
触れる。
顔の。
「オイラ」
「学園長」
かしこまって。
「その……」
必要以上の。我ながら。
「何か……」
「ないよ」
おだやかに。
「どうかしたかい」
「………………」
これでは。
「い、いえ」
としか。
「失礼しました」
部屋を。
「何やってるの」
「わ……!」
外に。
「な、何って」
動揺の。
「そっちこそ」
「どうでもいいでしょ」
「どうでも」
いいのか?
「いや」
仮面――
「また」
「いいし」
自分でも。
「オイラは」
冷静に。
「オイラだから」
口に。
「……おい」
思わず。
「おまえ」
変わった。
「………………」
見た目は。
けど、それだけではない。
「終わってないのか」
まだ。
「知らないよ」
そっけなく。
(だから)
終われないんじゃないか。
「ね、ねぇ」
堂々と。学園の廊下を歩いていたところで。
「………………」
無視。
「そんなぁ~」
大げさに。膝を。
「はぁ」
うんざり。
「何?」
「『何』って」
よよよ……。
「お姉ちゃんなのに」
「………………」
それも。
(知って)
いて。
言って。
「違うし」
口癖。無意識に。
すると。
「わかってるから!」
「えっ」
同意?
「目覚めたんだよね」
(う……)
嫌な。
「正義のヒーローに」
やはり。
「もー、照れちゃってー」
同じような。もう一方の〝姉〟と。
「わかってるから」
(だから)
いいかげん。
「ちょっとだけ驚いちゃったけど」
舌を。
「がんばってね」
期待の。
「お父さんみたいに」
「っ……」
それを。
「こっちともおそろいだしね」
眼鏡。
「あのさぁ」
違って。そう。
(……いや)
同じか。
どちらも。本当の自分に『加え』る――
(本当)
気づくも。
(わかんないよ)
結局。
(これ)
だって。
「家族一緒」
「………………」
「ねっ」
うなずけない。
「安心した」
何が。
「がんばってねー」
何を。
「オイラは」
ただ。
「あ」
閃く。
(あいつなら)
そうだ。そもそもが。
「麓華!」
「ぷ、ぷりゅ」
仮面の。こちらに。
「いいから!」
そんなことより。
「お願い!」
「ぷ……」
今度は。
「連れてって」
ⅩⅪ
「ぷる」
重々しい。
(似てる)
あらためて。
「麓王(ろくおう)」
つい。
「わかんないよ」
すり寄る。
「ぷる?」
いつにない。その気弱げな。
「ぷる……」
しかし。
「ぷる。ぷるぷる」
すぐ。
「麓王……」
微笑。力の抜けた。
「ありがとう」
素直な。
(似てる)
その主人に。
(父親)
同じ。
(ううん)
そんな〝言葉〟ではなく。
(ない)
嘘が。馬には。
だからこそ。
「なあ」
すっかり。くつろいだ。
「いまのオヤビンをどう思う」
「………………」
沈黙。そして。
「ぷる」
一いななき。
「ちぇっ」
ゆるがないのだ。
その。
結びつきは。
(騎士の馬)
これが。
(オイラは)
じわり。
「くっ……」
熱く。
「あ」
すりすり。
「……おい」
何でも。
「さすが」
口に。
「オヤビンも」
はっと。
(何)
あり得ない。
もう。十分に。
(……違う)
何がなんだか。
けれど。
「麓王」
どっしり。まさに山麓の。
「ふぅ」
いまだけは。
「いいよね」
つぶやき。
「ね」
身を。預けた。
ⅩⅫ
(聞けなかった)
結局。
(けど)
ヒントは。
(言葉じゃない)
言葉というものは――仮面。
ある意味で。
(本当の)
自分にとっての。
「っ……」
武者震い。
「よし」
踏み出した。
「あ」
こちらを。
「お帰りなさい、ちょうどごはんが」
跳んだ。
「!?」
ダンッ!
「……え?」
仁王立ち。
「文句ある?」
腕を。組んで。
「………………」
絶句。
その場の全員が。
「え、えーと」
〝姉〟として。その責任感からか。
「そこはごはんを並べるところだから」
知ってる。
「知らないし」
だから。
「………………」
あぜん。再びの。
「あ、あのね」
「まーまー、ユイファ」
そこへ。
「頭ごなしに叱ったりしたらあかんやん」
「叱ったりなんて」
「なー」
なれなれしく。
「何があったん? お姉ちゃんに話してみぃ」
「シルビア、そういうことはわたしが」
「ヤだ」
すかさず。
「話すことなんてない」
「ほー」
ぴくっ。
「言ってくれますなー、子どもヒーローさん」
「ちょっ、シルビア」
不穏な空気に。
「あなた、まさか」
「ないない」
余裕の。
「あり得へんやろ、お姉ちゃんがいじめとか」
「あり得ないわよ!」
当然と。
「あり得ない」
だったら。
「これは?」
ガシャァァァァァァン!
