zoku勇者 マザー2編・21
フォーサイド編・7
「処で、俺達、よくあれがモノトリーだって分ったよな、
実際……、まだ会った事も顔も見た事ねえのにな、もしも
本当の只の通りすがりの爺さんだったらどうしてたんだろう……」
「でも、名前を呼んだら異常に焦ってたし、あれが
モノトリーさんで間違いないよ、うん……、まあ、実際は
夢の中であった出来事だけど……」
二人はそう思う事にし、久しぶりにフォーサイドの
街並みを眺めながら、漸く戻って来れた現実世界の
空気を吸いリフレッシュしようとした。
「キャキャーーー!」
「おわ!今度は何だよっ!!」
突然、ジャミル達の目の前に……、黒焦げの謎の物体が現れた。
「有喜ー!」
「……猿?」
そう、現れたのは可愛いおさるだった。
「キャキャーキャ(私は宅急便ではありませーん)
キャッキュキ(前にあなたと会ったか会わなかったか
覚えていませんが)
キャンキッキ(断食を終えたタライジャブ様が)
キッキ、キキー(あなたに会いたがっています)
ウッキッキー(場所はドコドコ砂漠の西の端の方)
キーキキーキー(いわゆる、お猿の多い洞窟です)
キンキキ、キキン、キーキー(それでは、わたくしは
テレポーテーションで……)キャ!(失礼します!)」
「……凄いね……」
お猿は道路へ一直線に向かって突っ走り、そのまま姿を消した。
「マジでスゲエな、消えちまったぞ……」
「キャーキャー言ってたけど、な、何て言ってたのかな……」
「うーん、ドコドコ砂漠の西の端に有る穴に来いとさ……、
俺らに会いたい奴がいるんだと……」
「凄いね、ジャミル、お猿さんの言葉が分るんだね!」
「何となくだけど……」
と、自分で言ってみて、猿の言葉が何故理解出来てしまうの
かが、何だか自分が猿の仲間の様で……、ジャミルは気分が
複雑になった。
「けどなあ、俺達、んな事してる暇は……」
「おおーっとーっ、ヘイお待ちー!ウッカリ特急便ですー!」
唸っていると、今度はウッカリ特急便の配達業者が
やってきた。眼鏡を掛けており、容姿は何となく、
若い頃の○本工○に似ている。
「実はですねー、ドコドコ砂漠で日光浴している男に
教えて貰いましてー、ほら、お猿の多い洞窟、あそこに
行って来たんですが、アップルキッド様からのお届け物の
ぐるめどうふマシンをつい、うっかりと置いて来てしまった
わけです、いちごどうふを作るとかのマシンをね、……でも、
私は取りに行かない!何故ならそれはあなたの物だからだー!
さあ行けジャミル、忘れ物を取りに出発だー!でわ!」
「……」
そのまま逃走しようとした配達員をジャミルが追って
とっ捕まえようとするが、アルベルトも慌ててジャミルを
追い、配達員を殴ろうとしたジャミルを止めた。
「……君も本当に少し落ち着かないと駄目だよっ!もうっ!」
「……ガルルルー!」
「あの、あなた達……、今、いちご豆腐がどうとかと話して
いませんでしたか?」
「こ、今度は……!?」
今度来たのは、メイドさんの恰好をした女性であった。
表情から察するにとても困って深刻な様子だった。
「私、エツコと言います、……モノトリービルにて、
モノトリー様にお仕えしているメイドです……」
「モノトリービル……、ま、まさか!」
ジャミルが警戒するが、エツコさんは違います、違います!と、
言う様に手を振る。
「ある方に頼まれまして……、幻のいちご豆腐というスイーツを
探しているんですが、どうしても見つからなくて……、何とか
手に入れないと、私、ビルに戻れないんです……」
エツコさんは俯いて下を向いてしまった。
「そうか、そりゃ大変……、ん!いちご豆腐!?」
「ジャミルっ!」
「な、何か……、知っているんですか?お願いです、少しでも
