映画『機動警察パトレイバー EZY File1』レビュー
色々、アジャストするのに時間が掛かりました。
原作の大ファンで、TVシリーズが大好きで、劇場版も観た者としてはイングラムの姿を一目見ただけで蘇る懐かしい気持ちに嬉しくなる反面、「あの頃」みたいな展開ばかり続くと今度は古臭さが勝ってしまい、スクリーンを正視することが難しくなってしまう。
だからといって、何もかもが新しく生まれ変わった『パトレイバー』が観たいのかというと決してそうではなく、レイバーという人型重機が導入された近未来の設定が現実世界にどう接合し、どういう化学反応を起こすのかをしっかりと観てみたい欲望がある。
つまり私にとっての『機動警察パトレイバー』は昔に戻っても、未来に進み過ぎても、その出来に納得できないアニメーション。鑑賞するのが楽しみな反面、怖くもあるシリーズ作品なんです。そのせいで、今回の『EZY File1』に対しても妙に身構えていました。ですが、観終われば全てが杞憂に終わりましたね。3話構成が進む中で得られる理解と共に、実に見事な『パトレイバー』らしい騒動が映画館で巻き起こっていました。むっちゃくちゃ面白かったです。
レイバー自体は絶賛稼働中、でも必ずしも人が乗る必要がなくなった『EZY』の社会状況ではそもそもレイバー犯罪自体が珍しい案件。かかる犯罪に対応する為に警視庁警備部に設けられた特殊車両二課(通称、特車二課)の出番もほとんどありません。警察車両の一つであるイングラムが出動すること自体が珍しいし、電話ひとつまともに鳴らない特車二課の面々が仕事を続けるモチベーション自体にもスポットは当たります。
新設された組織としてあれやこれやが注目されたかつての輝きから一転、斜陽の影がグンっと伸びた印象のある設定なのに、新キャラたちが元気いっぱいだからちっとも悲観的な印象を覚えない。ここが新シリーズの推しポイントですね。自己紹介のための説明描写を一切挟まずに、その言動だけで性格や人柄を伝えるのは流石の伊藤和典さん。キャラの原案もゆうきまさみさんだから、温故知新に満ち溢れたパトレイバーの世界が活き活きと動いていて、70分前後の上映時間がひたすら楽しい。3D化されたレイバーの動きにもリアリティが貫かれていて、街の手触りにも五感が刺激されます。
日進月歩な進化を遂げるAIも登場しますが、近未来を脅かすような兵器としてではなく、あくまでドタバタな人間劇を盛り上げる要素として用いられる程度。正確無比でその分、融通の効かない一面で彼や彼女の行動を賑やかしてくれます。こう記すと、予告編で目撃できる例のアレがどういうものか、よく分かると思います。多方面に広がった世界観との接続を果たす役割も担ったエピソードだったと思いますが、ストーリーとしては最も『パトレイバー』濃度が高くて大満足でした。ロボットアニメではあるんだけど、ただのロボットアニメじゃない、警察官としての日常を描く物語としての良さが遺憾なく発揮されている。これは『EZY』がかなりの範囲の観客に届く大きな要因になると個人的に思いました。大きく括れば、お仕事アニメに属する本シリーズの面白さはまさに「そこ」にありますからね。世界を揺るがす事件が起きなくても、ロボットを使ったドラマは生まれる。アニメーションの奥行きを、本作は広げるのです。
『パトレイバー』に出会ったことで、私のアニメ観ないしマンガ観は随分と変わりました。どんなアニメもドッカーン!バキューン!な楽しみ方しかしてこなかったのに、その時代、社会、そこで生きる人たちを観るようになった。『カウボーイビバップ』と並んで、私の中のエポックメイキングな作品の新シリーズは大成功を収めています。8月公開予定の『File2』も観に行きます。ファンは勿論、本作を知らないという方も是非、劇場へ足を運んで欲しいと思います。お勧めです。
映画『機動警察パトレイバー EZY File1』レビュー