「……!」
目を。
ほかほかと。湯気をあげていた大皿や鍋が。
無残に。
「コ……コラァッ!」
さすがに。
「なんてことしてくれてんの! あんた、そういうタイプの悪い子やなかったやろ!」
「タイプ?」
そんなこと。
「仮面一つで」
いくらでも。
「やるし」
やってやる。
「きゃあっ」
ガンッ! ガシャン! ガラッシャァァン!
「ちょっ……ホンマええかげんに!」
「はっ!」
跳ぶ。
「おお!?」
天井の高いログハウス。一同の頭上をあざやかな宙返りで。
「ちょ、ま、待っ」
反応が。
「あかんやん!」
頭を抱え。
「つかまえるんや!」
すぐさまの。
(つかまらないって)
いまは。まだ。
「さーて」
コキコキ。
「まだエンジンかかんないなー」
にやり。不敵な。
「もうちょっと」
やるか。
「わーーーーーっ!」
絶叫。
「何してんだ、おまえーっ!」
部屋中に。まき散らされた。
「いい趣味してるんだねー」
ひらひら。
「こーれ」
「お、お、おい」
ふるえる。
「けど、先生としてどうなのかなー」
「ど、どう?」
「そう」
にやにや。
「い、言うなよ」
たまらず。
「誰にも」
「言ったら?」
「く……」
完全に。
「いいから、言うな!」
やぶれかぶれの。
「いいよ」
「えっ」
パシャッ。
「写真も撮るなぁーーっ!」
ⅩⅩⅢ
「まずいやん、まずいやん」
あせりが。
「あの子、何がしたいん」
「そんなの」
これまでに入った報告から。
「……わからない」
目的が。
「お姉ちゃんなのに」
よよよ……。
「よよってる場合ちゃうて!」
ビシッ!
「お姉ちゃんやろ!」
「そ、そうよ」
気を。
「お姉ちゃんだもん!」
ふん!
「コーヒー淹れてくる!」
「よろしう!」
パン! ハイタッチ。
「ふーん」
感心の。
「姉妹だな」
「当たり前ですやん」
誇らしげに。
「で」
ジト目。
「ここに居らはる先生は何をしてくれてるんです?」
「えっ」
あたふた。
「いや、その」
「その?」
「だから」
何も。とは。
さすがに。
「し、仕方ないだろ」
開き直り。
「あいつ、すばしっこくて」
「逃げられたさかい、ウチらのとこに来たと」
「それは」
その通りで。
「何されたんです」
ギクッ。
「か、関係」
「あるですやーん。家族のしたことですしー」
(こいつ)
明らかに。
「何されたんですー。ほらほらー」
「く……」
言えるわけ。
「アレのことをこいつにまで」
「アレ?」
「な、何でもないっ」
必死に。
「もー。ぜんぜん役に立たんですやん」
「くっ……」
返す言葉が。
「騎士、使えんわー」
「おまえも騎士だろ!」
さすがに。
「ちゃうし」
「えっ」
「お姉ちゃんや」
いまは。
「シルビア!」
そこへ。
手当たり次第。
とはいかなかったが。
(甘いなー)
我ながら。
(ホントは)
シャレにならない。そこまで。
「あっ」
思いつく。
しかし、それには。
「見つけたで!」
グッドタイミング。
「こんなとこでたそがれて! いまさら悪いことしたと思ってるん!?」
思っている。
そのつもりでやったのだから。
(でも)
これぐらい。しないと。
「来ないで」
「はあ?」
「来たら」
島の遠景を見渡せる。建物の屋上で。
「飛び降りるから」
ⅩⅩⅣ
きょとん。目を。
「と……」
入ってこない。
「飛び降りる」
口に。して。
「平気やん」
あざやかな。家での宙返りを見たばかりで。
「そ、そんなこと言っていいの」
動揺を見せるも。
「本気だし」
手すりを。
「ちょっ!」
とっさに。
「いやいやいや」
どういう。まったくわからない。
「ま、まー」
それでも。
「落ちついて話し合おうや」
「何を?」
「何をって」
そもそも。どうして。
「さびしかったんでしょ!」
そこへ。
「わかってるから!」
(あちゃー)
よくない。
「だから! ね!」
「はぁ?」
冷めた。
(あかん)
これは。
「わかって」
ない。はずがない。
言いたげに。
「オイラは」
仮面の。向こう。
見つめる。
先。
「フレイムフェザー」
跳ぶ。
「だめーーーーーっ!」
絶叫。
「ち、ち、ちょっ」
まさか。本当に。
「……っ」
飛び出すも。
完全に。
「あかんやん!」
遅すぎる。
「おい!」
後ろから。
「下だ!」
はっと。
「行くで!」
へたりこんだ〝姉妹〟に肩を貸し。
(平気や)
決まっている。
(せやなかったら)
許さない。
そこに。
「パパ!」
くるみこむよう。小さな身体を。
「あ」
それは。
「お姫様だっこ……」
かなり。変型のシチュでは。
「よかった」
へたりと。再び。
「ありがとう、お父さん」
心からの。
「………………」
「お父さん?」
しかし。
「な、なんだよ」
こちらは。
「あやまらないからね。オイラは」
抱え直される。
「えっ」
パンッ!