情報がありましたらどうか教えて下さい、早くビルに戻らないと、
アイシャお嬢様のご様子もご心配ですし……、いえ、私がお側に
ついていた処でどうにも出来ないんですが……」
「あんた今、アイシャって言ったな!?」
「は、はい……、ま、まさか、あなた方は……、いつもモノトリー様の、
話しておられた……」
「……僕達は、アイシャの友達です、あなたも何か知って
いるんですね?」
「は、はいっ!」
アルベルトが訪ねると、エツコさんは慌てて返事を返す。
そして、モノトリービルでのアイシャの様子など、
ジャミル達に詳しく伝えた。
「そっか、アイシャは元気なんだな、良かった……」
「で、でも、やっぱり言うか、大分無茶はしているみたいだし……、
心配だよ……」
「だよな、くそっ、何が何でも早く助けにいかねえと!」
「ですが、社長の様子がこの頃変なのです、アイシャお嬢様に
命をお救いになられてから……、とてもお気持ちに迷いが
出てきているご様子でした……」
「戸惑ってんのか、……やっぱりな、爺さんにも多少は心は
あるのかな、早くアイシャを助けに行きたい処だけど……、
けど……」
「……」
ジャミルはエツコさんの方をみた。エツコさんは複雑そうな
表情でジャミルを見ている。
「でも、情報を教えてくれたアンタにもちゃんとお礼を
しなくちゃな!すぐに、猿の洞窟へ行ってぐるめどうふ
マシンとやらを取ってくる、それがありゃ、いちご豆腐と
やらも作れちまうらしいぜ!そしたらアンタもビルに
戻れんだろ!?何だか知らねえけど、猿の洞窟で俺らを
待ってる奴もいるみたいだし、丁度いいや!」
「お、お願いしますっ!私、ご検討をお祈りしてますっ!私が
先にビルに戻れれば、あなた達の事もお嬢様にお伝え出来ますし、
きっと御安心なさる筈です!」
ジャミル達はお猿の洞窟へと急ぐ決意をする。モノトリーの
心に少しでも慈悲が残っている様に祈りながら。
……そして、再びモノトリービル……
「どういう事ですか?もう、私、自由にしていいって……」
「もう疲れてしまったんだよ、私は……、何もかも、嫌に
なってしまったんだ、特に君の様なうるさい小娘はね、もう
見ているだけでウンザリだよ、仲間の処へ戻ろうが構わないよ、
何処にでも行きたまえ、君は自由だ……、お前なんか誘拐を
企んだのが運のツキかも知れん……」
「うーん……」
アイシャは指を顎に当てて暫く考えていたが、やがて首を
ぷるぷると振った。
「いいえ、行きません、私、此処にいます!」
「おいおい、何なんだ、折角私がもう……、自由にしていいと
言っているのに……、いつまでも此処に居れば、又私の気が
変ってしまうかもしれんぞ……」
「大丈夫です、ジャミル達が助けに来てくれるから!えへへ!
だからそれまで、私、引き続きモノトリーさんのお世話を
しまーす!ね?いいですよね!」
「アイシャ、君は……、何という……」
「さあさあ、此処に座っていて下さいな、私、お茶を
淹れてきますね、あっ、お身体お病気なんですから、
絶対無理しちゃ駄目ですよっ!」
「……」
「♪~」
モノトリーはお茶を淹れに行ったアイシャを複雑な思いで
見つめるのであった。そして、自分の心に……、明らかに
迷いと変化が生じているのがはっきりと分った……。
「私は……、どうすればいい……?だが今更もう……、
この立場を捨てるなどと……、折角掴んだ栄光……
すべてを捨て……何の取り柄もない惨めだった……
あの頃の自分に戻れと言うのか……?」
「……パパ、これ、やばいよやばいよ、あの爺、迷ってるよ!
これ、絶対会社捨てて改心するパターンだよ!」
「じょ、冗談じゃない、折角のわしらの地位まで……、
このまま捨てさせてたまるか!」
「そうだよ、まだまだあの糞爺には頑張って貰わないと……!
