霊能探偵・芥川九郎のXファイル(24)【氷室コレクション編】
第1章 魔獣と妖怪の違い
霊能探偵・芥川九郎は、中区にある事務所で友人の牧田と話していた。中区にあると言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
牧田「豊田市で魔獣を退治してきたそうだね。」
芥川「うん。正確に言うと、アレは魔獣じゃなくて妖怪と言うべきかな。」
牧田「魔獣と妖怪の違いなんて、僕には分からないよ。」
芥川「僕もそういう分類学には疎いから、うまく説明できないなぁ。正確な解説は、魔獣博士や妖怪博士に聞くしかない。でも、一般に流通しているイメージで判断すれば問題ないと思うよ。」
二人がそんな話をしていると、能年(鎧)がコーヒーを持ってきてくれた。
牧田「ありがとう。いつも悪いね。」
芥川「能年君、ありがとう。」
能年は鎧の妖怪である。芥川の助手として、彼の事務所に住み込みで働いている。牧田は能年(鎧)に話しかけた。
牧田「豊田の事件では、能年君も大活躍だったらしいね。」
能年(鎧)はそう言われて、照れているような仕草をした。
芥川「そうなんだよ。念のために彼を連れていって正解だった。能年君がいなかったら、本当に危なかったんだ。」
牧田「一体、何があったんだい?」
第2章 氷室コレクション
芥川はコーヒーを一口すすってから、おもむろに口を開いた。
芥川「そうだなぁ。どこから話すべきか・・・牧田君は氷室コレクションを知っているかい?」
牧田「氷室コレクション・・・聞いたことがないなぁ。豊田に現れた妖怪と関係があるのかい?」
芥川「正確に言うと、豊田市足助地区かな。旧足助町は、平成の市町村合併で豊田市と合併したからね。まぁ、その話は置いといて・・・まず、氷室コレクションの説明をしようか。」
牧田「ここまでの話の流れから推測すると、妖怪か何かのコレクションだろうね。氷室という名前の人が集めていたのかな?」
芥川「さすが牧田君だ。ほぼ正解だよ。昔、氷室という霊能力者がいて、封印の秘法で妖怪を黒い小瓶に封印していたんだ。」
牧田「封印の秘法なんてものがあるんだね。氷室氏が妖怪を封印した小瓶を収集したものが、氷室コレクションか。」
芥川「そんなにたくさんあるわけではないんだ。氷室氏は封印した妖怪を、人里離れた山奥で放流していたらしい。」
牧田「へぇー。氷室氏は、妖怪にも情けをかける優しい霊能力者だったんだね。」
芥川「しかし、氷室氏が封印した妖怪の中には、人里離れた山奥にも放流できないような危険なものもいた。」
牧田「そんな危険な妖怪が封印されている小瓶が現存しているわけか。」
芥川「それらはいつしか、氷室コレクションと呼ばれるようになった。蓼食う虫も好き好きでね、そんなものを収集するマニアがいるんだよ。」
第3章 偽物と本物
牧田はコーヒーをゴクンと飲んでから言った。
牧田「足助に、氷室コレクションを集めているマニアがいたんだね。」
芥川「そうなんだよ。そのマニアが足助の小早川さんだ。氷室コレクションと言ったって、フタを開けなければただの黒い小瓶だ。しかし、ある日・・・」
牧田「小早川氏は好奇心に抗うことができずに、フタを開けてしまったんだね。」
芥川は冷めたコーヒーを飲み干してから答えた。
芥川「いや。きっかけは偶然だった。小早川さんは部屋の整理をしていた。その時、何かの拍子に黒い小瓶を落としてしまったんだ。」
牧田「その黒い小瓶が割れて、中から恐ろしい妖怪が・・・」
芥川「それが、出てこなかったんだよ。小早川さんが高額でつかまされた氷室コレクションは、ほとんど偽物だったんだ。」
牧田「ほとんど・・・ということは本物もあったんだね。」
芥川「そのとおり。割れたのが偽物だったから、小早川さんは全部偽物だと思って、片っ端からフタを開けていったんだ。そうしたら・・・」
第4章 足助の白虎騒動
牧田も冷めたコーヒーを飲み干してから、腕を組んで言った。
牧田「その中に本物があった。瓶の中から恐ろしい妖怪が出てきたんだね。」
芥川「そう。恐ろしい虎のような妖怪が出てきて、屋敷の中で暴れた後に、山の方へ逃げていった。小早川さんは非常に狼狽し、やがて霊能探偵の僕のところに連絡が入ったんだ。」
牧田「後は、名古屋の霊能探偵・芥川九郎の大活躍だ。」
芥川「そのつもりで行ったんだけどね。まさか、白虎だとは思わなかった。もう少しで死ぬところだったよ。念のために能年君を連れていって、本当によかった。」
牧田「白虎って・・・あの伝説の神獣かい?」
芥川「そう、その白虎。僕は、普通の魔獣に毛が生えた程度のもんだろうって、高をくくっていた。まさに油断だね。」
牧田「それで白虎に殺されかけたのかい?」
芥川「うん。白虎の妖気を探知しながら、足助の山中をズンズン進んでいった。そして、とうとう白虎が現れたと思った瞬間、白虎は電光石火、ものすごいスピードで襲いかかってきた。目にも留まらぬ速さとは、あのことだよ。」
牧田「そこで能年君が大活躍か。」
芥川「そうなんだよ。その瞬間、能年君が前に跳んだかと思ったら、白虎と激しい戦闘を始めたんだ。僕はその間に封印の秘法を使い、白虎を封印したんだ。コレにね。」
芥川はそう言いながら、牧田に黒い小瓶を見せた。
牧田「・・・本当かい?」
牧田は信じられないという表情で小瓶を見てから、能年(鎧)の方を見た。能年(鎧)はコクッコクッと2回、大きく頷いた。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(24)【氷室コレクション編】