「うわぁっ!」
「!?」
驚きに。
「ややっ、やめてよ! 何して」
パァンッ!
「ひゃっ」
悲鳴。
「やっ、なっ、痛ぁっ!」
パンッ! パンッ!
「痛っ! 痛ぁーーい!」
実際は。音ほどに強くは。
そんなこと以上に。
「や、やめっ、やめぇ……」
ボロボロと。
「あわわ……」
涙。
仮面を伝って。
「ど、どうしよう」
おろおろ。
「………………」
とっさには。
「……パパやから」
ぽつり。
「お仕置き」
「えっ!」
驚きの。
そんなこと一度だって。自分たちの知る限り。
「お仕置きなんや」
あらためて。納得させるよう。
「ええやん」
「えぇぇ~?」
困惑。完全に。
「さすがウチらのパパや」
「さ……」
そう。言ってしまって。
「っ……く……」
その『お仕置き』が。
「うくっ……う……」
終わっても。なお。
「ああ……」
いますぐそばに行ってなぐさめたい。
けど。それができない。
そんな。
「………………」
無言のまま。身体が下ろされる。
いまだ大粒の涙をこぼしつつ、それでもあわてて下衣を上げる。
「……バカぁ」
それだけが。精いっぱいの。
「あ」
気がつく。
「嘘……」
泣いて。
「な、なんで」
何も言うことなく。静かに。
「………………」
あぜんと。
ただ。
「なんだよ」
罪悪感。どうしようもなく。
「オイラ」
仮面の。奥。
「っ……ぅく……」
あらたな。
「ごめんなさい」
泣きながら。
「ごめん……な……あっ」
後は。もう。
「うあぁぁぁ……」
ただ、ただ。
〝父〟の。腕の中。
洗い流されていく。
そんな。
涙が。
ⅩⅩⅤ
「お父様」
「どうした」
「………………」
ためらいの。
「ユイエン様のことか」
「ぷ……」
わかりやすく。
「案ずるな」
重々しく。だがあたたかい。
「ですが」
ショック。だったはず。
もし、自分が同じようにされていたら。
(いたら……)
頬が。
「心配ない」
くり返し。
「それが家族というものだ」
「そうでしょうか」
「わからぬか」
責める目ではない。
やはり。あたたかい。
「家族だ」
何よりも。
「……ぷりゅ」
答えだった。
「大丈夫かしら」
そわそわそわそわ。
「もー」
あきれて。
「お姉ちゃんは心配症やな」
「お姉ちゃんだから心配なの!」
「何が」
「えっ」
ストレートに。
「何って」
言葉に。
「あらへんし」
微笑。
「心配になることなんて」
「………………」
その。言葉に。
「そうね」
うなずく。
「わたしたちの」
「パパ」
共に。
「や、やめてよ」
「そうか」
特に。気分を害した風もなく。
「子どもじゃないんだから」
言いわけするように。
「子どもだけど」
付け加える。
「あっ」
手を。再び。
「いいって」
「いいのだろう」
そっちの意味では。
「……まあ」
大きく。あたたかい。
包まれて。
「うん」
気恥ずかしいながらも。
「それで」
「ん?」
「オイラたち」
買い物に。それで市場に。
「何を買うの」
「さあ」
「えっ!」
知っているものと。
「どうするの!」
「どうも」
「えっ」
「ははっ」
おかしそうに。
「笑ってる場合じゃ」
ない。言いかけ。
「………………」
いや。
「ま、いっか」
「ああ」
そうだ。これでいい。
(これで)
いいんだ。
「ねっ」
「ん?」
不思議そうな。それでも。
「そうだな」
うなずいていた。
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