冗談じゃないよっ!!……SPまでみんな解雇しちまったんだろ、
ホントに何考えてんだいっ!!」
こっそりと、豚アンブラミファミリーはモノトリーのいる
社長室を覗き、アイシャとのやり取りを見ていた……。
「キヒヒ、そうだよ、確か、地下室に……、爺が護身用に
発注した危険物体が有る筈だ、そいつを利用して……、
あのウザイ団子小娘を何とかしちまえば……、そうしたら又
あの爺も、迷いも何もなくなるさあ!きひひ、……うーらら!
……見てろっ!」
新たな脅威と危機が……アイシャに迫っている事を
ジャミル達はまだ知らない……。
これで何度目になっただろうか、ジャミル達は再び
ドコドコ砂漠へ。埋蔵金の方の状況も気になったので、
こそっと本部の方も覗いてみたが……。
「ダイヤモンドが出たってなあ……」
「ッス……」
「ダイヤが出たってねえ……」
「ダイヤなんかなあ……」
……ショージ兄弟+野次馬の悲観に暮れた声。
「相変わらず、苦戦してるみてえだなあ……」
「ジャミル、邪魔しちゃ悪いからこのままそっとしておこう……」
「だな……」
ショージ達の仕事の妨げになると申し訳ないので、
そのまま声を掛けず、此方も急いでいる為、おさるの
多い洞窟へと足を運んだ。
まずは入口付近の二つの穴の前におさるが2匹おり、
それぞれ声を掛けてきた。
「ウキャップキャコ、ウキキッキ(スキップサンド持ってるか?)
ウキーウキー、ウキー(ひとつくれたらどいてやるけど)
キー(くれるか?)」
「確か一個ぐらいあった筈……、ん、ほらよ!」
ジャミルはリュックを探り、スキップサンドをおさるに手渡す。
「ウキップキャコ!(スキップサンド!)
ウッキー(やったー!)」
ぷぷっぷぷっぷ!
「……くっせ」
スキップしてしまう程嬉しいのか、おさるは飛び跳ねて
おならを落としていくとそのまま何処かに姿を消した。
「キッキッキッ!キキッ!(えんそくランチたべたい!)
キッキッキッ!キキッ?(のぞみをかなえてくれたらここを
開けてあげようかな?)」キッキッキッ!キキッ…?(くれる?…)」
「今度は遠足ランチね、はいよ!」
「キキキー!」
左穴を塞いでいたおさるも、遠足ランチを受け取ると
何処かに姿を消した。
「……こうやって、お猿さんに色々物を渡しながら
穴を通り抜けるみたいだね……」
「けど、こんなにキャッキャキャッキャ騒がれると、
何か頭痛がしてくるな……」
「大丈夫ですキー!ぼくたち、話そうと思えば普通に
話せますキャ!ほらほら!」
何処からか、別のおさるがやってきてジャミル達に
普通に話し掛けた。
「おい、だったら最初からさあ……、、回りくどい事
しねえでよう……」
ぎゅむ……っ
「そうなんだ、す、凄いね!」
ジャミルの脇腹を慌てて抓るアルベルト。
「大分前に、赤いリボンでお団子頭のお嬢さんも
此処に来ましたよ!」
「……赤いリボンに団子頭、もしかして……」
「アイシャだよ、僕らよりも先に此処に来てたんだ……、
前に砂漠でいなくなっちゃった時かな……」
「だろうな……」
ジャミルは確認の為、右手首のリボンを試しに
お猿に見せてみた。
「♪キャキャ!そうです、確かこの真っ赤なリボンを
頭に付けてましたキャ!あなた達のお友達だったんですね、
でも、今はお姿が見えない様ですが……、ご用事でしょうか?
