霊能探偵・芥川九郎のXファイル(23)【ドバイ・コネクション編】

第1章 メフィストフェレス(榊原博士)

 霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所で友人の牧田と話していた。事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「今日は中山さんが来るんだよ。」
牧田「先日、フランス料理店で榊原と一緒にいた人物だね。」
榊原は、召喚魔法を完成させるために悪魔と契約した魔獣博士である。本体は魔界から出ることができないために時々、魔力で形成した仮体で人間界にやって来る。中山は榊原をメフィストと信じていた末期癌の患者だ。
芥川「中山さんは榊原博士に騙されていたんだ。」
牧田「でも、彼は末期癌で余命半年なんだから、騙されたまま亡くなった方が幸せだったかもしれないね。」
芥川「悪魔と契約した狂気の博士に心酔したって、魂が救済されるわけないだろう。死ぬ前に真実を知ることができてよかったんだよ。」
牧田「そうかなぁ。」
芥川「中山さんはそろそろ来るだろう。能年君がコーヒーを淹れてくれるから、コーヒーでも飲みながら話を聞こう。」
能年は鎧の妖怪である。芥川の事務所に住み込みで働いている。

第2章 末期癌患者の来訪

 間もなく中山が事務所にやって来た。
中山「こんにちは。おじゃまします。」
芥川「こんにちは、中山さん。先日は大変、失礼しました。」
牧田「どうぞ、お座りください。」
中山「どうも。」
中山はそう言って、牧田が勧めたイスに座った。中山がイスに座ると、能年(鎧)が3人分のコーヒーを運んできた。中山は能年(鎧)を見て一瞬、ビクッと驚いたが、頭を下げてコーヒーを受け取った。
中山「・・・ありがとうございます。今日はあの恐ろしい鬼はいないんですね。」
芥川「あの鬼は知人から預かっていただけです。普段はいませんよ。」
 牧田はコーヒーを一口すすってから言った。
牧田「中山さんは末期の胃癌なんですよね。体の調子はいかがですか?」
中山「今のところ大丈夫ですが、体調は芳しくありません。」
中山はそう言ってから、コーヒーを一口すすった。芥川もコーヒーを一口すすってから言った。
芥川「残り少ない人生の貴重な時間を割いて、わざわざ私の事務所に来ていただいて申し訳ないです。」
中山「いえいえ。あなたたちとの出会いは偶然でしたが、おかげで目が覚めました。私はメフィストに・・・榊原博士に騙されていたんです。」

第3章 メフィストのついた嘘

 牧田は話題を榊原博士の件に変えた。
牧田「榊原は悪魔と契約したために、魔界から出ることができないようです。仮体でこちらにやって来ては、魔獣を召喚したり、人間を騙したりしているんです。」
中山「そうなんですか。でも、彼は私に言ったんです。いろいろな話を・・・まるで夢のような。」
芥川「榊原博士は中山さんに一体、何を吹き込んだんですか?」
中山「榊原博士が言うには、彼の魔力で地上の夢を全て叶えることができると。」
牧田「地上の夢を全て・・・中山さんは、この世に何か未練があるんですか?美酒、美食、旅行、恋愛、女遊び、ギャンブル、お金、権力・・・何だろう?」
中山「私もいい年ですので、グルメや女遊びに興味はありません。旅行・・・に行く気分にもなりませんし。」
芥川「私とのSNSでのやり取りで、ドバイの話をしていませんでしたっけ?」
中山「あぁ、ドバイの話ですか。あれは冗談半分です。」
牧田「人生最後のドバイ旅行・・・いいじゃないですか。きっと素敵な想い出が作れますよ。」

第4章 ドバイ案件

 芥川は話題をドバイ案件に変えた。
芥川「牧田君は、ドバイ案件の噂を知っているかい?」
牧田「ドバイ案件って・・・そう言えば、ネット上で真偽不明の怪しい噂が拡散されていたね。」
芥川「アラブの大富豪が、各国からやって来る女性に高額な報酬を支払い、過激な性行為をさせているという噂だ。ヤギとのセックスを強要されたなんていう、衝撃的な話が拡散されたね。」
牧田「そんなの都市伝説だよ。あり得ない。中東はイスラム教の戒律が厳しいからね。そんな行為はそもそも違法だし、ばれたら大変なことになるだろう。」
芥川「イスラム教でなくても、立派な人権侵害、犯罪だよ。」
中山「・・・・・・」
牧田「中山さん。まさか・・・」
芥川「メフィストフェレスの力があれば、一瞬でドバイに行くこともできるし、この噂の真偽を確かめることもできる。」
中山「ですから、何度も言いますが、あれは冗談半分です。でも、メフィストの力でそんな簡単に確かめることができると言うなら、知りたかったという話です。」
芥川「他にやることがないなら、ドバイ旅行を楽しんできたらいいじゃないですか。ドバイ在住の知人がいますから、紹介しますよ。」
中山「本当ですか?じゃあ、とりあえず紹介してください。」
牧田「・・・・・・」
芥川は中山にドバイの知人を紹介した。部屋の隅でイスに座っていた能年(鎧)はそんな話に興味はないらしく、コックリコックリと舟を漕いでいた。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(23)【ドバイ・コネクション編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(23)【ドバイ・コネクション編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-23

CC BY
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  1. 第1章 メフィストフェレス(榊原博士)
  2. 第2章 末期癌患者の来訪
  3. 第3章 メフィストのついた嘘
  4. 第4章 ドバイ案件