霊能探偵・芥川九郎のXファイル(29)【超能力談義編】
第1章 ハーブティー
霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所でいそいそとハーブティーを淹れていた。事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。ハーブティーを2杯入れ、1つを友人の牧田に手渡した。
芥川「はい、できたよ。」
牧田「ありがとう。いただくよ。」
芥川は自分の分のハーブティーを持って、おもむろにイスに座った。彼はハーブティーの香りを楽しみ、一口すすってから言った。
芥川「フォーさんから教えてもらったんだ。ハーブティーはポリフェノールやビタミンが豊富で、心身のリラックス、消化促進、美肌、免疫力向上・・・とにかく、美容と健康に良いらしいよ。」
牧田もハーブティーを一口すすってから言った。
牧田「・・・そういう話にすぐ影響されるところは、君の長所であり短所なんだけどね。」
フォー・ハルサメは、ハルサメ研究所の研究員である。ハルサメ研究所は、日本で唯一の公的な超能力研究機関である。芥川と牧田は最近、日本超能力協会(NCK)名古屋支部総会後の立食パーティーで彼女と出会ったのだ。
芥川「牧田君。今日は、先日の反省会をするためにここに来たのかい?」
牧田「そういうわけじゃないけど、話題はあの呪いの鎧武者くらいしかないね。」
第2章 呪いの鎧武者
先週、芥川、能年(鎧)、牧田は三人で、守山区をさまよう最凶の悪霊・呪いの鎧武者を除霊しに出かけたのだ。能年は鎧の妖怪である。芥川の事務所に住み込み、彼の助手として働いている。
芥川「いや、今回も危なかったね。まさか僕の法術が、あんな簡単に跳ね返されるとは思わなかったよ。」
牧田「フォーさんが現れなかったら、芥川君は無残に斬殺されていただろうね。」
芥川「鉄パイプを持っていくべきだったね。さすがに、刀を振り回す鎧武者相手に、素手ではどうしようもないよ。僕たち2人が鉄パイプを持ち、そして能年君にはサーベルがあるから、3対1だった。それでフルボッコにすればよかったんだ。」
牧田「そういう問題じゃないよ。普通の法術が通用しない最強の悪霊だと分かっていたんだから、入念な事前準備とプランの打ち合わせが必要だったんだ。」
芥川「いや。そんなことしていても無駄だったと思うよ。結局、最初から封印の秘法でさっさと封印するのが正解だった。」
牧田「それにしても、フォーさんがサイコアーマーから発射した霊丸、すさまじい威力だったね。」
芥川「うん。あれにはびっくりしたよ。フォーさんのおかげで命拾いした。」
牧田「芥川君は、筋の悪い研究だ酷評していたよね。AIとロボット技術がどんどん進化して、未来の戦争ではドローンとロボットが主役になる。サイコアーマーの出る幕なんてないだろう・・・と君は言っていたよね。」
第3章 サイコアーマー
サイコアーマーとは、フォーが研究・開発している軍事装備品である。簡潔に言えば、超能力の軍事利用である。
芥川「僕は今でもそう思っているよ。まさか近未来に、超能力者たちがサイコアーマーを装備して戦場を駆け巡るなんてこと、あり得ないだろう。」
牧田「確かに、小説、ドラマや映画、マンガやアニメに出てきそうな話だね。」
芥川「しかし、フォーさんが開発したサイコアーマーの性能はすごい・・・それは認めざるを得ない。」
牧田はハーブティーを一口飲んでから、話題を変えた。
牧田「芥川君は中国の大連でフォーさんと行き合ったけど、彼女は大連で何をしていたんだろう?」
芥川と牧田は1泊2日の大連旅行に行き、芥川は偶然にもそこで彼女と再会したのだ。
芥川「その謎はもう解けたよ。鎧武者を退治した後に、僕たちはフォーさんと一緒にカフェへ行っただろう。その時に、僕は彼女のSNSアカウントを教えてもらったんだ。」
牧田「へー、君も隅に置けないね。それで、彼女はSNSで何と言い訳したんだい?」
芥川「超能力の学会みたいなものに出席するためだよ。超能力の学会や研究機関は、世界各国にあるからね。幸い・・・と言うべきか、中国政府や共産党はいまだに、超能力研究に無関心なんだ。それで、中国の超能力研究者は案外、自由闊達に活動しているらしいよ。」
牧田「なるほど。そういうことか。」
第4章 必然の出会い
芥川は、冷めたハーブティーを飲み干してから言った。
芥川「今度、京子にも声をかけて、君と京子、僕とフォーさんでダブルデートに行こうよ。」
京子は愛知県警の刑事である。牧田は元刑事で、京子は彼の元同僚だ。彼の方は数年前に退職し、今はフリーランスとして活動している。
牧田「芥川君。そんな大学生のノリでお気楽に話している場合じゃないと思うよ。彼女の謎はまだ解けていない。あの日、フォーさんはなぜサイコアーマーを装備して、守山区をパトロールしていたんだろう?」
芥川「彼女はもともと自衛隊に所属し、守山区に住んでいたから土地勘があるそうだよ。今はハルサメ研究所に出向中の身なんだと。そして、守山区の鎧武者の件は、霊能力者のコミュニティ内で広く共有されていた・・・」
牧田「それで彼女は、研究・開発中のサイコアーマーの試験運転がてら、守山区で鎧武者を捜索していたんだね。」
芥川「二人の能力者が同じ悪霊を捜索していたんだから、あそこで出会ったのは偶然なんかじゃなくて、必然だったんだ。」
牧田「分かったよ。全部、腹に落ちたよ。」
芥川「僕とフォーさんの出会いは、偶然だったけど必然だったんだ・・・」
牧田「・・・・・・」
芥川は窓から見える景色を眺めながら、何やら夢想している。今日の天気はあいにくの雨で、朝から毛雨が降り続いていた。
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