お会いしたかったのですが、残念ですキャ……」
「うん、今はな……、ま、その内、又連れてくるよ……」
「キー!是非、お待ちしておりますよ!今度はちゃんと
お話ししてみたいので!あの時はあまりびっくりさせたく
なかったのです!今度は絶対びっくりさせますウキャ!」
お猿の言葉にジャミルの気持ちが再び不安定になった。
エツコさんが伝えてくれたアイシャの様子で少しは
安心出来たものの……、彼女にいつ、何が起きても
不思議ではない状態なのだから。
「じゃあ、行ってみるか、まずは右の穴からな……」
ジャミルとアルベルトは穴の奥へ進んで行った。道中の
穴穴の手前で待ち伏せ、わがままを言うおさる達に
切れつつも、やれ、ピザが食べたいだの、ハンバーガーが
食べたいだの、……濡れタオルが欲しいだの、大人のドリンク
飲ませろだの……、二人は数々のおさる達の使いっ走りに
耐えつつ、あっち行ったりこっち行ったり。漸く、
タライジャブがいるであろう正しい穴のルートまで
目を回しながらもどうにか辿り着いた。
「お待ちしておりました、タライジャブ様はこちらです、
キャ!」
穴の前に案内おさるがおり、ジャミル達を穴の中まで
誘導してくれる。
「……宇宙の真理は粒の様に波の様に宇宙を駆け巡り……、
人という宇宙に語りかけているものじゃ、あなた方が
此処に来ること、私が此処で待つこと、すべて定められた
心理……」
「うわ!すげえ爺さんだなあ!宙にぷかぷか浮かんでるぞ!」
「ジャミルっ、し、静かにしなよ……!」
興奮し始めたジャミルをアルベルトが注意するが……。
「実は、この浮遊術は、わしの屁で……」
「……」
「えーと、ジャミル、アイシャ、アルベルト、……後一人、
……誰じゃったかの?……まあ、いいわ、4つの力が出会う時、
……ねじれようとしている宇宙は安らかな呼吸を取り戻す、
……分るかね?分らんでもよい、あなた方の好きな様に
歩んでいけば、それでよい……もしかすると、これを探しに
来たのかな?観光気分で此処に訪れたウッカリ物が穴に
落としていった様じゃが、……とうふの作れる機械らしいの」
「おお、これかっ!ぐるめどうふマシンてのは!俺達も
初めて見るんだけどな、とにかくこれ、受け取らせて貰うよ!
爺さん、ありがとな!」
「うむ、処でお前達は空間を自由に操れる力など
要らないかね?これから先も更に困難な道のりになり、
一層険しくなるであろう、これがあれば思った場所に
何処へでもひとっとびじゃ、……要らないかの」
「……マ、マジで!?教えてくれんのかい、爺さん!」
「そんなのがあれば……、すぐにフォーサイドへ戻れるよ、
ジャミル!」
「うむ、師匠は其処のおさるじゃ、習って行きなさい……」
「キャキャ!それでは、わたくしがテレポーテーションを……、
伝授いたしましょう、ささ、穴の外へ……」
ジャミル達は早速穴を出て、道路方面へ向かった。
「いいですか、先生が見本を見せますよ、これが出来る様に
なると、一度行った場所ならどこでも移動できるようになります、
地下、部屋の中では使えませんからね」
「おお、マジでスゲー!」
「……普通に喋ってくれて助かるよ……」
「では、いきます……!……キイイイイーー!!」
ジャミルとアルベルトが見つめる中、おさるは物凄いスピードで
道路を直に走って行き、消えた。……そして数分後には再び、二人の
目の前に姿を現した。
「はい、先生は今、フォーサイドまで行ってもどってきました、
今度はきみたちのばんですよ、やってみなさい、先生は基本的な
まっすぐコースで走りましたが、距離さえあれば曲っても
できるからね」
「や、やってみなさいって……」
「おう、んじゃやってみっか!」
(で、出来るもんなの……?)
不安を抱きつつも、アルベルトはジャミルの肩に掴まる。
「じゃあ、行くぞ……、おおおおおりゃあああーーー
ーーーー!!」
「う、……ああああああーーー!!」
熱血バカ、そのまま猛ダッシュで道路を突っ走る……、
そして消えた。
「キキキキキ、すごいですね、まさか本当に習得して
しまうとは……、只者ではないですな……」
「おおおおおおーー……、っと、戻って来れた」
「……はあはあ、うええ……、酔った……」
「キー!凄いですね、PSIテレポーテーションαを
習得しましたね、これで先生が教える事は何もありません、
自由につかいこなすべし、キャッ!」
「よし、んじゃ又フォーサイドへ戻るかあ!」
「……ううう、僕は何となく……、苦手だよ……」
「♪キャーキャーキャ、キャーキャキャ……(おさるの光で見送ります、
いってらっしゃい!)
ハンカチを振るおさる先生に見送られながら、二人は再び
フォーサイドへと戻るのであった。
一方、モノトリーデパートの前で只管ジャミル達を待つ
エツコさんは……
「ジャミルさん達、まだかしら……、ああ……」
「おまた、到着っ!」
「きゃあっ!!」
テレポーテーションで突如デパート前に現れたジャミル達を見て、
慌てて腰を抜かしそうになる……。
「……ジャミルさん達っ!」
「へへ、驚かせてごめんな、これ、ぐるめどうふマシン!」
「あああ、有難うございますっ!私、これを持って一度、
ビルに戻ります、その後、アイシャお嬢様のご様子を
お伺いした後で、すぐに又ご報告に参りますわ!
……社長は恐らく、あなた方と争うお気持ちはもう無いと
思うのです……」
「分った、何とか詳しい情報を掴んでくれ、頼むよ!爺さんが
アイシャを返してくれるのなら俺らも別に戦う気はねえからさ」
「エツコさん、お手数お掛けしますが、宜しくお願いします……」
エツコさんは二人の様子を見て頷くと、すぐにビルの
48階へと急ぐ。
「……えーと、いちご豆腐を作ってすぐにポーキー様に
届けないと、まずはそれからだわ!……!?」
……はなしてーーっ!何するのよーーっ!!
うるせー黙れブス!パパ、こいつが変な力を使えない様に
しっかり縛っちゃってよっ!
「これは……、アイシャお嬢様のお声……、社長室から……!?」
エツコさんは急いで社長室のドアに近づき、こっそり中を覗く、
鍵は掛かっておらず……。
「……ア、アイシャお嬢様!……社長!!」
「君達、何のつもりだね……?」
「キシシ、爺さん、アンタ今、ズバリ会社捨てて改心しようと
して迷ってますね?……そんな事はねえ、このボクがさせないよ!」
「今更善人ぶろうとしてんじゃないよ!この馬鹿爺が!
アンタが今までやって来た悪どい行いは消えないんだから
さあ、……仲良くしようじゃないの、ねえ!」
「儂らは生涯アンタに尽くすと決めたんですよ、……自分達も
生活が掛ってますから……、そんなに簡単に心変わりして
貰っちゃ困るんですよ……、そんな優秀な部下を捨てるんですか?」
社長室には……、アイシャを縄でぐるぐる巻きに縛り、
抱えて人質に取っている、父親のアンブラミ、アイシャに
銃を付き付ける息子のポーキー……、そして、腕組みをし
高笑いしている母親のラードナの姿があった……。
「ど、どうしましょ!は、早く、ジャミルさん達に
知らせなくては!……い、いちご豆腐なんか
も、もももも!もうどうでもいいわわわっ!!」
エツコさんは慌てて再びエレベーター目指して走る、
アイシャの危機をジャミル達に伝える為に……。
「助けてーっ!モノトリーさんっ!!」
「……フン、わ、儂にはどうでもいい、そんな小娘など……」
……モノトリーはアイシャから目を反らす、しかし
その声は震えていた。
「へえー、そうですかあ?……んじゃ、撃っちゃって
いいんだとさ、このブスを!」
ポーキーは更にアイシャの顔に銃口をぐいぐいと
押し付ける……。
「ま、待てっ!……やめろお前ら!もうその子は
関係無いだろう!!頼む、お願いだ……、酷い事は
しないでやってくれ……」
「……モノトリー……さん……」
力なくアイシャが声を小さく出した……。
「爺、小娘を殺されたくなかったらあたしらのいう事を
聞くんだよ!無駄な抵抗はやめるんだね!フンっ!!」
「分った、だがその子だけは放してやってくれ、もう本当に
何の関係も無いのだ……」
「そうはいかないんだよっ!こいつはしっかり捕まえて
おかないとね、爺さん、そのアンタの甘い考えを完全に
捨てさせるんだ、パパっ、やっちゃっていいよ!」
「うむ、……眠っていろ、糞うるさい小娘っ!」
「……ん、んんーーっ!……ふにゅう……」
「……アイシャっ……!き、貴様ら!!」
アンブラミはスーツのポケットから隠していた薬品を
取り出すとハンカチに付けアイシャの口を塞ぐと
そのまま眠らせてしまう……。
「けけ、こいつはおかしな超能力が使えるからな、
あの馬鹿猿仲間とこっそり通信し合っちゃ困るんだよ!
うーらら!」
「さあ、爺さん、あんたも人質だ、これからバカガキ
奴らも来るだろうからな、このままこの部屋でこいつと
一緒に大人しくしてな、せめてもの情けだ、一緒に
いさせてやるからさあ~、奴らがくたばるまで、ここで
おとな~し~く、し・て・な!」
「はーっはっはっは!なーんて気分がいいんだろうねえ!
あたしゃ、今まで生きてきてこーんなに気分が爽快なのは
初めてさあ!!」
……ポーキー、アンブラミ、ラードナの極悪親子は
揃って馬鹿笑いする……。ちなみに、次男である
ピッキーは姿が見えない。
「……く、くそっ、アイシャ、すまん、儂の所為で……、
やはり君はもっと早く……、此処から逃がしておくべきだった……、
本当にすまん……、許しておくれ……」
アンブラミ一家は社長室に鍵を掛け、モノトリーとアイシャを
閉じ込めると自分達はそのまま別部屋に移動してしまうので
あった……。
そして、ジャミル達はビルの陰に隠れながらエツコさんを
待っていた……。
「……た、大変ですーーっ!!」
「お、来た来た、……ん?」
漸くエツコさんがビルから出てきたが……、様子が
おかしいのに気づく。
「何かあったのかい……!?」
「た、大変ですっ!社長とアイシャお嬢様が……!!
ミンチ一家に……!!」
「ミンチ……、ポ、ポーキー豚ファミリーか!?」
「社長は……、もう会社を……、何もかもすべてを手放して、
一からやり直すお覚悟でおられた様なんです……処が、
部下でもあるミンチ一家が反旗を翻して自分達の私欲の為に
それを阻止しようと……アイシャお嬢様を人質に……!
無理矢理考えを又変えさせようとしているんですっ!!」
「何て卑怯な……!許せないっ、アイシャが危ないよ!
行こう!!ジャミル!!」
「分ってる!……畜生!!大丈夫だ、爺さんもアイシャも、
絶対助けるから!!」
「どうかお願いします……!!社長室は48階です、専用の
直通エレベーターで行ける筈です!ああ、社長、お嬢様……!!」
ジャミル達は意を決し、モノトリービルへと遂に突入する……。
真の敵から……、アイシャとモノトリーを救う為に……。
「……何だか異様に静かだね、ロビーにも、受付の人も誰も
いなくなってるし……、SPも見当たらない、でも、油断
しない様にしなくちゃね!」
「ああ、くそっ、……に、しても、ポーキーの野郎、何処まで
豚野郎なんだよっ!モノトリーの事だけで……、あいつらの事、
すっかり忘れてた俺らも迂闊過ぎたぜ!!」
ジャミルが悔しげに歯噛みする……、すると、ロビーから
館内放送が流れて来た……。
『♪ぴん、ぽおおおーーん、お知らせでーす!うーらら!
やっと来たねえー、うんこが付いたブタのけつくんと、
鼻糞が付いためがねのけつくん!ボクだよ、ポーキーだよん!』
「……め、メガネのケツ……?」
「うるせーこの野郎っ!……豚のケツはてめえの方だろうがっ!!」
『まあ、其処で吠えてなよ、お前らは所詮、保健所の中の
野良犬以下だ、これからはこのポーキー様がヒーローに
なるんだからさ、……爺と団子は仲良く社長室だよ、えー?
何でこんなに親切に教えるのかって?そ・れ・は!……お前らは
絶対途中でくたばって死ぬからでーす!以上、お昼の放送でしたー!
ちんぽんぱんぽーん!』
……館内アナウンス放送は途絶える……。ジャミル達の怒りは
最高潮であった……。
zoku勇者 マザー2編・21